シンプルに結果を出す「5W1H思考」

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1.  真の目的 “Big-Why”へさかのぼる

Whyをさかのぼることによってより本質的な課題(=考えるべきこと)が設定でき、まさに山の頂上から下界を見下ろすように、思考のすそ野を広げることができます。

真の目的や大きな問いを打ち立てることにより、より大きな成果を生み出すことが可能になります。

「上へさかのぼるとはどういうことか?」

例えば、「痩せたいから(Why)」「毎日朝晩3キロ走る(What)」という直接的な目的と手段は考えていても、「なぜ痩せたいのか?」そう思った本当の理由、つまり痩せることによって真に実現したいこと(Big-Why)を常に明確に意識している人は少ないでしょう。

しかし、より本質的な問題解決や幅広い発想を得るのであれば、ここからもう一段、二段上へとさかのぼる思考は必要です。

例えば、「心身ともに美しくなって、周囲から注目されたい」「生活習慣病を防ぎ、健康を維持したい」というように、はっきり大目的を意識できれば、別の手段や合わせ技も視野に入っていきます。

⭐️「見えにくいもの」こそ、課題解決の大きな鉱脈

例えば、お客様から「OOが欲しい」(What)と言われたら、あるいは上司から「OOという資料を作って欲しい」「OOについて考えて欲しい」(How)と「行為」を命じられたら。

何の疑いもなく盲目的にそれに従うのではなく、「なぜそれが欲しいのか」「それによって何を達成したいのか」「何のためにそれを考えるのか」(Why)、その目的(ゴール)の「状態(あり方)」がビジュアル化できるくらいの明確なイメージを持つこと。

BIg-Whyを日々の業務に落とし込む

「さかのぼり思考の甘さ、「目的」への感度が鈍ってしまう症状は、組織の至る所で見つかります。

① 目的(Why)がそもそも欠落している「目的の亡霊化」
②不十分なさかのぼり思考で真の目的をはき違いている「手段の亡霊化」
③目的が単なる“お題目”になっている「目的の過度抽象化」

① 目的の亡霊化

これは、「何のために」が欠落している状態で、特に歴史のある組織でありがちです。長いこと疑いもなく行われている慣習やルールが存在しつつも、「なのためにやるのか」「なぜ、こうしているのか」は誰も明確に説明できません。

このように、Whyが亡霊化し、形骸化すると、組織はただ「与えられたタスクを処理する場」になってしまいます。

「実態なきWhyの名残のWhat」は、人や組織の思考停止、成長停止を意味するのです。

② 手段の目的化

具体的な業務やその方法の方が目につきやすく、実態があるため、それを行うことが目的化し、真の目的(Big-Why)が置いてきぼりになります。

③目的の過度抽象化

目的を極端に抽象化し、美辞麗句でまとめてしまうことで、目指すゴールのイメージがわかなかったり、人によって色々な解釈ができてしまったりするという弊害が生じます。

「組織の活性化」「グローバル化」「ソリューション・カンパニー」など、いわゆる“ビックワード”だけで目的やゴールを定義してしまうと、視野が広がるどころか、視野がぼんやりしてしまいます。

真の目的設定をし、かつその中で「具体的なポイントや自分の役割、優先順位」なども明らかにしておくことが大切です。

高次の目的に遡れた時に、手段の“意味”は固定観念を超えて自在に変えられ、様々な使途に結びつきます。慣例やルールに囚われない思考の広さと柔軟さが確保できるようになる。

「我々の事業の目的は何か?」(Big-Whyへのさかのぼり)

「それに照らし合わせて何をするべきか?」(What/Howへの降り下がり)

 このシンプルな問いが、思考視野を高める強力な取っ掛かりになるのです。

より良いBig-Whyにたどり着くための「3つの視点」

CHECK① 「やりかた」ではなく「ありかた」になっているか?

コツは「自分が何をするか、何を売るか(Do)」ではなく、「相手(顧客)がどういう状態になっているか、何を実現しているのか(Be)」に視点を転換することです。

・顧客を主語にした表現になっているか?
・何かを実現している状態になっているか?

スターバックスが売っているものは?

スターバックスがであれば、「(自社が)コーヒーを販売している」というのはWHATレベル、「(顧客)が心豊かになる、特別な経験をしている」という顧客のベネフィットの視点で考えるのがBig-Why(ありかた)レベルです。

顧客がものを通じて経験している最高の未来をイメージすると本当のニーズが見えてくるのです。

CHECK② どんな「ありがたみ」があるか?

