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8:お酒を飲んだら悲しくなった

僕はわりとお酒を飲むほうで
自分ではそこそこ強いと思っています。
最近は歳のせいか翌日にお腹が痛くなるように
なってしまいました。
あとは頭も痛くなることが増えました。
それでもあの何とも言えない浮遊感が
好きなので、飲んでしまいます。
もしかしたらドMなのかもしれません。

子供の頃、母はよく僕ら姉弟を連れて
カラオケやスナックといった場所に行きました。
これだけ聞くと
教育方針を疑われてしまいそうですが
色々連れて行ってもらって、
母や先生以外の大人を知る機会を
子供の頃から得られたことは
僕にとっては面白かったし、
学びも多かったと思います。
僕らはお酒を飲めなかったから
オレンジジュースとかだったけれど、
大人になった気分でした。
だから全然悪い事だとは思いません。
その代わりに年相応の子供らしさ
みたいなものは多少なかったけれど。

そんな母はお酒は強い方だったけれど
ある日、いつもよりワインをハイペースで空けて
かなり酔っぱらってしまったことがありました。
最寄り駅で電車を降りたところで転んで
頭を打ってしまいました。
駅員室から車いすを借りてしばらく休ませてもらいました。

この時ほど早く大人になりたいと思ったことは
なかったと思います。
幼い弟の手を引いて、駅員さんが母を運ぶのを
見ているしかありませんでした。
母にもきっと色々あるのだろうなぁ
と思ってはいましたが
この日はきっと悲しいことがあって
お酒に頼ることしかできなかったのだろう
と思いました。
これはお酒を飲めるようになって
わかったことです。

あれから十数年経った今でもお酒を飲むと
あの時の驚きや恐怖といった、
寂しい気持ちを思い出します。
母がこの時のことを覚えているかはわかりません。
僕からも話したりはしません。
ただそういう悲しい思い出はたくさんあって
その悲しい思い出の中に、母の孤独を
見ることができます。
お酒は基本ひとりで飲みます。
そうまでして飲んで、悲しくなるなんて
やっぱりドMなのかもしれません。