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水滸噺 20年9月【フレッシュマンの果実】

あらすじ
及時雨 梁山湖に雨を降らし
両頭蛇 指揮官に花を浴びす
宋皇帝 フレッシュの果実を摘まみ
蒼天飆 梁山泊風土にそよ風吹かず 

すいこばなし 注意書き
北方謙三先生水滸伝何でもありな二次創作です。
・水滸伝の原典ネタは日常茶飯事、スマホにPCなど電子機器も飛び交うし、あの人が梁山泊で元気に生きていたりする、異世界からお届けします。
・原作未読の方でも楽しめるように、ネタバレを極力避けていますが、薄々感づいてしまう個所が垣間見えますので、その点はご注意ください。
楊令伝編で出てくる好漢は、すなわち水滸伝を生き残った者ということですので、未読の方はその点ご留意いただいた上でお読みください。
・作者のtwitterにて連載しています。
・今月号、バックナンバーのご意見ご感想、リクエスト等々、こちらまで
 お寄せいただけると、とても嬉しいです!いつも助かっています!
・原作に興味を持たれるきっかけになったらこれ以上の喜びはありません。

それでは行ってみましょう!

梁山泊

梁山泊…秋が深くなると紅葉も猪も鹿も蝶も映えるものだ。山の獣は食われがちだけどな。

致死軍&飛竜軍

致死軍&飛竜軍…木枯らしが肌寒くなる時期。見張りも任務の一部だぞ。

人物
公孫勝(こうそんしょう)…部下はみんな、この皮下脂肪でよく寒さに耐えられると思ってる。
劉唐(りゅうとう)赤髪鬼(せきはつき)で意外に紅葉に擬態できる。
楊雄(ようゆう)…顔が黄色い病関索(びょうかんさく)も意外と銀杏に擬態できる。
孔亮(こうりょう)…顔がいいだけの独火星(どっかせい)は普通に枯れ葉の山に隠れている。
樊瑞(はんずい)…どんなに細い枝の上でも微動だにさせずに待機することができる。さながらコウモリ。
鄧飛(とうひ)…隠れたり待機するのは苦手。堪え性がなさすぎる。
王英(おうえい)…小さいから隙間とか影とかに隠れやすい。でも足はあまり早くない。
楊林(ようりん)…根暗キャラは表に出ていても気づかれないことしばしば。

1.
石秀「公孫勝殿」
公孫勝「…」
石「渭州の地下牢にいた時」
公「…」
石「隣の公孫勝殿の房からバタンバタンと音が聞こえてきて謎だったのですが」
公「…」
石「なんの音だったのですか?」
公「¡」
石「!?」
公「これだ、石秀」
石「…」
公「なんだと思っていた?」
石「私は駄々をこねる音かと」

公孫勝…その日は石秀と口を利かなかった。
石秀…また無意識に公孫勝の地雷を踏んでしまった。

遊撃隊

遊撃隊…紅葉狩りと称してお互いの身体を叩きあうレクリエーションで大盛りあがり。下は脱ぐ必要ないんじゃないか?

人物
史進(ししん)…成敗にやってきた林冲により尻に見事な手形を残された。
杜興(とこう)…若い兵に年甲斐もなく大はしゃぎしている様を李応に見られた。
陳達(ちんたつ)…林冲に史進を売った張本人。
施恩(しおん)…替天行道のしおりに綺麗な紅葉を挟んでいたが、史進の尻の跡の方が見事だった。
穆春(ぼくしゅん)…かくし芸大会で役どころに苦悩した。
鄒淵(すうえん)…林冲に史進を売ろうとしたら、ついでに退治された。

2.
史進「四天王にならないか?」
陳達「どういう意味だ?」
史「梁山泊には五虎将がいるという」
杜興「関勝、林冲、秦明、呼延灼、董平らしいの」
鄒淵「董平?」
史「俺たち遊撃隊もそんなユニットを組もうではないか」
陳「九紋竜、跳澗虎、出林竜、鬼瞼児…」
鄒「鬼臉児に一貫性がねえな」
杜「!」

史「すると遊撃隊三銃士の方が良いのか」
杜「待て史進」
陳「なんだ爺」
鄒「まさか俺たちと並び立とうとしてるんじゃなかろうな」
杜「…誰がお前たちなどと!」
陳「じゃあいいじゃねえか」
鄒「引っ込め鬼瞼児!」
杜「くそっ」
史「待て杜興」
杜「史進?」
史「四天王入りするチャンスをやろう」

