見出し画像

水滸噺 20年7月【月がきれいですね】

あらすじ
豹子頭林冲 夢で開発され
九紋竜史進 御竜子に御される
二竜山頭領 嫁に牛耳られ
騎馬致死軍 宇宙へと不時着す

すいこばなし 注意書き
北方謙三先生水滸伝,楊令伝何でもありな二次創作です。
・水滸伝の原典ネタは日常茶飯事、スマホにPCなど電子機器も飛び交うし、あの人が梁山泊で元気に生きていたりする、異世界からお届けします。
・原作未読の方でも楽しめるように、ネタバレを極力避けていますが、薄々感づいてしまう個所が垣間見えますので、その点はご注意ください。
楊令伝編で出てくる好漢は、すなわち水滸伝を生き残った者ということですので、未読の方はその点ご留意いただいた上でお読みください。
・作者のtwitterにて連載しています。 
・今月号、バックナンバーのご意見ご感想、リクエスト等々、こちらまで
 お寄せいただけると、とても嬉しいです!いつも助かっています!
・原作に興味を持たれるきっかけになったらこれ以上の喜びはありません。

まったり気ままに更新してます。

それでは行ってみましょう! 

梁山泊

梁山泊…すっかり夏空。暑い中の調練は熱中症注意!

騎馬隊

騎馬隊…騎馬隊の華の結婚の知らせを聞いた部下たちは一様に顔色を曇らせたようで。

人物
林冲(りんちゅう)…張藍に報告したら、真顔で無いと言われた。
索超(さくちょう)…どんな顔して出迎えりゃ良いかな。
扈三娘(こさんじょう)…なにか?
馬麟(ばりん)…引き出物の用意で一日を費やした。
郁保四(いくほうし)…小首をかしげながら、結婚祝いの旗を織った。

1.
索超「扈三娘が?」
馬麟「宋江殿も分からんことを…」
郁保四「何事ですか?」
索「扈三娘が結婚するそうだ」
郁「…冗談ですよね」
馬「冗談じゃないぞ」
索「相手を聞いたらもっと驚くぞ」
郁「誰ですか?」
馬「王英と言ったら?」
郁「冗談に冗談を重ね掛けしないでください」
索「冗談じゃない」

郁「扈三娘殿が結婚するだけで相手の正気を疑いますが」
索「随分だな、郁保四」
郁「その相手が王英となると、扈三娘殿の正気も疑いたくなりますよ」
馬「随分だな、郁保四」
郁「相手が誰でもいいなら…」
索「どうした?」
郁「いっそ俺でもいいではないですか?」
馬「旗手の話か?」
郁「違う!」

郁「扈三娘殿!」
扈三娘「郁保四殿?」
郁「…その、噂は本当ですか?」
扈「噂?」
郁「もっぱら話題になっていますよ」
扈「私が?」
郁「だって、王英と…」
扈「それが何か?」
郁(本当だったとは)
扈「ご恩がありますので」
郁「…俺でも良かったのでは?」
扈「旗手ですか?」
郁「違います!」

郁保四…珍しく調練で荒れ気味だった。
索超…旗手の話ではないのか?
馬麟…郁保四は旗手だろう。
扈三娘…黒騎兵の旗手の方になっていただくなんて恐れ多いです。

騎馬隊&遊撃隊

騎馬隊&遊撃隊…史進受難。

2.
史進「林冲殿との稽古前に対策を教えてくれないか?」
馬麟「対策とは?」
史「お前は巧みに林冲殿を御しているではないか、馬麟」
馬「張藍殿に聞け、史進」
史「…それは二度とできない事情がある」
馬「…」
史「また武術の稽古の実験台にされるのだけは嫌なのだ、馬麟」
馬「…そうだな」
史「…」

林冲「よし。体術の稽古だ、皆!」
兵「今日はどんな技を?」
林「アルゼンチンバックブリーカーという技を書物で読んだから、それを試してみよう」
兵「アルゼンチンってなんだ?」
兵「我らには及びもつかない国の名ではないか?」
林「木偶!」
史「…はい」
林「いざ!」
史(頼む馬麟!)
馬「…」

