見出し画像

水滸噺 21年7月【ひとつになった遊撃隊】

あらすじ
九紋竜御竜子 対立はついに終わり
豹子頭林冲  住まいに急展開
遊撃隊面々  懲罰を受け続け
霹靂火秦統制 伴侶との幸せ始まる


すいこばなし 注意書き
北方謙三先生水滸伝何でもありな二次創作です。
・水滸伝の原典ネタは日常茶飯事、スマホにPCなど電子機器も飛び交うし、あの人が梁山泊で元気に生きていたりする、異世界からお届けします。
・原作未読の方でも楽しめるように、ネタバレを極力避けていますが、薄々感づいてしまう個所が垣間見えますので、その点はご注意ください。
楊令伝編で出てくる好漢は、すなわち水滸伝を生き残った者ということですので、未読の方はその点ご留意いただいた上でお読みください。
・作者のtwitterにて連載しています。
・今月号、バックナンバーのご意見ご感想、リクエスト等々、こちらまで
 お寄せいただけると、とても嬉しいです!いつも助かっています!
・原作に興味を持たれるきっかけになったらこれ以上の喜びはありません。



それでは行ってみましょう!

梁山泊

梁山泊…暑くなってきた。調練の熱中症対策も万全。

騎馬隊

騎馬隊…戦と武術以外のセンスは母体に置いてきた隊長が、相変わらずめんどくさい。

人物
林冲(りんちゅう)…自分は面白いと思って言う発言は大概すべる。そしてすねる。
索超(さくちょう)…林冲のギャグに理解が追い付かない良識派。
扈三娘(こさんじょう)…林冲のギャグを即座に否定する過激派。
馬麟(ばりん)…林冲のギャグを優しく見守る穏健派。
郁保四(いくほうし)…林冲のギャグに愛想笑いする妥協派。

1.
林冲「いちごとは何の略だと思う?」
索超「さて?」
林「一丈青ごさんじょうの略だ!」
扈三娘「何一つ面白くありません、林冲殿」
林「」
馬麟(この扈三娘の真顔が面白い)
林「扈三娘、お前」
扈「なんですか?」
林「手心とかあるだろう…」
扈「私は面白くないものを面白くないと評しただけです」

郁保四「でも、可愛かったのにな」
扈「なんですか、郁保四殿?」
郁「いや、あの格好が可愛かったなと…」
扈「!」
郁「!?」
林「だからもっとお前は手心を…」
扈「不快な発言に手心を込める必要が?」
索(容赦ない)
馬(間違っても照れ隠しじゃなかった)
林「…じゃあお前は何を着ればよいのだ?」

扈「何を着ればよいとは?」
林「張藍が夜なべして編んだ着ぐるみだ」
扈「…」
林「イチジクの着ぐるみとか」
扈「!」
索「…引き裂かなくても」
扈「強いていうなら…」
馬「どれだ?」
扈「これですね」
林「イグアナ?」
扈「爬虫類は嫌いじゃないので」
郁「まだ苺の方が…」
扈「!」
郁「!?」

林冲…扈三娘の直言に辟易。
索超…扈三娘の直言にひやひや。
馬麟…扈三娘の直言ににやにや。
郁保四…扈三娘の直突きがじんじん。

扈三娘…イグアナだろうがなんだろうが着こなせる美貌。もったいねえな。

致死軍&飛竜軍

致死軍&飛竜軍…いつの間にか拠点の書庫に猫の飼い方の本が増えていた。

人物
公孫勝(こうそんしょう)…一清という猫に懐かれている。本人も心を許し始めたらしい。
劉唐(りゅうとう)…猫よりも犬派。誰とは言わないが、確かに犬っぽい。
楊雄(ようゆう)…きつね派。犬猫アレルギーのメーターがはち切れている。
孔亮(こうりょう)…動物嫌い。どの動物にもくまなく嫌われるから。
樊瑞(はんずい)…ゴリラ派。本人の筋肉もゴリラみたい。
鄧飛(とうひ)…ライオン派。火眼狻猊なもんで。
王英(おうえい)…虎派。矮脚虎なもんで。まあちんけな虎だけど。
楊林(ようりん)…鳥派。カラスが似合うのはどこかの世界のオマージュ。

2.
公孫勝「…」
劉唐「公孫勝殿」
楊雄「あまり疑いたくはないのですが」
公「…」
劉「飼われている猫に子猫が産まれたのですね?」
公「…」
孔亮「俺たちの着物が引っ掻き傷とおしっこだらけになっていて困るのです」
樊瑞「高廉の軍に匂いで気づかれてしまいます」
公「…知らん」
劉「公孫勝殿!」

樊「子猫の気を感じますぞ、公孫勝殿」
楊「くしゃみが止まらないんです」
公「…」
劉「まさか今、懐にいるのではありませんか?」
孔「鳴き声が聞こえてきますよ?」
公「…いない」
劉「ならば身の潔白を証明してください」
楊「正直になってください!」
公「…知らん」
樊「公孫勝殿!」
公「…」

子猫「…」
劉「…」
子「!」
劉「今ばっちり公孫勝殿の懐と目が合いました」
孔「何匹いる?」
劉「五匹はかたい」
公「…」
樊「我らは怒ってるわけではありません、公孫勝殿」
劉「ただ少し、我らにも愛でさせていただければと思っているだけです」
公「断る」
孔「公孫勝殿!」
公「絶対に嫌だ」

公孫勝…子猫を一匹も渡さなかった。
劉唐…何匹飼われているのだ。いつのまにか。
楊雄…相変わらずの猫アレルギー。
孔亮…子猫にも嫌われてる。
樊瑞…四角くゴツい顔して、かなりの可愛いもの好き。

本隊

本隊…かっこいい装備はいくつになっても憧れるものだ。

人物
関勝(かんしょう)大刀から衝撃波を出したい。
呼延灼(こえんしゃく)双鞭をブーメランみたいに使いこなしたい。
穆弘(ぼくこう)…自慢の眼帯に様々なオプションをつけたい。
張清(ちょうせい)…礫で160km投げれるようになりたい。
宋万(そうまん)…ウエイトリフティング大会で優勝したい。
杜遷(とせん)…致死軍の司令塔になってみたい。
焦挺(しょうてい)…体術で燕青に勝ちたい。
童威(どうい)…いい加減に童猛と間違われなくなりたい。
李袞(りこん)…飛槍を36本持ち運びたい。
韓滔(かんとう)…余生は畑を耕して過ごしたい。
彭玘(ほうき)…余生は居酒屋をやりたい。
丁得孫(ていとくそん)…飛叉で童貫を討ち取りたい。

3.
穆弘「眼帯から光線を出せるようになった」
関勝「太陽光の反射ではないのか?」
穆「そういうのではない!」
呼延灼「ならば見せてみろ」
穆「発射!」

!!

