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水滸噺 20年2月(下),3月(上)【急募フレッシュマン衣装デザイナー】

あらすじ
懲罰豹子頭林冲 愛妻裂き虎夜叉牙剥き
梁山湖のほとり 鉄叫の唄鉄笛の音響く
フレッシュ趙安 衣装漲ること勇気凛々
方臘軍軍師趙仁 爛々たる方臘心臓喧々

すいこばなし 注意書き
北方謙三先生水滸伝,楊令伝何でもありな二次創作です。
・水滸伝の原典ネタは日常茶飯事、スマホにPCなど電子機器も飛び交うし、あの人が梁山泊で元気に生きていたりする、異世界からお届けします。
・原作未読の方でも楽しめるように、ネタバレを極力避けていますが、薄々感づいてしまう個所が垣間見えますので、その点はご注意ください。
楊令伝編で出てくる好漢は、すなわち水滸伝を生き残った者ということですので、未読の方はその点ご留意いただいた上でお読みください。
・作者のtwitterにて連載しています。 
・今月号、バックナンバーのご意見ご感想、リクエスト等々、こちらまで
 お寄せいただけると、とても嬉しいです!いつも助かっています!
・原作に興味を持たれるきっかけになったらこれ以上の喜びはありません。

日常モードも、また板についてきました。

それでは行ってみましょう! 

梁山泊

梁山泊…春が訪れつつある。桜の木の下で戯れてるバカップルと一緒に愛でるのもまた風流である。

騎馬隊

騎馬隊…ある日林冲の名札が張藍になっているのに気づいた将校面々は、あえて指摘しなかったという。

人物
林冲(りんちゅう)…食べ物があったらとりあえず口に入れる。絶対に、食べてはいけないものでさえ。
索超(さくちょう)…一度張藍殿に黒騎兵を率いさせてみるのはどうだろう。
扈三娘(こさんじょう)…胆力は私などと比べ物になりませんからね。
馬麟(ばりん)…彼お墨付きのお菓子は、梁山泊では宋国皇帝公認と同じくらい値打ちがある。
郁保四(いくほうし)…林の旗の代わりに張の旗も掲げてみますか?

1.
林冲「…」
馬麟「早く入るぞ、林冲殿」
林「…なぜ俺がスイーツ屋に」
馬「今の林冲殿では、張藍殿が怖くて梁山泊から脱走しかねん」
林「!」
馬「肚を決めろ、林冲殿」
林「…」
馬「…」
林「…よし」
馬(入るだけで一刻も駄々をこねるとは…)
林「この菓子でいいだろう…」
馬「…」
林「帰るぞ」

馬「林冲殿」
林「…なんだ、馬麟」
馬「食べ物の恨みを甘くみてはならない」
林「!」
馬「それがとっておきであればあるほど尚のこと、恨みの力は強くなる」
林「!!」
馬「きっと張藍殿の食べ物の恨みの力が、林冲殿に傷を負わせたのだな」
林「…もっともらしいことを」
馬「図星だろう、林冲殿」

馬「食べた菓子の特徴は?」
林「…苺が乗っていた」
馬「形は?」
林「三角だったような…」
馬「一口で食べたか?」
林「…妙に詳しく聞くな」
馬「騎馬隊の死活問題だから当然だ、林冲殿」
林「お前が選ぶのが好きなだけではないか?」
馬「…」
林「図星か」
馬「先に帰る、林冲殿」
林「待て!」

林冲…やはり馬麟の手土産は効いた…
馬麟…この店でも選りすぐりの苺のタルトだ、林冲殿。

2.
扈三娘「…」
索超「何を悩んでいる、扈三娘?」
扈「索超殿」
索「話なら聴くぞ?」
扈「どうあがいても、林冲殿に相手にされなくて…」
索「俺だってそうさ」
扈「索超殿は何合かの勝負ができるではありませんか」
索「凌ぐので精一杯なだけさ」
扈「ならば私は、凌ぐことすらできません」
索「…」

扈「いくら稽古しても、一合たりとも渡り合えず…」
索「…」
扈「初めて負けた時から、何も変わっていない私が不甲斐なくて」
索「…ならば少し俺と稽古してみないか?」
扈「索超殿と?」
索「おや、良いところに郁保四が」
郁保四「二人で稽古ですか?」
索「ちょっと見ててくれ、郁保四」
扈「…」

扈「…」
索「…」
扈「!!」
索「!」
扈「!!」
索(こいつは…!)
扈「!!」
索「!」
扈「!?」
郁「…」
索「…凌ぐので精一杯だったぞ、扈三娘」
扈「しかし、やはり私は、負けました…」
索「だが、間違いなく昔より強くなっているだろう?」
扈「…そうかもしれません、索超殿」
郁「俺も!」

索超…武術と指揮はさすがだ。
扈三娘…御礼申し上げます。索超殿。
郁保四…扈三娘に完敗。

致死軍&飛竜軍

致死軍&飛竜軍…潜入任務の時は、軽業芸人として参入するものが多いほど身軽な兵揃い。芸人の縄張り争いで喧嘩になったこともあるらしい。

人物
公孫勝(こうそんしょう)…一点倒立が持ちネタ。
劉唐(りゅうとう)…博打のイカサマで培った、手品が上手。
楊雄(ようゆう)…お菓子販売や酒売り担当。
孔亮(こうりょう)…顔が良いのを売りにしているが、特に芸はない。
樊瑞(はんずい)…顔の四角さをフル活用した持ちネタを披露。
鄧飛(とうひ)…鎖鎌で芸をしたいが、練習による損害が大きすぎた。
王英(おうえい)…小さすぎる身体とおっさんすぎる顔はDNAがバグっていたとしか思えない。
楊林(ようりん)…意外にも、スイッチが入ると立て板に水の講談を得意としている。

3.
公孫勝「…」
劉唐(すっかり慣れてしまったが…)
楊雄(どう練習すれば、頭倒立でここまでの安定感が保てるのだろう…)
孔亮「またやってんのか?」
樊瑞「公孫勝殿」
公「出来は?」
樊「そこそこです」
孔(それにしても、樊瑞の顔は四角い…)
樊「また一点倒立ですか?」
公「お前もどうだ、樊瑞?」

樊「…しからば」
劉(しからば?)
樊「…」
楊「!?」
劉「お前できるのか、樊瑞?」
樊「餓鬼の頃から」
公「私以上の一点倒立の名手だ、樊瑞は」
楊「そうなんですか?」
孔「四角い箱が平面を転がるわけないだろう?」
樊「…お前らに見せてやろうか」
公「遂にお披露目か、樊瑞」
劉「お披露目?」

樊「…」
劉「横だと!?」
楊「頬が痛くないのか?」
樊「始めた頃はな」
孔「お前の頭蓋骨は立方体なんじゃないか?」
樊「!」
劉「左右を逆に!」
樊「!」
楊「回った!」
樊「!」
孔「また頭倒立に!」
樊「…以上」
劉「異常だ…」
孔「斜めはいけるか、樊瑞?」
樊「練習しているが、難しいな」

公孫勝…初めて見た時は幻術かと思ったぞ。
劉唐…逆立ちはできるが…
楊雄…逆立ちすると顔色が不思議な色になる。
孔亮…芸人になって荒稼ぎできるな。
樊瑞…俺の芸と項充の飛刀と李袞の軽業で興行してた事もあるぞ。

本隊 

本隊…本隊に来ただけで一流の兵。そこから騎馬隊か遊撃隊か水軍、あるいは致死軍にも行くかもしれない。早い話がどこ行ってもそれなりに大変。

人物
関勝(かんしょう)…枚を噛むたびに不味いと思っている。
呼延灼(こえんしゃく)…宋軍から来た自分に太刀打ちできる穆弘に一目置いている。
穆弘(ぼくこう)…草食系隊長。肉も食うが、草も同じくらい食う。葉物野菜ではない。草。
張清(ちょうせい)…礫を投げすぎて、梁山泊では良い石が見つからなくなってしまった。
宋万(そうまん)…梁山泊入山のしおりの表紙に抜擢。入口の門前で杜遷としている仁王像のポーズがめっちゃ決まってる。
杜遷(とせん)…年甲斐もなく、仁王像のポーズに入れ込んでしまうくらい役に入り込んでしまった。
焦挺(しょうてい)…組討ちの弟子は取らないタイプ。没面目(ぼつめんぼく)なもんで。
童威(どうい)…走るのも操船も得意。本隊騎馬隊の代理を務めることも出来るくらい乗馬もできる。メッチャ器用だな。
李袞(りこん)…部下大好き隊長。彼の率いる隊の一体感はそうそう撃破されないだろう。
韓滔(かんとう)…呼延凌に出した手紙の返事に思わずため息。
彭玘(ほうき)…韓成に出した手紙の返事に色々察するところはある。
丁得孫(ていとくそん)…意外にも、瓊英と気軽に話せる仲。