馬「♪〜鉄笛〜♪」
林「!」
史(林冲殿が?)
林「!!」
史「!?」
兵「ジャーマンスープレックス!」
林「!!」
史「!?」
兵「二回目!」
林「!!!」
兵「跳んだ!」
林「!!!」
史「!?」
兵「マッスルバスター…」
林「…」
史「」
兵「KO…」
馬「…これは林冲殿投げ技コンボの曲だった」

林冲…史進の骸にアルゼンチンバックブリーカーもかける外道ムーブ。
史進…痛覚がキャパオーバーを起こし、痛みすら感じない。
馬麟…他に林冲投げ技コンボの曲はあるか模索中。

二竜山 

二竜山…大将を御すのはいつの時代も妻だった。

人物
楊志(ようし)…済仁美にマウントをとられ続けて久しい。
秦明(しんめい)…公淑に胃袋をとられ続けて久しい。
解珍(かいちん)…亡き嫁に叱られ続けて久しい。
郝思文(かくしぶん)…陳娥にイニシアティブをとられ続けて久しい。
石秀(せきしゅう)…曹正を罵り続けて久しい。
周通(しゅうとう)…済仁美にマウントをとられる楊志がうらやましくて久しい。
曹正(そうせい)…石秀を追いかけ続けて久しい。
蔣敬(しょうけい)…兵站の検算が合わなくて久しい。
李立(りりつ)…実は嫁がいることを知られなくて久しい。
黄信(こうしん)…愚痴り続けて久しい。
燕順(えんじゅん)…王英に技をかけ続けて久しい。
鄭天寿(ていてんじゅ)…王英を蹴り続けて久しい。
郭盛(かくせい)…楊令と稽古をして久しい。
楊春(ようしゅん)…少華山の兄たちと長話して久しい。
鄒潤(すうじゅん)…頭突きの稽古がやめられなくて久しい。
龔旺(きょうおう)…張清の礫を受け続けて久しい。

3.
楊志「待て、令!」
楊令「♪」
志「身体を拭いてから走り回るのだ!」
令「嫌です!」
志「裸で逃げ回っていたら、いつか酷い目に遭うぞ!」
令「私は遭わないから大丈夫です!」
志「この!」
済仁美「旦那様」
志「仁美、令を捕まえるぞ!」
済「旦那様の布も」
志「いかん!」
済「赤面獣楊志…」

楊志…問答無用で寝室に連行された。
済仁美…令。今日は早く寝るように。
楊令…母の気に圧倒され、背にじわりと汗をかいた。

4.
秦明「待て、解珍!」
解珍「何を今更うろたえておる」
秦「…心の準備が」
燕順「ピュアにも程がありますぜ、秦明殿」
郝思文「顔が真っ赤ですよ」
秦「…」
解「公淑殿との相性占いを試しているだけではないか…」
秦「もしも相性が悪かったらどうするのだ!!」
解「!」
燕(霹靂火だ!)
郝(耳が!)

解「野郎どもの集まりの余興ではないか」
燕「くじを引いたのは秦明殿ですぜ?」
秦「言うなら早く言え!!」
郝(すごい声量だ)
解「言うぞ…」
秦「…」
解「言うからな…」
秦「…」
解「秦明と公淑殿は…」
秦「!」
解「と言ってから言うからな」
秦「早く言わんか!!」
解「!?」
楊春(平手が…)

解「」
燕「のびちまった」
秦「ならばやめよう」
郝「…そこまで恥ずかしいのですか、秦明殿?」
秦「とても」
郝「…ならば何も言いますまい」
燕「まあ悪いわけないでしょうな」
秦「本当か!」
燕「…皆気付いてたのはご存知ですよね?」
秦「馬鹿な!!」
燕「」
楊(この有様でした)
郝(なるほど)

秦明…嘘だと言ってくれ!!
解珍…天国の嫁にからかいすぎだと叱られて帰ってきた。
郝思文…私は見合い結婚だったな…
燕順…しばらく何も聞こえなかった。
楊春…俺でも一発で分かりましたよ。

養生所&薬方所

養生所&薬方所…特注のオーダーメイド薬も予算に応じて受けてくれる。

人物
安道全(あんどうぜん)…マッサージのオーダーメイドは高値でも受けたほうがいい。
薛永(せつえい)…エナドリの調合は108と一つのパターンがあるとか。
白勝(はくしょう)… 戦の最中でも整体をしてくれる。