杜「何をやらせる気だ」
史「次の騎馬隊との調練の時に…」
杜「…分かった」
陳「正気か?」
鄒「ほっとけ陳達」

林冲「突撃!」
杜「勝負だ!豹子頭!」
林「杜興?」
杜「覚悟!」
林「引っ込んでろ!」
杜「鬼瞼児!」
林「!?」
索超「杜興が毒霧を噴いた!」

杜「…これで良いか?」
史「よし」

史進…これからは鬼瞼児らしい化粧をしろ。
杜興…この歳になって初めての悪さにときめいているという。
陳達…あのキャラ付けは史進が?
鄒淵…自発的らしい。

林冲…杜興の毒霧がかぶれた。
索超…あれは鬼瞼児だ…

3.
杜興「鬼瞼児ミスト!」
兵「臭え!」
兵「汚ねえぞ!爺!」

扈三娘「…」

扈「李応殿」
李応「あの杜興が…」
解宝「すっかり史進に毒されやがった」
鄒淵「あの歳で初めてのやんちゃだからな」
李「それは?」
解「若い頃に娯楽を禁じられた奴が、爺になって味をしめちまったのさ」
李「痛いな…」

杜「鬼瞼児ファイア!」
兵「燃える!」
兵「やりすぎだぞ爺!」
李「楽しそうだな、杜興」
杜「李応殿!」
兵「助けてくれ、李応殿!」
兵「俺たちでも手に負えなくなっちまった!」
杜「何を!遊撃隊のクズどもが!」
兵「いい歳して弾けすぎなんだよ、爺!」
李「私もそう思うぞ、杜興」
杜「!!」

李「父上や援に英が今のお前を見たらなんと言うか…」
杜「それだけは辞めてくだされ…」
李「我に帰ったか、杜興」
杜「はい…」
李「お前が遊撃隊のストッパーにならねば誰がなるのだ?」
杜「…おっしゃる通りです」
李「史進を頼むぞ杜興」
杜「…はい」

史進「杜興を叱責すると呉用殿が」
杜「」

李応…独竜岡の面々とはたまに集まる。杜興抜きで。
扈三娘…あの折り目正しい杜興殿が…
解宝…史進の毒は杜興にも効くんだな。
鄒淵…俺も手遅れなんだろうな。

杜興…試してない化粧のパターンは泣く泣くお蔵入り。
史進…俺もひくレベルではっちゃけやがったから堪らねえよ…

水軍

水軍…梁山湖の主との決着が遂に!

人物
李俊(りしゅん)…湖畔の生き物にも敬意を払わんとな。
張順(ちょうじゅん)…父の張礼秘伝の粉は、防寒力が向上するらしい。
阮小七(げんしょうしち)…子供の頃、鯉の長老に説教された。
童猛(どうもう)…こんなデカい塔を担いで渡ったってか?
項充(こうじゅう)…趙林が飛刀を習いにやってきた。
阮小二(げんしょうじ)…任務終了後、珍しく趙林の肩を叩いた。

4.
李俊「行くぞ、お前ら!」
項充「おう!」
阮小二「おう!」
阮小七「おう!」
宋江「趙林頼んだぞ」
趙林「おう!」
盧俊義「おう!」
童猛(梁山湖じゃおうしか言わなくなるな)

張順「冷えな、敬」
張敬「堪らんですな、叔父貴!」
順「あいつが鯉の長老のせがれだな」
敬「良い色してやがりますな」

順「主は寒冷化装置にいるというが」
敬「それにしても叔父貴の秘術はなんなんですか?」
順「親父の秘伝さ」
敬「水中で喋れるのも?」
順「便宜上な」
敬「…深いですね」
順「深く潜るのは阮小七に譲るんだが…」
敬「…叔父貴、主が」
順「随分デケエな…」
敬「俺が行きます」
順「宋江殿を待て」

宋「ここか、趙林」
趙「おう!」
盧「おう!」
宋「張順たちも辛かろうな…」
盧「おう…」
宋「主と会う準備だ」
趙「宋江様、合図の針を!」
宋「おう!」

敬「叔父貴、針が!」
順「来たな、宋江殿」
敬「…寒い」
順「敬、ここは俺が行く」
敬「そんな!」
順「俺を引き上げるのも大事な役目さ」

李俊…槍魚は二発とも外せないからな。
阮小二…湖畔の案内は任せろ!
阮小七…生き物との繋ぎは任せろ!
項充…槍魚なら任せろ!
童猛…湖底の探査なら任せろ!

宋江…湯隆とっておきの針だ!
盧俊義…おう!
趙林…おう!