4.
穆弘「おう、李俊」
李俊「…またお前は草を食っているのか」
穆「…呼延灼との調練で、どうしても勝てなくてな」
李「俺はやっと水軍の頭になれて、清々しているが」
穆「ええい」
李「草を食うな、草を」
穆「己の不甲斐なさを草の苦味で噛み締めているのだ!」
李「…ならば朱富の店で飯を食おう」

朱富「いらっしゃい」
穆「饅頭。草増し増し」
李「今なんと言った?」
朱「お待ちどうさまです」
李「…」
穆「この草の辛味と饅頭の相性がたまらんのだ」
李「お前は草のおまけに饅頭を食っているのではないか?」
穆「否定はできん」
李「いつから草を食み始めたのだ?」
穆「貴様のせいだ、李俊」

李「あの時か」
穆「悔しさに任せ路傍の草を噛み締めたのだがな」
李「妙に覚えているよ」
穆「苦いながらも忘れられない味だったよ」
李「…」
穆「ある日、たまたま近くにあった茂みの草を食べたら」
李「…」
穆「美味かったのだ、李俊」
李「干し草は?」
穆「まだ試していない」
李「馬か鹿か?」

穆弘…食べすぎると腹が緩くなるのだがな。辞められん。
李俊…中毒ではないか?
朱富…饅頭のトッピングは、サイズの大中小。タレ。野菜の量が選べる。草や脂は常連のみ頼める裏メニュー。

5.
関勝「…」
穆弘「…」
呼延灼「二人とも何を噛んでいる?」
関「枚だ」
穆「朱富がこんな物を拵えた」
関「お前も噛んでみろ」
呼「!?」
関「美味いだろう」
呼「なんとフレッシュな…」
穆「朱富の仕入れた南国果実が、実にいい味を出している」
関「これがあれば、枚をたらふく食えるな」
呼「…」

呼「朱富」
朱富「呼延灼殿?」
呼「あのフレッシュな枚はなんだ?」
朱「…南国の物産を扱う商人と知り合いになり、果実を届けてくれたのです」
呼「…」
朱「果実を食べるだけでなく、もっと新しい使い方ができないかと考え…」
呼「…」
朱「枚を美味しくしようとしました」
呼「なぜそうなるのだ」

呼「戦の前にフレッシュ枚など噛んでいたら、兵の気が緩んでしまう」
朱「…申し訳ありません」
呼「しかし、味と鮮度は素晴らしかったぞ、朱富」
朱「…」
呼「このフレッシュ枚を、届けたい者がいる」
朱「それは?」

何信「小包が」
趙安「これは?」
公順「枚、ですな」
趙「!?」
公「趙安殿?」

呼延灼…フレッシュ枚か…
関勝…美味しくて食べすぎたら、お腹を壊して宣賛に呆れられた。
穆弘…苦い草味が好み。

朱富…呼延灼のフレッシュの発音がやたら良いのが気になった。

趙安…呼延灼殿と同じ枚を噛めるとは…
何信…敵に枚を贈るとは、敵ながら粋なフレッシュマンだよ。
公順…枚ですよ?

遊撃隊

遊撃隊…いよいよ脱いでばかりではいられなくなってきた。

人物
史進(ししん)…なんだこの密書は!?
杜興(とこう)…呉用殿も余計なことを…
陳達(ちんたつ)…いっそされちまった方がどれだけ楽か…
施恩(しおん)…替天行道に少し飽きた自分を厳しく叱った。無理ないって。
穆春(ぼくしゅん)…兄が主食として草を食べ始めたのを心配している。
鄒淵(すうえん)…呉用殿の密書の原本とコピーは永久保存しておこう。

6.
陳達「史進は?」
鄒淵「まだだ」
杜興「調練の時間だが」
陳「部屋行くぞ」
杜「示しがつかん」
鄒「何をしているんだ」

陳「史進!」
杜「何をサボっておるのだ!小僧!」
鄒「宋江殿に腐刑にされるぞ」
史「…本当にされかねんことになってしまった」
杜「では早速頼みに行こうか」
陳「よし来た」

史「待て!」
鄒「…じゃあなんで出て来ねえんだよ、史進」
史「…恥を忍んで面に出るぞ」
陳「何を今更」
杜「貴様に羞恥がないのは、周知の事実ではないか」
鄒「黙れ、杜興」
史「!」
陳「…素っ裸なだけじゃねえか」
杜「それがどうした?」
鄒「もはや日常風景と化している俺たちも大概だがな」

史「…着物が」
陳「さっさと着ろ」
杜「まさか素っ裸で調練に行くつもりか?」
史「…そうせざるを得ない」
鄒「なに言ってやがる?」
史「朝起きて驚いた」
陳「…」
史「着物が一着もない」
杜「…」
史「盗まれたのではない」
鄒「…」
史「梁山泊のあちこちに脱ぎ捨てたのが、災いしたようだ…」

杜興…じゃあ調練に行くぞ、史進。
陳達…今日は宋江殿が折よく巡回しに来られるとか。
鄒淵…お前の肉体美を魅せてやれよ。

史進…梁山泊各地の着物を集めてきてくれ!お前たち!

水軍

水軍…梁山湖の主から宣戦布告の伝令が湖畔からやって来た。

人物
李俊(りしゅん)…船の調練ができんな。
張順(ちょうじゅん)…潜れば潜るほど冷たい…
阮小七(げんしょうしち)…小五兄貴のデータは助かったぜ。
童猛(どうもう)…貝も迷惑しているらしぞ。
項充(こうじゅう)…魚や貝と話せる連中が当たり前なのに慣れてきた。
阮小二(げんしょうじ)…梁山湖の主の幹部の面はよく覚えてるぜ。

7.
李俊「梁山湖がさらに冷たくなった」
阮小七「雪解けの時期だからな」
阮小二「冬よりも冷たい頃合いだ」
張順「敬はいけるか?」
張敬「さすがに俺でも一刻…」
童猛「たいしたもんだ」
項充「指をつけるだけで痛い…」
李「張順、梁山湖の主との交渉は?」
順「巧妙に姿を隠しやがる…」
趙林「…」

趙「こんな軍議をしてるんですよ、宋江様」
宋江「そうか。梁山湖にも色々あるのだな…」
盧俊義「おう!」
趙「今の梁山湖には、絶対に落ちたり触れたりしないでくださいね、盧俊義様」
盧「おう…」
宋「舟の上は暖かいが」
盧「おう」
趙「宋江様!当たりが!」
宋「おう!」
盧「おう!」
趙「…」

宋「おう、おう」
盧「おう!」
趙(宋江様まで)
宋「おう!」
趙「大物ですか?」
宋「おう、おう!」
趙「…主ではなさそうだ」
宋「おう!」
盧「おう!」
趙「…こいつの額の傷は!」
宋「大きいな、趙林」
趙「大手柄です!宋江様!」
盧「おう?」
趙「こいつは主の側近です!」
宋「お、おう…」

李俊…こいつは?
阮小七…こいつは!俺が餓鬼の頃に尻をかじられた、額傷の鰱!
阮小二…鍋にされたくなかったら、全て話せ。
張順…話し合いは俺と敬が。
張敬…魚とも喋れるもんですな、叔父貴。
童猛…俺も貝となら話せるかもしれん。
項充…俺には理解できんな…
趙林…少し面白くなってきたぞ。

宋江…呉用に自慢しに行くぞ、盧俊義。
盧俊義…おう!

二竜山 

二竜山…楊志時代も秦明時代も林冲時代の調練に比べたらぬるいぞ、と先輩風を吹かす兵がいる。ならとっとと梁山泊入りしろって。

人物
楊志(ようし)…根暗モードになると長引くが、基本大らかで人懐っこい性格。アンチは少ない、はず。
秦明(しんめい)…狼牙棒の素振りは納得のいく音が出たらやめるのが彼の掟。
解珍(かいちん)…猟師だったから毛皮を見る目も抜群。近隣の猟師との交易で大儲けしてるとか。
郝思文(かくしぶん)…嫁の事務処理能力の高さは二竜山の智多星と言われるほど。本人曰く、惚れ直した。
石秀(せきしゅう)…フライド曹正は、曹正との言い争いの結果、食べ方を妥協することで着地した。
周通(しゅうとう)…フライド曹正を食べすぎて太った。
曹正(そうせい)…なんだかんだで、ソーセージつまみながらフライド曹正も一緒に食べている。
蔣敬(しょうけい)…兵站の仕事と同じくらいマーケティングの仕事が入っている。
李立(りりつ)…魚肉の調達に奔走中。舟はあまり得意じゃない。
黄信(こうしん)…二竜山に白虎山を含める提案が出たこともあったが、彼の猛反対が原因で流れたという。まあ鎮三山(ちんさんざん)じゃなくなっちゃうもんな。
燕順(えんじゅん)…危うく郝嬌ちゃんに操られるところだった…
鄭天寿(ていてんじゅ)…二竜山イケメンランキングNo.1。その結果に花栄はプンスコ。
郭盛(かくせい)…秦明の稽古は未だに勝てないが、汗をかかせる程度には強くなったぞ。
楊春(ようしゅん)…郝瑾の気配りに、かつての自分を照らし合わせている。
鄒潤(すうじゅん)…郝嬌に撫でられると、頭突きの破壊力が増すらしい。
龔旺(きょうおう)…瓊英に会うと未だに緊張する。本当に俺らの頭が旦那で良かったんですかい?