5.
呉用「おりいって頼みがある、薛永」
薛永「何事ですか?」
呉「エナドリを作ってくれ」
薛「…そんなに仕事が?」
呉「迂闊に宋江殿を巻き込んだばかりに…」
薛「私は極力推奨しないのですが」
呉「少なくとも三日のうちに片付けないと、梁山泊存亡に関わるのは間違いない」
薛「…どんな失策を?」

薛「とは言ったものの腕が鳴るのは間違いない」
馬雲「(*゚▽゚*)」
薛「何を入れようか迷うくらいだな、馬雲」
馬「(°▽°)」
薛「どれにする?」
馬「(=゚ω゚)ノ蝮」
薛「丸ごと使おうか」
馬「(=゚ω゚)ノ?」
薛「…エグいが、効果は絶大だ。採用しよう」
馬「(=゚ω゚)ノ野盗樹」
薛「それはいかん」

薛「できました」
呉「…いざ飲むとなると躊躇いが」
馬「( ̄^ ̄)」
薛「一息に!」
呉「器の中のなにかと目があった気がするのだが?」
薛「気のせいです」
呉「やむを得ん!」
薛「潔い!」
呉「…なんという不味さ」
薛「良薬は口に苦しですよ、呉用殿」
呉「…筋肉が暴れ出したぞ」
薛「呉用殿?」

呉用…力で仕事をねじ伏せた。ねじ伏せたら身体も萎んだ。
薛永…配合は養生所の最高機密。
馬雲…m(_ _)m

宋江…誰もの目に映る回覧板に貼ったのは機密事項だったのか?

塩の道

塩の道…しょっぱい仮装でも面白がってくれるらしいが?

人物
盧俊義(ろしゅんぎ)…嫁がいたが一方的に離縁したばっかり。
燕青(えんせい)…盧俊義の峻烈さについて行っているけど、良心は痛む。
蔡福(さいふく)…根っからのコミュ障だと思われていたが?
蔡慶(さいけい)…割とノリが軽いから友達は多い。機密は漏らすなよ。

6.
盧俊義「北京の商人で、コンパがある」
燕青「…」
盧「面倒事は避けたいから、妻を同伴させようと思う」
蔡福「しかし、先日奥方様と…」
盧「だからお前が妻になるのだ、蔡福」
福「」
蔡慶「…正気ですか、盧俊義様?」
盧「何がおかしい?」
慶「…燕青ではだめなのですか?」
盧「燕青は従者だ」

福「盧俊義様もとうとうバグったか?」
慶「しこたま水銀でも飲んだんじゃねえか」
燕「…」
福「いまいましいほどのイケメンが女で何が悪いのだ」
燕「私が従者でいないとかえって不審に思われる」
福「やるしかないか」
慶「化粧なんてしたことねえぞ」
燕「それは馴染みの妓女が…」
福「爆発しろ」

福「…」
慶「…」
燕「…」
女「これはどういう罰ゲームなの?」
燕「仕事だ」
女「?」
盧「準備できたか」
福「…できました」
盧「声も身体も太いな蔡福」
福「…役に入りたいので、奥方の過去や盧俊義様との出会いをご教示願えませぬか?」
盧「いい心構えだ、蔡福」
慶(のってきてるじゃねえか)

盧俊義…蔡福のコミュ力無双ぶりに目を見張った。
燕青…蔡福のハマりぶりを見ていて感心した。
蔡福…思ってもいない自分がいるものだな。
蔡慶…商人の妻としこたま友達になっただって!?

林冲さん家

林冲さん家…ある朝目を覚ました旦那は…?

7.
安道全「しかしお前らはあれだな」
林冲「なんだ、藪医者」
安「仲が良いな」
張藍「ですって、林冲様」
林「…」
白勝「なんで照れんだよ、林冲」
安「バカップルか…」
張「私をバカに含めないでください、安先生」
白「惚れあった者は似た者同士というぞ、張藍殿」
林「愛している、張藍」
張「!?」

林冲…おもむろに飛び出す様は、騎馬隊の指揮同様。
張藍…旦那の奇襲に思わず赤面。

安道全…帰るぞ、白勝。
白勝…俺たちにもあんな嫁ができないかな?

