見出し画像

水滸噺 21年11月,12月【年末間抜けスペシャル】

あらすじ
林冲張夫人 変わらず馬鹿
黒騎兵面々 楊令に翻弄され
林公コンビ 変わらず阿呆
二竜山曹正 またソーセージ

すいこばなし 注意書き
北方謙三先生水滸伝何でもありな二次創作です。
・水滸伝の原典ネタは日常茶飯事、スマホにPCなど電子機器も飛び交うし、あの人が梁山泊で元気に生きていたりする、異世界からお届けします。
・原作未読の方でも楽しめるように、ネタバレを極力避けていますが、薄々感づいてしまう個所が垣間見えますので、その点はご注意ください。
楊令伝編で出てくる好漢は、すなわち水滸伝を生き残った者ということですので、未読の方はその点ご留意いただいた上でお読みください。
・作者のtwitterにて連載しています。
・今月号、バックナンバーのご意見ご感想、リクエスト等々、こちらまで
 お寄せいただけると、とても嬉しいです!いつも助かっています!
・原作に興味を持たれるきっかけになったらこれ以上の喜びはありません。



それでは行ってみましょう!

梁山泊

梁山泊…年末にむけて調練とオフの日の区分けをしたいが中々そうはいかない。

致死軍&飛竜軍

致死軍&飛竜軍…王英結婚の報が流れた時の衝撃ときたら…

人物
公孫勝(こうそんしょう)…致死軍に王英という兵がいたら処断しようと思っていた。
劉唐(りゅうとう)…小首をかしげながら王英の扶養控除の書類を申請した。
楊雄(ようゆう)…俺も身体はれば嫁ができたのかな。
孔亮(こうりょう)…青州のあの人のことをほんの少し思い出して悶々。
樊瑞(はんずい)…筋トレが恋人。
鄧飛(とうひ)…鎖鎌が恋人。
王英(おうえい)…結婚したは良いものの?
楊林(ようりん)…王英の話を聞くたびにイライラする。

1.
王英「…」
扈三娘「…」
王「…」
扈「…」
王(なあ、扈三娘の一言すら言えない)
扈「…」
王(俺は扈三娘の夫になって、何がしたかったのだろうか)
扈「…」
王(ここは一つ、意を決して…)
扈「それでは」
王「…どこへ?」
扈「もう寝るのですが」
王「…分かった」
扈「…」
王(何もできなかった…)

王(扈三娘は、これでよいのだろうか?)
扈「…」
王(もっと人と話したり、日常を共有したりしたくならないのだろうか?)
扈「…」
王(いかん俺の中で堂々巡りしている)
扈「…」
王(俺も寝なければ)
扈「…」
王「!?」
扈「…」
王(寝相か…)
扈「…」
王(扈三娘が俺の前でここまで隙だらけになるとは)

王「もうそれだけでいいと思ってしまったのだ」
楊林「俺にする話か?」

王英…悶々としたそれは、全て白寿のもとへしたたかに。
扈三娘…家はチェックポイントくらいにしか思ってない。

楊林…王英の結婚生活に対する苦言を呈する相手はもっぱら劉唐。

騎馬隊&致死軍

騎馬隊&致死軍…相変わらず罵り合いが止まない。

2.
公孫勝「林冲を罵る語彙はないか」
劉唐「それは」
公「楊雄」
楊雄「…林冲殿の出べそ」
公「孔亮」
孔亮「林冲殿のゴリラ」
公「樊瑞」
樊瑞「林冲殿のバカ」
公「物足りん」
劉「私も、林冲殿の間抜けくらいしか思いつきません」
公「お前たち。日頃から林冲を罵しることを命ずる」
劉「はあ…」

林冲「致死軍の木偶が不穏なことを?」
馬麟「夜な夜な林冲殿を罵っていると聞いた」
林「許せん!」

林「ウスノロ!」
公「なんだバカ」
林「バカとはなんだ!」
公「バカではないか」
林「俺はバカではない!」
公「じゃあなんだ」
林「豹子頭林冲だ!」
公「…バカが」
林「首を捻じ切ってやる!」

公「貴様ら、調練の成果を見せろ」
劉「林冲殿の間抜け!」
林「!」
楊「林冲殿の出べそ!」
林「楊雄!」
孔「林冲殿のゴリラ!」
林「許さんぞ!」
樊「林冲殿のバカ!」
林「おのれ!公孫勝のような口を!」
公「撤収!」
劉・楊・孔・樊「!」
林「逃がさん!」

馬「どう思う?」
扈三娘「何も」

林冲…怒り心頭。

公孫勝…高笑いして逃げた。
劉唐…手妻で翻弄して逃げた。
楊雄…闇に隠れて逃げた。
孔亮…兵に偽装して逃げた。
樊瑞…崖を登って逃げた。

馬麟…やれやれ。
扈三娘…子どもですね。

3.
林冲「…」

索超「林冲殿がどこまで間抜けか確かめる?」
馬麟「どうやって?」
公孫勝「劉唐」
劉唐「!」

林「む!銭が落ちている!」

索「拾うか?」
馬「頓着しなさそうだが」

林「!」
劉「!」
林「銭が逃げた!」

索「そういう」
公「…」

林「待て!」
劉「!」
林「この!」
劉「!」

林「この豹子頭から逃げる銭とは」

索「匠だな劉唐」
馬「指一本の距離で逃れている」

林「!!」
劉「!?」

索「紐が!」
林「なんだ貴様ら!」
公「撤収!」
劉「!」
索「そんな!」
馬「鉄笛を…」
林「裏切り者め!」
索「かくなる上は!」
馬「覚悟を決めろ」
林「俺とやるつもりか!貴様ら」

索「行間で打ちのめされた」
馬「鉄笛も吹けん」

林「おのれウスノロ!」

公「劉唐」
劉「!」

林「もう銭の手にはのらん!」

劉「!」

林「銭が行く手を阻むだと!」

公「やはり馬鹿だ」
劉「早く撤収してください」

林「これでもくらえ!」

公「!」
赤(銭が頭に直撃した…)
公「…許さぬ」

林冲…公孫勝と一昼夜に及ぶ死闘を繰り広げた。
公孫勝…林冲と死域に入った。

索超…とても俺たちでは敵わん。
馬麟…なだめる鉄笛も効かない。
劉唐…任務があるんだけどな。

遊撃隊

遊撃隊…健全な身体には健全な魂が宿るとはいうものの…

人物
史進(ししん)…健全な身体すぎて、身体を見せびらかすのがネック。
杜興(とこう)…歳の割には健全な身体だが、遊撃隊比だとしなびてる。
陳達(ちんたつ)…健全な跳躍力。
施恩(しおん)…替天行道に関するそれは異常。
穆春(ぼくしゅん)…健全な兄弟愛とは程遠い生活。
鄒淵(すうえん)…健全な猟師だったのだが…

4.
杜興「…」
史進「どうした老いぼれ。飯が進んでいないではないか」
杜「…硬くて噛みきれんのだ」
陳達「総入れ歯の出番だな!」
鄒淵「差し歯で充分だろ」
杜「わしにとっては死活問題だ」
史「俺たちの強靭な歯と歯茎を見よ!」
陳「!」
鄒「!」
杜「…揃いも揃って無駄に歯が白いの腹立たしい」

史「仕方ない。老いぼれに遊撃隊流口内ケアのテクニックを伝授してやろう」
杜「…どうするのだ」
陳「使うのはこの枝だ!」
杜「枝?」
鄒「北の女真の民は枝を使って磨くのだ」
杜「血まみれにならんか?」
史「初めのうちはな」
陳「吐血したのかと思うレベルで出たぞ」
杜「それは大丈夫なのか?」

鄒「味も選べるぞ」
杜「じゃあいちご味で」
史「力の限り歯を擦るのだ!」
杜「!」
陳「どうだ、杜興?」
杜「血が…」
鄒「どれくらい?」
杜「…吐血したのかと、思うほど」
史「本当ではないか!」
陳「やめろ杜興!」
杜「…いかん」
鄒「どうした?」
杜「残っていた歯が根こそぎ抜けたわい…」

史進…三人で総入れ歯を贈ろうか…
杜興…自身の歯茎の緩さを見誤った。
陳達…とりあえず、聚義庁の屋根に投げよう。
鄒淵…いや、聚義庁の床に埋めるべきでは?