関「それは」
呼「一体何をエネルギーにしているのだ」
穆「恐れ入ったか!」
関「戦で使えるな!」
呼「凌振の大砲などいらんではないか」

穆「これを戦で使うのか?」
関「使わない理由があるのか?」
呼「岩が木っ端微塵になったのだぞ?」
穆「この光線を人がくらったらどうなるか、実はまだ試したことがないのだ」
関「ふむ」
呼「爆散するだけではないのか?」
穆「分からん。岩もなぜ砕けるのかも分からない」
関「誰が作ったのだ?」

穆「それにこの光線は一月に一度くらいしか出せんのだ」
関「そんな貴重な光線なのか?」
呼「デモンストレーションで消費するには軽率すぎるぞ」
穆「そうか?」
関「戦で使えんではないか」
呼「その光線を有効活用できんのか?」
穆「岩を砕く!」
関「李逵の方が上手いな」
穆「…じゃあいらんか」

穆弘…結局誰が作った眼帯なのか分からないまま、眼帯棚の中の奥の方にしまった。
関勝…俺も手から光線を出せんかな。
呼延灼…双鞭から光線を出せるようになりたい。

遊撃隊

遊撃隊…夏になってこれ見よがしに脱ぐようになったが、彼女がいる者は独りもいない。

人物
史進(ししん)…もはや書くことがない。諸悪の根源。
杜興(とこう)…やたら構ってほしがる癖が出てきた。
陳達(ちんたつ)…やたらジャンプ力を自慢し始めるようになってきた。
施恩(しおん)…やたら替天行道アカペラを披露したがるようになった。
穆春(ぼくしゅん)…やたら兄の悪口を言うようになった。
鄒淵(すうえん)…やたら獣肉の味に精通しているみたいな態度をとり始めてきた。

4.
史進「俺の尻はそんなに汚いのか」
陳達「今更にもほどがある」
史「じゃあ綺麗にするための方法を皆で考えてくれ」
杜興「化粧でもするか?」
鄒淵「白粉でもかけてみるか」
陳「しかし化粧道具など誰が持ってる?」
史「扈三娘…」
陳「正気か?」
杜「どうやって貰ってくるのだ?」
史「そうだな」

杜「李応殿の娘のお祝いにと言ったら、快く貰うことができてしまった」
陳「良心が痛むな」
史「しかしもう後には引けん」
鄒「そう思ってるのはお前だけだ」
杜「今からでもお嬢様に贈ることはできんのか」
史「諦めろ」
杜「…」
史「俺の尻のためだ」
杜「…そうだな」
陳(納得してんじゃねえよ)

史「すごくいい香りだ」
杜「これは最高級の香だな」
陳「しかも扈三娘の私物だ」
鄒「それを俺たちは台無しにしようとしているのだな」
杜「何という背徳感だ」
史「ゾクゾクしてきた」
陳「どう塗ればいいのだ?」
杜「任せろ」
鄒「お前は何なんだ、杜興」

王英「俺の渡した香は?」
扈三娘「?」

史進…結局お尻からすごくいい匂いがするだけで、汚いままだった。
杜興…魅入られたように化粧をしていた匠。
陳達…俺たちロクな死に方しないぞ。
鄒淵…王英がやけに寄ってくるな。

扈三娘…悪気はない。むしろ優しさ。
王英…史進の尻からすごく覚えのある香りが漂っている気がしてならない。

5.
陳達「乳首相撲右の部大関、鄒淵」

鄒淵「…」
陳「乳首相撲左の部大関、杜興」
杜興「…」
陳「はっけよい…」
鄒「…」
杜「…」
陳「のこった!」
鄒「!」
杜「!」
史進「見応えのある相撲だ」
陳「のこった!のこった!」
鄒「!」
杜「!」
史「杜興の乳首が引きちぎれそうだ」
杜「…李応殿」

李応「あれは?」
解宝「また遊撃隊だ」

杜「!」
鄒「!」

李「杜興が立合っている」
解「なにしてやがるんだ…」
李「…杜興もようやく場所を得たのだな」
解「感慨にふけるなよ」

杜「李応殿!」
鄒「!?」
陳「決まり手は撲天鵰撚り。杜興の勝ち」
史「見事」

李「乳首相撲の技名にされるとは」

史進…乳首相撲右左の両横綱。
陳達…乳首相撲行事兼右の小結。
杜興…乳首相撲左の大関。知らぬ間に失った物が大きすぎた。
鄒淵…乳首相撲右の大関。乳首の皮が剥けて痛い。

李応…しばらく杜興と口を聞くのをやめよう。
解宝…当然だ。

6.
史進(騙された…)
女「…」
史(これが鄒淵の言っていた、馬のような顔をした女に違いない)
女「…」
史(一体どのような加工をすれば、この馬面を誤魔化せるのだ)
女「…」
史(この写真を見るからに、明らかに別人だろう)
女「…」
史(どうしたものだろうか)
女「…」
史(無為に時間だけが過ぎていく…)

