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ずっと憶えていたいこと

旅先でなんとなく買ったお菓子が美味しかったとか、自分が外に出るときだけ雨がやんでくれたとか、そういう些細だけどとても嬉しかったことをずっと憶えていたい。

木でできたしおりを持っている。木材の名前は忘れてしまったけど、しおりはその樹の葉の形を模していると聞いたので、いつか道を歩いているときにその樹を見つけるかもしれない。そのとき私は、その些細なことにとても喜ぶのだろうなと思う。

ウォルナットクリークという土地でコーヒーを飲んでいて、その店に並ぶ椅子がすべてウォルナット材でできていることに気づいたとき、だれかにそのことを伝えたくてたまらないほど嬉しかった。我ながらこどものようだなと思う。でもそんな喜びもついさっき思い出すまで、その感情ごとすっかり忘れていた。

木漏れ日がコーヒーカップに注がれていく時間とか、お気に入りの文庫本だけを並べた本棚とか、猫のくしゃみの瞬間とか。そういう些細だけどとても嬉しいことを、自分がそれらを好きだったことを、最後までずっと憶えていたい。

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