「ありがたみ」とは、「有り難いこと」つまり、「顧客にとって、競合他社には提供できない、高いレベルの(より嬉しい)体験価値」が享受できることです。

・顧客や関係者にとって重要で、ワクワクする価値にフォーカスしているか?
・ライバルとは一線を画す価値になっているか?

星野リゾートによる「観光」の再定義

全国の経営不振に陥った旅館やリゾート施設の再建などを手がける星野リゾートは「環境事業」を再定義して新しい価値を作りました。

「観光とは何か?人はなぜ観光するのか?」「観光」の本質を自問してたどり着いた答えは、「観光とは、単に、よその地域の見物ではなく、旅行先での異文化体験、非日常体験である」と。 

その地域に根ざした本物の異文化をお客様に体感・体験してもらうことこそが、重要だと考えました。

*新しい価値創造のためには、Whyをさかのぼっていくことにより、顧客が求めている「モノ」を「コト」に変換して発想してみることです。

「『モノ』を提供している『モノ』作りをしている」というレベルから、

「それによってどのような『コト』を達成しているのか」

「どのような『コト作り』をしているのか」

という視点まで引き上げれれば、顧客する気づいていないニーズを見つけられる可能性が高まります。

その為には、自分とは反対側の『顧客』に主語を転換し、顧客の問題解決後の120%ハッピーな“未来の姿”をイメージしてみるコトです。

CHAPTER2 5W1Hで「思考キャンバス」を広げる

発想を広げるテコとしての5W1H

①いかに柔軟な問いに“落とし込むか”

5W1Hによる「いつ、どこで、誰が・・・」という四角四面な問いを、いかに一歩踏み込んだ多種多様な問いへと、“落とし込む”かが1つ目の重要なポイントです。

例えば、Whenは「いつ?」ですが、これを元に「いつから?」「いつまでに?」、さらに「どんなプロセスで?」などの問いに変形することで、時間、期間、頻度、スピード、プロセス、経緯、順番など、目の前の様々な事象に当てはめて考えることができます。

②いかに有効に“組み合わせるか”?

何かの企画であれば、

目的や背景(Why)、テーマ(What)、メンバーや協力者(Who)、スケジュール(When)、実施場所(Where)、段取りや進め方(How)、予算(How much)

あたりを組み合わせると良いでしょう。

また、市場攻略(マーケティング)計画であれば、

マーケティング目標(Why)、実施期間(When)、ターゲット顧客(Who)、製品・サービス(What=Product)、販売チャネル(Where=Place)、広告宣伝手段・媒体(How)、価格(How much=Price)

というように。

企業の方針であれば、

ミッション・ビジョン(Why:何を目指すのか)、ドメイン/事業領域(Where:どの領域で戦うのか)、展開ステップ(When:どんな時間ステップで展開するのか)、市場・競合(Who: 誰を狙い、誰と戦うのか)、戦略(What:何を武器/優位性に戦うか)、戦術(How:具体的にどう戦うのか)

というように、順番も考慮しながら、適宜組み合わせれば良い。

What以外の4Wが面白い発想のカギになる

・ポケットドルツは、電動歯ブラシそのものを新たに開発したわけではない
・TーSITEは本の品揃え自体を変えたわけではない
・ウィキペディアは、百科事典そのものを新発明したわけではない

これらの成功事例は、What(モノ:製品やサービス)そのものを新しく発明・発見したわけではなく、What自体の性能や品質を著しく向上させたわけでもなく、また、「まずはWhat自体の性能や品質の変更・向上ありきで」で手をつけたわけでもないことです。

4Wを軸に、従来のシチュエーションを考え、できるだけそれろ反対方向に要素を振ってみる。その上で、あたらめてWhatに戻る。

Ex) サントリー「オールフリー」の快進撃

キリンフリー            オールフリー            

Who:ビールを飲む(好きな)人   ビールを飲まない人
Where:ビールを飲める場所     これまでビールを飲めない場所
When:夜・仕事帰り・真夏     真昼間・家事最中・春冬
Why:乾杯!騒ぎたい!       ゆったり、のほほんとしたい!

