見出し画像

水滸噺 20年11月【九紋竜の毒】

あらすじ
九紋竜跳澗虎 毒牙剥き
少華山遊撃隊 毒されては死屍累々
花項虎中箭虎 毒を吐き
没羽箭張清隊 毒を食らわば皿まで


すいこばなし 注意書き
北方謙三先生水滸伝何でもありな二次創作です。
・水滸伝の原典ネタは日常茶飯事、スマホにPCなど電子機器も飛び交うし、あの人が梁山泊で元気に生きていたりする、異世界からお届けします。
・原作未読の方でも楽しめるように、ネタバレを極力避けていますが、薄々感づいてしまう個所が垣間見えますので、その点はご注意ください。
楊令伝編で出てくる好漢は、すなわち水滸伝を生き残った者ということですので、未読の方はその点ご留意いただいた上でお読みください。
・作者のtwitterにて連載しています。
・今月号、バックナンバーのご意見ご感想、リクエスト等々、こちらまで
 お寄せいただけると、とても嬉しいです!いつも助かっています!
・原作に興味を持たれるきっかけになったらこれ以上の喜びはありません。



それでは行ってみましょう!

梁山泊

梁山泊…初代首領をデザインした彫像があったが、古参の手により秘密裏に木っ端みじんにされた。

致死軍&飛竜軍

致死軍&飛竜軍…志願者の間口は広く設けているが、合格率は極めて低い。

人物
公孫勝(こうそんしょう)…すっかり林冲が頭倒立を会得してしまったから、それに変わる倒立を模索中。
劉唐(りゅうとう)…調練の鬼と恐れられているが、そりゃ赤髪鬼(せきはつき)だもんな。
楊雄(ようゆう)…首斬り役人だったんだけど、体力と腕力だけには自信があった結果の致死軍隊長。
孔亮(こうりょう)…軍人だったんだけど、性格の陰険さとか卑怯な作戦の数々があった結果の致死軍隊長。
樊瑞(はんずい)…用心棒だったんだけど、異常すぎる身体能力があった結果の致死軍アサシン。
鄧飛(とうひ)…目の赤さが損なわれつつあるのが不満。魯智深の腕の肉と同じ肉を食べてないからだというが、果たして。
王英(おうえい)…青州の妓楼で、王英が来たとき用の笛を用意されてしまった。
楊林(ようりん)…鎖鎌の分銅が軽くなってきた。多分経年劣化だが少し困る。

1.
杜遷「公孫勝殿」
公孫勝「杜遷?」
杜「一度致死軍の調練に参加させてくれないか?」
公「劉唐」
劉唐「分かった。まずは俺たちの調練に参加してくれ」
杜「よろしく頼む」
楊雄「年齢は関係ないからな、杜遷」
杜「無論だ」
石秀「では遠駆けから始めるから俺たちについて来てくれ」
杜「分かった」

劉「遅れているぞ、杜遷」
杜「なんの!」
楊(よく追いついているが)
石(時間の問題かな)
劉「崖登り!」
杜「それならば得意だ!」
劉「ならば、先鋒杜遷!」
杜「任せろ」
劉「やるじゃないか」
杜「走るより得意だ」
劉「賭けないか、杜遷」
杜「何を?」
劉「俺はお前がやり通すのに銀五粒賭ける」

劉「小休止!」
楊「珍しいな、劉唐殿」
杜「遅れた罰として、私を見張りに立たせてくれ、劉唐」
石「俺も行く」
杜「せめてこの一日を乗り切りたい」
石「共に駆けよう、杜遷」
劉「進発!」
杜「…」
石「あと少しだ」
劉「やめ!」
杜「やり通したか」
劉「杜遷」
杜「おう」
劉「銀五粒な」
杜「」

杜遷…劉唐にはしてやられたが、年の功の助言は楊雄、石秀ともども役に立った。
公孫勝…あと少し若ければな。
劉唐…小休止に他意はないぞ。
楊雄…石秀まで払わなくても…
石秀…杜遷と共に駆けたから手持ちの銀を半分支払った。

本隊

本隊…当たり前のように調練している練兵場でたびたび目撃される地縛霊とは?