8.
林冲「!」
張藍「…林冲様?」
林「…何という夢を」
張「どんな夢ですか?」
林「開発される夢だ」
張「何を?」
林「…」
張「言わないと分かりません」
林「…」
張「林冲」
林「…身体を」
張「身体?」
林「驚くほど敏感になっていた…」
張「どれどれ?」
林「!?」
張「…本当に?」
林「待て」

張藍…林冲様恥ずかしい話十選集第二巻に加えておきましょう。
林冲…(感じすぎて何も言えん…)

青州

青州…久しぶりの帰省での一コマである。

9.
花栄「元気そうだな」
崔氏「おかげさまで」
花「飛麟は?」
崔「わんぱく盛りです」
花「どれくらい?」
崔「飛麟!」
花飛麟「!」
栄「甘い」
飛「!?」
栄「!!」
飛「!」
崔「さすが旦那様」
栄「お前の矢を素手で掴めなくなったら退役だな」
飛「…何をしたの?」
崔「あなたの矢を返したのよ」

花栄…おもちゃの矢でも容赦はせんぞ。
崔氏…花栄の妻。旦那に家事は一切させない守りは健在。
花飛麟…ちびっ子でも鋭い矢。射る相手が悪かった。

清風山

清風山…またやらかした、矮脚虎を征伐せよ。

10.
燕順「王英てめえ、良い加減にしやがれ!」
鄭天寿「下半身タイガースが!」
王英「上手いこと言ったつもりか」
燕「その小せえ身体で態度と股間ばっかデカくしやがって!」
王「うるせえ!」
燕「逃すな!鄭天寿!」
鄭「覚悟しろ」
王「勘弁してくれ」
燕「俺の上半身タイガースで噛み殺してやろう」

燕順…小せえから技かけ放題だ。
王英…半死タイガース
鄭天寿…やっぱ兄貴だけは怒らせたくねえな。

北の大地

北の大地…些細な口げんかでも言葉のパンチ力は並ではない。

11.
蔡福「お前のお袋はでべその三段腹だ!」
蔡慶「同じお袋だろうが、内臓脂肪と皮下脂肪のハイブリット!」
福「何を鬢に花など挿す軽薄な愚弟め!」
慶「兄貴に華がある世なら、豚が真珠を有効活用する世だぜ、デブ兄貴!」
福「言わせておけば!」
慶「兄貴こそ!」

阿骨打「罵詈雑言の二代巨頭だ」

蔡福…お前の慶びなんぞ、くその慶にもならん!
蔡慶…兄貴の福だって、ロクでもない福だろうが!

阿骨打…笑いを堪えるのも大変だ。

青蓮寺

青蓮寺…入庁プロセスは不明瞭。新人研修の時に事の重大さを思い知るらしい。

人物
袁明(えんめい)…優秀な手の者の退路を断つようにして入庁させるらしい。
李富(りふ)…部下の仕事への妥協は断固許さない。帰ってないもんね。
聞煥章(ぶんかんしょう)…部下に嫌味をよく言う。人の振り見て我が振り直せよ。
洪清(こうせい)…高廉の闇の軍に適している者をしれっと闇の軍新人研修に混ぜる名手。
呂牛(りょぎゅう)…ゲス野郎コミュニティの網を張っていたら自然と部下候補が増えていた。

12.
袁明「青蓮寺に新しく加わった者たちがいる」
洪清「…」
袁「私が表立って挨拶するわけにはいかんが、誰かが祝辞を述べるべきだと思う」
洪「…」
袁「誰がいるかな」
洪「…李富殿は喉が」
袁「聞煥章はないな」
洪「…」
袁「高廉も違うな」
洪「…」
袁「するとお前しかいないな、洪清」
洪「…」

袁明…恨むような顔つきの者が随分多かったな。
洪清…不本意な就職だったからではないでしょうか。

楊令伝

遊撃隊

遊撃隊…作者一番の悩みの種。

人物
班光(はんこう)…史進をも悩ませる副官に成長。
鄭応(ていおう)…遊撃隊の良心だが、いい加減。
葉敬(しょうけい)…史進後継者筆頭だが、班光のポテンシャルに圧倒されている。

13.
史進「実質全裸と名目全裸について話そう」
班光「はい」
鄭応(止めてくれ、班光)
史「実質全裸とは生まれた時の姿だ」
葉敬「名目全裸とは?」
史「相手をパッと見て、生まれた時の姿のように映る印象、直感だ」
班「つまり、ありのままであると感じさせるほど、名目全裸は高いのですね」
史「然り」

