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#映画評

この戦闘シーンを見よ!格好いい上に、コメディシーンとしても秀逸だ!!|映画「イップ・マン 序章」に学ぶ

本記事では、映画「イップ・マン 序章」を取り上げます。 本記事のテーマ👊 映画「イップ・マン 序章」の主人公は、中国武術の達人・葉問。 物語前半、その葉問が金(チンピラ武術家)と戦うシーンがあるのだが……これがアホみたいに面白い!真面目で格好いい戦闘シーンだというのに、同時にコメディシーンとして見ても秀逸なのだ。 なぜこれほどまでに面白いのか明らかにすべく、本記事では3つのポイントに注目する。 前提:戦闘に至るまでの流れ まずは、戦闘に至るまでの流れを確認しよう。

これはカンフー映画で、鑑賞者が見たいのはカンフーで戦うシーンなのだから、それ以外のシーンはテンポよく片付ける|映画「イップ・マン 序章」に学ぶ

本記事では、映画「イップ・マン 序章」を取り上げます。 ◆「これが恥だ!わかったか!!」のシーン映画「イップ・マン 序章」には、こんなシーンがある。 ▶シーン1 葉問と廖(2人とも中国武術の達人)が手合わせし、葉問が勝利した。 ▶シーン2 2人は、「今日の戦いについては口外しない」と約束した。 廖のメンツを保つためだ。 ▶シーン3 ところが、2人の戦いを偶然目撃した者がいた。 沙である。 彼は興奮して、「すごい戦いだった!葉問さんは強かった!」と言いふらし

「武術の町」の魅力|映画「イップ・マン 序章」に学ぶ

本記事では、映画「イップ・マン 序章」を取り上げます。 ◆「武術の町」とは何か?映画「イップ・マン 序章」の舞台は、中国の「仏山」という町だ。 これがなかなかどうして面白い町なので詳しくご紹介したい。 ・仏山は、中国武術のメッカ。「武館街」と呼ばれるエリアには、所狭しと武館(道場)が立ち並んでいる。 ・各武館に武館主(師範)がおり、異なる武術・流派を教えている。つまり、武館同士はライバル関係にある(これについては後ほど詳しく触れる)。 ・【仏山は多数の武館が立ち並ぶ

なんと人間臭いキャラなのか!!|「女必殺拳」に学ぶテクニック(2)

※引き続き、「女必殺拳」を分析します。本記事の前に、以下の記事をご覧になることをお勧めします。 なんと人間臭いキャラなのか! <1> 本記事では、敵キャラの1人・犬走一直(いぬばしら・いっちょく)に注目します。 こちらの記事で詳述した通り、「女必殺拳」には珍奇でユニークな敵キャラが多数登場するのですが……その中でもずば抜けて魅力的なのがこの犬走です。 <2> 犬走の魅力は、ズバリ<人間臭さ>。 他の誰よりも、とにかく人間臭いのです。 人間臭いというのはつまり…

珍奇な武術家、続々登場!!|「女必殺拳」に学ぶテクニック(1)

※引き続き、「女必殺拳」を分析します。本記事の前に、以下の記事をご覧になることをお勧めします。 珍奇な武術家たちに注目しよう! 本作はアクション映画です。 主要キャラはほとんど全員が武術の達人であり、彼らの繰り広げる激戦こそが本作の見どころです。 ただし、一口に<武術の達人>と言っても中には奇妙な連中も交じっていまして……というかですね、本作に登場する武術家の多くが珍奇なイロモノなんですよ! 本記事では、この愉快な武術家たちに注目します。 【珍奇な敵キャラ①】スピ

戦う妹!兄を救うために!!|「女必殺拳」を三幕構成で分析する

▶ 「三幕構成」を詳しく知りたい方は、こちらの記事をどうぞ🎥 → シド・フィールドの「三幕構成」をバッチリ説明するぜ!! 分析対象 三幕構成 ポイント① 本話は、【敵に捕らわれた兄を救うべく、妹が敵地に乗り込み奮戦する物語】です。 なお本作はアクション作品であり、 ・主人公サイド:主人公を含む全員が少林寺拳法の達人 ・敵サイド:麻薬組織。武術の達人を多数雇っている。また、幹部連中も一通り武術の心得がある ……という具合。 ブルース・リーやジャッキー・チェンが

<呆然自失の女性キャラを西洋甲冑の中に閉じこめる>という趣味の悪さがすごい!!|「華麗なる追跡」に学ぶテクニック(2)

※引き続き、「華麗なる追跡」を分析します。本記事の前に、以下の記事をご覧になることをお勧めします。 変装する女! <1> 本話の主人公・忍は、正義の秘密機関に所属しています。 そして、彼女は捜査のためにたびたび敵組織に潜入するのですが……その際、様々な変装を行います。 この【主人公が変装して正義を執行する】というのが、本話の特徴の1つです。 <2> ところで【変装する正義の味方】といえば、そう!わが国には多羅尾伴内という著名なキャラがいますよね。 そして……ど