5.
史進「走れ!」
陳達「何をやったってんだよ!」
史「林冲殿の家にピンポンダッシュだ」
鄒淵「またやったのか」
史「日頃の待遇に意義がある」
陳「やることが小せえ」
鄒「馬蹄の音が」
史「百里風の疾駆とは、面白くなってきた」
陳「俺たちは関係ないぞ」
鄒「死にたくねえ!」
史「知ったことか」

林冲「観念しろ、史進」
陳「」
鄒「」
史「誰がするものか」
林「ならば死ね」
史「たかがピンポンダッシュではないか」
林「我が家へのピンポンダッシュは死を意味する」
史「おのれ!」
林「我が家の門の前に晒してやる」
張藍「嫌です気持ち悪い」
史「」
林「ならばここで首を刎ねよう」
史「!」

史「」
陳「本当に史進の首が晒してあるぜ」
鄒「気の毒な」
杜興「いい顔をして、死んでいるではないか」
史「黙れ老いぼれ」
陳「!」
鄒「首だけで生きてやがる!」
史「顔だけ出して埋められているのだ」
陳「そういう…」
史「いいから助けてくれ!」
鄒「張藍殿が厳しい監視をしているから断る」

林冲…史進の首を一週間晒した。
張藍…致死軍コネクションを活用して、厳しく史進を罰した。

陳達…史進のとばっちりの打撃が疼く。
鄒淵…史進のとばっちりの突きが痛む。
杜興…史進の首の前にお供物をした。

史進…林冲に首まで埋められた。自力で這い出してくる様は身の毛もよだつ。

二竜山

二竜山…頭領の色合いに応じてぬるさが変わってくる山塞。

人物
楊志(ようし)…嫁と息子のいいなり。
秦明(しんめい)…嫁のいいなりになりがち。
解珍(かいちん)…嫁のいいなり、だった。
郝思文(かくしぶん)…嫁と娘のいいなり。
石秀(せきしゅう)…曹正を言いなりにすべく調練にいそしむ。
周通(しゅうとう)…李忠の言いなりになっていた桃花山時代。
曹正(そうせい)…ソーセージの言いなり。もはや二竜山に彼のイニシアチブはない。
蔣敬(しょうけい)…算盤の言いなり。数字は裏切らない。
李立(りりつ)…李俊の言いなりだったが、ちょくちょく裏をかいていた。
黄信(こうしん)…秦明の言いなりになりがちだが、ちょくちょく愚痴っていた。
燕順(えんじゅん)…彼の言いなりになっていたのが王英。弱みを握り放題だったので。
鄭天寿(ていてんじゅ)…王英を言いなりにしていた。イケメンは正義。
郭盛(かくせい)…方天戟の言いなりになったかのように振り回していた。
楊春(ようしゅん)…少華山では彼の風紀を取り締まる様に史進は言いなりだった。
鄒潤(すうじゅん)…扈三娘の言いなりになっていたのが黒歴史。
龔旺(きょうおう)…喜んで瓊英の言いなりになる張清を見て不思議。

6.
曹正「いい肉の日だ」
石秀「自発的に屠殺されに行くとは感心な豚だ」
曹「!」
石「!?」
曹「曹正のソーセージで、俺はもう一度輝いてみせる!」
楊志「もう散々やったではないか、曹正」
曹「曹正のソーセージ2.0だ」
楊「…」
石「…いつかお前の太鼓腹に蝋燭を差し込んで二竜山の灯火にしてやる」

曹「曹正のソーセージの新機軸を考えようではないか」
楊令「もう飽きました」
志「またCM撮影させるくらいなら調練させろ」
曹「非協力的なやつらめ」
蔣敬「今ある備蓄でも充分すぎるんですけど」
曹「食いたい奴が食いたいだけ食え」
周通「もう誰も食わないぞ?」
志「痩せるのも大変だったんだ」

曹「ソーセージの新作も百八種類考案したんだが」
周「もうお前の塩使いには飽き飽きだ!」
志「もう二竜山のソーセージ担当はいらん!」
曹「なんだと!」
志「梁山泊か双頭山でやってくれ」
曹「その手があった!」
令「曹正殿?」
曹「曹正のソーセージワールドを梁山泊に広める所を見せてやろう」

曹正…思い出したかのようにソーセージで盛り上がり始めた。
楊志…ソーセージの在庫を全部処分しろ。
石秀…最近曹正の突きが早くて見えない。
周通…血尿が出て以来、ソーセージはゴリゴリ。
蔣敬…どこにもソーセージを卸せず困り果てていた。
楊令…曹正の尻を叩いた。

7.
楊志「二竜山に新たな国ができているだと?」
周通「曹正がソーセージを通貨にした国を創りやがった」
石秀「身のほど知らずな豚め」
蔣敬「民はいるのですか?」
石「どうせ豚の数の方が多い国だ。早晩潰れるだろう」
楊「一体曹正は何を考えているのだろう」
石「豚の脳が考えることなどしれてます」

曹正「腐るほどあるソーセージを処分しようと二竜山の中に国を作ってみたが」
楊令「…」
曹「この後どうしよう、楊令?」
令「闇ソーセージの道を作るのはどうでしょう?」
曹「どういう意味だ?」
令「闇塩を混入させたソーセージを高値で取引して銀を稼ぐのです」
曹「名案だ!楊令!」
白嵐「!」

盧俊義「最近曹正の店の近隣で塩が高く取引されるな」
燕青「これを」
盧「なんだこれは?」
燕「曹正曰く、闇塩を混入させたソーセージを高値で売って儲けていると…」
盧「青蓮寺に見つかっても、ソーセージの売買をしているだけだから足がつかないか…」
燕「…」
盧「近隣の牧畜の民も巻き込もう」

楊志…ソーセージ国の羽振りがいいな。
石秀…どういうことだ!
周通…最近のソーセージが塩辛い気がする。
蔣敬…盧俊義から肉の取引量を増やす指令が出た。

曹正…荒稼ぎして太った。
楊令…父上に報告しよう。
白嵐…肥えたな曹正。

盧俊義…肉の取引も盛んにしよう。
燕青…儲かりそうですね。

8.
秦明「二竜山で嵐とは」
郝思文「雷も止まりませんね」
解珍「勝負しろ秦明」
秦「何と?」
解「天」
秦「天?」
!!
解「天の霹靂火がお前を挑発しているぞ」
秦「ふむ」
郝「やるのですか、秦明殿?」
秦「!!」
郝「!?」
解「勝るとも劣らんやかましさだ」

郝「雲行きが?」
解「怒らせたか」

!!!
郝「!?」
解「なんだそのリアクションは、郝思文」
郝「すごく近かったではないですか」
秦「…」
解「行け、霹靂火」
秦「!!!!!」
郝「!?」
解「滑稽だな、郝思文」