人物
関勝(かんしょう)…お化けだと思ったら、覆面外した宣賛だった。
呼延灼(こえんしゃく)…お化けだと思ったら、化粧パックしている杜興だった。
穆弘(ぼくこう)…お化けだと思ったら、眼帯が派手すぎる自分の顔だった。
張清(ちょうせい)…瓊英と結婚する前の女々しさたるやなかった…
宋万(そうまん)…地縛霊をしょっちゅう罵っている姿を目撃される。
杜遷(とせん)…地縛霊をしょっちゅう叱責している姿を目撃される。
焦挺(しょうてい)…地縛霊にしょっちゅう体当たりしている姿を目撃される。
童威(どうい)…水鬼だと思ったら、おぼれてる李俊だった。
李袞(りこん)…魔王だと思ったら、筋トレしてる樊瑞だった。
韓滔(かんとう)…畑のかかしのデザインを呼延灼にしたら朝影が寄ってきた。
彭玘(ほうき)…近隣の居酒屋の経営危機を救おうとはしごしまくっている姿を目撃される。
丁得孫(ていとくそん)…飛叉の名手は的を射る発言に定評がある。

2.
宋万「体術なら敵わんが」
焦挺「!」
宋「槍なら負けん!」
焦「…また負けた」
杜遷「お互い林冲の稽古様々だな」
宋「焦挺。分かっていると思うが」
焦「下っ端からせびるなんて…」
宋「ボヤくな。没面目」
焦「王倫!」
王倫「はい」
焦「お前の遺産はないのか?」
王「…ありません」
宋「ほう」

杜「まだ彷徨っていたのか、王倫」
宋「王倫の遺産か」
焦「使い所もなかったから、しこたま残っているでしょうね」
王「…この梁山泊を遺しただけで良いのではないか」
焦「今はそうはいかん」
宋「こいつら朱貴の店で皿を割り放題割ってな」
王「どういう事だ?」
杜「陳麗殿に腕相撲で負けたのだ」

宋「飲み代タダか溜まった皿を洗うかの腕相撲」
焦「陳麗殿の筋肉は質が違います」
杜「こいつら揃いに揃って腕力ばかり強くて器用さがない」
王「遺産などないぞ」
焦「出せ、王倫」
宋「成仏させるぞ」
王「出して欲しくばもう一度私を首領に」
宋「詫びに行こう」
焦「失せろ、王倫」
王「待て!」

宋万…洗い場で陳麗が怖気を振るうような棒を持って立ってた。
焦挺…皿を割るたびに棒で叩かれた。
杜遷…陳麗殿に一体何があったんだ?

王倫…梁山泊に未練たらしくしがみつく地縛霊。本当に遺産はあるのか?

3.
陶宗旺「骨折は治ったか、施恩」
施恩「大丈夫だ」
陶「すまなかったな」
施「謝ることではない。お前のおかげで宋江様に会えたのだからな」
陶「お前の盛り上がりようは凄かったぞ」
施「それはそうだろう」
陶「盛り上がりすぎて、あの場で夜通し宋江様と語らおうとしていたものな」
施「そうだな」

陶「一体何を語らおうとしていたのだ?」
施「替天行道の販促についてだ」
陶「それは?」
施「替天行道ビリオンセラーキャンペーンを企画した」
陶「どんな?」
施「字の読めないものからガチ勢まで満足させる通信教育プログラムを組んだ」
陶「もしや替天行道ブログの主は」
施「俺だ」
陶「なんと」

施「お前が熱心な返事をくれた九尾亀さんだったとは」
陶「世話になった」
施「あの戦で石積み実況をした時の瞬間再生数は超えられないぞ」
陶「骨折しながらそんなことをしていたのか」
施「武松殿にキツく叱られた」
陶「だろうな」
施「あの戦の皆にインタビューをしたいのだが」
陶「やめておけ」