女「ねえ」
史「…なんだ?」
女「なんか話してよ」
史「…何を?」
女「なにかよ!」
史(なぜ俺が怒られるのだ)
女「男ってみんなそう!」
史(あの写真を見て会ったらそうなるだろう)
女「つまらない男ね」
史(言葉が出んだけだ…)
女「帰る」
史「おう」
女「財布忘れたから会計よろしく」
史「…」

史「やられた…」
陳達「どうだったのだ、史進?」
史「例の馬に会っちまった」
鄒淵「よりによってか!」
史「財布を忘れたからと会計までさせられちまった」
鄒「そんなだから駄目なんだよな」
杜興「おい貴様ら」
史「なんだ爺」
杜「わしの出会い系アプリの写真をどう思う?」
史「引っ込んでろ」

史進…憂さ晴らしがしたくて仕方がない。
陳達…そういう事もあるさ。
鄒淵…そういう奴のせいで、全体の評価が下がるんだよな。
杜興…鬼臉児がやたら美肌になった写真を駆使しているらしい。

…ご存知馬のような顔をした女。いろいろお察し。

二竜山

二竜山…妻のいる者はどんなプロポーズをしたのだろうか。

人物
楊志(ようし)…済仁美に惚れられるのも当然。いい感じのヘタレ。
秦明(しんめい)…公淑に惚れられたが、それ以前に本人がバレバレなくらい惚れてた。
解珍(かいちん)…凌蘭という嫁がいた。なかなかワイルドな女将だったという。
郝思文(かくしぶん)…陳娥という嫁とはお見合い結婚。彼も結構どんくさい。
石秀(せきしゅう)…楊雄に近づいてきた潘巧雲という悪魔のような女が怖すぎた。
周通(しゅうとう)…済仁美親子が幸せそうでほっこり。一抹の寂しさと共に。
曹正(そうせい)…楊志親子の支え役。
蔣敬(しょうけい)神算子のスキルで会計のぼったくりを見抜いた。
李立(りりつ)催命判官の眼力で役人の偽装を見抜いた。
黄信(こうしん)鎮三山というものの山登りで真っ先に愚痴を言う。
燕順(えんじゅん)…清風山山登り大会で彼に勝てる者はいない。
鄭天寿(ていてんじゅ)…銀細工のクオリティがやけに上がり始めた。
郭盛(かくせい)…楊令と再会した時のシミュレーションは数パターン考えてある。
楊春(ようしゅん)白花蛇を飼ってみた。育成日記も順調。
鄒潤(すうじゅん)…瘤の調査をしてみたいと安道全から依頼が入った。
龔旺(きょうおう)…刺青を何とか入れなおそうと必死。

7.
公淑「秦明様…」
秦明「公淑殿?」
公「本当に、私のような女でよろしいのですか?」
秦「私はあなたの今まで全ての歩みを愛し、これから歩く道を共に行きたいと思っている」
公「私は気の触れた女だったのですよ?」
秦「それがどうしたというのだ、公淑殿」
公「…」
秦「私はあなたの今に惚れた」

秦「私の惚れたあなたの今は、あなたの今までの歩みがあったからこそだと思っている」
公「…」
秦「あなたはご自身の気が触れてしまうほどの、深い哀しみを知っている」
公「ええ…」
秦「だからこそ、あなたの抱擁は暖かいのだよ、公淑殿」
公「抱擁、ですか?」
秦「優しさの温もりと言うのかな…」

秦「あまりこういう言葉を使ったことがないもので、いささか気恥ずかしい…」
公「おっしゃる通り、お顔が真っ赤です。秦明様」
秦「…からかわないでくれ」
公「私も秦明様と一緒にこれから巡る季節を共に歩みたいです」
秦「そうだな」
公「劉定様と、劉良も一緒に」
秦「彼らのことも決して忘れぬ」

秦明…一世一代のプロポーズ。無事終了。
公淑…芯の強さと優しさをあわせ持った女傑。

聚義庁

聚義庁…首脳陣も子供が多い。

人物
晁蓋(ちょうがい)…調練に出れないと駄々をこねてしまう。
宋江(そうこう)…おやつを食べられると泣いてしまう。
盧俊義(ろしゅんぎ)…仕事の出来が悪いとふくれてしまう。
呉用(ごよう)…子どもたちの相手は塾講師時代の経験でお手の物。
柴進(さいしん)…贅沢できないとそっぽを向いてしまう。
阮小五(げんしょうご)…晁蓋のいい遊び相手。
宣賛(せんさん)…関勝というキングオブ子どもの遊び相手。

8.
宋江「梁山泊寝起きドッキリ大会を行う」
呉用「まさか宋江殿がやられるのですか?」
宋「実働部隊は遊撃隊だ」
呉「また何をやらかしたのですか」
宋「まずは盧俊義の寝起きを襲うぞ」
呉「それは…」
宋「モニターオン!」
呉「…」
宋「…」

燕青「…」
鄒淵「」

宋「荷が重すぎたな…」
呉「…」

宋「公孫勝寝起きドッキリで、杜興が犠牲になったか」
呉「闇の軍を相手に無謀すぎます」
宋「ならば林冲の寝起きドッキリだ」
呉「あそこには、張藍殿が」
宋「内通するための仁義は通してある」
呉「…」

張藍「静かに…」
史進「…」
陳達「…」
林冲「ZZZ」

宋「やはり寝顔はかわいい」
呉「…」

宋「出撃」
呉「何をするのですか」

張「それでは」
史「…」
陳「…」

宋「史進の着物を?」
呉「音一つ立てず脱ぎ始めました」
宋「見事な少華山の共同作業だ」

史「…」
陳「…」
林「…」

宋「気が?」
呉「宋江殿?」

史「…!」
林「何者だ!」
陳「くそっ」
林「!」
陳「」
史「撤退!」

宋江…盧俊義にこっ酷く叱られた。
呉用…燕青に工作資金を搾り取られた。
燕青…ドッキリ大成功の札を叩き割った。
鄒淵…三日後に死ぬ突きをくらった。
杜興…夜の森で宙吊り。
張藍…何食わぬ顔で手引きした。
陳達…林冲の突きをモロに食らった。
林冲…逃がさん!
史進…また全裸で追っかけっこ。