郝「風が止んできた?」
解「嵐を吹き飛ばせ、秦明」
秦「…」
郝「まさか」
秦「!!!!!!!」
郝「!?」
…………

郝「…晴れ間が見えてきました」
解「天の霹靂火を司る者との立合いに勝ったな、秦明」
秦「…サスガニコエガデン」
解「言ってみるものだな」
郝「天でいったい何が起こったのでしょう」
解「それにしても郝思文のリアクションは滑稽だった」
郝「…お恥ずかしい」
解「嫁の前でもするだろう」

秦明…霹靂火の本領発揮。一週間は声が出なかった。
解珍…生前の嫁の前でしょっちゅう変なリアクションしてたのを棚に上げている。
郝思文…リアクション芸が郝瑾にも移っているのが、申し訳ない。

…あまりの剣幕に散ってしまった。

9.
秦明「おや、花栄」
花栄「秦明殿!」
孔明「ご無沙汰しています!」
秦「ゲーッ!孔明!」
孔「秦明殿…」
解珍「やかましいぞ」
郝思文「青州軍は仲がいいですな!」
秦「雄州軍は?」
郝「嬌が牛耳ってました」
秦「無理もないか…」
花「郝思文の娘に?」
孔「それは?」
朱武「調練でもせぬか?」

秦「二竜山の守りを突破してこい!」
花「秦明殿の胸を借ります!」
解「花栄ごときにできるものか」
燕順「油断すんじゃねえ!」
花「弓はないか」
孔「ここから射るんですか?」
朱「射るならば…」
秦「花栄が弓を出した…」
郝「すると…」
解「鄒潤」
鄒潤「はい!」
解「お前の出番だ」
鄒「?」

朱「あの岩を射ろ」
孔「どうなるんだ?」
花「容易い!」
鄒「!!」
朱「鄒潤に直撃した!」
孔「鏃はないが大丈夫か?」
鄒「小李広の矢も独角竜の瘤には勝てん!」
花「なに!」
朱「ムキになるなよ、花栄」
花「!!」
孔「もうなってる」
鄒「効かん!」
花「おのれ!」
朱「瘤ばかり狙うな!」

花栄…鄒潤の瘤ばかり射ていたら背後から楊春の奇襲にあった。
朱武…花栄を置いて撤収した。
孔明…花栄の巻き添えになった。

秦明…固執するとしつこいからな、花栄は。
解珍…お手柄だ、鄒潤。
郝思文…瘤に百発百中とは。
燕順…ちょろい所あるよな、花栄は。
鄒潤…瘤は硬いが身体は普通だぞ。

双頭山

双頭山…春風山と秋風山も冬は守備範囲外だから色々雑。

人物
朱仝(しゅどう)…髭が伸びすぎて困った。
雷横(らいおう)…虎髭が伸びすぎて困った。
董平(とうへい)…双鎗が余り使えなくて困った。
宋清(そうせい)…兄がいい加減すぎて困った。
孟康(もうこう)…鄧飛が勢いで行き過ぎて困った。
李忠(りちゅう)…自身が弱すぎて困った。
孫立(そんりつ)…嫁がわがまますぎて困った。
鮑旭(ほうきょく)…昔の仲間がウザすぎて困った。
単廷珪(たんていけい)… 水攻めができなさすぎて困った。
楽和(がくわ)…姉がめんどくさすぎて困った。

10.
朱仝「髭以外のアイデンティティが欲しい」
雷横「そんなもんいくらでもあるだろうが」
朱「例えば?」
雷「クソ真面目すぎるほどの義理堅さ」
朱「…」
雷「武芸の腕前とかもあるな」
朱「それは全て関羽のアイデンティティの二番煎じになるのではないか?」
雷「!」
朱「美髭公もおこがましいぞ」

雷「朱仝にあって関羽にないものを探そう」
宋清「兄上?」
朱「劉備、曹操という大型スポンサーがいる」
雷「俺だ!」
朱「張飛の存在を忘れるな」
宋「あとはお前が溺愛していたという坊ちゃんか」
雷「甥っ子だよな」
朱「音信不通になって久しいが」
宋「関羽にないものが無い」
雷「厳しい戦だ」

朱「思い切って俺が関羽にあるものを引き算して、その差をアイデンティティとするのはどうだろう?」
雷「よく分からんが」
宋「何を引き算するんだ?」
朱「…髭を頼む」
雷「剃るのか?」
朱「俺のアイデンティティのためだ」
宋「髭のない美髭公になるが?」
朱「物は試しだ」
雷「喜んでやろう!」

朱仝…愉しかったか?
雷横…すまん朱仝…
宋清…愉しくなって、奇抜な残し方をしてしまった…

聚義庁

聚義庁…どうでもいいことで競い合う首脳陣なのだ。

人物
晁蓋(ちょうがい)…寒さ我慢を自慢する。
宋江(そうこう)…寝なかった自慢する。
盧俊義(ろしゅんぎ)…仕事した自慢する。
呉用(ごよう)…自慢しないワーカーホリック1位。
柴進(さいしん)…金持ち自慢に適うものはいない。
阮小五(げんしょうご)…梁山湖で釣ったデカい魚ランキング1位。
宣賛(せんさん)…関勝の友達ランキング第1位。

11.
張藍「いい夫婦の日ですね、林冲様」
林冲「そうなのか?」
張「十一月でいい。二十二日で夫婦です」
林「ならば十一月はなんでもいい日になってしまうな」
張「たとえば?」
林「二十三日はいい兄さんの日」
張「はい」
林「二十九日はいい副官の日」
張「まあ」
林「もはやなんでもありではないか」

張「とにかくいい夫婦の日を祝いましょう」
林「俺たち以上のいい夫婦がいるとは思えんが」
秦明「聞き捨てならん」
張清「お前たちごときには負けん」
宣賛「夫婦の貢献度についても吟味する必要があると思う」
郝思文「私は家族全員が貢献しているぞ」
林「なんだゾロゾロと」
張「大所帯ですね」

宋江「どの夫婦がいい夫婦か競うだと?」
公淑「はい、宋江様」
宋「…」
呉用(ぎこちない?)
楊志「梁山泊にはいい夫婦候補が随分と多いな」
呉「どういう方法が…」
宋「夫が愛を叫ぶか、妻が愛を囁くか、どちらかだろうな」
呉「それは」
宋「アンケートを設けたのでどちらで競うか投票を頼む!」

林冲…またとんでもない企画が。
張藍…アップを始めた。
秦明…えらいことになった…
公淑…アップを始めた。
張清…俺には朝飯前だ。
宣賛…覆面があってよかった。
郝思文…恥ずかしいな。
楊志…どうしたものか。

宋江…公淑と久しぶりでドキドキ。
呉用…どっちに転ぶのやら。

12.
宋江「旦那たちが逃走したか」
盧俊義「すぐに確保されるだろう」
呉用「梁山泊の錚々たる面々を尻に敷く女傑揃いですものな」
張藍「捕まえてきました」
顧大嫂「こっちだよ」

林冲「…」
楊志「…」
秦明「…」

呉(なぜ揃いも揃って手枷首枷をつけられているのだ?)
宋(流行っているのかもしれん)

林冲「…」
張「林冲様!愛を叫んでください!」

呉(ならば手枷と首枷を外しては…)
宋(許されたら外れるのだろう)
盧(力では外れんのか?)
呉(林冲があの様ですから)

秦明「愛しているぞ!公淑!」
公淑「!」
秦「外れた!」

盧「おう」
宋「潔い」

楊志「…」
楊令「父上!」
済仁美「あなた」

林「恥ずかしい…」
張「早く!」
林「皆が見ているではないか」

索超「何を今更」
扈三娘「全くです」
馬麟「…お前の旦那は?」
郁保四「逃げ切ったそうです」

志「…」
令「父上!赤面獣!」
済「まあ」

曹正「だらしがないな」
石秀「贅肉の凝縮物は黙れ」

宋「いい酒の肴だ」
盧「愉しもう」

宋江…結局夜が明けたな。
盧俊義…首枷に重りが加わったぞ。
呉用…愛が重い…

林冲…助けてくれ、張藍。
張藍…拗ねた。

楊志…助けてくれ、仁美。
済仁美…拗ねた。
楊令…父上。だらしない!