張順…梁山湖湖畔戦の先鋒。
張敬…二人で行きたかったが、まだ早かった。

5.
張順「来やがったな!」
主「!!」
張敬「叔父貴!」
順「浪裏白跳を侮んじゃねえぞ!」
主「!」
順「追いついてみやがれ!」
敬(悔しいけど早く上がろう)

趙林「張敬!」
宋江「よく耐えたぞ、張敬」
盧俊義「おう!」
敬「でも、叔父貴が…」
宋「心配するな」
盧「おう!」
趙「力を溜めておけ」

李俊「こんなに深い位置で槍魚をやるなんざ初めてだな」
項充「飛び道具なら任せてくれ、李俊殿」
阮小七「俺たちが二発目だぜ」
阮小二「おう、小七」
童猛「張順が上手くおびき寄せたみたいだ」
李「行け!項充!」
項「漕げ!」
部下「おう!」
項「放て!」
下「!」
項「よし!」
李「二発目!」

順(さすがに寒いな)

!!

順「槍魚か」
主「!」
順「引き返すか!」
主「!?」

宋「かかった!」
盧「おう!」
趙「張敬!手伝ってくれ!」
敬「叔父貴が…」
宋「張順なら大丈夫だ!」
盧「おう、おう」

主「!!」
順(今のうちに上がらねえと)

順「!」
敬「叔父貴!」
順「助かったぞ、敬!」

張順…湯をくれ、趙林。
張敬…さすが叔父貴だ…

宋江…おう、おう。
盧俊義…おう、おう。
趙林…しっかりかかりましたな。

李俊…もう一発だ!
項充…流石の投擲。
阮小七…行くぜ兄貴!
阮小二…おう、小七!
童猛…主が暴れてる気がするぜ。

6.
李俊「装置はぶっ壊れたか!」
阮小七「ど真ん中に命中だ!」
阮小二「潜るぞ、小七!」
項充「少しぬるくなったか?」
童猛「あとは宋江殿が上手くやるかだ、李俊殿」
李「心配だ」

宋江「おう、おう」
主「!」
盧俊義「おう」
宋「主よ、話し合いをしないか?」
主「…」
宋「お前に何があった?」

主「…托塔天王はいないのか」
宋「今は」
主「塔だ、梁山泊の主」
宋「塔?」
主「東渓村の塔をここに沈めてくれ」
宋「托塔天王と何かあったのか?」
主「お前には関係ない」
宋「…梁山湖を元通りにしてくれるか?」
主「塔を沈めたら、必ず」
宋「約束する」
主「…」
盧「おう…」
宋「盧俊義?」

盧「一度だけ聴いたことがある」
趙林(喋った!)
盧「托塔天王が東渓村に塔を担いだ時、魚の群れに襲われたと言っていたよ」
宋「大事な塔なのだろうな」
盧「随分と大きな塔だが」
宋「武松に頼むか」
李「宋江殿!首尾は?」
宋「塔だ、李俊」
李「塔?」
宋「托塔天王の塔がいる」
二「あの塔か…」

李俊…東渓村から持ってくるのか?
阮小二…村のみんなに頼もう。
阮小七…御供物があるぜ、兄貴。
項充…色々あったのだろうな。
童猛…これで一件落着か。

宋江…武松と李逵にお願いした。
盧俊義…おう…
趙林…戻った!

梁山湖の主…元は西渓村と東渓村を挟んだ川の主だった。塔は川に必要なのだ。

二竜山

二竜山…この山も嫁を指揮官にした方が良いのではないかと議題に上がった。

人物
楊志(ようし)…待ってくれ!仁美!令が怪訝な顔をしている!
秦明(しんめい)…すまぬ!公淑!いつもありがとう!
解珍(かいちん)…野暮な指揮官殿だな。
郝思文(かくしぶん)…なんだかんだで面倒見がいい解珍にほっこり。
石秀(せきしゅう)…曹正の嫁になりそうな女の似顔絵を描いてみたら、豚と大差なかった。
周通(しゅうとう)…楊志が制圧されて羨ましい反面、自分じゃとても相手にならなかったと思い知った。
曹正(そうせい)…石秀の分のソーセージにマスタードをしこたま混ぜ解いたら、楊志がつまみ食いして大変なことになった。
蔣敬(しょうけい)…戦以外は隙だらけな楊志にほっこり。
李立(りりつ)…妻子の話になるとやたら嬉しそうになるが、下ネタになると顔が引きつる楊志にほっこり。
黄信(こうしん)…青州軍にいた頃の楊志に調練でぼろ負けして秦明に罰走させられたのをまだ根に持っている。
燕順(えんじゅん)…一枝花の野郎がいい花を仕入れていたぜ。
鄭天寿(ていてんじゅ)…華がある将校ランキングナンバーワン。いや本当に。
郭盛(かくせい)…非番の日の鄭天寿がイケメンすぎて眩しかった。
楊春(ようしゅん)…非番の日に謎の穴を掘らされて不満だった。
鄒潤(すうじゅん)…山の獣と頭突きを競ったら優勝した。やっぱり人じゃねえな。
龔旺(きょうおう)…張清殿が瓊英殿の相手になるわけねえだろ。