8.
曹正「美味いか、楊令?」
楊令「…」
曹「どうした?」
楊「曹正殿は…」
曹「おう」
楊「ソーセージ作り以外に得意なことはありませんか?」
曹「!?」
楊「今日のソーセージは、星二つと半です。曹正殿」
曹「厳しい…」
楊「ソーセージ作り以外の得意技はないのですか、曹正殿?」
曹「…そうだな」

曹「屠殺が得意だ」
石秀「屠殺される側だろうが、貴様は」
楊「石秀殿!」
石「屠殺など、子供の前で見せる代物ではないだろうが」
曹「お前のような輩が、食卓で命をいただく尊さを損なうのだ」
石「豚が豚を殺すのは屠殺とは言わん。殺豚と言う」
曹「お前の発言も子供に聞かせる代物ではないぞ!」

楊志「何事だ、令?」
令「曹正殿はソーセージ作りしかできず」
曹「!」
令「石秀殿も兵を率いることしかできないのです、父上」
石「!」
志「それは由々しい…」
曹「…」
石「…」
志「そうだ!」
令「父上?」
志「ならば二人の仕事を交換するとしようか」
令「さすが父上!」
曹「!?」
石「!?」

楊志…という訳で明日からの仕事だ。
石秀…俺がソーセージを作り…
曹正…俺が二竜山の副官だと?
楊令…良かったですね!二人とも!

9.
秦明「!」
解珍「それにしても物騒な武器だ、秦明」
秦「若い時はもっと物騒だったぞ」
解「それは?」
秦「鉄製だったからな」
解「お前らしい」
秦「騎乗で狼牙棒を振るう霹靂火と恐れられたものだ」
解「それが随分と丸くなったものだな」
秦「なんだと?」
解「奥方とせがれのおかげか、秦明?」

秦「おのれ解珍!」
解「野暮なお前の大きな尻を蹴り忘れていたが、今蹴っても良いか?」
秦「ならばこの狼牙棒でお前の尻を叩いてやろうか!」
解「おう!公淑殿!」
秦「なに!」
解「馬鹿が見たな、秦明!」
秦「許さん!」

郝思文「…私たちよりも歳上だよな?」
楊春「…」
燕順「元気なこった」

郝嬌「秦明様!解珍様!」
解「助けてくれ、郝嬌様!」
嬌「秦明様!意地悪はいけません!」
秦「違うのだ!郝嬌様!」
解「老いぼれをいじめる秦明を叱ってくれ」
嬌「秦明様!」
秦「…郝嬌様には逆らえぬ」
解「助かったぞ、郝嬌様」
嬌「解珍様には男と女の教えを受けた御恩があります」
秦「…」

秦明…よし。鉄製を持ってくる。
解珍…郝嬌様!語弊がある!
郝思文…関勝殿もだったが、なぜ私の上官は皆、嬌に恭しくなるのだろう…
燕順…郝嬌ちゃんは、只者じゃありませんよ。
楊春…郝瑾に注目している。

郝嬌…一度見かけたかっこいいお兄さんと話すにはどうすればいいか、解珍様に聞いたの!

双頭山 

双頭山…朱仝の甥っ子がいつの間にか梁山泊入りしてた。溺愛する様に周りも驚愕。

人物
朱仝(しゅどう)…髭を全部剃っても美髭公(びぜんこう)のあだ名に変わりはない。
雷横(らいおう)…麓の居酒屋の柏世くんが、梁山泊入りしたがっているのを危惧している。
董平(とうへい)…楽和の置かれた境遇に何もできない自分が不甲斐ない。
宋清(そうせい)…何とかして北京から楽和を救出できないか、孫新と連絡をとっている最中。
孟康(もうこう)…飛竜軍に配属されて生き生きしている鄧飛に振り回されている楊林の顔が見える。
李忠(りちゅう)…やっと鉄製の義足が出来上がった。めったにつけないが、鍛錬には最適。
孫立(そんりつ)…軍務はそつなくこなせる。自主性に乏しいのが玉に瑕。
鮑旭(ほうきょく)…子午山で武松の拳の鍛え方に唖然。自分もせめて分厚い瓦割くらいできるようになりたい。
単廷珪(たんていけい)…一度水軍アドバイザーに出張したら、驚くほど頼りになった。
楽和(がくわ)…北京の姉のバンドで、孫新とえらい目に合っている。

10.
朱仝「また鄧飛か!」
鄧飛「頭が堅いな、朱仝」
雷横「ルール覚えたら強いな、鄧飛は」
孟康「裏道を探すのは俺たちの常套手段だぜ、雷横」
宋清「どうしても私はそんなズルを思いつかない…」
楊林「バレねえズルは、知恵の証だよ、宋清」
朱「もう一度!」
雷「負けっぱなしで折れては戦はできん」

朱「雷横!俺は人狼ではないと言っただろう!」
雷「また鄧飛に…」
鄧「俺は一言もそんなことを言ってないぜ?」
孟「地頭良いからな。兄貴は」
宋「すっかり鄧飛の独壇場だ…」
朱「他のものはないか!」
雷「高俅抜きでもするか」
鄧「いいだろう…」
孟「…」
楊「…」
鄧「…」
宋(不穏な顔に…)

宋「結局私たち三人が残った…」
朱「またズルしたな!貴様ら!」
鄧「さて?」
雷「!」
孟(顔に出やすいのは雷横)
宋「…」
楊(宋清は手先に出るな…)
朱「!!」
鄧「朱仝は言わずとも全員が分かる」
雷「今朱仝が高俅を持っているな!」
朱「持ってない!」
雷「よし!」
宋「やった!」
朱「!」

朱仝…正直すぎる所はカードゲームや博打では格好のカモ。
雷横…あの三人の目配せに秘密が…
宋清…孟康の道を見つける観察力は凄い…
鄧飛…馬鹿正直な奴も嫌いじゃねえが、俺の性には合わねえ。
孟康…宋清の堅実なところは見習っているぞ。
楊林…散々兄貴たちにカモられてきたからな。

11.
鮑旭「!」
李忠「鮑旭?」
鮑「これは、李忠殿」
李「最近体術の稽古に励んでいると孫立から聞いたが」
鮑「ええ。武松とまではいきませんが、拳を極めようと思いまして」
李「拳を?」
鮑「その拳の突きを、喪門拳と名付けようと模索しているのですよ」
李「どこかの愚痴り屋が聞いたら怒りそうだ」

李「鮑旭」
鮑「はい」
李「私と黄信の間のことは、気にするな」
鮑「しかし…」
李「気持ちはありがたい。だがそれで、お前と黄信の間がギクシャクしたら、元も子もないだろう?」
鮑「確かに…」
李「とはいえ、鮑旭」
鮑「李忠殿?」
李「喪門神の拳は、喪門拳と呼ぶのに相応しいな」
鮑「はい!」

黄信「鮑旭が喪門剣を盗んだだと!」
孫立「兵が鮑旭の喪門拳を習いに行っているぞ」
黄「喪門神め!喪門剣で成仏させてやる!」
孫「ややこしいな」

鮑「喪門拳!」
兵「!」
李「喪門拳!」
兵「!」
黄「その名はなんだ!鮑旭!」
鮑「喪門神の拳です。黄信殿」
李「人呼んで、喪門拳さ」
黄「…」

鮑旭…李忠殿の足技は武松直伝の?
李忠…玉環歩鴛鴦脚さ。
孫立…やるな、李忠。
黄信…俺も新しい喪門剣に変わる何かを…

12.
董平「調練の計画だが…」
孫立「董平殿、現場指揮官としていくつか懸念事項が…」
董「…」
孫「その点を配慮いただけると、俺も懸念なく調練に励める」
董「孫立の案を採用する」
孫「より調練に励みます」
董(練兵や指揮官としての孫立は優秀なのに…)
鮑旭「楽大娘子殿のバンドが…」
孫「おう!」

