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59回目がやってきた~~!!

誕生日である。

59回目の。

中途半端である。

60回めなら、還暦という名前がある。
現に、今年還暦を迎えた夫は、娘手作りの赤いチャンチャンコと帽子を身に着け、ギャン泣きする孫と写真を撮られていた。
孫は、思いっきり両手足をひろげて、恐怖を訴えていた。
そんな孫のどこを支えていいのやら、途方に暮れる真っ赤な夫。
めちゃくちゃ心に残るショットである。

と、60回めなら、そんなこともできる。

でも、59回めって、何もなく、しかも、あと一年で還暦になるという、カウントダウンのイメージがついてまわる。

「えっ?59歳?来年は還暦やなあ。」

という言葉を、もうすでに何回も聞いている。

いやいや、ちがう。
まだ、59歳やから。
還暦ちゃうから。
まだ1年あるから。
いやほんま。

そんな59回目の誕生日のスタートは、まずは、朝6時過ぎの朝市から。
三千院で有名な京都市大原。
そこの朝市は、6時から始まる。
そんな朝早くから、誰が行くんやろうと思いつつ出かけていくと、駐車場係の人を配置せなあかんほどに、人が集まってきていた。
しかも、パンやさんの前には、長蛇の列。

並ぶのは嫌いだけど、のんびりした雰囲気のこの朝市だと、並んでみる気になる。

並びながら、他のお店の野菜類を、離れたところから吟味する。

通り過ぎる人々の、会話も参考にする。

「あそこのお野菜は、いいのよ~~~。」

そんな小耳情報が、ありがたい。

しかし、行列は、なかなか進まない。

朝ご飯もまだだから、お腹がすいてくる。

そこに、ほんのりだしのいい匂いが襲ってきた。

なになになに?

急いで、目だけで探してみると、屋外に出されたテーブル(というか、ただの台というか)に、美味しそうなうどんがのっているではないか。

そして、うどんのそばには、それをすする人々も。(当たり前)

そのだしの香り(いや、やっぱり匂いか?)が、やさしい感じでたまらない。
うどんを食べたかったわけではないが、食べたくなってきた。
こんなに朝早くから、髪の毛もメイクもばっちり決めた、お上品なおばさまが、ダイナミックにうどんをすする姿にもそそられる。

そして、すぐ横を通り過ぎた人が持っていた、紙コップの中身はなんやろ?
コーヒー?
みそしる?
いや、そんなあったかそうには見えへんかったけど。
後から、つきとめなあかんわ。

並びながらも、まあまあ忙しい。

そんなことをするうちに、あと3人くらいで、パンを買う順番となる。
そうなると、今度は、みなさんがどんなパンを買うのかを、チェックし始めなくては。
きっと、人気商品が美味しいはず。
う~ん。みなさん、あんこホイップコッペパンをもれなく買っているなあ。
食パンも、まあまあ買ってる。
いやあ。どうしよう。

結局、パンは、吟味することなく、ただの勢いで買ってしまう。
セール期間に洋服を買う時の、それと同じ。

後は、野菜を買って、紙コップの中身の確認やな。

と、その前に、お豆腐屋さんに出会ってしまう。
手揚げのおあげさんやって~~

こんがりきつね色で、ふわふわしていて、でも歯ごたえもありそう。
一枚250円なり。
お店のおじさんは、めちゃくちゃ不愛想。
まだ、ビニール袋に入り切っていないままのおあげさんを、押し付けるように渡してくる。
いいねん、いいねん。朝市やから。
それに、これは、絶対に美味しいはずやから。

その隣には、ワイン屋さん。
朝市やから、文字通り、朝っぱらからワイン。
どうやら、紙コップの元は、ここみたい。
しかも、全種類試飲できますよ~なんて、大盤振る舞い。
え~~。
アルコールなんて、久しく飲んでいないけど、心が、身体が揺れる。

でも、メインがこの後に控えているので、がまんがまん。

ようやく、朝市を後にする。

それからは、プレッツェルがとっても美味しいドイツパンのお店に。
今日のメイン。
ドイツ人の夫と、日本人の妻が営むその店。
二人のドイツ語でのやりとりを聞きながら、パンを選ぶ。

ベッカライペルケオ

1回では、絶対に覚えられない店名。
私は、プレッツェルのお店と呼んでいる。

だいたいが、歯ごたえのあるものが好きで、フランスパンやトーストの耳、
ぎっしりめのベーグル、ばりばり音をたてながら食べる塩せんべい派な私。
(その昔、ぬれせんべいにはまっていた過去は、消し去る。)

そんな私に、ここのプレッツェルは、もう最高の噛み応えである。

嚙む力が強すぎやねんと歯医者で言われた私が、何の躊躇もなく噛みつき、嚙み切れるのが、ここのプレッツェル。

味も、もちろん、噛みしめるたびに幸せにさせてくれる。
一噛みで、何度も美味しいのである。

だが、今日は、プレッツェルではなく、サンドイッチと珈琲をいただくと決めて、店に足を踏み入れる。

サンドイッチは、美味しいパンに、美味しいサラミやソーセージがはさまれていて、ややお値段ははる。

商品価値からすると、まさしく妥当な値段設定だが、コンビニなどでパンを買うことを思うと、ちょっとためらいがある。

でも、でもね、59回めやで。

ケーキを食べるわけでもなく、高級ワインを開けるわけでもなく、ステーキや寿司を頬張るわけでもなく、サンドイッチやで。

コーヒーは、ダルマイヤーコーヒーである。

歯ごたえも味もしっかりめのサンドイッチには、ぴったり。
がぶがぶいけそうである。

メニュー表の中から、サンドイッチを選び出す。

もちろん、選ぶ基準は、中身のハムやサラミではなく、パンの種類である。

迷わず、一番固そうなパンを使ったものを選ぶ。
中身は、サラミとチーズときゅうり。

うまい。
パンがしっかりパン。
バランス絶妙。
歯ごたえストレスフリー。
コーヒーとパンがマリアージュ。
美味しすぎる。


お客さんは、場所がらか、異国の人も訪れ、常連さんも次々と。

そんな人々と、勝手に、美味しさを共有している気分になる。

みなさんも、今から、この美味しいを味わうんやなあ。
幸せやなあ。
元気がでるよなあ。
なんならここで、私と一緒に食べてもいいよ。

勝手に話しかける。心の中で。

美味しいものって、やっぱり幸せの元。

それを、堪能できた59回目は、ゴージャスさもサプライズ感も何にもないけど、なんだか幸せな時間を過ごすことができたような。


おめでとう、私。


写真は、お土産に買ったベリーナランドブロート。
酸味が一番強いものをと、選んだもの。
あまりの美味しさに、めったに作らないシチューを作ってしまった。




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