陶宗旺…石積みインタビューは辺鄙な地の農家から支持を受けている。
施恩…意外と宋江が乗り気でインタビューに答えてくれた。

遊撃隊

遊撃隊…やってることが毎度しょうもないが、足の引っ張り合いもまたしょうもない。

人物
史進(ししん)…脱いでも脱がなくても文句を言われる稀有な好漢。
杜興(とこう)…史進との勝敗表を人知れずつけている。今月は負け越した。
陳達(ちんたつ)…史進と出会う前の自分を思い出せなくて焦った。
施恩(しおん)…替天行道チャンネルの登録者がほとんど身内だった。
穆春(ぼくしゅん)…掲陽鎮のお父さんから手紙と猫の写真と変えのパンツがしこたま届いた。
鄒淵(すうえん)…史進を猟に連れて行ったら色々めんどくさかった。

4.
陳達「史進を誑かすなど容易い」
鄒淵「さすが付き合いの長いことはあるな」
陳「しかしその後の報復を受けるのはごめん被るぞ」
杜興「宋江殿の厳命書を蕭譲に偽造して貰えば良いではないか」
陳「ならばよし」
鄒「最近の史進の所業は目に余る」
杜「我らで懲らしめようぞ」
陳「蕭譲に頼んでくる」

蕭譲「宋江殿の字は真似できん」
陳「早速つまずいてしまった」
蕭「いくら真似をしても真似できんのだ、宋江殿の字は」
陳「俺には何一つ分からん」
蕭「呉用殿の字ならば目をつぶっても書けるぞ?」
陳「呉用殿が史進を腐刑にする厳命を出すかな?」
蕭「盧俊義殿は?」
陳「呉用殿より出しそうだ」

杜「待て史進」
鄒「一体どうして燕青の逆鱗にも触れちまったんだ、陳達」
陳「皆目見当がつかん!」
杜「わしを腐刑にした所で誰も得をしないだろう」
陳「誰を腐刑にしても誰も得はせん」
燕青「…」
鄒「なぜお前が史進の腐刑にそこまで怒るのだ、燕青」
燕青「言えんよ」
史「一人を生贄に捧げろ」

陳達…杜興を生贄に捧げようとして失敗。
杜興…鄒淵を生贄に捧げようとして失敗。
鄒淵…陳達を生贄に捧げようとして失敗。

蕭譲…最近盧俊義殿からの依頼がキツいな?

史進…ならば三人とも引き摺り回してやろう。
燕青…私も立ち合おう。史進。

二竜山

二竜山…魯達と武松が結構遊びに来るらしい。なんだか居心地がいいという。

人物
楊志(ようし)…魯智深の無茶ぶりで隊長にさせられたことをまだ根に持っている。いい加減しつこい。
秦明(しんめい)…魯達に公淑のことをからかわれたことをまだ根に持っている。いい加減しつこい。
解珍(かいちん)…魯達に肉をひと切れ多く食べられたことをまだ根に持っている。いい加減しつこい。
郝思文(かくしぶん)…魯達に関勝をからかわれて冷や汗をかいたことをまだ根に持っている。いい加減しつこい。
石秀(せきしゅう)…公孫勝に致死軍を抜けるように言われたことをまだ気にしている。そのうちいい事あるって。
周通(しゅうとう)…武松にやっつけられたことをまだ根に持っている。いい加減しつこい。
曹正(そうせい)…曹正のソーセージをまだ持ちネタにしている。いい加減しつこいにもほどがある。
蔣敬(しょうけい)…勘定ばっかりやってるのが飽きてきた。たまには文章を書きたい。
李立(りりつ)…米料理ばっかり作ってたから、麦料理の勝手がまだ分からない。
黄信(こうしん)…花栄の代わりに一日副官をやったことがあるが、秦明曰く二度とやらない。
燕順(えんじゅん)…なぜ妓楼の主が王英を入店させるのか不思議でならない。
鄭天寿(ていてんじゅ)…銀細工が売れに売れて調練に励む時間がない。
郭盛(かくせい)…楊令と散歩をしていたら白い犬と出会った。
楊春(ようしゅん)…一言ネタで下ネタしか浮かばなかった頃は史進を恨んだ。
鄒潤(すうじゅん)…猪を頭突きで撃退したら猪武者と言われた。腑に落ちねえ。
龔旺(きょうおう)…張清の女々しさと無粋さが我慢ならなくなってきた。

