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848日。
「定位置」への帰還
この場所に帰ってきた―。9月27日、J2群馬戦。水戸ホーリーホック在籍22シーズン目を迎えた〝レジェンド〟GK本間幸司(43)は、ケーズデンキスタジアムのピッチに立っていた。公式戦出場は、なんと18年6月2日の岐阜戦以来、848日ぶり。昨年はベンチ入りさえ2試合のみだった男の姿が、水戸のゴール前の「定位置」にあった。
昨年はクラブ史上最高の7位と躍進した仲間たちを、スタンドから見守るばかりだった。「さすがにきつかった時もありました。立場的に、色々な役割を求められているのも分かります。でも、俺はまだまだ選手なんで…」。忸怩たる思いを抱えながら、日々の練習にひたすら打ち込んだ。
深酒して、翌日の午前練習でアルコールを抜く、なんて豪快なキャラクターだったが、もちろんそんな生活をしていたのは遠い昔だ。43歳。疲労は抜けにくく、回復は遅くなっている。だが、それに抗うのではなく、受け入れた上で、さらなる成長のために考える。
俺、まだまだのびますよ
以前、あっけらかんと口にした言葉を思い出した。「30代前半に入って、ようやく色々と考えるようになりました。今まで本能に任せてやってきたので。俺、まだまだ伸びますよ(笑い)」。伸びるという自信があるから、工夫する。以前の「野性」を前面に出したプレースタイルに、深みが加わったような気がするのは、日々の積み重ねの成果だろう。
コロナ禍で自宅待機を強いられた時期も、ステップワークや体幹など、地味ながら大事なトレーニングを取り入れ、コツコツと続けた。状態の良さに手応えを感じながらリーグ再開を迎えたが、先発はおろかベンチ入りさえままならない。それでも、腐らなかった
そんな本間の姿を見ている人は見ていたのだろう。昨日の「北関東ダービー」でチャンスが巡ってきた。入場する時、本間は一瞬、満面の笑みを浮かべた。それは、ピッチに立てるという喜びからか、楽しみからか。2年4カ月ぶりの公式戦出場ながら、力みがなく、あくまで自然体。心身とも充実していることが、表情から読み取れた。
最初のシュートを確実にストップした時、しびれるような公式戦の雰囲気を思い出したのだろう。その後は体を張り、若いDF陣を落ち着かせるべく声を張り上げ、まさに「守護神」として振る舞った。今季、いまいち乗り切れないチームにとって、起爆剤となりうる存在感だった。
報われた積み重ね
一夜明けて、控えめにメッセージを送った。すると、「いや~緊張しました!でも、少し報われました」と返信があった。報われた―。その言葉は本音だろう。約2年4カ月もの間、腐らずに積み重ねたからこそ、スポットライトが当たる舞台に戻ってこられた。
群馬戦を終え、リーグ戦出場試合数を「575」までのばした。J2のみでこの数字は前人未到。上にいるのはG大阪MF遠藤保仁(641試合)、元名古屋GK楢崎正剛(631試合)、元横浜DF中沢佑二(593試合)の3人のみで、楢崎、中沢は既に引退しており、今の本間なら記録をのばす可能性は十分だ。
水戸を愛し、水戸に愛される男
茨城で育ち、水戸で選手生活の大部分を過ごしてきた。11年東日本大震災で原発事故が起こった時、「東京に逃げろ」と言う一部からのアドバイスがありながら、「俺は家族と水戸で暮らし、水戸でプレーしている。妻の実家も水戸。友人もたくさん住んでいる。水戸を支えてくれる皆さんもいる。水戸から離れる選択肢はなかった」と言い切った。「水戸でJ1」を掲げ、水戸のために心身を捧げてきた。
水戸を愛し、水戸に愛された本間幸司。水戸への思いが原動力となる。「(シーズンオフに)さらにいい報告ができるように頑張ります」。進化途上のレジェンドが、その歩みを止めることは、まだまだないだろう。
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昔、記者時代は機を見て本間の原稿を書いていたなぁ(笑)
https://www.nikkansports.com/m/soccer/news/p-sc-tp0-20120312-916138_m.html
https://www.nikkansports.com/m/soccer/news/p-sc-tp1-20140811-1349000_m.html
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