鮑「販売したCDの不備で回収騒ぎになり…」
孫「購入した物のプレイヤーがポンコツなのだ!」
鮑「握手会をドタキャンして代打を立てて炎上したり…」
孫「仕方ないだろう!」
鮑「えげつない特典にクレームの手紙が山ほど…」
孫「焼却しろ!鮑旭!」
董(なぜ嫁の話題になると、こうも駄目になるのだ)

孫新「義姉さん、この着物は…」
楽大娘子「私を二度と義姉と呼ぶな、孫新」
孫「」
楽和「姉さん。これは一体…」
娘「これはね♪〜イケメンで可愛い和〜くんには〜こんなプリティ〜な着物も絶対似合うって〜お姉ちゃん信じてたんだもん〜」
和「…」

呂牛「お前、どう思う」
文立「正直凄いと思う」

董平…すまぬ、楽和…
孫立…見事な仕立てだ!楽大娘子!
鮑旭…楽和も孫新も顔が良いばかりに…

楽大娘子…可愛い!!
孫新…助けてくれ、顧大嫂…
楽和…お前も必ず風流喪叫仙に連れていくからな、孫新

呂牛…確かに凄いな。
文立…仕立てが一流なら、ファンになりそうだ。

流花寨

流花寨…開封府からの圧力が強いので、良い対抗策はないかと模索した結果…

人物
花栄(かえい)…一番NGを出した。
朱武(しゅぶ)…諸葛亮孔明の道服は裾が気になった。
孔明(こうめい)…「軍師じゃないんですか?」って兵に聞かれ飽きた。
欧鵬(おうほう)摩雲金翅(まうんきんし)だけあって身軽。
呂方(りょほう)…嫌な予感を感じるとすぐに逃げるところは、呂布そっくり。
魏定国(ぎていこく)…単廷珪にも秘密兵器があればいいのにな、と思っている。
陶宗旺(とうそうおう)…石積み芸術展を企画したら、お忍びで皇帝が来ていたらしい。

13.
将「流花寨の軍師に孔明がいるらしい」
兵「それは」
将「一体どんな策を使ってくるのやら…」
兵「あのいかにも孔明ですと言わんばかりの道服!」

朱武「…」

将「射ろ!」
兵「!」

花栄「!」

将「弓を弓で遮るだと!?」
兵「まさか流花寨には黄忠がいるのか!?」

呂方「…」

将「呂布まで!」

孔明「!」
欧鵬「!」
陶宗旺「!」

兵「船団があの者たちに蹴散らされています!」
将「一騎当千か…」

魏定国「瓢箪矢!」

将「矢から火が!」
兵「将軍!」
将「撤退!」

花「!」

将「」
兵「あの距離からだと…?」

花「…」

兵「あの美男。周瑜か?」

花「!」

兵「」

花「勝鬨だ!」

花「うむ。よく撮れている」
朱「役名の孔明と役者名の孔明の違いが分からん」
孔「面みたら一発だろうが」
欧「こんなかっこいいPV何に使うんで?」
花「開封府の牽制だ」
魏「将校冥利につきましたぜ」
陶「PVを見た母上から手紙が」
呂「でも矢を矢で遮るのはCGですよね、花栄殿?」
花「実写だ!」

花栄…最後に何が始まるんだ?
朱武…NGシーンだ。
孔明…花栄殿が最後のセリフを噛んだ!
呂方…矢の部分は完璧なのに…
欧鵬…陶宗旺が落ちた!
陶宗旺…身軽な演技は向いてないですって…
魏定国…風向きが変わった時は肝を冷やしたぜ。

聚義庁

聚義庁…結局史進のネタが好きなんだか嫌いなんだかよく分からない、首脳陣。

人物
晁蓋(ちょうがい)…私は嫌いではないぞ。
宋江(そうこう)…一番リアクションが分からなくて困るタイプ。
盧俊義(ろしゅんぎ)…芸として成り立っているならば認める。脱ぐだけなら即処断だ。
呉用(ごよう)…なんだかんだでむっつりスケベ。
柴進(さいしん)…下品な芸は嫌い。上品な下ネタを見せろ、史進。
阮小五(げんしょうご)…馬鹿ってそんなもんだろ?
宣賛(せんさん)…関勝殿とは馬鹿ベクトルが違うよなあ。

14.
宋江「史進を腐刑にできないだろうか」
盧俊義「!?」
呉用(盧俊義殿が茶を噴いた…)
宋「あの破廉恥は目に余る」
盧「!?」
呉(気管に入ったのか、盧俊義殿…)
宋「先日の妓楼の件はまだマシな部類だ」
呉「他にどのような破廉恥が?」
宋「史進が全裸であると言う前提のもと、話を進めるぞ」
呉「…」

宋「朱富の店の食事」
盧「…」
宋「屋外の調練での野営」
呉「…」
宋「林冲の家の訪問」
呉「あれは語り草ですね」
宋「鄆城・済州の巡回」
盧「民も慣れてしまったのかな」
宋「顧大嫂の店の食事」
呉「孫二娘の痺れ薬を飲まされ酔い潰れた所に、重石をつけて梁山湖に沈められたとか」
宋「どうだ」

盧「やむなしか…」
呉(盧俊義殿にそう言わしめるとは)
宋「それでは史進腐刑の日取りを決めよう」
呉(…本気で言っているのか?)
盧「みだりに着物を脱ぐ破廉恥を続けるようなら、有無を言わさず腐刑にしよう」
呉(本気だこれは!)

史進「…だから俺は呉用殿を嫌いなりに認めているのだ」
穆凌「…」

宋江…目に見えて破廉恥が減ったな。
盧俊義…目に見えてないならば、知ったことではない。
呉用…王定六に頼んで、遊撃隊に密書を送った。

史進…本当だからな。
穆凌…私はなんと言えば良いのでしょう…

三兄弟 

三兄弟…この三兄弟に、欧鵬、陶宗旺、施恩もいる。馬麟はタイミングが悪かった。

人物
魯達(ろたつ)…施恩の替天行道マニアぶりには適わん…
武松(ぶしょう)…欧鵬も陶宗旺もきちんとした将校になって良かったな。
李逵(りき)…俺をもっと頼れよ、弟ども!

15.
欧鵬「やい、兄貴!」
李逵「なんだ、欧鵬!」
欧「馬麟は俺より馬鹿らしいが」
李「そうだな」
欧「俺より馬鹿とはどういう意味だ!」
李「なに言ってやがる?」
欧「そもそも俺が馬鹿だと言いてえのか、兄貴!」
李「馬鹿じゃねえか」
欧「ならば、基準を教えろ!」
李「…まずは、欧鵬より賢い奴」

李「宋江様」
欧「比較されるのも恐れ多い」
李「魯達の大兄貴と武松の兄貴」
欧「まだ怖え」
李「俺」
欧「…」
李「何か言いたそうだな、欧鵬」
欧「…板斧は勘弁してくれ、兄貴」
李「陶宗旺、施恩も賢いな」
欧「あいつらは凄えよな」
李「今ので一つ俺の中で賢くなったぜ、欧鵬」
欧「なぜだ?」

李「欧鵬より馬鹿な奴」
欧「おう」
李「まず馬麟」
欧「あいつは馬鹿だ」
李「林冲」
欧「本当かよ、兄貴!」
李「公孫勝」
欧「待て!兄貴」
李「関勝も、欧鵬より馬鹿だな」
欧「おいおい、兄貴!」
李「どうした?」
欧「それじゃ俺が将軍みてえじゃねえか」
李「…やっぱり馬鹿のままだな、欧鵬」

李逵…馬鹿将軍と馬鹿な将軍ってのは違うんだよ。
欧鵬…さっぱり分からねえぞ。

養生所&薬方所

養生所&薬方所…阿吽の呼吸を通り越した、アイコンタクトと言葉のやり取りで意思疎通できる。

人物
安道全(あんどうぜん)…白勝ほどコミュニケーションできる相棒がいなくて困っている。
薛永(せつえい)…私もアイコンタクトでだいぶ分かるようになってきました。
白勝(はくしょう)…まあ文祥と毛定じゃ無理だろうな。

16.
安道全「白勝」
白勝「糸か?」
安「違う。針の変えはないか?」
白「なんだそりゃ?」
安「傷を縫う針を、あるだけ持ってきてくれ」
白「…あの馬鹿が来てるのか?」
安「折角だから見にこい、白勝」
薛永「私も!」

林冲「…」
白「お前がこんな深傷を受けるとは」
薛「林冲殿が、調練で怪我を?」

安「一字違いだ、薛永」
白「!」
林「妻の名は、忘れた」
薛「…」
白「…何やらかしたんだよ、今度は」
薛「しかしまず、傷を縫わないと…」
安「そうしたいところなのだが…」
林「!」
白「…」
安「鍛えた湯隆の針ですら刃が立たない」
薛「…真っ二つに」
白「人じゃないな」
安「林冲は林冲だ」

白「しかし、針を粉砕するほどの筋肉をどうやって断つんだ?」
林「…張藍の爪に」
安「嘘だろう?」
林「不思議と張藍の前では、筋肉が機能しなくなるのだ」
薛「でしょうね」
白「察するぜ」
林「張藍のとっておきを、またうっかり食べてしまったばかりに…」
安「お前らのそれは犬にでも食わせろ」

林冲…馬麟に同伴してもらい、鄆城のスイーツ屋さんでお詫びの品を買ったら、かろうじてなんとかなった。
安道全…次は二人でいるタイミングの林冲で実験するぞ。
白勝…顔がとろけてやがるもんな。
薛永…薬も効きやすくなっているかもしれませんね。

張藍…今日はこれ位で許してあげます!