5.
曹正「いい加減にソーセージ作りから脱却しようと思う」
石秀「やっと気づいたか」
楊志「何を作るんだ?」
曹「肉料理からも足を洗う」
楊「ほう」
石「豚足の下拵えでも始めるのか?」
曹「野菜で何かできないだろうか」
楊「野菜は食が進まんから嫌だ」
石「お前の餌ではないのか?」
曹「貴様ら」

曹「レパートリーを増やしたいんだ」
楊「どうせソーセージになるんだろう?」
曹「操刀鬼の粋を尽くして野菜を刻んだ」
楊「細かいな!」
石「お前の吐息で撒き散らすなよ」
曹「これを使って」
楊「ソーセージか?」
石「結局刻むしか脳がないな」
曹「饅頭のタレにしよう」
楊「華がないな、曹正」

曹「このタレの彩りを見ても同じことが言えるか!」
楊「これは!」
石「お前の吐瀉物と見間違えたぞ」
曹「楊志」
楊「退場だ、石秀」
石「覚えてろ!」
楊「…お前もこんな料理が作れるのか」
曹「操刀鬼にかかればな」
楊「早速いただこう」
曹「食いしん坊め」
楊「酷く不味いぞ…」
曹「馬鹿な」

曹正…辛味が尖りすぎて不評だった。済仁美に習いに行こう。
楊志…仁美の飯で舌を整えよう。
石秀…白嵐に性根を叩き直された。

双頭山

双頭山…なんだかんだでBクラスからは脱却したが、Aクラスなのかと言うとそうでもない気がする。

人物
朱仝(しゅどう)…髭がしゃべり始めたのは空耳ではなかった…
雷横(らいおう)…麓の居酒屋の伯世くんが本採用になったお祝いをしてあげた。
董平(とうへい)…作詞センスが致命的にないが、曲作りは結構好き。
宋清(そうせい)…仕事中に鉄扇の師匠に出会った。
孟康(もうこう)…鄧飛の眼が普通の色に戻りつつある気がしている。
李忠(りちゅう)…鉄の義足のおかげで腰が据わってきた。
孫立(そんりつ)…楽大娘子への手紙の返事が来なくて久しい。
鮑旭(ほうきょく)…史進と短期間一緒に暮らしていたせいか、その毒が…
単廷珪(たんていけい)… 水軍アドバイザーの仕事が増えてきた。
楽和(がくわ)…ボーカロイドソフトが売れに売れているが、利用者の心ない使い方に難色を示している。

6.
宋清「鉄扇を武器にしようと思う」
朱仝「ほう」
雷横「剣ではないのか?」
宋「私は軍人ではないからな」
朱「どんな動きになるのだ?」
宋「手本を見せてくれた商人は体術と組み合わせていた」
雷「共に技を模索しよう」
宋「体術もできるのか?」
朱「髭も身体よ、宋清」
宋「それはいらん、朱仝」

雷「体術をするにはもっと筋力があった方がいいぞ、宋清」
宋「足腰には自信があったが」
朱「いかん。絡まった」
雷「舞のような動きになるのか?」
宋「師範の商人は流れるような動きだった」
雷「打撃力はどんなもんだ?」
宋「試してみるか?」
朱「お前ら。髭から外してくれ」
宋「!」
朱「!?」

雷「さっきから何をしている、朱仝」
朱「打つなら髭を打ってくれ」
宋「断る」
朱「がっつり絡まってしまった」
雷「蓄えすぎだぞ」
宋「髭のキューティクルがすごい」
朱「美髭公だ」
宋「鉄扇を返してくれ」
朱「だから取れんと言っている」
宋「迷惑な髭だ」
朱「!」
宋「なんだ!」
雷「髭が!」

宋清…朱仝の髭に自我がある!
朱仝…暴れるな!髭よ!
雷横…髭が鉄扇を振りまわし始めやがった!