7.
楊志「…」
曹正「どうした、楊志」
楊「また仁美に制圧された」
曹「昨日もお楽しみか」
楊「いつからあれほどの体術の名手になったのだ…」
曹「大人の体術か…」
楊「大人の体術?」
曹「四十八の流派があってな」
石秀「やめろ!淫豚!」
楊「淫豚?」
石「淫らな豚の事です」
曹「お前もやめろ」

楊志…済仁美に四十八の流派について聞いたのが運の尽き。
曹正…本気の日は楊令を連れ出してソーセージ作りに付き合わせている。
石秀…淫らな豚など最悪ではないか。

8.
秦明「その罠はなんだ、解珍?」
解珍「二竜山を荒らしまわる厄介な猪を捕まえる罠だ」
秦「そんな猪が出るのか?」
解「おう、出るとも」
秦「畠か?」
解「わしの目の前にな」
秦「…」
解「…」
秦「おのれ!解珍!」
解「猪武者め!」
秦「許さん!」

燕順「どんな罠だと思う?」
郝思文「さて」

秦「爺の分際で逃げ足だけは速い!」
公淑「旦那様?」
秦「公淑!」
公「一体何を?」
秦「この狼牙棒で解珍のスケベ爺を懲らしめに行くのだ」
公「また解珍殿に…」
秦「うむ。懲らしめたら帰る」
公「お気をつけて」
秦「おう!」
公「…」

解「来たな、秦明」
鄒潤「秦明殿大好きですな、解珍殿」

秦「どこへ逃げた、解珍」
解「ここだ」
秦「覚悟しろ!」
解「お前がな」
秦「!?」
解「やい、猪武者め!」
秦「落とし穴とは卑怯な!」
解「かかったぞ皆の衆!」
燕「おら!投げ込め!」
秦「なんだ!」
郝「それ!」
秦「花?」
解「忘れたのか!秦明!」
秦「!」
解「思い出すまで頭を冷やせ!」

秦明…花を持って赤面しながら帰宅した。
解珍…世話の焼ける指揮官殿だ。
郝思文…私も忘れないようにしなければ。
燕順…粋じゃねえか、解珍。
鄒潤…楊春と落とし穴を掘らされていた。

公淑…忘れられていたと思ったが、周囲の助力のもと無事に事なきを得た。

塩の道

塩の道…ストレスがかかると味付けも塩辛く脂っこくなるらしく…

人物
盧俊義(ろしゅんぎ)…侯健特注の着物がきつくなってきたな…
燕青(えんせい)…盧俊義の身体をこっそり採寸したらさらに太っていてびっくり。
蔡福(さいふく)…塩が足らんぞ、慶。
蔡慶(さいけい)…塩尿病になるぜ、兄貴。

9.
盧俊義「我らもストレスを発散しなくてはならん」
蔡福(俺達のストレス源に言われたらどうしたらいいと思う?)
盧「燕青」
燕青「!」
蔡「!?」
蔡慶「…どうやって解消するので?」
盧「暴食は良くないから、身体を動かそう」
福(盧俊義様のストレスは脂肪ではないのか)
盧「燕青」
燕「!」
福「!?」

盧「鉄臂膊マシンを皆でボコボコにしよう」
福「この顔は誰をモデルにしているのですかな?」
盧「気のせいだ」
福「鉄臂膊の唸る拳でこのド出っ腹に風穴開けてよろしいのですか?」
盧「やってみろ」
福「では参りましょう」
盧「…」
福「!」
盧「…」
福「!?」
盧「威力を下回ると首を撥ねられる」

盧「口ほどにもないな、蔡福」
福「私の首を撥ねたいのなら、円満にしていただけませぬか」
盧「蔡慶」
慶「俺は力が無いので…」
盧「では刃を取り除こう」
慶「それなら」
福「なぜ私にその選択肢がないのですか」
慶「それ!」
盧「いいぞ、蔡慶!」
慶「燕青もやれよ!」
燕「!」
福「音が酷い」

盧俊義…鉄臂膊マシンをボコボコにしていい汗かいた。
燕青…鉄臂膊マシンの歪む顔が楽しかった。
蔡福…フラストレーションが溜まるばかり。
蔡慶…とりあえずいい汗かいたからよし。

練兵場

練兵場…しょっちゅう史進がショートコントに似た体術の技を林冲にかけられている。コミカルに見えるが、史進以外は受けたらまずい。

人物
徐寧(じょねい)…体術のレフェリーを買って出たが、鎧がうるさいって言ってるんだ!