17.
安道全「視力検査をするぞ」
穆弘「…」
安「これは?」
穆「右?」
安「これは」
穆「上か?」
安「意外に悪いな、穆弘」
穆「…それではもう片方を」
安「…」
穆「大変だ。何も見えない」
安「そういうのはいい」
穆「遮眼子が、俺を、遮った」
李俊「自分でえぐったんだろうが、お前は」
安「…」

公孫勝「…」
安「これは」
公「上」
安「これ」
公「右斜め上」
安「…難易度を上げるぞ」
公「…」
安「!」
公「林」
安「!」
公「冲」
安「!」
公「馬」
安「!」
公「鹿」
安「!」
公「嫁」
安「!」
公「菓子」
安「!」
公「食」
安「!」
公「犯」
安「!」
公「人」
劉唐「馬蹄の音が…」

林冲「貴様ら何をしている!」
安「視力検査だが?」
公「死域に入る力ではないぞ、林冲?」
林「そんな事は分かっている」
公「…」
劉(スベられた…)
林「末恐ろしい呪文が聞こえてきたぞ」
安「聴力検査ではないはずだが…」
林「他言するな」
公「指笛♪〜」
張藍「…」
林「」
張「帰りましょう」

安道全…一体何者だ、張藍殿…
穆弘…眼帯に特殊能力をつけたいな。
李俊…痛々しいキャラ付けをしているではないか。
公孫勝…肉眼でも捉えられない字を軽々読める。
劉唐…夜目バージョンでハイスコア。
林冲…隠したくても、口まわりのチョコでモロバレ。
張藍…公孫勝の指笛テストを難なくクリア。

文治省 

文治省…文官の仕事場。定時はきちんと定めているけど、定めた張本人が平気で毎日破り倒しているから、部下が困っている。

人物
蕭譲(しょうじょう)…文字が上手い以外の特技?茶を煎れるのが得意だ。
金大堅(きんだいけん)…彫物以外の特技?彫刻と研磨が得意だ。
裴宣(はいせん)…二刀流の稽古も欠かさないようにしている。

18.
蕭譲「珍しい面子だの」
裴宣「蕭譲殿、金大堅殿」
蔣敬「お二人には、いつもひとかたならぬお世話に」
金大堅「ならば勘定は、二人に任せていいか?」
裴「領収書の宛名を蕭譲殿に」
蔣「店の署名印を金大堅殿にしていただければ」
蕭「やるか?」
金「持ってるぞ?」
裴「それは」
蔣「さすがです…」

蕭「二人は繋がりがあるのか?」
裴「私の家の居候です」
蔣「若かったですから」
裴「牢にも入れられたことがあります」
金「やんちゃだの、蔣敬」
蔣「昔の話ですって」
裴「お二人とも飲みますな」
蕭「たまにはよいだろう?」
蔣「割り勘なら、お二人共一割増しですよ?」
金「せこいぞ、神算子」

蔣「伊達に銭勘定を生業にしてません」
蕭「ところで裴宣」
裴「なにか?」
蕭「嫁とはどうなのだ」
裴「それは」
金「おう、鉄面孔目が」
裴「…」
蔣「みるみる赤面孔目に」
裴「やめないか…」
金「なぜ母夜叉なんて物騒な嫁を?
裴「…話すと長くなりますが」
蔣「聞きます?」
蕭「勘定は裴宣だ」

裴宣…笑った時の寂しさが無くなったのが契機で…
蔣敬…とっくに看板ですよ?
蕭譲…店主が延長料金をつけ始めた。
金大堅…茶漬けを二杯も振る舞われたぞ。

塩の道

塩の道…仕事もハードだが、遊びもハードに楽しむ連中揃い。

人物
盧俊義(ろしゅんぎ)…私も遊びも全力だ。だからこそ、仕事も没頭できるのだ。
燕青(えんせい)…彼の自作ゲームは宋国全土でブームが起きつつある。
蔡福(さいふく)…悔しいが、なんだかんだでやりこんでしまう。
蔡慶(さいけい)…俺の頭じゃ兄貴ほど考えらんねえよ…

19.
蔡福「…」
蔡慶「…」
福「勝負!」
慶「おう!」
燕青「…」
福「鉄臂膊の捨て台詞!」
慶「いつも吐いてんじゃねえか…」
福「貴様の軟弱な小旋風など、屁の突っ張りにもならん」
慶「一枝花の太陽光線!」
福「病関索には今ひとつだな」
慶「くそっ」
福「病関索の斬首!」
慶「決まりやがった!」

慶「兄貴の処刑組は一筋縄では勝てん…」
福「伊達に手を血で染めてない」
燕「蔡福」
福「…やるか」
燕「私の精鋭中の精鋭で勝負だ」
福「…」
燕「選りすぐりの浪子と李師師から産ませた浪子で相手しよう…」
福「李師師を孕ませるとは。斬首ではすまんぞ、燕青?」
慶「ゲームの話だからな、皆!」

燕「浪子の高速突き!」
福「くそっ、急所か!」
慶「三手後に死ぬのか?」
福「鉄臂膊の死の宣告!」
燕「…一手無駄にしたな、蔡福」
福「李師師の腕輪か!」
燕「浪子の跳び膝蹴り!」
福「しまった!病関索にしておけば…」
燕「浪子のとんぼ返り!」
福「なに!?」
燕「玉麒麟の大暴れ!」
福「」

燕青…玉麒麟も選びに選び抜いた一匹だからな(浪子・玉麒麟・鉄叫子)
蔡福…天罡星上位は極力使いたくないタイプ(鉄臂膊・病関索・喪門神)
蔡慶…二人のやり込みぶりについていけない(一枝花・小旋風・大刀)

李師師の腕輪…どんな罪があっても無罪になれるレアアイテム。本物はこの世に一つしかない。

練兵場 

練兵場…将校調練を終えた者には、配属先を言い渡されると同時に、美味しいごはん引換券がもらえる。

人物
徐寧(じょねい)…鉤鎌鎗法も使いどころがある戦術だが、用途は限定的。

20.
馬麟「お前は双頭山か、鮑旭」
鮑旭「馬麟は林冲殿の騎馬隊か」
馬「…」
鮑「いきなり凄いではないか」
馬「…訳がわからんぞ。あの男は」
鮑「林冲殿が?」
馬「これから嫌というほど苦労しそうだ」
鮑「私だって何が起こるか分からん」
馬「…鮑旭」
鮑「馬麟?」
馬「…今生の別れでは、ないよな」

鮑「何を言っている、馬麟」
馬「…」
鮑「また会うぞ」
馬「…」
鮑「たとえどんな困難な戦になろうと、私は戦い抜いて、生き残る」
馬「…」
鮑「だからな、馬麟」
馬「…」
鮑「お前もどんな困難な戦があろうと生き残ると、約束してくれ」
馬「片足の一本くらいは無くすかも知れんぞ」
鮑「全く…」

鮑「じゃあ、暫しの別れだ」
馬「ああ」
鮑「また、会うぞ」
馬「…またな」
鮑「じゃあ!」
馬「♪〜鉄笛〜♪」
鮑「♪〜
   青山横北郭
   白水遶東城
   此地一爲別
   孤蓬萬里征
   浮雲遊子意
   落日故人情
   揮手自慈去
   蕭蕭班馬鳴
       〜♪」