オールフリーは、もちろんWhat(製品)自体も、工夫していますが、それ以上に4Wの転換が勝因です。

もちろん、Whatで違いを出したり、How muchを工夫したりしするのもありですが、その前に大きく4Wで思考キャンバスを広げていくことです。

CHAPTER 3  Why-Howで「説得力あるロジック」を作る

相手を説得する時、つまり相手に「〜をすべきだ(してほしい)」ということを提案したり、主張したりする場合、骨格として押さえるべき大きな論点は、

Why「なぜ〜(すべき)なのか?」
How「どのように〜するのか?」

の2つです。

Why・・・・何の為に 「本質的」目的
What・・・・何を
How・・・・どのように「具体的」手段

この3つの層で自分の思考を整理・構造化する癖をつける。

「WhyーHowのピラミッド」の4つの視点

Why 「なぜ〜なのか?」(納得する上での疑問)

ー①重要性 Whatの視点: なぜ、(他のものではなくて)「これ」なのか?
ー②必要性 Whoの視点:なぜ、(他の人ではなく)「自分」なのか?
ー③優先性 Whenの視点:なぜ、(他の時ではなく)「今」なのか?
ー④実行可能性 Howの視点:どのようにやれば良いのか?

この4つの大枠の問いを押さえる事は、相手の思考や行動のプロセス全体をスキャンする事によりにもつながり、大事な論点の抜け漏れを防ぐことができます。

相手を説得したいと思うなら、相手は提案された際、常に「何か他のものと比較している」ということを意識することが大切です。

説得力のあるハイパフォーマーは、相手が想定するであろう、このような「見えにくい比較対象」を必ず意識して、提案ロジックを組み立てているのです。

一方説得力の弱い人は、自分の主張する提案事項を通そうと、こうした「見えにくい比較対象」を考慮せずに、ただ「“それ”がよいに決まっている」の一点張りで、独りよがりの論理を構築しがちです。

大事なのは、相手が納得し行動する上でのボトルネックを決め打ちしてしまうのではなく、より広く考えを巡らせることです。

また、直接本人から、何が理由なのか、“問題の箇所”を直接ヒアリングなどを特定し、それに応じた提案のメッセージ出しに注力できれば、納得して行動を起こしてくれる確率は高まるはずです。

CHAPTER4 問題解決3W1Hで「筋の良い打ち手」に絞り込む

3W1Hのステップで「決め打ち」「ムダ打ち」をなくす

“決め打ち”とは、たまたま目についた表面的な事象に目を奪われたり、ステレオタイプなものの見方から脱却できず、根拠なく安易で慣れた結論に飛びつかないようにするコトです。

“ムダ打ち”とは、手当たり次第に情報を収集・分析したり、目についたところ全てを問題視したり、総花的に対策を打とうとするコトです。

ハイパフォーマーは、いきなり細部の原因や打ち手に飛びついたり、やみくもに手を広げたりせず、まずは「どんな枠組みやプロセスでその問題に取り組むか」考えます。

具体的には、

①「What (何を解決するのか)」 問題の設定
②「Where(どこが悪いのか)」 問題箇所の特定

上流 ー見えやすくて、扱いやすいー「結果」

③「Why(なぜ起こるのか」  問題原因の究明
④「How(どうするのか)」   解決策の立案

下流 ー見えにくくて、扱いにくいー「原因」

という順番で、真の問題の特定から解決につなげていきます。

いきなり「どうすれば良いか」=「How(打ち手)」に飛びついてしまうことは禁物なのはわかりますね。

こうした思いつきや経験・勘に基づく“決め打ち”の対策案では、それがなぜ有効なのかが他の人には理解できませんし、やみくもに実施したとしても効果がでないばかりか、お金の無駄使いに終わってしまいます。

また、「なぜ〜なのか?」=「“そのまま”のWhy(原因や理由)」を考えてしまった方も多いのではないでしょうか?

この“大粒”の問いのままでは、実に多くの原因の可能性が考えられてしまいます。

「なぜ悪いのか?」から「どこが悪いのか?」に切り替えるべきなのです。

主原因が特定出来ないまま、思いつきベースの対策を片っ端から打ってしまったり、あるいは、これまで慣習的に行ってきた打ち手をいたずらに繰り返してしまったりするということになりがちです。まさに“ムダ打ち”です。

⭐️考える「順番」を取り違えてはいけない

問題解決や分析の鉄則は、目に見えている「結果」からさかのぼって考えていくことです。

先を急ぐあまり、見えにくくて扱いにくいHowやWhatの世界からいきなり手をつけ、袋小路に入り込んでしまいます。これらは、複数の要素や原因が複雑に絡み合い、組み合わされてWhereやWhatという結果を生み出しています。

一方で、WhatやWhereは現在の打ち手(How)の結果として、表に現れている状態で、売上・シェア・利益・顧客満足度といった情報やデータなど、見た目や数字で捉えやすい状態です。

筋の良い問題解決を行う人は、見えやすいWhatやWhereの要素から出発して、原因側の方向に向かって分析する手順を踏んでいきます。

3W1Hの「What」何を解決するのか?