7.
楽和「私のボーカロイドで卑猥なことを言わせないでくれ、史進」
史進「こんなソフトがあったらやむなしだろう」
楽「なんだこの下品な歌は」
史「風流喪叫仙といえどカバーするならば使用料を徴収するぞ」
楽「誰が歌うものか」
董平「待て楽和」
楽「隊長?」
董「メロディーがいいと思わないか?」

楽「何を馬鹿な!」
董「このドラムソロはそそるものがある」
楽「なんとか言ってくれ、鮑旭!」
鮑旭「このギターパートは腕がなる」
楽「馬麟!」
馬麟「♪〜鉄笛〜♪」
楽「もう会得している!?」
董「あとはお前だけだ、楽和」
楽「嫌です!」
鮑「そうは言うが…」
馬「多数決なら」
楽「嫌だ!」

史「ならば俺が風流喪叫仙のボーカルになろう」
董「やむなしか」
楽「隊長!」
史「いくぞお前ら!」
鮑「…」
馬「…」
楽「嘘だろう…」
史「♪〜✖︎✖︎✖︎✖︎✖︎〜♪」
楽「酷い…」
董「♪〜」
鮑「♪〜」
馬「♪〜」
楽「三人とも何という演奏を…」
史「✖︎✖︎✖︎」
楽大娘子「貴様ら」

楽和…久しぶりに姉が頼もしかった。

董平…史進に当てられたが…
鮑旭…メロディーはいい…
馬麟…尻鼓と相まってな。

史進…真顔の扈三娘とは違う意味で怖かった。

楽大娘子…楽和を北京に連れて帰った。

聚義庁

聚義庁…別にやんなくてもいいだろって年中行事が結構ある。呉用がノリノリで激務の合間を縫ってはプログラムとか作ってる。

人物
晁蓋(ちょうがい)…寝起き姿そのままでセレモニーに来やがった。スタイリストを募集中。
宋江(そうこう)…事前打ち合わせの甲斐なく大ポカをやらかす常習犯。
盧俊義(ろしゅんぎ)…めんどくさい行事は花だけ送って誤魔化している。
呉用(ごよう)…すごく凝ったプログラムとか作りたがるけど、その通りに進んだことは一度もない。
柴進(さいしん)…来賓代表の祝辞を任されることが多いがめんどくさくて仕方がない。
阮小五(げんしょうご)…呉用のプログラムの検閲係。すごくめんどくさい。
宣賛(せんさん)…すごくめんどくさい年中行事の時は思わず爆睡。覆面のおかげで気づかれにくい。

8.
穆春「なぜ史進がテープカットを?」
陳達「やつはテープカットではなくパイプカットされて宦官になるのではないか?」
施恩「一体なんのセレモニーだ」

史進「…」
宋江「…」
林冲「…」

穆「それにしてもテープカットとはシュールな儀式だと思わんか」
陳「たしかに」
施「何がめでたいのだろう」

穆「今にも史進がテープを切りそうだな」
陳「いや、宋江殿も悪意なく切りそうだぞ」
施「林冲殿もまどろっこしくて切り落としてしまいそうだ」

呉用「ドラムロールの音の後で私がどうぞと言ったらテープを切って」
史「いかん!」
宋「しまった」
林「なんだ!」

穆「共倒れだ」
陳「なんという…」

宋「今切っていいのではないのか?」
史「宋江殿に釣られて…」
林「俺も」
呉「…」

穆「やり直しか?」
陳「やり直すほどのものではあるまい」
施「だから一体なんのテープカットなんだ?」

宋「せっかくだから去勢しようか、史進」
史「どういうせっかくですか、宋江殿」
林「せっかくだ、史進」

穆春…そういえば穆弘もテープカットを失敗したことがあったのを思い出した。
陳達…失敗するものなのか?
施恩…堪え性の問題だろう。

史進…なぜですか!
宋江…せっかくだと言った。
林冲…観念しろ、史進。

呉用…断金亭改築のお披露目会だったのだが…

養生所&薬方所

養生所&薬方所…外科も内科も肛門科だって万事対応!