馬麟…少し会えなくなるだけで、必ずまた会えるさ…
鮑旭…友人を送る…か。

間者

間者…変装も仕事の一部。やりすぎるくらいがちょうどいい。

人物
時遷(じせん)…歳に似合わぬイケメンで端正な顔。女装が栄えるほど。
石勇(せきゆう)…時遷のシミュレーションに付き合っているうちに、女心が分かり始めてきた。
侯健(こうけん)…顔はちょっと猿っぽい。通臂猿(つうひえん)だもんね。
孫新(そんしん)…イケメン。しかし顧大嫂が惚れたのは、顔ではない。
顧大嫂(こだいそう)…孫新に求婚された時は冗談だと思ったが、いつの間にか所帯をもっていた。
張青(ちょうせい)…フツメン。孫二娘とは半ば成り行きだったと彼は言う。
孫二娘(そんじじょう)…張青から銀の髪飾りをもらいたかったのさ。

21.
時遷「…」
石勇「今回は入念な化粧ですな、頭領」
時「…今、話しかけるな」
石「…失礼しました」
時「今回の役は?」
石「齢二十代前半。商家の娘。父親に溺愛されて、男に少しわがままな傾向あり。母の手ほどきにより裁縫と料理の腕前は中々の者。という役です」
時「…少し練習させてくれ、石勇」

石「いかん!待ち合わせに遅れた」
時「もう!石勇さん!遅い!」
石「半刻も経っていないではないか…」
時「戦に遅れたら処断されるでしょ!」
石「…その例えは商家の娘がするには物騒すぎますな」
時「いかん…」
石「あなたのお料理も焦げついちゃうわよ、とかどうでしょう?」
時「悪くないな」

時「わあ!石勇さん!芸人が凄い芸をやっているわ!」
石「見事な犬の芸だな」
時「私もあんなかっこいい男の人と出会えないかな?」
石「…俺がかっこ悪いみたいではないか、それでは」
時「…拗ねてるの?石勇さん」
石「知らん!」

侯真「二人は何をしているのですか、父上」
侯健「これも仕事だ」

時遷…ところでお前の役は?
石勇…商家の次男。両親から長男と比較されがちなところが負い目になっており、嫉妬深いところがある。それでも兄との関係は悪くなく、その繋がりで頭領と出会って初めてのデート、という設定です。

侯健…あの装束で中年のおっさんだぞ。
侯真…大人って怖いです、父上…

梁山湖

梁山湖…この中華で月夜が映える湖畔もそうそうない。

22.
楽和「〜♪〜唄〜♪〜」
宋清「…相変わらずいい声だ、楽和」
楽「ありがとうございます」
宋「…」
楽「宋清?」
宋「唄が好きだったよ…」
楽「宋清が?」
宋「昔愛した、女が」
楽「…愛した、か」
宋「嫌な話を一つしてもいいかな?」
楽「…誰にも言わないよ」
宋「私は女を殺した」
楽「それは」

宋「愛した女を、女に殺された」
楽「…」
宋「そして私がその女を殺した」
楽「…」
宋「自分の手でな」
楽「…」
宋「だが、その女も男に嵌められて、孤独だったことが、後になって分かった」
楽「…」
宋「誰だって、心が弱ってしまった時は、嵌められることもある」
楽「…」
宋「…兄が許せない」

宋「兄の暖かさや優しさが、私の殺した女にもっと注がれていれば、こんなことにはならなかった」
楽「…」
宋「だから時折、酷い憎悪に襲われることがあるのさ」
楽「…」
宋「…すまん。楽和」
楽「…いいよ」
宋「唄ってくれないか?」
楽「…」
宋「愛した女と、殺した女のために」
楽「分かった」

楽和…今は宋清のために唄おう。
宋清…聴き終わったら、また兵糧を集めてこよう。

23.
燕青「♪〜鉄笛〜♪」
馬麟「…」
燕「…」
馬「♪〜鉄笛〜♪」
燕「…」
馬「…」
燕「やはり良いな」
馬「お前の笛も」
燕「…私は自由に吹くことだけが、どうしてもできない」
馬「…俺は決められた曲を吹くことが、どうしてもできないよ」
燕「お互いが、羨ましいのだろうな」
馬「そうだな…」

燕「浪子の笛が曲に縛られているなんて、聞いて呆れるな…」
馬「鉄笛仙の笛が適当なんて、誰にも言えんぞ?」
燕「…違いない」
馬「お互いに無いものを持っている、と思えたらどれだけ良いか」
燕「…そうだな」
馬「俺は曲を譜面通りに吹けるようになりたい」
燕「私は自由に吹けるようになりたい」

馬「お前の笛に嫉妬しているよ、燕青」
燕「私もさ、馬麟」
馬「俺は、もっと真っ直ぐに生きたかった」
燕「私は、もっと自由になりたかった」
馬「自由ではない、いい加減と言うんだ」
燕「私は真っ直ぐではなくて、堅苦しいのさ」
馬「…」
燕「…」
馬「吹くか、燕青」
燕「合わせてくれ、馬麟」

燕青…梁山湖の月夜か…
馬麟…吹かずにはいられんだろう?

雄州

雄州…覆面の不審者を放逐しようとしていた所を関勝が助けた。

24.
関勝「こんな辺鄙なあばら屋ですまんな、宣賛」
宣賛「…」
関「当面の食い物は俺の従者に欠かさず届けさせる」
宣「…」
関「力仕事は協力するが、掃除ぐらいは自分でやれよ」
宣「なぜだ、関勝?」
関「宣賛?」
宣「なぜ醜い私にここまでする?」
関「気にするな。俺が好きでやっている」
宣「…」

関「そうだ」
宣「…」
関「何か欲しいものはないか?」
宣「…」
関「宣賛?」
宣「お前が読みきれないだろうという量の、書物を」
関「分かった」
宣「覚えてたら、書物にかかった費用は返してやる」
関「それは助かる」
宣「関勝?」
関「俺は忘れてしまうからな」
宣「…」
関「必ず届けさせるぞ」

宣「…」
関「食い物はあるから、後はお前でなんとかしろよ」
宣「…行くのか」
関「軍務を抜けて来てるからな」
宣「…将軍が、それでいいのか?」
関「それが俺さ」
宣「関勝」
関「なんだ?」
宣「礼は言わん」
関「いらん」
宣「…」
関「まあ、お前の子どもに恩知らずと言いふらしてやるけどな」

関勝…自室の積読本を軒並み片付けられてスッキリしたな!
宣賛…また一から、学問に取り組めるのか…

25.
宣賛「金翠蓮殿…」
金翠蓮「…なにか?」
宣「実に美味いぞ」
金「…なにがですか?」
宣「なにが…」
金「?」
宣「…言わないと伝わらないかな?」
金「…申し訳ございません」
宣「謝らないでくれ、金翠蓮殿」
金「…申し訳」
宣「翠蓮殿」
金「!」
宣「…」
金「…つい、謝ってしまうのです」

宣「私も気にしないようにするよ」
金「…」
宣「ただ、少しづつ、悪い事をしてもいないのに謝るのは、減らしていこうな」
金「…はい。ありがとうございます」
宣「それでいい」
金「…それで、宣賛殿?」
宣「なにかな?」
金「なんの話でしたっけ?」
宣「…」
金「…」
宣「…すまぬ。今思い出す」

金「今、謝られましたね?」
宣「!」
金「宣賛殿は悪い事をされたのですか?」
宣「待ってくれ、翠蓮殿。今思い出す」
金「粥をどうぞ」
宣「食べながら思い出す」
金「…」
宣「…」
金「…」
宣「!」
金「思い出しましたね?」
宣「…」
金「何の話ですか?」
宣「謀ったな、翠蓮殿」
金「さて?」

宣賛…私とした事が…
金翠蓮…二重の意味で味をしめた。

戦場

戦場…束の間の休息でも色々あったようで…

26.
宋江「後方で、戦を見ているだけの私は、恥ずかしさで身の置き所がなくなってしまう」
焦挺「なぜ、宋江殿が、恥ずかしいと言われるのですか?」
宋「分からぬ。が、私は梁山泊の頭領の一人と言われるようになってから、常に恥ずかしいと思い続けている」
焦「宋江殿」
宋「なんだ?」
焦「こちらを」

宋「動画か?」

史進「これより。軍袍を着用せずに、具足のみ着用して戦に出る」

宋「…」
焦「今日の史進の実況動画です」

史「不正防止のため、これより軍袍を脱ぎ、具足を着用する一部始終を記録するぞ!」

宋「…」

史「脱〜脱〜裸〜着〜着」

焦「…」

史「諸君。生きてたらまた会おう!」

宋「死ななかったのか?」
焦「それがですね…」

史「また会ったな諸君!」

宋「くそ!」
焦「宋江殿!?」

史「今日の相手も雑魚だった。傷一つ付いていない俺の美しい肉体を…」
晁蓋「史進!」
史「晁蓋殿?」
晁「朱武の指令で、遊撃隊の手荷物検査を実施するぞ」
史「!?」
晁「早くしろ、史進」

宋江…ここまで怒るのか、晁蓋…
焦挺…画面越しでも身が竦みましたよ。

晁蓋…命をなんだと思っているのだ!