10.
林冲「史進!」
史進「なんだ、林冲殿」
林「呼んでみただけだ」
史「つまらん…」
林「妓楼でつまらんことした輩が言うな」
史「つまらなさの意味が違う」
林「どう違う?」
史「林冲殿は意味のないつまらなさ」
林「…」
史「俺は命を棒に振りかけたつまらなさだ」
林「つまらんな」
史「大差ない」

林冲…とるに足らないでつまらない事をする女々しさがある。
史進…つまらないことに命をかける雄々しさがある。

11.
史進「げえっ!林冲殿!」
林冲「なにがげえっ!だ!」
史「何の用だ!」
林「燕青に良いサブミッションを習った!」
史「わわわ!」
林「なにがわわわ!だ!」
史「ひーっ!」
林「逃げるな!木偶!」

史「」
陳達「原型を留めてないぞ、林冲」
杜興「ボロ雑巾の方がまだマシだ」
林「まだ物足りん」

林「これか!」
史「」
陳「史進が千切れる!」
杜「さすがに勘弁しろ」
林「あと一つ試させてくれ」
陳「残機は史進?」
史「…既にゲームオーバーだ」
林「あとワンクレジットいけるな」
史「それ以上はいけない」
林「やかましい」
史「」
陳「史進が裂ける!」
杜「痛覚という痛覚が麻痺しておる」


陳「生きてるか史進」
杜「わしの股関節まで痛み始めたぞ」
史「痛みが痛みで無くなってきたよ」
陳「それは?」
史「一歩誤ったら快楽になりかねん所まで…」
杜「聞いたか、林冲」
林「気持ちいいのか!史進!」
史「もうやめてくれ林冲殿」
林「だが好きなんだろう?」
史「…少し」
陳「おい」

史進…少しづつ顔がとろけてきて気持ち悪い。
林冲…いい声で鳴き始めたぞ…
陳達…このレベルになると俺たちじゃ理解できんな。
杜興…もともとする気もないわい。

朱貴・朱富のお店

朱貴・朱富のお店…秋のお店は紅葉を模した饅頭も作る。中の餡も秋模様。

人物
朱貴(しゅき)…まさかここまで皿洗いができぬ御仁だったとは…
朱富(しゅふう)…うかつに任せると大変ですな、兄上。

12.
呉用「それでは」
宋江「…」
朱貴「宋江殿?」
宋「また呉用にたかられた…」
朱「そういうところありますからな、呉用殿」
宋「晁蓋も自炊している所を見たことがないと言っていた」
朱「日頃何を食べているのでしょうね」
宋「調べてみよう」
朱「その前にお勘定を」
宋「…しまった」
朱「宋江殿」

宋「とんだとばっちりだ」
晁蓋「何をむくれている、宋江」
宋「呉用は日頃何を食っているのだ?」
晁「知っているか、阮小五?」
阮小五「エナドリの箱なら書庫の奥に腐るほどありますよ」
宋「食う方は?」
阮「書庫の隅でもやしかきのこでも育てて露命を繋いでるのでは?」
呉「失礼な!」
阮「!」

宋「饅頭の借りだ、呉用!」
呉「宋江殿がおごるって言ったではないですか」
晁「いつも何を食っているのだ、呉用?」
呉「乾物や干物ですが?」
阮「大差ないですな」
晁「だからこんなに貧弱なのだ、呉用!」
呉「私は食に金を使うなら書に使います」
宋「朱貴の店の皿を弁償しろ!」
呉「…なぜ?」

宋江…慣れない皿洗いにてんやわんやで大惨事。
朱貴…陳麗の皿まで洗わせるんじゃなかった…
呉用…キノコの干物の吸い物が得意料理。湯で戻しただけ。
晁蓋…毒はないだろうな。
阮小五…いつも失敬していた奥の方のエナドリの品質期限が切れていた事に気づいた。

郵便屋さん

郵便屋さん…神行法のお札はどうやってチャージしてるんだろうな。

人物
戴宗(たいそう)…企業秘密だ。
張横(ちょうおう)…父上が一枚絡んでいるそうです。
王定六(おうていろく)…だから俺につけるんじゃねえ!