この濃すぎる敵キャラを見よ!!|「華麗なる追跡」に学ぶテクニック(1)

※引き続き、「華麗なる追跡」を分析します。本記事の前に、以下の記事をご覧になることをお勧めします。 皆、濃すぎる! 本作に登場するキャラは総じて……濃い! 濃すぎる! 何しろ主人公の忍からして、 ・表の顔①:若い女性(おそらく20歳頃) ・表の顔②:世界を股にかけて活躍するスーパーカーのレーサー ・裏の顔①:正義の秘密機関の諜報員 ・裏の顔②:父の無念を晴らさんとする復讐者 ・裏の顔③:格闘技(空手?カンフー?)の達人 ・裏の顔④:変装の名人 ……という

父の仇を討つべく、娘が奮闘!!|「華麗なる追跡」を三幕構成で分析する

▶ 「三幕構成」を詳しく知りたい方は、こちらの記事をどうぞ🎥 → シド・フィールドの「三幕構成」をバッチリ説明するぜ!! 分析対象 三幕構成 ポイント① 本作は、【若き女性が父の仇を討つべく奮闘する物語】です。 なお、仇は仲間をも平然と殺したり、ヘロインを仕入れそれを売り払ったり……完全なる悪として描かれています。一方、主人公サイドは一点の曇りもない善。 つまり本作は、明快な【勧善懲悪もの】と言えるでしょう。 ポイント② 続いて、本話の構成上の要点を整理しまし

私たちは、「そこに友がいる。私は孤独ではない」とわかるだけで生きていける!!|「女囚701号 さそり」に学ぶテクニック(5)

※引き続き、「女囚701号 さそり」を分析します。本記事の前に、以下の記事をご覧になることをお勧めします。 主人公が登場してから「主人公のキャラ紹介」を始めるのでは、遅すぎる! <1> 「女囚701号 さそり」には、ユニークなシーンや演出がたくさんあります。 本記事では、その中でも特に私が好きなものをいくつかご紹介しましょう。 <2> まずご紹介するのは、「ナミが初登場する直前のシーン」です(第1幕)。 ・Step 1:刑務所にサイレンが響き渡る ・Step

<ややこしい設定>だって、描写だけで鑑賞者に伝えられる!!|「女囚701号 さそり」に学ぶテクニック(4)

※引き続き、「女囚701号 さそり」を分析します。本記事の前に、以下の記事をご覧になることをお勧めします。 刑務所内には序列ができている 「女囚701号 さそり」の舞台はとある刑務所。 そして、その刑務所内には以下の序列ができています。 上から刑務所長、看守、そして囚人(班長)、囚人(一般)です。 なお、班長というのは…… ・特徴1:看守に媚びへつらうことで特権を与えられた、ごく一部の囚人のこと。 ・特徴2:彼らはその特権を笠に着て一般囚人の上に君臨。一般囚人に

たとえガラス片が、目に突き刺さろうとも!|「女囚701号 さそり」に学ぶテクニック(3)

※引き続き、「女囚701号 さそり」を分析します。本記事の前に、以下の記事をご覧になることをお勧めします。 たとえガラス片が、目に突き刺さろうとも! <1> 「女囚701号 さそり」には、ユニークなシーンや演出がたくさんあります。 本記事では、その中でも特に私が好きなものをいくつかご紹介しましょう。 <2> まず取り上げるのは、「刑務所長の目にガラス片が突き刺さる」というショッキングなシーンです(第2幕前半)。 経緯をざっくりまとめると…… ▶ 進藤の指摘

ナミの怒りは、どこに向けられているのか?|「女囚701号 さそり」に学ぶテクニック(2)

※引き続き、「女囚701号 さそり」を分析します。本記事の前に、以下の記事をご覧になることをお勧めします。 ナミは怒っている! 前記事で詳しくご説明した通り、「女囚701号 さそり」は【レイプされた女性(ナミ)が復讐を果たす物語】です。 一言で言えば【復讐譚】。 つまり、ナミのモチベーション(= 行動の背景にある感情)は、自分を裏切った男やレイプした男への<怒り>です。 彼女は<怒り>ゆえに、地獄のような刑務所生活にへこたれず、そして隙を見て脱獄し、男たちを殺して回

<レイプ・復讐もの>という映画のジャンルについて!!|「女囚701号 さそり」に学ぶテクニック(1)

※引き続き、「女囚701号 さそり」を分析します。本記事の前に、以下の記事をご覧になることをお勧めします。 レイプ・復讐もの 「女囚701号 さそり」は、レイプされた女性(ナミ)が復讐を果たす物語。 映画の世界には<レイプ・復讐もの(Rape and Revenge Film)>というジャンルがあるのですが、まさにこれに該当します。 観客のお下劣な好奇心に応えるセンセーショナルな映画! ところで……<レイプ・復讐もの>は、「エクスプロイテーション映画(Exploit