史進…晁蓋の厳命でアカウントを永久停止処分された上に、陣中を裸で引回しにされた。

林冲さん家

林冲さん家…張藍が叱ることはしょっちゅうだが、その逆はない。あり得ない。

27.
張藍「林冲」
林冲「…」
張「今回の一件は、私からの問いを全て間違わずに答えたら、許してあげましょう」
顧大嫂(私らですら、背筋が伸びるね)
孫二娘(さすが豹子頭の手綱を握ってるだけのことはある)
張「誤るたびに、孫二娘殿最強のお酒か、顧大嫂殿激辛焼き饅頭を食べるのですよ、林冲」
林「…」

張「第一問は、サービス問題です」
林「…」
張「私の父の名は?」
林「張…」
張「…」
顧(嘘だろう?)
孫(仕込み始めるよ、顧大嫂)
林「張青!」
孫「そりゃ私の旦那だ!豹子頭!」
林「馬鹿な!?」
孫「三杯呑んだら潰れる酒を、六杯呑め!馬鹿子頭!」
林「…」
顧(孫二娘までキレさせやがったね…)

林「…」
顧「朦朧としてるね、林冲」
孫「死なさないだけましさ」
張「第二問」
林「…」
顧(よだれが…)
張「私と顧大嫂殿と市販の饅頭を食べ比べてください」
林「…」
張「…」
顧「…」
張「私の饅頭と顧大嫂殿の饅頭を選びなさい」
林「…分からんが、一番美味いのはこれだ」
顧「殺そう、張藍」

林冲…味覚も肝臓も面子も全滅したところを公孫勝に見られた。
張藍…何度言っても学習しなくて…
顧大嫂…流石にあたしも聞き捨てならんよ。
孫二娘…林冲の名札を張藍にしよう。

28.
林冲「猫耳が生えた」
張藍「まあ」
林「聴覚が倍になって頭が痛い」
張「珍しいですね」
林「なんだと!」
張「頭の筋肉痛ではないのですか?」
林「おのれ!公孫勝の野郎みたいな口を!」
張「!」
林「待て!」
張「!?」
林「…」
張「…私も?」
林「…」
張「…」
林「張藍…」
張「猫が豹に…」

林「なんとかしろ、安道全!」
張「私も!」
安道全「獣は皇甫端ではないか?」
林「確かに」
白勝(納得しやがった)

林「なんとかしろ、皇甫端!」
張「私も!」
皇甫端「…」
段景住「なんだ?」
林「!」
段「!?」
林「貴様も道連れだ!」
段「…この耳は?」
林「お前は犬か」
張「金毛犬ですね」

林「公孫勝の野郎にも移してやる」
張「いってらっしゃい!」
皇「…うがい手洗いを怠ったからだ」
段「?」

公孫勝「…」
林(見つけた!)
公「なんだ、馬鹿」
林(!?)
公「耳がはみ出しているぞ、馬鹿」
林「しまった!」
公「お前にはロバの耳が似合いそうだが」
林「野郎!」
公「移すな。馬鹿を」

林冲…逃さんぞ!ウスノロ!
張藍…開き直ってあざとく猫っぽく振る舞ったら、男性ファン急増。林冲もメロメロに。

安道全…私たちはなんともないな。
白勝…鼠の耳は勘弁だな…

皇甫端…地元でよくあるウイルスだ。
段景住…手洗いとうがい続けてたら取れた。

公孫勝…竜の髭など生えてたまるか。

青蓮寺

青蓮寺…仕事変態揃いの謎のお寺。寺だと思った参拝客が困惑することもしばしば。

人物
袁明(えんめい)…お寺のお土産売り場の販売員と勘違いされた時、つい接客をしてしまった。
李富(りふ)…お経を読んでくれと無茶ぶりされたが、声がつぶれてて読めなかった。
聞煥章(ぶんかんしょう)…カップルの記念撮影を頼まれた時、思わずカメラを叩き壊して弁償させられた。
洪清(こうせい)…お寺の掃除の立ち振る舞いにも一かけらの隙もない。
呂牛(りょぎゅう)…聞煥章のおまけ。どこにでもついてくる。本当に、どこにでも。

29.
袁明「青蓮寺高齢化問題が表面化しつつある」
洪清「…」
袁「我らとて例外ではないぞ、洪清」
洪「…」
袁「青蓮寺の仕事を辞める時が来たとする」
洪「…」
袁「私には李富がいるが、後継となりうる若手がいない」
洪「…」
袁「李富に万一の事があっても危うい」
洪「…」
袁「どうしたものだろう」

洪「殿」
袁「…」
洪「青蓮寺をフレッシュにするというのは」
袁「洪清」
洪「…」
袁「昔に囚われるとは、お前らしくない」
洪「ご無礼を」
袁「よい」
洪「…」
袁「それにしても、洪清」
洪「…」
袁「青蓮寺には、優秀だがまともな若手がおらぬな」
洪「否定できませぬ」
袁「聞煥章を」
洪「…」

聞「太守として表に立てつつ、裏で我らの傀儡として操る策の件ですが」
袁「裏で操る者の候補は?」
聞「私の使っている手の者で、相応しい者が」
袁「聞煥章」
聞「はい」
袁「その手の者は、まともか?」
聞「袁明様」
袁「…」
聞「変態でなければ、青蓮寺には入りませぬ」
袁「…確かに」
洪「…」

袁明…なんと真っ直ぐでひたむきな変態さだ、聞煥章。
洪清…フレッシュマンの衣装をいつでも着れる準備はできている。
聞煥章…私は自分が変態である自覚はあるぞ。だからまともでいられるのだ。

禁軍

禁軍…童貫もフレッシュマンの瑞々しさに感化され始めた。衣装は絶対に着ないけどね。

人物
童貫(どうかん)…新しい調練を考える調練を思いついた。
趙安(ちょうあん)…フレッシュ!

30.
趙安「フレッシュ!諸君!」
兵「フレッシュ!」
趙「今日の調練は…」

何信「今日の趙安殿の衣装も乱れがない」
公順「…おや?」
何「どうした、公順?」
公「今日の衣装は、昨日よりも色が控えめですな」
何「そうか。お前はまだフレッシュマンの衣装の掟を知らなかったな」
公「ご教示願います」

何「かつてフレッシュマンの衣装は厳しい掟や基準、規則が定められていた」
公「…」
何「それを趙安殿が、フレッシュマンの衣装の自由化を推進された」
公「衣装の自由化?」
何「世界各国の仕立て屋が、各々のフレッシュを表現した衣装ならば、どのような衣装でも着こなすと趙安殿が決められたのだ」

公「英断ですな」
何「だから、誰しもがフレッシュマンの衣装をデザインしても良く…」
公「…」
何「趙安殿も喜んで着こなしてくれるだろう」
公「そうですな!」
何「皆のもの!待っているからな!」
公(誰に言ってるんだ?)
王煥「…でも公順殿」
公「久しぶりだな」
王「めっちゃキモいっすよ?」

趙安…明日のフレッシュマンの衣装はどれにしようか…
公順…ちょっとだけ着る前の気持ちを思い出した。
何信…新鮮組の調子はどうだ、王煥?
王煥…みんなずっと出番がないから辞めようかって話してたっす。

31.
童貫「何もしないをする調練を行う」
鄷美「…どうやってするのですか?」
童「何もしないをするのだ。鄷美」
畢勝「恐れながら、元帥…」
童「…」
畢「呼吸と瞬きはありでございますか?」
童「…」
畢「…」
童「共に必要最小限行う事のみ、許可する」
鄷「…妄りにした者は?」
童「罰調練を行う」

李明「何もしないをする調練?」
童「始め」
馬万里「元帥!」
童「!」
馬「!?」
鄷(思わず喋ってしまったな、馬万里)
畢(迂闊にリアクションも取れない)
陳翥「…」
童「!」
陳「!?」
李(目を瞑るのは無しだな)
段鵬挙「…」
童「!」
段「!?」
鄷(吐息が深いぞ、段鵬挙)
畢(しかし苦しい…)
童「」

童「」
鄷(…待てよ)
畢(これは誰が辞めの合図を出せるのだ?)
童「」
韓天麟(もしや元帥も…)
王義(辞めの合図を出したくても、出せないのでは?)
鄷(いかん…)
畢(鄷美?)
鄷「〜屁」
李「鄷美殿!」
韓「それは無いです!」
王「鄷美殿の放屁など、笑えませんぞ!」
童「…」
畢(元帥…)
李(お顔が)

童貫…連帯罰調練だ、皆の者。
鄷美…昨日食った夕飯が、マズかった…
畢勝…何を食ったのだ、鄷美!
李明…くだらなすぎる…
馬万里…罰調練とは、一体…
陳翥…この行軍は、中華を横断する距離ではないか?
段鵬挙…ツボった。
韓天麟…腰が抜けた。
王義…思い切り嗅いでしまったのを後悔している。

楊令伝

黒騎兵

黒騎兵…軍だって事務処理は大事なんだぞ。

人物
楊令(ようれい)…書類は最後まできちんと目を通す。
郝瑾(かくきん)…物を書く姿勢がとてもいい。
張平(ちょうへい)…書類?郝瑾殿がやってくれるんでしょ?
蘇端(そたん)…書類?文字もろくに読めませんぜ?
蘇琪(そき)…書類?牧童が文字読めると思ってるのか?
耶律越里(やりつえつり)…書類?筆も持ったことは殆どないぞ?