13.
戴宗「もう勘弁しろ、呉用殿」
呉用「まだ遼と西夏に行く仕事が残っているではないか」
戴「札が切れた」
呉「なぜ補充しておかない」
戴「作るのに手間がかかるのだ」
呉「どうやって作っている?」
戴「まず心身を清めるために一月生臭を禁止しなければならない」
呉「それを酒を飲みながら言うか」

戴「明日から清めるから勘弁しろ」
呉「典型的なアル中のそれだな、戴宗」
戴「まあ普通に走る仕事はするからそれで許してくれ」
呉「遼の仕事は急ぐのだが」
戴「いつもいつも俺が八百里走れる前提でスケジュールを組まないでくれ」
呉「便利だから」
戴「そもそも人間が八百里も走れるわけなかろう」

呉「しかし神行法はお前しか使えないのだろう?」
戴「それと引き換えに、俺の食べる喜びまで損なわないでくれ」
呉「ならば遼の仕事は誰がこなすのだ」
戴「呉用殿、最近酒はいつ飲んだ?」
呉「飲む暇はない」
戴「生臭は?」
呉「きのこの干物しか食ってない」
戴「いけるぞ、呉用殿」
呉「私が?」

呉用…体質が神行法にピッタリ。久しぶりの外出でいい息抜きになった。
戴宗…俺より呉用殿の方が使いこなせるんじゃないか。

断金亭

断金亭…遊撃隊以外の演目も楽しいはず…

14.
晁蓋「中秋の隠し芸大会を行う」
呉用「一番。遊撃隊将校による」
宋江「…」
呉「月とすっぽんぽん」

陳達「良い月が出ているな、穆春」
穆春「全くだ、陳達」
陳「満月になると獣に豹変する男の話を知っているか?」
穆「知っているか、史進?」
史進「!」
陳「史進?」
史「満月を見ると俺は!」

史「九紋竜男になってしまうのだ」
陳「なんと」

晁(見事な早着替えだ、史進)

史「今宵の九紋竜男も血に飢えている」
陳「…ならば俺も跳澗虎男になって血を奪うことにしよう」
穆「陳達?」
陳「!」

呉(史進に劣らぬ早着替えの技!)

穆「その声は我が友陳達ではないのか?」
陳「血が欲しい…」

史「四知を知っているか?」
穆「四知?」
史「天、地、我、人が知る知のことを四知と言う」
陳「穆春」
史「我らの知の生贄となれ」
穆「!」
史「血祭りだ、陳達!」
陳「心得た!」
穆「助けて!兄者!」

宋(堪えろ穆弘)

穆「…」
史「これで貴様も恥に飢える」

宋(行け穆弘!)
晁(没遮攔だ…)

・史進…ちを全て恥に置き換えて味わってくれ。
・陳達…早着替えは天井の施恩と阿吽の呼吸。
・穆春…穆家の操を守りきれなかった。

・晁蓋…会場セットが大変なことに…
・宋江…目から火が噴いていたな。
・呉用…史進と陳達が木っ端微塵に…

史進の家

史進の家…史進のゆるキャラグッズは局地的に大人気だったが、村々の風紀は著しく乱れたという。

15.
王母「史進!お尻をしまいなさい!」
史進「私の竜が尻を出せとささやくのです!」
王「なぜ?」
史「…なぜでしょう?」
王「聞いてごらんなさい、史進」
史「…竜よ。なぜ尻を出せとささやくのだ?」
王「…」
史「知りません」
王「進。今日の稽古はうんとキツくなさい」
史「!!」
王「駆け足!」

王母…史進の一人芝居は少し面白かった。
史進…大胸筋をピクピク動かすことで、あたかも竜が生きているかのような躍動感を演出できる。

山中

山中…あるところでは一大事の跡だったり、あるところではお宝の山があったり…

16.
武松「…」
爺「食っておいてなんだがの」
武「…」
爺「お前はよくこんなに可愛いらしい動物に石を投げ…」
武「…」
爺「内臓をえぐり…」
武「…」
爺「肉を食う気になるの」
武「兎のことか?」
爺「他になにがいる?」
武「食っておいてよく言う」
爺「人間とは勝手なものだな」
武(俺の分まで…)

武松…虎を退治した時も子虎の可愛さを爺にぐちぐち責められて、なんだかなって気分にさせられた。
…やたら旨そうに兎を食う爺。奥歯がないのは若い頃酔っ払って石を噛み砕こうとしたから。馬鹿じゃないの?