牧場

牧場…馬が好きすぎる名コンビの職場。

人物
皇甫端(こうほたん)…馬としかコミュニケーションをとらないから、実質馬。
段景住(だんけいじゅう)…馬と仲良くなる姿は実質馬。

9.
皇甫端「馬を探している?」
徐寧「おう。槍騎兵の教官が乗りこなすような馬を頼む」
段景住「それにしてもお前の鎧はかっこいいな」
徐「賽唐猊という、徐家の家宝だ」
皇「この馬に乗ってみろ」
徐「よし!」
段「なんだこのノイズは!?」
馬「!?」
徐「逃げられたぞ、皇甫端」
皇「鎧の音のせいだ」

徐「たしかに賽唐猊の鎧の音だ」
段「こんな嫌な金属音のする鎧をよく着こなせるな」
徐「俺には全く分からん」
段「牧場の馬が軒並み逃げ出したぞ」
徐「なぜだ?」
段「お前…」
皇「待ってろ徐寧」
段「大丈夫なのか?」
皇「今は関係ない」
段「皇甫端の耳に念仏か」
皇「聞こえてるぞ」
段「!」

皇「この馬を試してみろ」
徐「おう、いい馬だ」
段(気の毒な)
徐「それ!」
段(乗るときの音だけで鳥肌が立つ)
皇「…」
徐「行け!」
馬「!」
段(走ったらさらに嫌な音が!)
皇「…」
徐「気にいったぞ皇甫端!」
皇「ならばよい」
徐「礼を言う!」
段「…どんな馬だよ」
皇「あの音が好きな馬だ」

徐寧…賽唐猊のノイズを奏でながら、駆け回ってご機嫌。周囲は大顰蹙。
皇甫端…馬選びに私情は挟まないプロ中のプロ。
段景住…鳥肌がひかなくて困ってる。

練兵場

練兵場…地縛霊がしつこすぎるくらい根付いているらしい。

人物
徐寧(じょねい)…鎧がやかましすぎる調練担当。本当にやかましい。

10.
王倫「やい!お前ら!」
宋万「…」
杜遷「…」
焦挺「…」
王「私が見えているのではないのか?」
宋「…」
杜「…」
焦「…」
王「声が聞こえているのではないのか?」
宋「…」
杜「…」
焦「…」
王「成仏してもいいのか?」
宋「さっさとしろ!」
杜「その面見てるだけで不愉快だ」
焦「お二方」

宋「しまった」
杜「相手にした時点で負けだった」
王「愚かな」
焦「梁山泊全員に見限られて殺された奴に罵る資格が?」
王「…すいませんでした」
焦「王倫の首ってどうしたんでしたっけ?」
宋「野ざらしにして…」
杜「ほったらかしだな」
焦「防水加工もしてませんからね」
王「何を言っている」

焦「我らは寛大ですから、王倫の頭蓋骨を杯にしたりはしませんよね」
宋「そんな悪趣味な真似はせんな」
焦「だけど尿瓶にしてたら?」
杜「小便をひっかけたいところだが、それをしたら我らも負けだよな」
王「どこまで私をディスるのだ」
焦「サンドバックに王倫の骨が混ざってたりして」
王「待て」

宋万…冗談がうまいな、焦挺。
杜遷…それをしたから王倫の地縛霊がいるのかもな!
焦挺…早々と自室のサンドバックの土を総とっかえした。


王倫…よく晁蓋の部屋に出没しているらしいが、微塵も気づかれない。晁蓋だってとっくに忘れてるからそりゃそうだよな。

間者

間者…潜入ミッションで何に変装しますか?

人物
時遷(じせん)…その時々に応じてなんにでも変装できる。
石勇(せきゆう)…下働きの下男役として潜入。
侯健(こうけん)…仕立て屋として潜入。
孫新(そんしん)…如才のない証人として潜入。
顧大嫂(こだいそう)…食堂のおかみさんとして潜入。
張青(ちょうせい)…農夫として潜入。
孫二娘(そんじじょう)…意外と男装でも潜入できる美人。

11.
時遷「…今日は?」
石勇「茶屋の娘。ハキハキした愛嬌のある接客と、茶屋自慢の特製饅頭が評判。商人から人足まで、男たちの癒しとなっている。おっちょこちょいなところがあるが、そこがまた良いとの声多数」
時「女装するのはやぶさかではないが」
石「…」
時「一体何の仕事なんだ?」
石「さあ」

時「いらっしゃいませ!」
商人「また来たよ!」
時「いつものでいいかしら?」
商「さすがだね」
時「いけない!しそとよもぎを間違えちゃった!」
人足「おっちょこちょいだな!」
時「お酒はあと一杯までにしときなさいよ」
人「お嬢ちゃん」
時「だーめ!」

石勇「楽しんでるよな」
侯健「ああ」

時「分かったことがあるから記録しろ」
石(化粧落とすとおっさんだよな)
時「俺にしつこく絡んだ商人」
石「あのデブ」
時「あいつは絹商人だ。次に来る時は、土産を用意してくる。受け取っておけ」
石「…はい」
時「チンケな人足」
石「あいつか」
時「次は鼈甲の髪飾りを」
石「何の記録ですか?」

時遷…男たちの土産をしこたま仕入れては次につなげている。
石勇…時遷の女装用アクセサリーがすごく充実している気がする。
侯健…侯真の遊び相手になってもらうのどうしよう。

商人…すけべな絹商人。やたら薄い着物をプレゼントしてきた。
人足…チンケな人足。鼈甲でツケをしこたまこしらえた。

林冲さん家

林冲さん家…変身するのは旦那だけではなかった。

12.
張藍「さくらんぼになってしまいました」
林冲「なんと」
張「どうしましょう、林冲様」
林「元に戻すのも大事だが、気になることがあるのだ」
張「なんですか、私の一大事に」
林「お前と繋がっているもう一つのさくらんぼは誰だ?」
張「気にしている場合ですか!」
林「俺以外と繋がるな、張藍!」