秦明…赤面の末卒倒。
公淑…担いで二竜山に帰った。

索超…やれやれ。
扈三娘…王英のチキンぶりにがっかり。
馬麟…とりあえず鉄笛を吹いた。
郁保四…張藍殿怖いな。

石秀…楊志のヘタレぶりを見てると落ち着く。
曹正…楊志のみっともないところを吹聴して回るのが好き。

顧大嫂…すぐに愛を告げた孫新をうっかり抱きしめすぎた。

13.
趙林「俺の夢は見たこともないくらいデカい船を作ることです!」
盧俊義「おう、おう」
趙「完成した時は、まず盧俊義様が乗ってくださいね!」
盧「おう!」
趙「それにしても、釣れませんね。二人とも」
盧「おう…」
宋江「もっといい場所はないのか、趙林?」
趙「ここで釣れなかったらないです」

宋「それにしてもあれだな、盧俊義」
盧「おう?」
宋「もしもこの湖畔に刺客がいたら、千載一遇の機会ではないか?」
盧「おう」
趙「怖いこと言わないでくださいよ」
宋「もしも今この瞬間、私たちが刺客に襲われたら、守り切れるか?」
趙「梁山湖のど真ん中で刺客なんて来るわけ…」
盧「おう?」

宋「おや、見知らぬ舟が」
盧「おう!」
宋「逃げろ趙林!刺客かもしれん!」
趙「そんな馬鹿な」
宋「本当に刺客だったらどうする!」
趙「すごい速さで追ってきますよ!」
盧「おう!」
宋「梁山泊の命運もこれまでか」
趙「一体誰が!」
燕青「…」
趙「燕青殿?」
燕「文治省までお越しください」

宋江…刺客よりも怒り心頭の呉用の方が怖いな、盧俊義。
盧俊義…おう…

趙林…一体何があったんですか?
燕青…宋江殿が能天気すぎて、ちょっとな。

三兄弟

三兄弟…無精者の兄貴たちを何とかせよ!

人物
魯達(ろたつ)…飯を作ってくれ!李逵!
武松(ぶしょう)…洗濯をしてくれ!李逵!
李逵(りき)…誰がするもんか!

14.
李逵「武松の兄貴が不精すぎるんだ、宋江様」
宋江「それはいかん」
武松「…」
李「何かを手伝ってくれようとはするんだけど、拳の馬鹿力が邪魔をして、頼むに頼めねえんだ」
宋「由々しいな」
武「…」
宋「武松の拳の力を上手く使う方法はないものか…」
李「義手を作ってもらうのはどうかな?」

安道全「武松の拳に装着する義手を製作した」
毛定「手がかかってますよ」
李「かなり細くてしなやかな指だな」
武「装着するとどうなるのだ?」
安「細やかな作業ができるようになる」
毛「針に糸を通してください」
武「…」
李「…」
武「いかん」
安「…」
武「できん」
李「駄目だ。向いてねえ」

李「元から不器用だから、義手の指は関係ねえんだな」
武「随分だな、李逵」
李「いい加減に自分の分の皿洗いとか洗濯をしてくれよ」
武「俺の力に耐えられない皿や着物が悪いのだ」
宋「武松。この瓶の蓋を開けてくれ」
武「お任せを」
李「…」
武「!!」
宋「瓶が…」
李「人選ミスだよ、宋江様」

宋江…とっておきの塩辛が台無し。
武松…蔵にこもって土と語らい始めた。
李逵…デニムも引きちぎるからな。結局俺の仕事になるんだ。

安道全…魯達の義手でロケットパンチでも作ってみようか。
毛定…いいですな!

養生所&薬方所

養生所&薬方所…腑分けはいつも盛り上がる。

人物
安道全(あんどうぜん)…林冲の腑分けが夢。
薛永(せつえい)…林冲の人体実験が夢。
白勝(はくしょう)…林冲に意地悪言うのが夢。

15.
安道全「林冲の腑分けがしたい」
白勝「いつも言ってるなお前」
安「もしも林冲を腑分けできたら医学は大きく前進するだろうな」
白「梁山泊軍の戦力は大きく後退すると思うぞ」
安「なんとか林冲を腑分けすることはできないか」
白「言ってやれ、薛永」
薛永「私も林冲殿で試したい実験が山ほどある」

安「助手として使い物にはならんが、腑分け対象としては逸材だぞ?」
薛「治験モニターとしても稀に見る逸材なんだ」
白「筋肉で頑丈なだけじゃねえのか?」
安「その筋肉も腑分けで探求してみたい」
薛「私は林冲殿の代謝機能に興味があって…」
林「ヤブ医者!」
安「折よく腑分けされに来たのか?」

林「張藍の怒りを鎮める薬はないか」
白「またかよお前」
安「無くもないが」
林「本当か!」
安「お前への想いも鎮まるだろう」
林「それは」
安「お前を腑分けすれば解決策が見つかるかもしれん」
林「頼む」
白「いいのか?」
林「よく聞こえなかった」
安「腑分けだ!薛永」
薛「丸太を」
林「!」

安道全…一番良く切れるメスを持ってきた。
薛永…一番深く昏睡させる薬を持ってきた。
白勝…適当に返事すんじゃねえよ、林冲。

林冲…張藍も怖いけど、暴走する安道全たちも怖いな。

郵便屋さん

郵便屋さん…神行法がどんどんいい加減になっているのは気のせいか。

人物
戴宗(たいそう)…八百里走る技を持っているが、どんどんいい加減になっていた。
張横(ちょうおう)…八百里走る上役を見て、決して神行法は使うまいと思った。
王定六(おうていろく)…八百里走る戴宗を見て、俺の方が速いと思った。

16.
張横「飲みすぎですよ、戴宗殿」
戴宗「酒は百薬の長だ」
張「明日も神行法を使うんじゃないですか?」
戴「実は最近神行法が生臭を求め始めたところがあってな」
張「というと?」
戴「生臭を食わないと、神行法が上手く使えなくなってきたんだ」
張「それは本来の神行法の使い方を忘れただけでは?」

戴「神行法の札を酒に浸すのだ」
張「凶々しい色になりませんでしたか?」
戴「酒に漬ければ漬けるほど、俺も酒を飲む必要が出てくるから飲んでいるのさ」
張「酔っ払い神行法で捕縛されますよ」
戴「この俺に限ってそんなことはない」
王定六「アル中の常套句だぜ、戴宗殿」
戴「俺がアル中だと?」

王「まさか戴宗殿」
張「自覚ないのですか?」
戴「なんのだ?」
王「…話にならねえ」
張「よく見たら、アルコール漬けの札を貼った所が酷く爛れているではありませんか」
戴「妙に痒いんだ」
王「酒に弱えからだよ!」
戴「そんな馬鹿な」
張「王定六!」
戴「俺の酒を!」
王「捕まえてみやがれ!」

戴宗…実はめっちゃ酒に弱かった。なんで飲んでんだよ。
張横…実はかなりの健脚。職業病。
王定六…地球人最速ランナー。神行法は邪道。

断金亭

断金亭…宴会をするたびに赤字がかさむのはいつも通り。

17.
宋江「今日は無礼講だ!」

宋「…たしかに私は無礼講だと言ったが」
林冲「…」
宋「我らも良い大人だ。無礼講とはいえ、限度は保つだろうと思っていた」
公孫勝「…」
宋「それが始まって半刻もしないでこの有様だ」
史進「…」
宋「何か言いたいことはあるか?」
晁蓋「…」
呉用「一体何事ですか」

宋「壊れていない調度の方が少ない」
呉「破損していない食器はありますか?」
朱富「…」
宋(笑面虎がすごい顔をしている)
林「…」
公「…」
史「…」
晁「…」
宋「この中で一番罪を犯した者を差し出せば許そう」
林「!」
公「!」
史「!」
晁「!」
宋「お前たちの罪を白状しろ」
呉(どうなる?)