人物
安道全(あんどうぜん)…すごいものを拵えたな…
薛永(せつえい)…治療するかいがあるな。
白勝(はくしょう)…この汚ねえ尻の皮をぶち抜いてくるとはな。

9.
薛永「史進はどこだ!」
白勝「逃げやがった」
安道全「効きすぎるほど効くお灸をしこたま用意したのだが」
薛「伝令を送ろう」
馬雲「(`_´)ゞ」

史進「…えらいことになった」
薛「いたぞ!」
史「しまった!」
薛「観念しろ!」
史「…前門の虎」
薛「…」
史「肛門の狼か」
薛「一緒にするな!」

史「尻が痛むがお前の相手くらいなら」
薛「」
史「いつの間に後ろに!」
薛「後門の虎だ」
史「どちらの意味で?」
薛「私を巻き込むな」
史「尻が痛くて逃げれん…」
薛「観念しろ、史進」
史「だからといって、あんなに燃え盛る灸を用意しなくてもいいではないか!」
薛「治療だ」
史「…分かった」

安「来たな史進」
杜興「史進の懲罰と聞いて飛んで来た」
陳達「肛門の会だな」
鄒淵「でかい吹き出物だ」
史「貴様ら悪趣味にも程があるぞ」
杜「わしらも灸を置かせてくれ」
安「無論だ」
史「くそっ!」
安「この灸はおできに良く効くぞ、史進」
史「火がデカすぎんか?」
薛「覚悟!」
史「!!」

薛永…まあ火が小さくても効能は同じなんだがな。
安道全…竜の逆鱗にも置いておこう。
白勝…これが本当の荒療治だ。
馬雲…(*^^*)/

史進…熱さのあまり身動きも取れないが、お尻のおできはきれいに治った。
杜興…尻全体にお灸を配置した。
陳達…おできに直置きして絶叫させた。
鄒淵…デカすぎだろう、史進。

間者

間者…目立たないけど、地頭力も身体能力も欠かせないセクションだぞ。

人物
時遷(じせん)…おなじみの柔軟性。靭帯を少しやってしまった。
石勇(せきゆう)…侯真の本気のかくれんぼ相手。いい勝負。
侯健(こうけん)…腕が長いとスポーツで色々重宝されるそうだ。
孫新(そんしん)…体力はないが地頭は良い。
顧大嫂(こだいそう)…体力は無尽蔵。旦那と良い組み合わせ。
張青(ちょうせい)菜園子(さいえんし)の頃に少しだけ身体を使っていたが、それっきり。
孫二娘(そんじじょう)…気配を消すのが上手い。張青が震え上がるほどに。

10.
侯健「高俅に呼び出された」
戴宗「あんな外道に気に入られて何が嬉しい」
侯「お前もだぞ、戴宗」
戴「…なぜだ?」
侯「行けば分かる」
戴「むざむざ殺されに行くのではなかろうな?」
侯「命は保証する」
戴「一体何の用だ…」
侯「靴を用意しておけ」
戴「靴?」
侯「これを」
戴「スパイクか?」

高俅「おう、侯健、戴宗」
侯「お待たせしました。高俅様」
戴「一体これは…」
高「蹴鞠の人員が足りなくてな」
戴「…なぜ私にお声を?」
高「梁山泊随一の俊足だそうではないか」
戴「なぜそれを?」
高「私の情報網を侮るな、戴宗」
戴「私が右サイドを?」
高「お前の突破力に期待しているぞ」

戴「侯健はゴールキーパーか」
高「戴宗!」
戴(見事なクロスだ!)
高「決めろ!」
戴「!?」
高「戴宗」
戴「…申し訳ございません、高俅様」
高「惜しかったではないか」
戴「高俅様?」
高「私もクロスの上げ甲斐があるものよ」
戴「…」
高「駆け抜けろ、神行太保!」
戴(蹴鞠ではいい奴なのか?)