32.
楊令「郝瑾。この文書は。」
郝瑾「申し訳ございません」
楊「そうではない」
郝「楊令殿?」
楊「…良くできてるな、と言おうと思ったのだが」
郝「恐縮です」
楊「こちらこそ、誤解させる言い方をして申し訳ない」
郝「いえいえ。こちらこそ早合点してしまい…」

蘇端「良くやる」
張平「叩頭蟲か」

楊令…こちらこそすまなかった。頼むからこれ以上謝らないでくれ、郝瑾。
郝瑾…楊令殿にそのような事を言わせてしまったとは、申し訳ございません。

蘇端…こりゃ誰がみても叩頭蟲だよな。
張平…楊令殿がそんなことで叱るわけない。

遊撃隊

遊撃隊…シシハラ問題が飛び火しつつあり困っている。

人物
班光(はんこう)…なかなか史進に口火を切れない。
鄭応(ていおう)…よく分からねえが、調練はさせねえと…
穆凌(ぼくりょう)…もしかしたら、シシハラ以外の不満があるのでは?

33.
史進「…ここは?」
班光「史進殿!」
史「おお!班光!」
鄭応「調練の時間ですぜ、史進殿」
史「…鄭応まで」
穆凌「本日もよろしくお願いいたします」
史「皆が。皆が裸になっている…」
班「何を言われているのですか?」
鄭「裸とは?」
穆「…我らはいつもの調練の格好ですよ」
史「…それは?」

史「楊令殿や兵どころか、扈三娘まで裸だったとは…」
班「それでは湯浴みに行きましょうか!」
史(なにか違和感が)
鄭「史進殿!なにをしている!」
史「なんだ?」
穆「湯浴みの時は着物を着ないと…」
班「これだから史進殿は…」
史「湯船で着物を着るのか?」
班「湯船で着ないでいつ着るので?」

史「班光」
班「なんですか?」
史「貴様に常時着物の着用を命ずる」
班「!?」
史「命令だ、班光」
班「着物を着るくらいなら、死んだ方がましです!」
史「…言質はとったぞ。班光」

史「という世界だ」
班「…」
史「羞恥が逆転した世界も楽じゃない」
班「…」
史「言質はとってあ」
班「嫌です」

史進…全裸の世界に異世界転生する夢だ。
班光…一人だけ羞恥の概念が逆転した世界に行くのは恐ろしいですね。
鄭応…扈三娘殿まで裸だったんで?
穆凌…史進の話は笑い話として聞いている。

本隊

本隊…こんな場面があってもいいだろう?

34.
楊令「…」
曹正「来たな」
蔣敬「この面子ですか…」
郭盛「今のお前と酒を飲むのを心から楽しみにしていたよ」
楊「…俺もだ。皆」
曹「あの童だった楊令が…」
蔣「言葉にならない…」
郭「楊令。この合図は?」
楊「また小李広の的外れ、だ」
郭「見てますか!二竜山の大将!」
曹「泣くな、郭盛」

曹「この日のためのとっておきだ」
楊「…」
蔣「また仕事ほったらかして、試作してたもんな」
郭「この日のためなら仕方ない」
曹「曹正の極太ソーセージだ!」
蔣「!」
曹「石を投げるな、石を!」
楊「!」
曹「秀でた頭領になれんぞ!楊令!」
郭「この芋の揚げ物は?」
曹「フライド拚命三郎だ」

楊「…」
曹「美味いか、楊令?」
楊「…」
蔣「…」
楊「星五つでも足りない…」
曹「…ありがとよ」
郭「これは美味い…」
蔣「またCM撮るか?」
楊「俺は構わんぞ?」
曹「着ぐるみだけは勘弁してくれよ」
楊「あれは父上が悪い」
郭「楊令!切り分けてくれ!」
楊「吹毛剣で切り分ける」
曹「…」

楊令…吹毛剣も美味そうにしているぞ?
曹正…昔撮影したCMの上映会をするぞ!
蔣敬…あの時のマーケティングが今に生きるなんて…
郭盛…初っ端から最後まで泣きながら笑いっぱなし。

方臘軍

方臘軍…こんな連中はいてはいけない…

人物
方臘(ほうろう)…たちが悪いを一周して帰ってきたスーパー教祖。
趙仁(ちょうじん)…コントロールできると思って来るんじゃなかった…
石宝(せきほう)…壁風刀(へきふうとう)というえぐい刀の遣い手。
包道乙(ほうどういつ)…どこから信徒を集めてくるのかと思う勢いで、信徒をすごい量集めてくるのはさながら妖術。

35.
方臘「信徒はどれほど集まった?」
包道乙「三ヶ所で大々的な死に兵可能な黒字です」
方「よし」
趙仁(よしって…)
方「信徒の度人を促すために、俺は輝くような教祖なだけでは駄目だと考えた」
石宝「それは?」
方「梁山泊の宋江は、四六時中泣き言を言う頭領だったというから真似するのだ」
趙「」

方「私は教祖失格だ」
信徒「教祖様!?」
方「こんな弱い教祖では、自害したほうがいい…」
趙(妙に似ている)
方「いかん!」
信「教祖様!」
方「こんな所で転ぶとは、教祖失格だ…」
趙(あざとい)
包「度人っ子ですな、教祖様」
方「皆…」
信「!」
方「こんな駄目な私だが…」
信「度人!」
趙「」

方「まあ、こんなものか」
包「石宝の軍と相まって、それなりの打撃を与えられましたな」
方「包道乙は、俺の度人っ子教祖の側面もPRしてくれ」
包「かしこまりました」
方「趙仁」
趙「…」
方「趙仁!」
趙「しまった!」
方「…趙仁?」
趙「…ご無礼を」
方「梁山泊の呉用みたいだったぞ」
趙「」

方臘…決めるところは決めるが、ドジなところもある度人っ子教祖路線で行くぞ。
包道乙…部下に鄭彪という優秀な弟子がいる。包道乙よりえげつない策を平然と言うとか。
石宝王寅という豪傑や龐万春という弓の名手が部下にいるとか。
趙仁…心臓がいくつあっても足らん…

二仙山

二仙山…あの世とこの世の境目。うっかり足を踏み入れたら、死んだ身内にあうことがあるらしい。

人物
羅真人(らしんじん)…口が悪い自称仙人。でも持っている技からして本当かも?

36.
羅真人「二仙山立合場へようこそ」
史進「…」
聞煥章「…」
呂牛「…」
羅「始め!」
聞「またか…」
史「何者だ、貴様ら!」
呂「全裸で暴れた馬鹿に名乗る名などない」
聞「私にも偽名だよな?」
史「ほう。いたのか、お前は」
呂「どうだか?」
史「さては、柴進をさらうのをしくじった間抜けか」

呂「!?」
史「図星だな間抜け」
聞「お前は、九紋竜か!」
史「…この面子、読めた」
聞「なにを言っている?」
史「!」
聞「!?」
呂「躊躇いもなく裸に!」
史「どうせ浅はかにも変態の括りで俺をこの立合場に招いたのだろう、爺」
羅「…」
史「断言するぞ」
聞「…」
史「俺は裸だが変態ではない」

呂「微塵の説得力もない…」
史「間抜けは夜な夜な他人のしたたかを覗いていそうな面だ」
聞「よく分かったな、九紋竜!」
呂「聞煥章!」
史「…貴様こそ変態だ、間抜け」
呂「…」
聞「いつも困っていたのだ」
史「お前もまさか覗かれるのに慣れたのではあるまいな?」
聞「!」
史「図星か、変態」

史進…こんな下劣な変態と一緒にするな!
聞煥章…全く反論の余地もないが…
呂牛…なぜ全裸の男に物申す事ができないのだ…

羅真人…さすが史進。変態の器すら己で叩き壊してしまうとは。

元ネタ

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中学生の頃から大好きだった、北方謙三先生大水滸シリーズのなんでもあり二次創作です!