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おすすめ作品 高松美咲『スキップとローファー』その1

・私が度々言及する作品、『スキップとローファー』。表紙、可愛いね。

・書く、書く、と言って書いてこなかったおすすめ理由を今日は書きます。まずは、作品詳細とキャラクターの紹介から。

『スキップとローファー』とは

 高松美咲先生による漫画。講談社から刊行されており、月刊『アフタヌーン』にて連載されている。単行本は最新9巻が最近刊行された。
 岩倉美津未、15歳。東京の高校に通うために、石川のはしっこから引っ越してきた女の子。地元とは違った雰囲気の環境、人間関係に揉まれ、傷つきながらも、前を向いて今日も歩いていく。みつみちゃんの明るさと朗らかさに周囲も読者も励まされていく、そんな作品。

魅力

①恋愛要素が前面に押し出されない青春群像劇
→あくまで恋愛は作品の1要素であり、ラブコメ特有の展開はない。比重は感情の機微を描き出すことに傾いている気がする。

②心の機微を描く繊細で詳細な描写
→誰しもが持っているけど、何となく口にしない/できないモヤモヤを上手く言語化して描き出している。そのため、読んでいて思わず共感する場面が多い。

③読んでいて前向きになれる作風
→主人公のみつみさんは、どんなに大変で嫌なことがあっても必ず立ち上がる。そして、前に歩き出す。そんな彼女の姿勢から、
「人生、嫌なことや大変なことはたくさんある。それは無くならないし、付いてくる。それでも、前を向いて歩くといいことあるかもしれない。」
と感じる。躓いても、転んでも一人じゃない。みつみさんも一緒に転んで、走ってくれる。だから、今日も頑張ろう。読み終わった後、そんな気分にしてくれるのが本作品。『スキップとローファー』

主要な登場人物

①岩倉美津未(いわくらみつみ)

 本作品の主人公。つばめ西高校の一年生。岩倉家の長女で、下に妹と弟がいる。将来官僚になるために、T大へ入学するという夢がある。それを叶えるために東京に越してきた。
 真面目かつ純粋なため、人間関係で傷つくことや落ち込むことが多い。ただ、そこで相手を悪く言うことはない。何度も立ちあがって、自分の目標のために一歩ずつ進んでいく。

 引用したコマは作品冒頭、入学式に遅刻しそう、という場面。このコマの前にみつみさんは、知らない道、歩き慣れない靴(ローファーは初めて履く?)で何度も転倒してしまう。だが、諦めることなく、ローファーを脱いで学校に向けて駆けだす。転んでも、立ち上がる、前に進む。みつみさんの性格を表したとても良いコマだと思う。

②志摩聡介(しまそうすけ)

 みつみの同級生。優れた外見の持ち主であり、異性から交際を持ちかけられることが多い。ただ、本人は外見をちやほやされることに嫌気が差しており、人間関係については常に一線引いている。
 みつみとは入学式の朝に運命的?な出会いを果たし、友人となった。直向なみつみの姿に影響され、憧れのような感情を抱くようになる。

 引用したコマ、凄く大人びた台詞ですよね。入学式に遅刻していいと思うほど、常にふわふわとした雰囲気を纏っている。しかし、一歩踏み込むと、ドライというかクールな態度を見せるようになる。真意が掴みにくい青年。というのが最初の印象。
 人間関係については一歩引いた態度を取っている。だが、「言うべきだと思ったことは伝える」みつみさんの姿に影響されて、徐々に周囲の人間と打ち解けるようになる。

③江頭ミカ(えがしらみか)

 みつみの同級生。よく気がつき、空気を読むのが上手い。周囲のことをよく見ているからこそ、純粋でも特別綺麗でもない「何者でもない自分」に嫌気が差している。
 普段はウケのいいキャラを演じているが、みつみ達友人の前では素を出している。端から見ると、プライドが高い腹黒キャラのように見えてしまう。けれど、それは周囲から嫌われない自分でいるための努力の裏返し。「特別ではない自分」を自覚しているからこそ、自分磨きを欠かさない努力家。

 本作品で私が一押し、というか一番共感しているキャラ。常に自分の中に俯瞰している自分を持っている。いじめや不得意な運動を努力で克服してきた経験から、「できる人間」「できない人間」「する人間」「される人間」両方の気持ちを理解できる。本作品に登場人物の中でも、一番人の気持ちを考えられる優しさを持った子だと思います。

④村重結月(むらしげゆづき)

 みつみの同級生。帰国子女という経歴とその容姿から、周囲から一目置かれている。恋愛関係のイザコザに巻き込まれることが多く、好意を向けられること自体に抵抗を持っている。ただ、友達の恋バナには興味津々だったりと、恋愛自体が嫌いというわけではない。本人曰く「あたしはけっこーロマンチストなので」。

 志摩君とはまた違った感じで恋愛に対して抵抗を抱えているのが結月さん。先の説明を更に詳しく言うなら、「好意を向けられること自体は嫌ではない。でも、特別扱いされることによる嫌がらせや周囲との信頼関係を築けないことが辛い」といった感じ。中学時代のイザコザで嫌気がマックスになり、高校は地元から離れた場所を受験。入学当初は気を張っていたものの、そのままでも受け入れられているみつみの姿に影響され、素を出すようになる。

 後述する久留米誠さんとのやりとりがめっちゃめちゃ好き~。この話をしたいがために、まず紹介をまとめているまである。この二人のやり取り、凄く良いんですよ。

⑤久留米誠(くるめまこと)

 みつみの同級生。本が好きでチャラい人は苦手。見た目に対してあまり頓着しておらず、どちらかというと諦めているような態度を取っている。ただ、仲の良い結月の容姿に対しては若干の憧れを抱いている。
 口数が多い方ではないが、友人想いであり、友達のために言葉を尽くす場面が印象に残る。志摩や結月といったキラキラとした人間を見た目だけで敬遠していたものの、みつみを通して二人と過ごす内に偏見を解消した。

 誠さん。意図的なのか、他の子に比べると少し中性的な名前になっている気もしますね。常に冷静、というか引用したコマのように眼鏡の奥は見えなくて淡々とした感じ。でも、相手のことを想って話す場面では、眼鏡の奥の真剣な瞳が映る、という感じの表現が見られる登場人物でもある。
 作品の主要人物で唯一眼鏡をかけているのも、クールな雰囲気に拍車をかけている気もする。眼鏡は歪みを生んだり、相手と直接目を合わせないで良かったりと、自分の中に閉じこもっている感じ、も強調される。そうした性格も、自分とは対照的な結月やみつみ、ミカ達と過ごす中で少しずつ変わっていく。応援したくなるキャラ。

最後に

 迎井君、山田君も紹介したい。まだまだ紹介したい登場人物っがいっぱいいる。でも、尺の都合上、泣く泣くこの五人に絞りました。
 みつみちゃんが周囲にいい影響を与えつつ、自らも成長していく姿を見て、私も励まされています。今日はキャラ紹介で力尽きましたが、次は作品の魅力に切り込んでいきたいと思います。

・是非、ご一読を。



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