17.
晁蓋「生辰綱は?」
呉用「成功しました」
孔明「大層な財物ですな」
孔亮「だけどよ、兄貴」
明「なんだ?」
亮「逆にどう頑張ったら生辰綱ごときで十万貫も使えるんだ?」
晁「一理あるな、孔亮」
呉「十万貫の内訳ですか?」
晁「一番高そうな財物を見つけた奴が勝ちだ」
明「そんな暇あるんで?」

晁「これは高いぞ」
呉「どれですか?」
晁「全身マッサージ機プレミアエディション!」
明「五貫くらいでは?」
亮「あと九万九千九百九十五貫ありますぜ」
呉「文官の控室に置いておきましょう」
晁「随分と石が多いな」
呉「棄ておきましょう」
明「俺らに価値はちっとも分からん」
亮「所詮石さ」

明「宝石や調度も随分あるな」
呉「傷つけるなよ、孔明」
亮「傷は兄貴の面だけで充分だ」
晁「この着物はどうだ!」
明「似合いますな、晁蓋殿」
亮「ゴージャスですね」
晁「似合いの冠はないか?」
亮「これは?」
晁「いいぞ、孔亮!」
明「この紋章も!」
晁「よしきた!」
呉「晁蓋殿!裾が!」

晁蓋…まあこの時だけ付ければ満足なんだがな。
呉用…所詮物ですからね。
孔明…宝石をべったり触ってしまい怒られた。
孔亮…調度を少し破損してしまい怒られた。

梁中書…持てる力の全てを駆使して誕生日プレゼントを十億円分用意したが、水の泡。報告を聞いた時は一月正気に戻らなかったとか。

青蓮寺

青蓮寺…月に一度の会報誌では、符牒の解読コーナーが人気らしい。

人物
袁明(えんめい)…毎月一回オリジナル符牒を考えているらしい。
李富(りふ)…毎月会報誌の符牒解読コーナーに応募しているらしい。
聞煥章(ぶんかんしょう)…会報誌なんて読む前に捨てている。
洪清(こうせい)…体術道場で梁山格闘の技再現動画を投稿して大人気。
呂牛(りょぎゅう)…仲間の符牒として聞煥章のリアクションを導入している。

18.
聞煥章「またくだらぬ噂話か、呂牛」
呂牛「この定食屋の噂話は馬鹿にならんぞ?」
聞「向かいの呉服屋の主人のしたたか事情なぞ誰が知りたい?」
呂「梁山泊の符丁かもしれない、と言ったら?」
聞「なにを?」
呂「自分で考えろ」
聞「待て呂牛!」
呂「」
聞「…銀の袋だけしっかり持って行くのか」

聞「向かいの呉服屋が梁山泊に縁があるらしい」
李富「本当か、聞煥章」
聞「符丁があるらしい」
李「どんな?」
聞「…主人のしたたかの事情が要になっているそうだ」
李「教えてくれ、聞煥章」
聞「妓楼・自宅・妾宅…」
李「先週は?」
聞「妾宅B・自宅・妾宅C…」
李「なるほど…」
聞「符丁か?」

李「分かったぞ!」
聞「嘘だろ?」
李「結論から言うと、お前を挑発している」
聞「なんだと!」
李「妾宅Bは聞。自宅はいつも間にあるから煥、最後の妾宅は章」
聞「…」
李「そして翌週のシフトは妾宅B、A、C、A」
聞「馬鹿か」
李「これしかない」
聞「ご苦労」
李「で、どうする?」
聞「…さあ」

聞煥章…呉服屋に行ってみたら、主人がお取り込み中だった。
呂牛…侯健が頻繁に出入りしていたから懸念を伝えただけ。
李富…符丁を解かずにはいられない。特に意味のないものにも法則を導きがち。

禁軍

禁軍…帝が気まぐれで調練を覗きにやってくるが…

人物
童貫(どうかん)…帝に声の甲高さを毎回笑われて嫌だ。
趙安(ちょうあん)…帝にフレッシュマンの衣装の突起物を毎回摘ままれて嫌だ。

19.
趙安「フレッシュ!」
公順「今日はフレッシュマンの正装ですな」
何信「見事な着こなしです、趙安殿」
公「趙安殿、胸にゴミが」
趙「!?」
何「公順、それは!」
公「趙安殿?」
趙「…これはゴミではない、公順」
公「…?」
趙「私の乳首だ…」
公「…今、なんと?」
趙「二度言わせるつもりか?」

公「この両胸のゴミのような突起は、もしや…」
何「式典が終わったら処罰だ、公順」
趙「覚悟しろ」
公「そんな!」
趙「陛下が参列する式典の由緒正しい衣装を愚弄したのだぞ、貴様は」
公「ですが、こんな衣装は…」
何「皆まで言うな、公順」
公「変態の所業では!」
趙「フレッシュマンの果実だ」

公「…」
趙「さっさと参列しろ」
何「逃げるなよ、公順」
徽宗「変わらず見事な軍だな、趙安」
趙「陛下!」
高俅「…」
徽「フレッシュマンの鮮度をひしひしと感じる」
趙「はっ!」
徽「朕も頼りにしているぞ」
趙「ありがたきお言葉」
徽「…趙安、胸にゴミが」
趙「!?」
高(www)
公(www)
何「…」