林「お前と繋がっているさくらんぼを食べてやる!」
張「私を食べないでくださいね」
林「無論だ」
?「待ってくれ、林冲」
林「声が!」
張「誰ですか、あなたは!」
父「張藍の父だ」
張「父上!?」
林「どういうことですか、舅殿」
父「冥土で張藍の事を願っていたら、さくらんぼになっていたのだ」

林「親子でさくらんぼになるとは」
張「お久しぶりです、父上」
父「うむ」
張「ご健勝でしたか?」
父「…もう死んでいる」
林「舅殿を食うわけにはいきませんな」
父「何を言っている、林冲」
林「しかし、張藍を元に戻さないと」
張「種を植えてみたらどうでしょう」
林「なるほど」
父「食うな!」

林冲…種を植えたら桜が生えて、大きなさくらんぼができた。
張藍…そのさくらんぼから出てきて復活した。
張藍の父…ついでに復活した。どうしようこいつ。

13.
林冲「…」
張藍「…」
張藍の父「…」
林「…舅殿」
父「なんだ林冲」
林「我が家に、住われるのですか?」
父「他にどこに行き場がある?」
林「しかし…」
張「李雲殿に二世帯住宅にしていただく手配は済ませていますので、しばらくの辛抱です、林冲様」
林「おう、それなら!」
父「…待て、張藍」

張「なんですか、父上?」
父「私と同じ住まいに住むのが嫌ということか?」
張「二世帯住宅ならば、そういうことにはなりませんよ?」
父「…そういうことではない」
林「我らは契りを結んだ夫妻です、舅殿」
張「もう子どもではありません」
父「しかし…」
林「どうされたのですか」
父「寂しくて」

張「なにを林冲様みたいなことを申されているのですか…」
林「聞き捨てならんぞ、張藍」
張「じゃあ私と違う床で寝れますか?」
林「…寂しい」
張「ごらんなさい」
父「見せつけるな!」
張「困りましたね…」
父「どうすれば良いだろうか…」
張「母上を呼ばれたら?」
父「なるほど!」
林「待て」

林冲…自宅を張藍の家族に占められつつある。
張藍…懐かしい家になってきました。
張藍の父…どさくさで張藍の母まで呼んできた。どうなることやら。

裴宣さん家

裴宣さん家…堅気の役人の家にはやんちゃ小僧が居候していたらしく。

14.
裴宣「蔣敬」
蔣敬「…」
裴「また喧嘩か?」
蔣「喧嘩というほどでは」
裴「その割に怪我をしているんじゃないか?」
蔣「大したことありません」
裴「お前の才は棒の他にあると常々言っているじゃないか」
蔣「計算なんて男のやることじゃありませんよ」
裴「喧嘩も大人の男がやることじゃないぞ?」

蔣「俺は計算なんかじゃなくて、武術で身を立てたいと言っているではありませんか」
裴「それでお前が我が家に居候してから、武術で家計に貢献したことが一度でもあるか?」
蔣「…それは」
裴「お前が我が家の家計で貢献した仕事は?」
蔣「…商人の仕事でした」
裴「つまりそういう訳なんだ、蔣敬」

蔣「…」
裴「私はお前に視野を広く持ってほしいと思っている」
蔣「…」
裴「お前のやりたいことは分かる。しかし、この世はお前のやりたい事だけで出来上がっているわけではない」
蔣「…」
裴「武術をやることを否定はしない。しかし、お前の計算の能力は、多くの人に求められるほどの才だからな」

裴宣…そのうち分かる日が来るだろう。
蔣敬…裴宣の家の居候時代。計算なんて使えないと思っていた若い頃。

チーム張清

チーム張清…投げてばっかりのセクション。仕事を投げてクライアントから大目玉。

15.
張清「瓊英もすっかり礫の名手になったな」
瓊英「張清様のおかげです」
張「旦那として鼻が高い」
瓊「お願いがあるのです…」
張「どうした?」
瓊「龔旺殿の飛槍と、丁得孫殿の飛叉も習いたいのですが…」
張「…あいつらの技なんて、どうでもいい」
瓊「投げられるものは多い方がいいでしょう?」

龔旺「飛槍なんて習ってどうするんで?」
瓊「手元にちょうどいい槍があったら、的確に投げられるようになりたいのです」
張「そんなシチュエーションなどない!」
龔「瓊英殿にはお教えしますがな」
瓊「はい!」

龔「一つ!」
瓊「!」
龔「二つ!」
瓊「!!」
龔「三つ!」
瓊「!!!」
張「…」

丁得孫「飛叉なんて習ってどうするんで?」
瓊「手元にちょうどいい刺又があったら、的確に投げられるようになりたいのです」
張「そんなシチュエーションなどない!」
龔「瓊英殿だからお教えしますがな」
瓊「はい!」

丁「一本しか投げられないと思って、全力で投げてください」
瓊「!」
張「…」

瓊英…礫も飛槍も飛叉もばっちり投げられるようになった。

張清…掌サイズの礫じゃないと投げられない。
龔旺…頃合いの飛槍じゃないと投げられない。
丁得孫…やたら長い飛叉じゃないと投げられない。

子午山

子午山…名コンビ生成所としても定評がある。

人物
王母(おうぼ)…楊令と張平の好物は完全に把握している。
王進(おうしん)…好物の煮豆が出て死域。

16.
楊令「また汚い手を使ったな、張平!」
張平「私の手は汚くありません!」
楊「さっき洗ってきたとかそういうことじゃないぞ」
張「!」
楊「汚い手を使って私に勝っても、心まで汚くなるぞ」
張「心が汚くなる?」
楊「そうだ」
張「しかし楊令殿」
楊「なんだ」
張「水は清すぎても魚は棲みません」