「問題」とは、どう定義すべきなのか?

一般的に、問題解決の場面では、「あるべき姿(目標)」と「現状」のギャップを「問題」と言います。

つまり、問題解決に取り掛かるにあたって、まずは「目標」と「現状」を具体的に押さえた上で、解決すべき「問題」を明確にすることが必要です。

「目標」が明確になっていないと、自分がたまたま目についた現象を、安易に「問題」として捉えがちになります。

このように、「問題の設定」が不十分だと、次のステップからの分析もぼやけてしまい全てがかぶれてしまうのです。

When    Where    Who    What     Why    How much      How

例えば、「2020年には(When)、新興市場で(Where)、我がチームが(Who)、X製品の売上を(What)、100億円(Howmuch)、達成する(How)」

これは、また何のためか、何を実現したいからか、どんな理念に基づくのかを明確にします。

そして、「How」は「どうする」ではなくて、「どうなっている」という表現で書く。

また、「Who(誰が)」は、「自社、自分が〜」ではなく、「顧客、お客様が〜」と最終目標である相手の状態から発想する方が現在の制約や思い込みに捉われない良いアイデアが出やすくなります。

さらに、「Why(何の為に)」は、「どんな意味があるのか」「それによってどう上位目的につながるのか」、BIg-Whyを意識する。

3W1Hの「Where」どこに問題があるのか?

前述したように、いきなり「この原因は何か?」という「Why:問題原因の究明」モードに突入してしまうのではなく、まずは見やすく、扱いやすい「Where:問題箇所の特定」をしっかり行うことが重要でした。

Whyに行きたい気持ちをグッとこらえて、Whereのステップにより長く滞在する心がけが大切です。

大きい粒のまま、漠然と問題を捉えていては解決の糸口が見えてきません。仮説を持ち、いくつかの切れ口を試しながら、問題箇所が集中するような、“切れ味の良い切り口”をできるだけ探し、分析を進める上での優先順位をつけることが大切です。

大きな問題全体をより具体的・詳細な単位に分解した上で、データなどで検証し、“患部”を的確に見つけ出すことが必要になってきます。

大きな問題を分解して問題箇所を見つけるというのは、いわば“切り口”の勝負です。

いくつかの分解の切り口をまずは考え、「問題箇所」ができるだけ集中するような“切れ味の良い切り口”のあたりをつけます。

5W1Hの枠組みをテコにして思考を広げていくと、これまで気づかなかったような切り口や視点に気づくことができます。

「この切り口で切るとどんなことが見えてくるのか」「これこれが問題だとすると、この切り口で分析してみると、“違い”が検証できるのではないか」というように、常に仮説を持ちながら、問題箇所の当たりをつけることです。

自分がこれまでWhatの「商品カテゴリー別」や「商品の価格帯別」しかみていなかったら、Whoの「新規/既存顧客別」や「顧客の注文頻度別」、Whenの「イベント日別」「季節別」、Whereの「発想エリア別」など、違うパターンでの分析にチャレンジしてみる。

これまで足し算の切り口でしか検証したことがなければ、掛け算の切り口で分析してみるなど、視点を切り替える姿勢が大切です。

問題を絞り込む時の2つの注意点

① モレ・ダブりなく分析しているか?
分解図などを活用して、モレやダブりがないように整理していきましょう
②絞り込む基準は明確か?
問題箇所を絞り込む際は、“何となく”ではなくて、そのための判断基準が明確になっているべきです。
その為には、「何と比較しているのか」「どのような事実を持って特定しているのか」という基準が明らかでなくてはなりません。

また、このような考え方を持つことであらゆる問題解決の場面で役立ちます。

例えば、「家の中が散らかっている」「会議がダラダラと長い」などの問題に対して、そのままの「なぜそうなっているのか?」という大きな問いをいきなり投げかけてみても中々解決には至りません。

その問いの前に、「いつのどんな会議がダラダラしているのか」「家の中のどの部屋・部分が特に散乱しているのか?」を問うべきなのです。

繰り返しになりますが、問題に取り組む際には、「こういう結果に至った原因は何か?」をいきなりひもとこうとしても上手くいきません。

Whyに進む前に、その手前のWhere(どこが問題なのか?)のステップでできるだけ汗をかいておくことが、筋の良い問題解決に繋がります。