林「!!」
公「!」
史「!!」
晁「!!」

宋「案の定醜い罪のなすりつけあいになったか」
呉「これをどう見る、裴宣?」
裴宣「全員を罰しましょう」
李逵「俺を罰してくれ、宋江様!」
宋「なぜ李逵を?」
李「俺の飯が美味すぎたのが悪かったんだろう?」
宋「…李逵を罰せられる訳ないだろう」

宋江…我らは我らで飲み直そう。
呉用…遅刻してきて惨状に唖然。
朱富…破損された食器の被害額を計上した。
裴宣…愚か者たちの宴を厳しく罰した。
李逵…自責の念にかられ、しょんぼりしてしまった。

林冲…公孫勝と洗い物をしながら延々と罵り合っていた。
公孫勝…林冲の頭よりスポンジの方が吸収性があると思った。
史進…裸で惨状の後片付けをした。
晁蓋…頭領だが関係なく後片付けをさせられた。

林冲さん家

林冲さん家…張藍の質の悪さときたら!

18.
張藍「林冲にハーネスを付けます」
林冲「そんな!」
張「夫婦団欒のお散歩の時間なのにも関わらず、私の静止の声も無視してあちこち歩き回る罰です」
林「俺は幼子ではない!」
張「私だってもっとあなたと手を繋いで歩きたいのに…」
林「大きなバッタを見つけたのだからしょうがないではないか!」

張「…」
林「…」
索超「林冲殿が張藍殿によって、梁山泊市中引き回しの刑にあっているぞ」
呂方「何か言ってはいけない事を言ってしまったようだぜ」
張「…」
林「…!」
呂「林冲殿が何かを見つけた!」
索「大丈夫なのか?」
張「!」
林「!?」
索「背中に結ばれているハーネスから電撃が走った」

林「」
張「…」
索「さらに刑が重くなったぞ」
呂「猿轡までかまされてしまったか」
索「ここまで来たら、もはやそういう男女の馴れ初めなのではないかな、呂方」
呂「口は災いの元だぜ、兄貴」
林「」
張「!」
索「ハーネスってなんのためにつけるんだったかな?」
呂「身の安全のためだと思う…」

林冲…そこまでされてもなお、大きなバッタの魅力に惹かれてしまうのであった。
張藍…私の手よりもバッタを選ぶなんて…
索超…張藍に睨まれて怖かった。
呂方…林冲のハーネスの伸縮性に目を見張った。

19.
林冲「張藍!」
張藍「何事ですか?」
林「また俺の宝物を勝手に処分したな!」
張「なんのことですか?」
林「俺が死域に入りながら作った泥団子がどこにもないのだ!」
張「…あれは泥だったのですか?」
林「美しかっただろう」
張「公孫勝殿が馬糞で作ったって言っていましたよ?」
林「なんだと」

林「どこだウスノロ!」
索超「今度は何事だ、林冲殿」
林「今日という今日は八つ裂きにしてやらんと気がすまん!」
索「何があったのですか」
林「泥団子を汚されたのだ」
索「?」
林「泥団子を馬糞団子と言いやがった」
索「…そうですか」
林「八つ裂きにしてくるから待っていろ」
索(自由だな…)

公孫勝「バカの気を感じる」
劉唐「?」
林「ウスノロ!よくも俺の泥団子を!」
公「馬糞で穢れた手にはお似合いではないか」
林「お前ほど穢れてはおらん!」
公「穢れの質が違うのだ」
林「お前の手ほど穢れてない!」
公「ならばどちらが穢れているか、劉唐に決めてもらおう」
林「よし」
劉「!?」

林冲…まさか俺の方が穢れているとは言わんよな。
公孫勝…まさか林冲よりも穢れているとは言わんよな。

張藍…泥団子ごときで…
索超…意外とうまく作れなかった。
劉唐…穢れているのは自分だと、大地に接吻した。

20.
林冲「年末だな」
張藍「今年も色々ありましたね」
林「苺にさせられたのは参った」
張「ストロベ林冲ですね」
林「なぜ俺が苺にならねばならないのだ!」
張「来年はラズベ林冲ですね」
林「ベリー系なのか!?」
張「ブルーベ林冲もありですね」
林「やはりベリー系ではないか!」
張「いいでしょう」

張「来年の抱負は?」
林「公孫勝の野郎の首を捻じ切ることだな」
公孫勝「ほう」
林「ウスノロ!」
張「公孫勝殿の抱負は?」
公「バカを懲らしめて逆らおうなどと思わぬようにする」
林「野郎!」
公「やるのか、バカ」
張「雪合戦でもしたらどうです」
林「面白い」
公「勝てると思っているのか?」

林「」
公「」

張「雪玉が目視できない」

索超「!」
劉唐「!」

張「援軍が」

索「!?」
劉「!?」

張「もう打ち取られた」

林「!」
公「!」

張「まあ、雪崩」

林「!」
公「!」

♪〜

張「梁山泊の鐘が」

♪〜

張「百八と一回ね」

♪〜

張「来年も、良い年になりますように!」

張藍…寒くなったので早く寝た。

林冲…雪に埋もれた。
公孫勝…雪に埋もれた。
索超…雪に埋もれた。
劉唐…雪に埋もれた。

東渓村

東渓村…しまったの声を聴くたびに村人は腑に落ちるらしい。

21.
呉用「しまった」
阮小五「俺も一度は呉用殿のように綺麗なしまったを言ってみたいですな」
呉「綺麗なしまったとはなんだ」
阮「俺如きのしまったでは、呉用殿の足元にも及びません」
呉「言いたくて言っているのではない」
阮「俺の仕事はしまったなんて言った途端に死にますからな」
呉「しまった」

呉用…気まぐれの晁蓋の矢が飛んできた。
阮小五…晁蓋殿の良いしまったを聞けた!

柴進屋敷

柴進屋敷…もっとまともな食客雇えよお前は。

22.
柴進「新年会一発芸大会を行う」
鄧飛「手練れはいるのか?」
柴「一人目!」
A「私は頭上で槍を百回回します」
B「またお前か」
C「八十いったら教えてくれ」
鄧「もう飽きられてるじゃねえか」
A「いざ!」
柴「適当に数えておいてくれ、鄧飛」
A「!!」
鄧(ペース配分を全然考えてねえな、こいつ)

A「!」
鄧(二十も行かずに弱々しくなってきた)
A「!」
鄧(もはや晒し者になっている)
柴「…」
鄧(柴進ですら食事に夢中だ)
A「!」
鄧(こんなにどうしようもない一発芸なのに…)
A「!」
鄧(どうして俺はこいつを放っておけないのだろう…)
A「休憩を…」
B「三十も回してねえぞ!」
鄧「待て!」

鄧「俺が代わりに鎖鎌を千回回してやる」
A「…ありがたい」
B「見せてもらおうじゃねえか」
柴「何かするのか、鄧飛?」
鄧「!!」
柴「見事だ!」
B「目にも止まらねえ!」
A「…」
鄧「これでどうだ!」
柴「鄧飛が優勝だな!」
A「彼は私のサポートだろう?賞金は私のものだよな?」
B「失せろ」

柴進…鄧飛に銀五粒だ!
鄧飛…準備運動にもならねえぞ?