楊「子午山の水は棲んでいるではないか」
張「魚が棲むためには栄養がいるのです」
楊「栄養は汚くないと思うが」
張「人の世の知恵だって汚くありません」
楊「つまり何が言いたいのだ?」
張「私の汚い手も人の世を生きるための栄養というわけです」
楊「…」
張「…」
楊「つまり毒か」
張「毒?」

楊「張平は人の世を生きるために毒を手に入れたのだな」
張「毒…」
楊「蛇のような毒かな?蠍のような毒かな?」
張「…」
楊「…」
張「楊令殿の懐を襲う毒です!」
楊「甘い!」
張「!?」
楊「脇腹を掠めた程度で私を討ち取れると思うな!」
張「おのれ!」
楊「覚悟しろ」
張「殺すならば殺せ!」

楊令…張平をくすぐり倒した。
張平…毒を使い尽くしたようにぐったり。

禁軍

禁軍…分かれもまた一興である。

人物
童貫(どうかん)…新法党もキモかったが旧法党もキモかった。
趙安(ちょうあん)…呼延灼と別れる時の事。

17.
趙安「呼延灼殿」
呼延灼「どうした趙安」
趙「フレッシュとは、なんなのでしょうか」
呼「俺はそれを、生涯を通じて考えることになるだろうと思う」
趙「そんなに」
呼「歴代の錚々たるフレッシュマンも、また然りだ、趙安」
趙「そうですね」
呼「フレッシュとはなにか」
趙「呼延灼殿?」
呼「…」

呼「フレッシュマンは宋国の光」
趙「私はその光を呼延灼殿から継いでみせます」
呼「しかし、光あるところに必ず闇はあるぞ」
趙「…」
呼「フレッシュマンの光当たらぬ名もなき民の声が聞こえるか、趙安?」
趙「…いいえ」
呼「正直な男だ」
趙「恥ずべきことだと思います、私は」
呼「忘れるなよ」

呼「フレッシュマンの光はいつでも闇に変貌する力を秘めている」
趙「フレッシュマンの闇?」
呼「闇から光は生まれたのかもしれぬが、光は闇に還ってしまうかもしれん」
趙「そのような事は私が決していたしません」
呼「お前と共に戦をしたかったぞ、趙安」
趙「私もですよ、呼延灼殿」
呼「さらば」

呼延灼…フレッシュマン引き継ぎの儀の後のこと。
趙安…呼延灼の薫陶をしかと心に刻みつけた。

楊令伝

黒騎兵

黒騎兵…あれほど料理するなといったのに。

人物
楊令(ようれい)…やるなと言われれば言われるほどムキになるタイプ。
郝瑾(かくきん)…焦げ臭すぎないか?
張平(ちょうへい)…ちょっと街へ買い物中。
蘇端(そたん)…嗅覚がやられそうです。
蘇琪(そき)…楊令殿はどこだ?
耶律越里(やりつえつり)…こないだ食べた楊令の料理がまだ舌に残っている。

18.
郝瑾「楊令殿!」
楊令「…」
郝「今隠したものはなんですか?」
楊「…隠してない」
郝「背中に隠すにしては大きすぎますが?」
楊「俺が背負っているものは、もっと大きくて重い」
郝「それは否定しません」
楊「…」
郝「正直になりましょう、楊令殿」
楊「…叱らないか?」
郝「少なくとも、私は」

郝「見事に焦げつかせましたね」
楊「どうしたものか、郝瑾」
郝「張平のことだから、黒い鍋だと言えば受け取りそうですね」
楊「そうはいかん」
郝「ならば正直に謝りましょう、楊令殿」
楊「張平にあれほど触るなと言われた鍋を触ったのに?」
郝「…」
楊「決して焦げ付かせるなと言われた鍋を?」

楊「張平」
張平「楊令殿、私の鍋を知りませんか?」
楊「…これだ」
張「」
楊「…」
張「♪〜」
楊「…」
張「…それで?」
楊「すまなかった…」
張「この鍋についての掟はご存知ですよね?」
楊「…ああ」
郝(上に立つやいなや強いな張平)
張「心も焦げ付きますよ…」
楊「テフロン加工なのか?」

楊令…どうしよう。張平が口を聞いてくれない。
郝瑾…時が解決しますよ。
張平…楊令におねだりする算段を入念に検討中。

遊撃隊

遊撃隊…もう知らん。

人物
班光(はんこう)…むっつりスケベ。
鄭応(ていおう)…オープンスケベ。
葉敬(しょうけい)…スケベ。

19.
史進「確かに俺はお尻を出した」
班光「…」
史「お前らの合コンに乱入したのは悪かったと思っている」
鄭応「…」
史「しかし、なぜ俺を仲間外れにしたのだ」
葉敬「…」
史「その点に関して納得のいく説明を要求する!」
班「出会い頭に女性の前でお尻を出すからです」
鄭「酒癖が悪すぎるからです」

史「余興ではないか」
鄭「誰も史進殿のお尻など見たくないのです」
史「葉敬!」
葉「…俺も、さすがに史進殿のお尻を見ながら飯は食えません」
史「裏切り者め!」
葉「申し訳ございません」
班「いや、葉敬」
葉「…」
班「この世で史進殿のお尻を見ながら飯を食える者などいないよ」
史「班光!」

班「…では史進殿」
史「なんだ」
班「お尻を出してください」
史「なぜだ」
班「試してみましょう」
史「何をだ」
班「史進殿がご自身のお尻を見ながら飯が食えるかを試すのですよ」
史「なぜそんなことをしなければならん!」
班「我らの邪魔をした罰です」
史「断る!」
班「拒否権があるとでも?」

史進…結局自分のお尻をおかずに飯を食うことになった。思ったより進まなかった。
班光…わりと本気で怒ってたから容赦しなかった。
鄭応…粛々と史進にお尻を出させて写真を撮りプリントアウトする班光も怖かった。
葉敬…史進をリスペクトしているが、お尻は自分の方が綺麗で良かったと思っている。

