サークル終わりの焼きサバ定食



大学生の頃。
サークル終わりに友人と、近所の定食屋に時々行っていた。
その日私は焼きサバ定食を頼んだ。
身と骨を綺麗にほぐしていくその作業が好きで、一口また一口と黙々と食べ進める。
気づいたらお皿には骨だけが綺麗に残された。
しょうが焼き定食を頼んだ友人が、食べ終わるのを待ちながら、その骨を観察してみる。
すると綺麗な骨並びの中に、1本変形したものを見つけた。
他のものと違って不自然に曲がり、小さな突起もある。
その1本を箸で折り、持ち上げて見てみた。

「なにしてんの?」
「え、こいつ骨折してるなと思って。」
「骨折?」
「ほらここ。変形してるでしょ。」
「それって骨折なの?」

骨折した時、放っておくと変形したまま骨がくっついてしまう場合があると聞いた事がある。

“あれじゃん。あれの実物じゃん。”

ほんとにこうなるんだ、と少し感動しつつ、魚でもそれって有り得るの?とか、魚でもやっぱり骨折したら痛いよねとか、色々と思考が飛んでゆく。
その思考を遮るように友人が

「あんたはほんとに、なんでも楽しめるんだね。」

と笑いながら一言。
私はその一言がなんだか少し嬉しかった。
私の発した、いわばどうでもいい何気ない一言を拾って、新たな長所を発見してくれたみたいだったから。
この友人はいつも、自分では気づけない長所を見つけてくれる。
私もそんな人でありたいと思う。

「私も少し変形した指があんのよ。あれ突き指だと思ってたけど実は骨折だったんかね。」
「それは知らん笑」

丁度友人も食べ終わり、お冷を飲んで店を出た。
後日調べてみたら荒波を生きる天然のタイは骨折しまくりで、骨折と治癒を繰り返すことにより、骨に大きなコブのようなものができるのだという。
タイか…。
サバはどうなんだろうと思ったけど結局その答えは見つからなかった。



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