A…おなじみ頭上で槍を百回回す男。百回回せないし、性格も悪い。
B…洪師範。もはや柴進から名前も存在も忘れられて久しい。
C…その辺の食客。穀潰し。

掲陽鎮

掲陽鎮…ブラコンを拗らせるとこうなるのだ。

23.
上青「掲陽鎮良い兄貴選手権だとさ」
李俊「嫌だ!」
狄成「大兄貴…」
費保「観念しろ」
倪雲「弟分解散するぞ」
童威「日和るんじゃねえ!」
童猛「大所帯だな」
李立「男臭え…」

穆弘「兄を見ておけ。その眼に、刻みつけておけ」
春「…」

張横「私もか?」
張順「任せる」
横「出てみようかな」

弘「春への想いを歌にした」
俊「気持ち悪い…」
春「…」
順「察するぜ、穆春」
弘「春。その名はまるで、暖かな風のよう」
立(ギャラリーの温度が一気に冷めた)
狄「これはなんだ、兄貴?」
費「鳥肌ってやつだ」
弘「春。小鳥はさえずり、若葉は繁る」
春(殺してくれ)
俊「次の博打で声帯を賭けろ」

俊「俺の一味の中で、いかに俺が兄貴分にふさわしいかというプレゼン資料を用意した」
童「それも大概だな」
立「自己評価が高すぎる」
俊「掲陽鎮の商人といえばランキング堂々第一位!」
狄「すげえ!」
費「茶番だ」
俊「掲陽鎮操船上手ランキング第一位!」
童「あ?」
倪「聞き捨てならねえぞ!」

穆弘…ミリオンセラーだろう?
穆春…次の博打では両耳を賭けようと思った。

李俊…乱闘が始まった。
李立…張兄弟に投票した。
童威…調子に乗るな混江竜!
童猛…しょっぺえくせに!
費保…弟分解散だぞ!
上青…弟分支持率向上を模索中。
狄成…大兄貴に何しやがる!
倪雲…しめねえと気が済まん。

張横…特に何もしないで一位になった。
張順…バカ二人が自滅してくれたな。

24.
穆弘「春に渡したクリスマスプレゼントが受け入れられなかった…」
李俊「何を渡したのだ?」
穆「目玉を」
李「目玉?」
穆「もしも春が博打で目玉を賭けても大丈夫なようにと、手作りの目玉を一ダースプレゼントしたのだが」
李「お前は俺に一体何をしてもらいたいのだ?」
穆「理由を知りたいのだ」

李「理由?」
穆「プレゼントを受け入れられなかった理由をだ」
李「お前は穆春からスペアの目玉を貰ったら嬉しいのか?」
穆「毎日欠かさず装着するだろうな」
李「…」
穆「穆春からなら何を貰っても嬉しい」
李「お前ももっと弟離れをした方が…」
穆「なんだと!」
李「何がお前をそうさせるのだ」

穆「兄は弟を守るものだ!」
李「行きすぎだ」
穆「お前も弟分がいるではないか」
李「お前ほど過保護にはならん」
穆「過保護ではない!」
李「…そういえば、穆春から好きな女の話を」
穆「馬鹿な!」
李「どこへ行く穆弘」
穆「春の好きな女はどこだ!」
李「…鍾静の村だ」
穆「ただではおかぬぞ」

穆弘…鍾静の村を荒らし回った挙句、李俊を血眼で探し始めた。
李俊…童威と童猛を犠牲に逃げた。

穆春…穆弘にも話せない悩みは、張順に聞いてもらっているらしい。

チーム張清

チーム張清…瓊英が何かの間違えで張清に惚れてしまったのが統一見解。

25.
張清「礫が足りん」
龔旺「河原に行ってこいよ」
張「…瓊英と、行ってくるか」
丁得孫「正気か?」
張「瓊英と河原デート…」
龔「石拾わせるのに付き合わせるってか?」
丁「気の毒な」
張「誘ってみないことには分からんだろう」
龔「誘うなってんだよ」
張「もう決めた!」
丁「どうなることやら」

瓊英「張清様!この礫はどうですか?」
張「ジャストフィットだ!」
龔「ノリノリじゃねえか」
丁「女神様だな」
瓊「私の礫を見てください!」
張「よし!」
瓊「!!」
魚「!?」
瓊「魚が取れました!」
張「焼いて食おう!」
龔(なぜ張清殿ワールドにここまで適応してるのだ?)
丁(懐が広すぎるな)

瓊「今日は楽しかったです!」
張「俺もだ!」
龔(結局昼間から夕方まで石拾いだぜ?)
丁(賽の河原も瓊英殿がいれば楽しいかもしれんな)
張「…おや、礫袋がほつれた」
瓊「張清様…」
張「それは?」
瓊「私の繕った礫袋です!」
張「なんと!」
瓊「使ってください」
張「緑が映える、見事な袋だ…」

張清…収納量も礫の取りやすさも完璧。
瓊英…ハイスペックにも程があるが、張清の能天気さがちょうどいいのかもしれない。
龔旺…俺の飛槍袋も繕ってくれねえかな。
丁得孫…俺の飛叉袋も。

子午山

子午山…死域も知らない村人からしたら、王進のそれは滑稽なしれでしかない。

人物
王母(おうぼ)…ライブの時の血化粧が実は楽しみ。
王進(おうしん)…ライブの行列に並びながら死域。

26.
馬麟「♪〜鉄笛〜♪」
鮑旭「随分と気合が入っているではないか」
馬「そんなことはない」
鮑「音で分かる」
馬「…」
王母「…」
鮑「母上も準備ができていますね」
母「私は二人に合わせます」
馬「…行くぞ、鮑旭」
鮑「行きますよ、母上!」
母「はい!」
鮑「お前を人肉饅頭にしてやろうか!!」

馬(それにしても…)
鮑「!!」
馬(血化粧をすると人が変わるな、鮑旭)
鮑「!!!」
馬(王母様も…)
母「♪〜琴〜♪」
馬(激しさに身を任せているようで、品を損なっていない)
母「♪〜琴〜♪」
馬(この二人とならば、俺はどこまでも合わせられそうだ)
鮑「!!」
母「!!」
馬(流れにのっていくぞ)

馬(客も最高潮だ)
客「!!!!!…」
馬(なんだ?)
客「!!!…!!」
馬(胴上げされた客が送られてきている…)
客「!!…!!!」
馬(あれは、王進先生?)
客「!…!!!!」
馬(王進先生が、客に送られながら死域に…)
客「…!!!!!」
馬(これは…)
鮑「母上!」
母「進!!!!」
馬「!?」

王母…今年一のシャウトだったと自画自賛。
鮑旭…身体のわななきが止まらない。
馬麟…雷に当たったのかと思った。
王進…ライブ会場を飛んでいた鳥が全て落ちてきた。

青蓮寺

青蓮寺…仕事に行き詰った時はどうしますか?