20.
史進「班光」
班光「なんですか」
史「お前は乳首に感情があると思わないか?」
班「何を言っているのですか、史進殿」
史「鄭応の乳首を見ろ」
班「はい」
史「泣いてるな」
班「…泣いてますね」
史「葉敬の乳首」
班「怒ってます」
史「お前の乳首は情けないな」
班「史進殿の乳首は大きすぎます」

史進…遊撃隊将兵の乳首の感情を読み解く名手。
班光…寝る前に正気に帰って赤面。

21.
班光「シシハラに該当する立ち振る舞いを、史進ると定義いたしました」
鄭応「ししる?」
班「所構わず脱いだり、淫らな振る舞いをしたりする事です」
鄭「他にも意味があるのだろうな」
班「シシハラの被害にあった時はここに通報してください」
鄭「この番号は?」
班「ハンコールです!」
鄭「…」

史進「あっはっは!尻を出せ!兵ども!」
兵「出してどうするのですか!」
鄭(早速ハンコールの出番か)
史「最も良い尻鼓の音色を出した漢に褒美をやろう」
兵「それは負けられん!」
兵「俺の音が一番だ!」
葉敬「なんの!」
鄭「…」
史「一人目!」
兵「♩!」
史「張りがない!次!」
兵「♪!」

鄭「ハンコール。応答せよ」
班「こちら班光。シシハラですか?」
鄭「兵どもが史進られているが…」
班「すぐに出動します!」
鄭「喜んで史進られている場合は、シシハラなのか?」
班「それは」
史「鄭応!何をしている!」
鄭「!」
史「貴様も尻を出せ」
鄭「はい!」
史「…」
鄭「あ、愉しい」

班光…また遊撃隊で孤立してしまった。

史進…褒美は俺の尻だ!
鄭応…結局大はしゃぎ。
葉敬…ありがたき幸せ。

22.
班光「おのれ!」
史進「手こずらせやがって」
葉敬「袋の鼠ですな」
班「鄭応殿!」
鄭応「すまねえ、班光」
班「…」
史「ハンコールなど、遊撃隊への反抗、叛逆ではないか、班光」
班「私は、シシハラを撲滅するまで死にません!」
史「…死ぬ前に面白いデータを見せてやろう」
班「なんですか!」

史「遊撃隊の皆に聞く、班光大概にしろランキングワースト3」
班「いつの間に」
史「第三位!花飛麟の尻を舐めるように見るのを大概にしてほしい」
班「食べ頃の桃を愛でる何が悪いのですか!」
鄭「…」
史「第二位!花飛麟が身体を洗う様を覗く顔を大概にしてほしい」
班「普通の顔です!」
葉「…」

史「そして第一位!」
班「…」
史「なんだかんだでシシハラを受けるとちょっと顔がほころぶのを大概にしてほしい」
班「!?」
鄭「どういうことだよ」
葉「被害者の会が聞いて呆れる」
史「これより班光シシハラ被害VTRを見て検証しよう」
班「もう勘弁してください!」
史「…」
班「私の、負けです」

史進…完全勝利。
班光…完全敗北。シシハラ被害の会解散の危機。
鄭応…まあどっちもどっちなんだよな。
葉敬…なんだかんだで大好きだからな、史進殿。

23.
班光「シシハラ被害者の会の弱点!?」
史進「いかにも」
班「解散させようとしてもそうはいきません!」
史「分かった。ならばシシハラはやめよう」
班「!?」
史「今まで破廉恥な真似をして本当にすまなかった、班光」
班「…」
史「今までの罪が清められるとは思わないが、金輪際やらないことを誓う」

兵「やはり下腹部は隠さないとな」
兵「それが漢のエチケットだ」
史「うむ」
班「…」

史「酒は飲んでも飲まれるなよ」
兵「気をつけます!」
兵「史進殿も一杯!」
班「…」

史「妓楼に行く時も慎ましくだ」
葉敬「さすが史進殿!」
班「…」

史「見事な指揮だぞ、鄭応」
鄭応「はい!」
班「…」

班「…」
楊令「どうした、班光?」
張平「魂が抜けたような顔をしているぞ?」
班「史進殿が…」
楊「史進がどうした?」
班「シシハラをされなくなり…」
張「被害者の会の願いが叶ったじゃないか」
班「それなのに、なぜ私はこんな腑抜けになっているのでしょうか?」
楊「病か、班光?」
張「…」

班光…シシハラ被害者の会の念願が叶ったはずが?

史進…清く正しく美しくだ。
鄭応…さすがです!
葉敬…見習います!

楊令…どういうことだと思う、張平?
張平…あまり言いたくはないのですが…

24.
班光「…」
花飛麟「班光?」
班「…花飛麟殿」
花「最近どうしたのだ?」
班「…史進殿が清くなりまして」
花「今更な気もするが」
班「誰もが喜ぶべきことのはずなのに、そうなってから私は腑抜けになってしまいました」
花「そうか」
班「はい」
花「シシハラは満更でもなかったか?」
班「…はい」

班光…どちらが変態だったのか分からなくなりました。
花飛麟…大差ないぞ。

25.
葉敬「実家から桃が届きました」
史進「おう」
鄭応「美味そうだ」
班光「…」
葉「どうした班光?」
班「なぜだか花飛麟殿を思い出してしまいました」
鄭「それは?」
史「なぜだかじゃないだろうスケベ班光め」
班「そんなことは!」
鄭「赤面してんじゃねえよ」
葉「お前は食うな、班光」
班「!」

班「…」
花飛麟「また遊撃隊で除け者にされたのか、班光?」
班「あなたのせいです!花飛麟殿!」
花「なんだ突然」
班「あなたの、あなたのお尻があんなに美しいから、私は!」
花「…」
班「いかん!また花飛麟殿のエロスに当てられてしまいました」
花「…ハンハラ」
班「!?」
花「大概にしろよ」

史「班光による淫らな立ち振舞い!エロスな視線による被害者を救済せよ!」
葉「この弓を射る花飛麟像の怒りを知れ」
鄭「ハンハラ反対!」

班「!?」

楊令「今度はハンハラとは…」
張平「帰りますよ、楊令殿」

史「ハンハラ被害者の会は弓を射る花飛麟の像のもとに集った同志」
葉「覚悟せよ班光」

史進…ハンハラ被害者の会代表。攻めに回ると凄まじく強い。
葉敬…被害者の会書記。史進の薫陶を受けすぎ。
鄭応…被害者の会会員。被害は受けてない。

花飛麟…ハンハラ被害者の会象徴。入会は固く断った。

班光…大ピンチ。味方は現れるのか。

楊令…厳しい戦だ。
張平…真面目に見過ぎです!