侯健…リーチを活かしたセーブに定評あり。
戴宗…俊足を活かす高俅のクロスに感銘を受けてしまった。

高俅…宋国一番の司令塔。蹴鞠ではフェアプレーがモットー。政は知らん。

少華山

少華山…朱武も楊春もギリギリのところで史進の毒から回避できたが、陳達は…

11.
楊春「何が言いたい史進」
史進「お前が爆笑をとる所が想像できんと言いたいのだ!」
楊「俺は芸人ではない」
史「つまらん…」
陳達「しかし少華山では俺と史進ばかりが笑いをとっているではないか」
楊「兄者の笑いは昔からくだらん」
陳「なんだと!」
朱武「ならば俺と楊春が組もう」
史「面白い」

朱「…」
楊「…」
陳「何を始める気だ」
史「…」
朱「楊春。何味の飴を舐めている?」
楊「ハッカだ」
陳(くだらねえ)
史「いつものをやるぞ陳達」
陳「よし」
楊「…」
史「飛べ!跳澗虎!」
陳「!!」
史「勢いで着物が!」
朱「酷いな」
楊「グダグダにも程がある」
史「ならば力を合わせよう」

朱「神機軍師の陣形講座」
陳「魚鱗の陣!」
楊「史進の鱗が!」
史「目から鱗だ」
陳「鶴翼の陣」
楊「史進の翼が!」
史「虎に翼だ」
陳「それは俺だ」
朱「八陣図!」
陳「史進の守る門は!」
史「肛門」
楊「死門にしてやろう、兄者」
朱「傷門でもいい」
史「尻でも喰らえ!」
陳「肛門の壊だな」

楊春…言わせんぞ史進。
史進…肛門の拷問中。
朱武…頭が悪くなってきた気がしてならない。
陳達…それにしても汚い尻だ。

清風山

清風山…妓楼から届く警告状のレパートリーが増えすぎた結果。

12.
鄭天寿「王英兄貴。てめえまたやらかしやがったな」
王英「どの事だ!鄭天寿!」
鄭「野郎、心当たりがそんなにあるのか」
王「しまった!」
鄭「燕順兄貴にチクられる前に自白しろ」
王「…どの妓楼だ?」
鄭「麓の妓楼だ」
王「屋根の色は?」
鄭「…白」
王「なんだその妓楼か」
鄭「大概にしろよ」

王「そこなら二度と行かないから安心しろ」
鄭「釈然としねえ」
王「あそこは価格帯と女の質が噛み合ってねえからな」
鄭「いつか後悔するぞ、兄貴」
王「するものか」
鄭「俺が麓に行く度、一体どれだけの銀細工で詫びをしていることか」
王「性が出るな」
燕順「てめえはどこから精を出してんだ?」

王「兄貴!」
鄭「最低な表現だ」
燕「精を出してきたな、王英」
王「今は別のもんが出そうだぜ、兄貴…」
鄭「懲らしめよう」
燕「技という技はかけちまったからな」
鄭「物理的な技じゃ堪えなくなってやがる」
燕「じゃあ精神的な技をかけるか」
王「どんな技だ!」
鄭「宦官になる動画を見ようか」

鄭天寿…モザイク無し無修正の一発撮りだぜ。
王英…トラウマになるレベルの代物で、小さい身体がさらに小さくなった。
燕順…盧俊義殿が持っていたとは口が裂けても言えん。

飲馬川

飲馬川…魯智深の腕を食べてからの肉料理に満足がいかないようで…

13.
孟康「今日こそ鄧飛兄貴の暴走を食い止めるぞ」
楊林「また魯達殿の肉の代わりを探しているのかよ?」
孟「無益な殺生はしていないらしいが」
楊「どうだかな」
孟「もう獣肉では満足出来なくなったそうだ」
楊「香辛料覚えちまった西洋人みてえだ」
孟「このままでは兄貴がタンパク質を摂取できんぞ」

鄧飛「肉はねえか、孟康」
孟「豚か兎ならあるぜ」
鄧「火眼狻猊に食わせる肉じゃねえ」
楊「じゃあ虎や狼の肉とかどうだ?」
鄧「用意できてるのか、楊林?」
楊「飲馬川の近場で虎が出る噂を入手した」
鄧「早く狩りに行くぞ、お前ら」
孟「…この方角の山は双頭山じゃねえか?」
楊「挿翅虎の事か」