人物
袁明(えんめい)…頑張って何とかする。
李富(りふ)…行き詰ったとも思わない。
聞煥章(ぶんかんしょう)…妓楼に行く。
洪清(こうせい)…体術道場に行く。
呂牛(りょぎゅう)…聞煥章をからかう。

27.
聞煥章「ここまで業務が終わらんとは」
呉達「義足がうるさいぞ、聞煥章」
聞「…」

聞「ZZZ」
呂牛「おい」
聞「…もう朝か、母上」
呂「…」
聞「…」
呂「…」
聞「…」
呂「」
聞「銀だけ取って帰るな!」
呂「間者孝行だ」
聞「また母上と呼んでやろうか!」
呂「…それはやめろ」
聞「笑止な」

聞煥章…恥をかいた時、開き直るようになった。
呂牛…からかうにからかえなくなってしまった。

呉達…貧乏ゆすりではなく、ビートを刻め、聞煥章。

禁軍

禁軍…年末でも仕事はたくさんあるぞ。どんな部署だろうと。

人物
童貫(どうかん)…年末年始も調練調練。
趙安(ちょうあん)…年末年始のバラエティーで引っ張りだこ。

28.
趙安「フレッシュ!」
公順「鉄塔の上でフレッシュポーズとはさすが趙安殿」
趙「!」
何信「フレッシュマンの衣装がきわどい…」
公「梁山泊の九紋竜のようなマネは我らがさせませんぞ」
趙「フレッシュ!」
何「ところで一体なんの撮影だ?」
公「開封府のPRだと」
趙「フレッシュ!」
何「映える」

趙「フレッシュ!?」
公「撮影のドローンがやけに攻撃的ですな」
何「もしや趙安殿を叩き落とそうとしているのでは」
公「撃墜しましょう」
趙「フレッシュ!?」
何「趙安殿が猛攻を受けている!」
公「土俵際には定評がありますからな」
何「敵も心底うんざりするほどの粘り強さ…」
公「これぞ趙安殿」

何「結局墜落したな」
公「高俅のドローンを壊すと後がめんどくさいですからな」
何「趙安殿のことだから、おそらく…」
趙「…」
何「安定の落ち芸だ」
公「これが素だというから恐れ入りますね」
趙「…貴様ら」
公「ドローンとの鬼気迫る立合いは良い場面でしたよ?」
何「我らも手に汗握りました」

趙安…二人を鉄塔から叩き落とした。
公順…厄介な打撲をした。
何信…厄介な捻挫をした。

高俅…撮影用ドローンは私物。操縦に定評あり。

29.
趙安「フレッシュ!」
役人「OKです!」
趙「これで今年の撮影も終わりだな」
公順「お疲れ様でした」
何信「フレッシュ趙安殿も仕事納めですな」
趙「年末の予定は?」
公「私は実家に」
何「私は年末年始も調練を」
趙「それぞれだな」
公「趙安殿は?」
趙「私も年末年始は梁山泊戦の事を考えるな」

公「…私もそうした方が」
何「私たちは好きでやっているのだ」
趙「会える時に会っておけ、公順」
公「…はい」
趙「フレッシュマンも来年からは新シリーズになるだろうな」
何「どんな展開になるのですか?」
趙「フレッシュマンの衣装に新機能か登場する」
公「それはどんな?」
趙「来年分かる」

趙「フレッシュマンの衣装も増えたものよ」
何「軒並み露出度が高いのが気になるのですが」
趙「それもフレッシュの証だ」
公「本当に楊業も呼延賛もこの衣装を身にまとっていたのでしょうか?」
趙「当然だ」
公「初代フレッシュマン楊業は、いったいどんな思いでフレッシュマンを…」
趙「どうかな」

趙安…第九代目フレッシュマン。年末年始のバラエティー番組でも引っぱりだこ。
公順…フレッシュマン史として楊家将と血涙を借りた。
何信…フレッシュマン親衛隊隊長。濃すぎる顔と臭すぎる体臭。

楊令伝

黒騎兵

黒騎兵…料理に関してはかたくなになりがちな首領が所々めんどくさい。

人物
楊令(ようれい)…今年は絶対に料理上手になってやる。
郝瑾(かくきん)…諦めてください。
張平(ちょうへい)…俺の飯だけ食ってください。
蘇端(そたん)…それはそれで重いな。
蘇琪(そき)…楊令殿の飯だけは食いたくない。
耶律越里(やりつえつり)…楊令の飯を食って死にかけた。

30.
蘇端「俺にもう一度チャンスをください、郝瑾殿」
郝瑾「なんの?」
蘇「よくよく考えたら、俺は蘇琪よりも優秀で」
蘇琪「なんだと」
端「皇甫端殿の名を名乗るほど親しくなかったので」
郝「うむ」
端「もっとポピュラーな漢名をつけるチャンスをもう一度ください」
郝「…好きにしろ」
端「よし…」

端「まずは姓だが」
琪「蘇じゃなかったら郝だろう、お前は」
張平「郝だな」
耶律越里「郝だ」
端「最初に郝を名乗っていたからか?」
張「最初に郝を選んでしまう時点で郝だな」
琪「郝止まりだ」
郝「なんだかすごく理不尽な罵られ方をしてないか?」
端「郝瑾殿のことではありません!」
郝「…」

端「不本意だが郝で妥協しよう」
張「それがいい」
郝「私は妥協して郝ではないのだが」
耶「名は?」
端「それが問題だ」
張「令とかのたまったそうだな、貴様」
琪「身の程知らずにも程がある」
端「だからやめた」
耶「蘇端にちょうどいい名か…」
張「瑾とかどうだ?」
琪「それだ!」
郝「待て」

蘇端…なぜ俺が郝瑾では不都合なのですか、郝瑾殿?
蘇琪…これほどちょうどいい名前はないと思うが。
張平…蘇端は郝瑾ですね。
耶律越里…何か問題が?

郝瑾…これは私が間違っているのか?

31.
楊令「料理がしたい」
張平「駄目です」
蘇琪「やはり楊令殿の飯は人に食わせてはならないということがよく分かりましたな」
郝瑾「蘇端だから良かったものの」
楊「…」
張「この調理場は私の領土です」
楊「梁山泊の中に国を作るつもりか」
張「この調理場を守るためならば、戦も辞さない覚悟です」

楊「俺と戦をするのか、張平」
張「我らのおいしさと健康を守るためならば」
楊「…」
郝「さすがに可哀想なので、卓や皿や杯の準備をしてください」
楊「分かった」
蘇(頭領がするのか?)
楊「いかん。布巾を引きちぎってしまった」
張「…」
楊「皿にヒビが」
郝「…」
楊「杯を落とし」
張「退場」

楊「…」
張「拗ねないでください、楊令殿」
郝「お行儀よく座っててください」
楊「いたたまれない」
張「これ以上調理場で不調法があったら飯抜きですよ!」
楊「それは」
郝「楊令殿はそういう星です」
張「有り余る戦と武術の才で我慢してください」
蘇「我らの出番が無くなりますので」
楊「…」

楊令…張平の領土の侵犯を画策中。
張平…俺の飯で良いじゃないですか。
郝瑾…蘇端の容体は?
蘇琪…まだ厠にいました。

蘇端…つまみ食いをしたばかりに…

遊撃隊

遊撃隊…もうここ書くのやめたいんだけど。

人物
班光(はんこう)…むっつりスケベ。
鄭応(ていおう)…まあまあスケベ。
葉敬(しょうけい)…普通スケベ。

32.
班光「ややっ!財布が落ちている」

班「…誰も見ていないぞ?」

良い史進「言うまでもないだろうな、班光」
班「やはり出てきましたか」
良「やはりとはなんだ」
班「言わずもがなですよ、良い史進殿」
悪い史進「しかし本当に届け出る事が正しい事なのだろうか?」
班「定番ですね」
悪「なんだと」

悪「財布を落とした奴に反省させるのはどうだ?」
良「だからといって他人の財産を掠め取るマネはこそ泥のそれだ」
悪「こそ泥に失礼ではないか?」
こそ泥史進「然り。こそ泥にも五分の魂だ」
班「新キャラが」
泥「俺にだって人権はあるのだぞ」
良「盗人猛々しいな」
悪「お前は本当に善なのか?」