26.
班光「もう一歩も退けない…」
史進「とうとう年貢の納め時だな、班光」
葉敬「崖っぷちってやつだ」
班「班光死すともシシハラは死なず!」
史「言いたいことは、それだけか?」
班「覚悟はできている!犯せ!」
鄭応「…班光?」
班「さあ!犯せ!」
史「お前はいったい何を言っているのだ、班光…」

楊令「待て、史進!」
史「楊令殿!?」
楊「これ以上遊撃隊の断絶を深くするわけには、いかない」
史「そういうわけでは…」
張「黒騎兵と青騎兵は、班光に味方します」
班「おお!」
張(便宜上)
史「構わん!班光を崖から突き落とせ!」
葉「!?」
鄭「!?」
史「くそっ!矢が!」
班「この鋭い矢は!」

花飛麟「…」
班「花飛麟殿!!」
史「裏切ったか!」
花「史進殿と班光なら、とりあえず班光に味方します」
班「花飛麟殿!」
史「おのれ!」
花「!!!!!!!!!!」
史「!?」
班「史進殿に十矢射るとは!」
花「…」
班「花飛麟殿!」
花「!」
班「!?」
花「そのすけべ顔が気に食わん」
楊「すけべ顔?」

史進…さすがに花飛麟の十矢を避けられず崖から落ちた。
班光…余計な顔をして、崖から落ちた。
鄭応…崖から落ちた。
葉敬…崖から落ちた。

楊令…見事な矢だ、花飛麟。
張平…とっとと帰りますよ。
花飛麟…またつまらぬものを射てしまった。

27.
史進「…」
班光「…」
楊令「これよりシシハラ被害者の会、ハンハラ被害者の会は解散し、遊撃隊を一つとする」
史「…」
班「…」
楊「意義はないな?」
史「…楊令殿が言うなら」
班「はい…」
楊「…」
史「楊令殿?」
楊「よかった…」
班(泣いている!?)
史(そこまで心を痛めていたとは)
楊「…」

呉用「楊令殿を泣かせたのか、お前ら」
史「まさか頭領が涙を見せるとは思わなかった」
班「私ももらい泣きしてしまいました」
呉「お前らの茶番も限度があるのだ」
史「…返す言葉もない」
呉「ネタにマジレスという言葉を聞いたことがあるかもしれないが」
班「はい…」
呉「楊令殿はそういう男だ」

史「…」
班「…」
史「俺たちは間違っていた」
班「私も痛感しております」
史「これより遊撃隊に新時代を迎えさせよう」
班「はい!」
史「…お前の麦飯の梅干し、やたら大きな乳首みたいだ」
班「…史進殿のソーセージも形が卑猥です」
史「すけべ小僧め」
班「シシハラです」
史「これが遊撃隊か」

史進…遊撃隊新時代の風を吹かせることができるだろうか。
班光…何かが変わるかも知れない。

楊令…張平に慰められた。
呉用…鼻で笑い続けてたけど、楊令の心の痛みを知って驚いた。

方臘軍

方臘軍…外道ここに極まれり。

人物
方臘(ほうろう)…信徒は無限大だ。
趙仁(ちょうじん)…信徒が夢に出てきて久しい。
石宝(せきほう)…良識派まだある方だけど、えぐい刀を使っている。
包道乙(ほうどういつ)…良識などかなぐり捨てて久しい。

28.
包道乙「…」
趙仁「包道乙殿?」
鄭彪「お前誰だ?」
趙「…どなたかな?」
鄭「名を聞くなら名乗れや。南瓜頭」
趙「!?」
石宝「お前が先に趙仁の名を聞いていたと思うが?」
鄭「知らん」
趙「…この方は?」
石「鄭彪。包道乙の部下だ」
趙「鄭彪殿…」
鄭「馴れ馴れしいぞ、南瓜」
趙「はあ…」

包「すまぬ、趙仁。信徒の使い道を考えていたら呼びかけに気づかなかった」
鄭「今度はどうします」
包「巨大な衝車を作り、童貫の騎馬隊に突撃させようと思う」
鄭「いいですな!信徒を大量に乗せて突撃させましょう!」
趙「…」
鄭「あと、信徒の死体を乗せるだけ乗せて突撃させるのは?」
趙「!?」

包「それはいいな」
鄭「敵陣にぶち込んでやれば疫病が流行りますよ!」
包「それもやろうか」
趙「それは…」
石「こういう奴なのだ、趙仁」
趙「…」
石「俺ですら嫌な気分になる策をいくらでも出すから、鄭魔君と呼ばれている」
鄭「南瓜」
趙「…何ですか?」
鄭「信徒の屍を拾いに行くぞ。来い」

趙仁…方臘軍の嫌な思い出がまた一つ増えた。
石宝…いけすかない奴らだ、全く。
包道乙…信徒衝車に乗せる信徒の配置にすごくこだわってる。
鄭彪…人呼んで鄭魔君。汚い策や卑怯な策やエグい策のデパート。

twitterにて連載中!

ご意見ご感想やリクエストは、こちらまでよろしくお願いいたします!

今号も、お読みいただき、誠にありがとうございました! 

これからもすいこばなしを、どうぞよろしくお願いします!


中学生の頃から大好きだった、北方謙三先生大水滸シリーズのなんでもあり二次創作です!