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Prologue

 まるで俺は何かの物語の中に
 照らし合わせてみる あの愛の話
 目の前に見えてる確かな光
 手を伸ばせるなら
 ポケットに入れて持ち帰りたい

       rykey 「the speech」

 これはうだつのあがらない男の話…
       ⚠︎フィクション⚠︎
「3号解錠」
房の扉が開いた 同囚と拳を合わせる
「出たら本入れるし、面会来るから」
手荷物の還付 財布やiPhoneが娑婆気を増す
迎えなどない かろうじて家がある
まとまった金も雀の涙 21歳のチンピラ

弁護士(国選)着信 
「今出られたんですね、迎えにもいけず申し訳ないです」

弁護士の動きが遅く保釈が3日ほど遅れた
それを少し根に持っているが
外に出れた今そんなことはどうでもいい
たかが1月の留生活だったが
自由が恋しくなるには十分すぎる期間だった

ファミリーマートにて

MEVIUS option purple 8mg
Monster energy
BIG lighter

購入 すぐに煙草に火をつける
久しぶりの煙草にヤニクラ(目眩)を覚える
毎回煙草でこの飛びができるなら…
まぁそんなことは到底無理なのだが
とにかく帰って梵が吸いたい
タクシーはGO 配車10分に中指
天気がいい 太陽が眩しい
留置場は日光が入らない
日の光を浴びないと人間は駄目らしい
とにかく留置場ではイライラする

乗車 饒舌な運ちゃんは苦手だ
仕事ですか?どちらから?
はぁ?俺は無職の上に保釈中なんだよ‼︎
とは言えないので適当にかわす
マンションに着けばとりあえず30はある
どうにかなるだろう あてはない…

利君(としくん)着信

「お久しぶりです 今さっき保釈で出ました」

「お疲れー 晩ぐらいちょっと喋る?
 今どこ住んでるんやっけ?」

「〇〇です ちょっと色々相談したいです」

「分かったー そっちの方行く時連絡する」

何もないただのjunkie とりあえず金が必要
その日暮らしの毎日 だるい憂鬱
普通に暮らしたことなどない
普通を夢見ることはあるがdrugが足枷になる

かほ(女)発信

「俺 さっき出て来た うん家 待ってる」

風呂を沸かす 勢いよく流れる湯
ぼーっと眺める PM15時
足を伸ばせる浴槽は贅沢 留の風呂は四角
これからの人生は〜so fly〜♪鼻歌まじり
rykeyは教科書 俺の気持ちをrapしてくれる
歌はいかに共感できるかにつきると思う
留のノートに「今に見てろ」書き殴って
連れからの便箋には so flyのlyric
なんていかれたnarcism とにかく
つまりはそういうことなんだ

目の前で揺れている
尻に手を伸ばす
声がよく響く
あぁエロいなぁ
素面のsexは なにか冷静で
自分を客観視してしまう

sex後の煙草は美味い 寝転びながら吸うと
尚良い これがswisherなら文句はない
銘柄はMEVIUS…梵が吸いたい…

管理会社 着信

「〇〇様契約違反が確認されたので
 残念ですが退去していただくということで」

shut up fuck‼︎
oh shit‼︎

要するに出て行けと言うことだった
まぁ覚悟はしていたが ホームレスはきつい
職なし金なし家なしは笑えない
もちろん保釈金も足りない分は人から借りた

平田さん 発信

「お疲れ様です さっき出てきました
 なんか仕事ありますか?」

「お前勝手に現場飛ばしたりしたから
 上怒ってんねん ちょっと今ないぞ」

「そうですよね わかりました
 ご迷惑をおかけしました」

利君 着信

「ついたぞ ファミマおる」

「わかりました すぐ行きます」

「白のプリウス」

蛍光のナンプレは治安が悪い気がする
相模ナンバーの8888とか 偏見だろうか

コンコン
「こんばんはー」

「なんやバンカケかい」

「そうです 怪しいもの持ってませんか?」

「持ってへんわ‼︎まぁ乗れや」

利君 二つ上の先輩 長袖を着て
両手でiPhoneをいじってる
GUCCIのショルダー 羽振りが良さそうだ
今の状況を話した 利君が顔を上げ言う

「ほんなら俺んとこ来いよ 
 で俺の仕事手伝って食っていけよ」

「足は?ヤサはウィークリーでいいやん
 これデビットカード使いや」

「仕事?仕事はこれやん」

梵が5gと青のVersaceが3錠
パケの中で光っている

「これやるわ とりあえず来週から
 出ておいでや 足はなんか軽探しとく」

「わかりました よろしくお願いします」

利君と別れた とりあえずやるしかない
背に腹は変えられない 金が必要だ
でも今日は女と×食べてヤろう 決めた
思考がdrugに支配されている
現実逃避に意味はないと知りながら
止められない 深く深く堕ちていく…

AM2:20 Drake 「Peak」
可愛いなぁ 顔を眺めている
目が取れそうと思った 両手で受け止めて
はめてあげよう 目がドロっと落ちる
かなり目にきている 涙が沸々と沸騰する

AM3:00 Omarion 「The Only One」
涙の海に溺れていく 
時間を止めよう止めようとしている
それじゃ駄目なんだ時間を動かさないと
明日何か変われと本気で願い
明日よ来るなと本気で願う
なぁ朝日が昇らなければ 
涙は流れない 
last danceはカラスが鳴く前に

AM4:44 Drake 「Shot for Me」
朝の気配は窓の外
早起きのカラスはchemicalの敵
痛む頭と白飛びする視界
梵でおとして夢の中へ
幸せの前借り 返済はとうに滞ってる
おやすみなさい 親愛なる世界
bedには涙と愛のかたち
一つ一つ拾い集めて 幸せって
今日は目を閉じて 明日目を開くまで
その目に絶望を写したくはない…

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