良「いかにも」
悪「自分の善性が一分も揺るがない奴もなんだか嫌だな」
班「確かにそうですね」
良「班光!」
班「善性は他人に押し付けるものではありません」
良「なんだと!」
班「なので私もこの財布から10%の手数料を」
史進「おう、俺の財布」
班「史進殿!?」
史「礼を言うぞ、班光」
班(10%…)

班光…史進にご馳走され、ネコババしようと思った自分に嫌気がさした。
史進…妓楼に行く前で助かった。

良い史進…班光に住まう善性。やや過激。
悪い史進…班光に住まう悪性。悪というにはせこい。
こそ泥史進…班光に住まう盗人。魔がさすこともあるよね。

33.
班光「憂鬱だな…」
史進「どうした班光。とっておきのつけ乳首を無くしたのか?」
班「…茶化さないでください」
史「それはすまん」
班「日照が少なくなったからか、憂鬱なことが多くて」
史「よし。そんな班光に幸福になる脳内ホルモンについて伝授しよう」
班「なんですか、それは?」

史「快を司るドーパミン」
班「はあ」
史「安心を司るセロトニン」
班「はい」
史「そして幸せを司る」
班「…」
史「オキシトシシンだ」
班「ん?」
史「ドーパミンは名誉やしたたかを」
班「それではありません」
史「セロトニンは朝食をよく噛んで食べると」
班「違います」
史「オキシトシシンは」

班「結局そうやって、私をからかうんですね」
史「何を言うか、班光。この史進。部下のTPOに合わせたフォローには定評があるだろう」
班「そうですけど…」
史「オキシトシシンの何がおかしい」
班「オキシトシシンはどうすると出るんですか?」
史「抱擁だ」
班「抱擁」
史「ハグだな!」
班「ハグ」

史進…どうだ班光。
班光…ちょっと元気が出たとは言い辛いし認めたくない。

34.
班光「…やられましたね」
鄭応「あの料理であの会計はなかろうが」
葉敬「すっかり萎えちまったな」
史進「どうしたお前たち?」
班「聞いてください史進殿!」
鄭「ぼったくりにあったのです!」
葉「つまらない店に引っかかっちまいました」
史「どの店だ?」
班「まさか史進殿、我らのために?」

史「そんな訳があるか。どの店か教えろ」
鄭「…あのやたら客を招き寄せている店です」
史「その時点でアウトだ、お前たち」
葉「それは?」
史「この地域は露骨すぎる客引きを禁じる条例があるではないか」
班「そういえば!」
史「その時点で自業自得だ」
鄭「面目ない…」
史「ついて来い、お前ら」

葉「どこへ行くんです?」
史「良い店の見分け方を伝授する」
班「お願いします!」
史「もっとも俺もフィーリングがほとんどだが」
鄭「その辺俺は疎いんですよね」
史「…」
葉「史進殿?」
史「あの店員の店」
班「如才がなさそうです」
史「目配りと立ち振る舞いに隙がない」
葉「武術と一緒だ!」

史進…店員の活気は評価材料の一つだ。
班光…メニュー表にオリジナリティが伝わってきますし、値段も適正だ。
鄭応…酒が来るのも早い!
葉敬…座席の位置も大切なんですね!

35.
史進「シシハラ被害者の会とハンハラ被害者の会の融和パレードを行おうと思う」
班光「なんでそんなことを」
史「互いの価値観の相違によるハラスメントを平和的に解決した事例として、俺たちの取り組みが聚義庁でも高く評価されたのだ」
班「まさか楊令殿…」
史「梁山泊をそろいの衣装で行進するぞ」

班「衣装がシシハラです!」
史「シシハラとハンハラの融和をモチーフにした大胆なデザインになんということを!」
班「大胆すぎます!」
史「見損なったぞ、班光!」
班「史進殿も結局変わっていないではないですか!」
史「また遊撃隊を二つにするつもりか!」
班「私は対立も辞さない覚悟です!」

楊令「シシハラハンハラ融和パレードがシシハラハンハラ喧嘩神輿になっただと?」
張平「相手にしなくていいです」
呉用「褚律が中継してくれている」

史「…」
班「…」

呉「双方の大将が担がれているな」
張「神輿ですね」
楊「…」

史「!」
班「!」

呉「活気があるな」
張「酒にしましょう」

史進…案の定喧嘩神輿中に着物は千切れた。
班光…案の定喧嘩神輿中に素っ裸にされた。

楊令…怪我人が出ないかハラハラしていた。
張平…カメラワークの巧みですね、褚律。
呉用…私の護衛だからな。

36.
史進「梁山泊も冬景色だな、班光」
班光「寒くなりましたね」
史「おや、赤子の泣き声が?」
班「何をしているのでしょう」
史「あそこだ」

翁「村の赤子の健やかな成長を願って泣き声を競わせているのです、九紋竜様」
史「ほう」
班「泣き相撲ですね」
赤子「!!」
史「おう、ひときわ大きな声で」

史「大きな赤子だ」
翁「九紋竜様に抱いてもらおう」
赤「!!」
史「どうした、赤子」
班「まるで父のような顔に」
史「父の乳を飲みたいのか」
班「史進殿?」
史「たんと飲め」
班「…」
赤「…」
史「あっ」
班(私は何を見せつけられているのだろうか…)
史「舌で転がすな…」
班「何をですか!」

史「追い出されたな」
班「当たり前でしょう!」
史「あの赤子、かなりのやり手だったぞ」
班「村の皆さんが我らを見る目を忘れられません」
史「九紋竜の乳を吸った赤子が遊撃隊に来るかもしれんな」
班「来ません!」
史「次の機会があったら本当に出るかもしれんぞ、班光」
班「出てたまるか!」

史進…あれ以来、ちょっと敏感になったらしい。
班光…久しぶりにマトモなツッコミ役になれてホッとしている。

本隊

本隊…二世の面々も盛り上がってくるだろう。多分。

人物
花飛麟(かひりん)…キングオブエロス。
呼延凌(こえんりょう)…キングオブ不憫。
李英(りえい)…キングオブ不運。
秦容(しんよう)…キングオブまったり。

37.
花飛麟(秦容の顔の傷を謝れないでここまできてしまったが)
秦容「…」
花(なんとかして謝る機は訪れないものか…)
秦「花飛麟殿?」
花「なんだ!」
秦「…三里先からいかがわしい気を感じるのですが」
花「班光か…」
秦「班光殿?」
花「ちょっとお前の狼牙で撃退してきてくれ」
秦「構いませんが」

秦「撃退してきました」
花「ご苦労」
秦「一筋縄ではいきませんでした」
花「またこの湯船で汗を流せばいいだろう」
秦「はい」
花「お前の顔…」
秦「顔が何か?」
花「…」
秦「?」
花「いい顔になったな」
秦「そんな、花飛麟殿に言われたところで」
花「…」
秦「月とすっぽんではありませんか」

花「それは?」
秦「花飛麟殿ほどの顔の人に言われても、嬉しくないですよ」
花(…やはり許してはもらえぬか)
秦「こんな顔に傷つける奴がいたら、俺が叩き潰してやります!」
花(そう言うお前の顔に、俺は傷をつけたのだが…)
秦「それにしても端正ですよね」
花「何がだ?」
班光「そうだろう秦容」

花飛麟…叩き出せ。
秦容…言うまでもありません。

班光…話せば分かりあえるではないか、秦容!


twitterにて連載中!

ご意見ご感想やリクエストは、こちらまでよろしくお願いいたします!

今号も、お読みいただき、誠にありがとうございました! 

これからもすいこばなしを、どうぞよろしくお願いします!

中学生の頃から大好きだった、北方謙三先生大水滸シリーズのなんでもあり二次創作です!