趙安…敏感なんだ、私は…
公順…李明に目を背けられるほど絞られた。
何信…笑うに笑えなかった。

徽宗…取れんな…
高俅…全力で笑いを堪えていた。

20.
趙安「…」
公順「何を見ておられるのですか、趙安殿?」
趙「梁山泊対策の動画だ」
何信「清々しいほど世界観を無視しておられますな」
趙「まず敵を知らぬとな」
公「どんな動画を見ているので?」
趙「呼延灼のフレッシュチャンネルだ」
何「調練の内容は機密では?」
趙「ありがたく参考にするぞ」

呼延灼「フレッシュ!諸君!」

趙「!」
公「これが先代フレッシュマンの緊張感」
何「画面越しでも気が伝わってきますな」

呼「遠駆けの留意事項だ」

趙「地形をくまなく記録しろ」
公「スクショの準備はできてます」
何「なんでもありですな」

呼「出でよモザイク!」

趙「一筋縄ではいかぬか」

呼「以上遠駆けの留意事項だ」

公「とても参考になりました」
何「高評価だな」
趙「チャンネル登録を忘れるな」

呼「なんだ?」
史進「引け!遊撃隊!」
呼「また貴様か、史進!」

趙「モザイクをかけろ!」
公「編集が間に合わなかったのでしょうか」

呼「捕えろ!」
史「!?」

趙「通報しよう」

趙安…王進の武芸チャンネル?
公順…王進の動画は半刻持たず失神。
何信…王進の動画は一刻後に立ったまま気絶。

呼延灼…フレッシュチャンネルの動画は軒並み高評価だが、史進が乱入した回は泣く泣くお蔵入りさせている。
史進…呼延灼の鞭に吊し上げられた。

北京

北京…生辰綱十万貫調達ドキュメンタリーはBPO入りして現在審議中。

21.
梁中書「生辰綱が奪われた?」
兵「…はい」
梁「…楊志は?」
兵「盗んだ者たちを捕縛しに旅立たれました」
梁「…」
兵「梁中書様?」
梁「無事に届いたのだな」
兵「奪われました」
梁「十万貫もあるのだ」
兵「全部奪われました」
梁「十万貫全部?」
兵「全部です」
梁「もれなく?」
兵「全部」

梁「帝が欲しがるであろう、路傍の石コレクションも?」
兵「はい」
梁「執務で苦労される義父上のために大枚叩いて購入したマッサージチェアも?」
兵「どこでそんなものを?」
梁「匂いは酷いが南国一の美味を誇る果実も?」
兵「道理で道中異臭がしたのか」
梁「全てか!」
兵「全て奪われました」

梁「お前は私の苦労について何も分かっていない」
兵(しつこいな)
梁「生辰綱で十万貫だぞ?」
兵「はあ」
梁「どうやって生辰綱ごときで十万貫も奮発したと思う?」
兵「たしかに」
梁「私は血の滲む思いで生辰綱十万貫分をリストアップし、集めたのだ」
兵「…」
梁「民も私の気持ちになればいい!」

梁中書…北京大名府の中書。知事のこと。生辰綱を集めるドキュメンタリー番組を放映して大顰蹙を買った。

楊令伝

本隊

本隊…二世将校がいてもみんながみんなノリが合うわけじゃないらしい。

人物
花飛麟(かひりん)…史進の呪縛が今になって効き始めたらしい。
呼延凌(こえんりょう)…史進の教えが今になって役に立ち始めた。
李英(りえい)…史進のバカ騒ぎは生理的に無理。

22.
李英「…」

班光「第二次シシハラ被害者の会決起集会の日時は…」
杜興「内密にの」

李「…」

郭盛「決め球はど真ん中だ!」
楊令「甘いぞ郭盛」
郭「!?」

李「…」

李媛「輜重の色が地味すぎます」
荀響「輜重ですから」

李「…」

杜「退け班光!」
班「史進殿が!」

李「…馬鹿しかいねえ」

李英…馬鹿を奨励される梁山泊の気風に乗り切れない悩みがある。

杜興…馬鹿でよい。わしは後進を見捨てる爺より馬鹿でいたいのよ。
班光…杜興殿!

郭盛…直球に自信。決め球はアウトローに投げろ。
楊令…場外だ、郭盛。

李媛…ピカピカ光る輜重が賊徒に襲われました。
荀響…夜中に目立ちます!


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中学生の頃から大好きだった、北方謙三先生大水滸シリーズのなんでもあり二次創作です!