史「しかし名目全裸が高そうに見えても実質全裸が高いとは限らない」
葉「どういう場合ですか?」
史「裸になれ、鄭応」
鄭「嫌ですよ!」
史「しかし、浴場だと脱ぐだろう?」
鄭「そりゃ…」
史「この状態だ」
班「つまり鄭応殿は浴場で全裸になりますが、他では全裸にならない…」
史「実質着衣だ」

葉「実質着衣?」
史「鄭応は全裸になってもありのままではない。全裸でも着物を着ているも同然」
班「確かに」
鄭「…」
史「そもそも全裸とは着物を脱いでいる状態だけだと俺は定義していない」
班「…」
史「心身共にありのままをさらけ出す状態を全裸と定義しているのだ!」
葉「分かりました!」

史進…次は浴場で身体の全裸と心の全裸について話そうか。
班光…身体を鍛えに鍛えると、史進殿の言わんとすることの理解度が違いますな。
鄭応…こっちに帰ってきてくれ、班光…
葉敬…稽古の時は半裸が基本。史進の教えである。

14.
史進「身体の全裸について議論しよう」
班光「浴場で話すのにぴったりです!」
鄭応「…」
葉敬「今我々の身体は全裸ですな」
史「なぜ浴場では着物を脱いでよくて、公共の場で着物を脱いではいけないかを考えたことはあるか?」
鄭(ねえよ)
班「公共の場では全員着物を着ているからではないですか?」

史「しかしここは公衆浴場だ。公という字が入っている」
班「…」
葉「浴場の目的は身体を洗うことだから、効率よくするために着物を脱ぐのでは?」
史「効率に着目するならば、着たままでも身体を洗える着物があれば、脱ぐ時間を短縮できる。そちらの方が、よほど効率的ではないか?」
葉「確かに…」

史「ここで鍵になるのが羞恥だ」
班「!」
史「俺は一度だけ公共の場で全裸になった」
葉「その時に羞恥を?」
史「逃げながら羞恥について考えていた」
鄭(死ぬぞ)
史「公共の場で脱ぐ事に羞恥を感じるのが人」
班「ですな」
史「そして浴場で着ている事に羞恥を感じるのが人の羞恥の持つ特質なのだ」

史進…心の全裸の話に進もう。
班光…羞恥という感情も深掘りすると興味深いですな。
鄭応…のぼせてきた。
葉敬…瞑目して史進の話について咀嚼している。

15.
史進「心の全裸」
班光「お願いします」
鄭応(もう出てえ)
葉敬「心も着物を纏うのですか?」
史「では葉敬。誰にも言ったことのない秘密を一つあげろ」
葉「それは!」
史「今お前は心の恥部を衣で覆ったな」
葉「…面目ございません」
史「それが正しい」
葉「史進殿も?」
史「数えきれないほどな」

史「誰しもが心の恥部を持っている」
班「覚えがあります」
史「それを全て他人に露出する必要があるのかと問われたら、それは違う」
葉「…」
史「それを恥部と言うにはあまりに酷。傷であったり、触れられたくない自分だけの大切な宝であったりするのが人間だ」
班「心の全裸ならぬ心の臓器ですね」

史「言い得て妙だな、班光」
班「私の想いの丈を全て史進殿にぶつけようとするならば、腸を見せつける程の覚悟が必要だと思ったので」
史「日常で臓器を見ることは少ない」
葉「そうですな」
史「だが他人に本当の思いの丈をぶつけるとは、自分の腹を裂いて腸を投げつけるようなものなのかもしれんな」

史進…心の全裸について遅くまで語りあった。
班光…花飛麟が来たらソワソワし始めた。
鄭応…のぼせた。
葉敬…この日の学びを遊撃隊の兵に伝えるテキストを作っている。

16.
班光「史進殿!」
史進「おう」
班「えっちと卑猥の違いは分かったのですが」
史「うむ」
葉敬「えっちとスケベの違いについて教えてください!」
鄭応(心底どうでもいい)
史「えっちとは自ずから発する性的魅力」
班「…」
史「スケベとは他人のえっちを盗むこそ泥だな」
葉「なるほど」
班「史進殿」