鄧「草食動物や家畜の肉じゃ燃えねえんだよ、孟康」
孟「魯達殿の腕ほどの肉といったら…」
楊「林冲とか公孫勝の腕か?」
鄧「硬いか食うところが無さそうだ」
孟「ところで変わった味の肉饅頭だな、楊林」
楊「魯達殿が仕入れてきた、母夜叉の肉饅頭だよ」
孟「…縮毛か?」
鄧「この味だ!楊林!」

孟康…鄧飛の命令で飲馬川にしこたま仕入れてきたが、製造工程に不安が。
楊林…一個で胸焼けする饅頭だぜ…
鄧飛…食えば食うほど目が赤くなっている気がする。

チーム張清

チーム張清…瓊英対策会議はいつも不毛な時間だ。

14.
丁得孫「なんとしても瓊英殿を嫁にするだと?」
張清「鄔梨殿の試練をパスするための力を貸してくれ」
丁「拐っちまえば一発じゃねえのか?」
張「賊徒のような真似をしたら瓊英殿の気持ちは手に入らんだろうが!」
丁(張清殿の精神年齢じゃ割りに合わねえと思うんだが)
龔旺「で、どうするんです?」

張「鄔梨殿の婿比べの傾向と対策を盗んでこい」
丁「なら俺が瓊英殿を演じてやる」
張「瓊英殿」
丁「なんですか、張清様?」
龔(対応早いな)
張「今日も礫の稽古をしないか?」
丁「私は張清様とお話ししたいのですが…」
張「ならば河原で礫を投げながら」
丁「アウトだ。張清殿」
張「なんだと!」

丁「それは張清殿がやりたいことであって、瓊英殿のやりたいことではない」
張「確かに…」
丁「それは万が一結婚が成ったとしても気をつけたほうがいい傾向だぞ、張清殿」
張「釈然としないが留意しよう…」
丁「現状俺の方が瓊英殿とよい結婚生活を送れるだろうな」
張「くそっ!」
龔(さすが丁得孫)

丁得孫…山賊暮らしが長かったからか、女性の扱いは張清より手練れ。
張清…お坊ちゃんだったから女性や人の感情の機微にものすごく疎い。
龔旺…この頃は張清が振られた時のことを慰めるシチュエーションしかしてなかった。

15.
龔旺「瓊英殿と手を繋いだ時のシミュレーションがしたい?」
張清「二度も言わせるな、龔旺」
丁得孫「だがここにいるのは俺と龔旺だけですぜ?」
張「二度も言わせるな、丁得孫」
龔「俺と丁得孫で両手繋ぐんで?」
張「その発想は無かったが…」
丁「しょうがねえから俺と龔旺が瓊英殿になりますよ」

丁「張清様!向こうに虹が出ていますよ!」
張「…そうか」
丁「張清様には何色に見えますか?」
張「見えるようにしか見えん」
龔「虹の麓には何があると思いますか、張清様?」
張「誰もたどり着けぬ地平線しかないだろう」
丁「龔旺」
龔「最低だな、張清殿」
張「なぜだ!」
龔「自覚がないとは」

丁「俺たちで完璧な未来を見せてやろう」
龔「見て驚け」
張「おう…」
丁「張清様!虹が見えますよ!」
龔「おう!赤橙黄緑青藍紫とはよく言ったものだ!」
丁「虹の麓には何があるのでしょうね!」
龔「俺たちの明るい未来ではないかな?」
丁「張清様!」
龔「瓊英!」
鄔梨「何をしている貴様ら」

龔旺…鄔梨の懲罰を投げやりにならず耐え忍んだ。
張清…耐え忍ぶ三人を心配する瓊英の視線に心が痛んだ。
丁得孫…鄔梨を買収しようとしてしくじり一際厳しい懲罰を受けた。

鄔梨…傭兵如きに瓊英ほどの娘をやれるものか!
瓊英…まんざら丁得孫は悪くないと思っている。


twitterにて連載中!

ご意見ご感想やリクエストは、こちらまでよろしくお願いいたします!

今号も、お読みいただき、誠にありがとうございました!

これからもすいこばなしを、どうぞよろしくお願いします!


中学生の頃から大好きだった、北方謙三先生大水滸シリーズのなんでもあり二次創作です!