史「どうした、班光」
班「…私は、花飛麟殿のエロスを会得できないのでしょうか?」
史「いまいましいが、野郎の面と身体は天からの恵みだ。諦めたほうがいい」
班「エロスとは天からの恵みなのですか?」
史「天は不公平だな」
班「私は、もっとエロくなりたい!」
史「…班光?」
葉「語弊がある」

班「粗相しました」
鄭(粗相なんてもんじゃねえ)
史「他人のエロスへの執着を強めれば強めるほど、お前の望むエロスは遠ざかる」
班「史進殿」
史「お前の筋肉がエロスへの執着の塊ならば、全て落とした方がマシだ班光!」
班「一体どうすれば…」
史「…」

史「俺にも分からん、楊令殿」
楊令「…」

史進…俺が頭を悩ませるほどになるとは…
班光…エロスに取り憑かれたようだ。どうしたものか…
鄭応…ほっとけよ、史進殿。
葉敬…そうはいかん。遊撃隊が回らなくなる。

楊令…張平も呼んで班光の今後の方向性について話し合った。

洞宮山

洞宮山…山の魔女たちの宴に混ざる資格のある男は一握り。

17.
顧大嫂「あんたはいつも女っ気のない着物だね、扈三娘」
扈三娘「それが何か?」
孫二娘「初期装備が最強の女は言うことが違うね」
白寿「この際きちんと仕立てたら、扈三娘?」
扈「いったいどこで?」
顧「呉服屋はあった」
扈「三人が私の着物を?」
孫「もっと適任者がいるじゃないか」
白「彼ね」

馬麟「…」
孫「お前なら最適解を導き出せるだろう、馬麟」
顧「よく見ときなよ、祖永」
祖永「…」
白「なぜ馬麟が私たちの信頼を勝ち得ているのかを」
馬「…」
扈「よろしくお願いします」
祖(満更でもない顔してないか、隊長?)
馬「…この水色」
扈「さすが馬麟殿!」
馬「扈三娘は凛とした色だ」

扈三娘…田舎者にナンパされたが秒で粉砕。
顧大嫂…私らの似合う色の傾向まで残していきやがった!
孫二娘…これを参考に仕立てに行こう。
白寿…なぜモテないのかしら。

馬麟…頼られるとなんだかんだ嬉しいけど…
祖永…俺も隊長を見習います!

宇宙編

宇宙編…何でもありだとはいえ、ここまで何でもありでいいのだろうか。

18.
林冲「火星に不時着した」
索超「どういうことだ、林冲殿」
扈三娘「ノリですか?」
郁保四「でしょうね」
馬麟「やれやれ…」
林「降りるぞ」

火星人「…」
林「致死軍のウスノロを思い出す血の気の無い面だ」
火「…」

索「未知との遭遇だ」
馬「火星人とシンクロするとは」
扈「続くのですか?」

19.
林冲「やかましい!火星人の分際で!」
火星人「林冲馬鹿」

索超「火星人とも罵り合う仲になるとは」
馬麟「どう落とし前をつけるつもりなのだ?」
扈三娘「つける気なんてないのでは?」
郁保四「今はそう言う時期なんですよ、きっと」

火「黙!林冲!」
林「火星なのに血の気の無い面をするな!」

20.
劉唐「月に不時着しましたね」
楊雄「まだやるんですか?」
公孫勝「…」
孔亮「火星じゃないんですか?」
樊瑞「降りるぞ」

公「…」
月人「…」

劉「月の兎で駆けてきたぞ」
楊「でかいですね」

公「…」
月「…」

樊「乗せてもらいましたね」
孔「すぐ罵り合うようになるさ」

21.
公孫勝「…愚かな」
月人「!」

劉唐「早速罵り始めた」
楊雄「ところでなぜ俺らは月にいるのでしたっけ?」
孔亮「たしか盧俊義殿のロケットに詰められて」
樊瑞「飛ばされたのではなかったか?」
劉「帰ろうか」
楊「そうですね」
孔「燃料は?」
樊「公孫勝殿」

公「馬鹿め」
月「やかましい!」


twitterにて連載中!

ご意見ご感想やリクエストは、こちらまでよろしくお願いいたします!

今号も、お読みいただき、誠にありがとうございました!

これからもすいこばなしを、どうぞよろしくお願いします!


中学生の頃から大好きだった、北方謙三先生大水滸シリーズのなんでもあり二次創作です!