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水滸噺 21年3月,4月【爆誕九紋史進】

あらすじ
豹子頭林冲 首を捻じ切られ
禁軍副官  一日元帥となる
幻王楊令  ラッキースケベ王
九紋竜史進 九人に増殖す

すいこばなし 注意書き
北方謙三先生水滸伝何でもありな二次創作です。
・水滸伝の原典ネタは日常茶飯事、スマホにPCなど電子機器も飛び交うし、あの人が梁山泊で元気に生きていたりする、異世界からお届けします。
・原作未読の方でも楽しめるように、ネタバレを極力避けていますが、薄々感づいてしまう個所が垣間見えますので、その点はご注意ください。
楊令伝編で出てくる好漢は、すなわち水滸伝を生き残った者ということですので、未読の方はその点ご留意いただいた上でお読みください。
・作者のtwitterにて連載しています。
・今月号、バックナンバーのご意見ご感想、リクエスト等々、こちらまで
 お寄せいただけると、とても嬉しいです!いつも助かっています!
・原作に興味を持たれるきっかけになったらこれ以上の喜びはありません。

それでは行ってみましょう!

梁山泊

梁山泊…梁山泊にも春が来た。梁山泊の男女にも春がくるかどうかはタイミング次第。

致死軍&飛竜軍

致死軍&飛竜軍…隊長も兵も基礎身体能力がめちゃくちゃ高いから、子どもの遊びも白熱するという。

人物
公孫勝(こうそんしょう)…鬼ごっこの鬼で数を数える時、なぜか頭倒立して数える。
劉唐(りゅうとう)…赤毛で大柄だからかくれんぼに不向き。でも敏捷性はトップクラス。
楊雄(ようゆう)…存在感を消し、一瞬のスキをついて缶蹴りの缶を蹴りに行く名手。
孔亮(こうりょう)…卑怯な手を使って兵を騙す常習犯。
樊瑞(はんずい)…まさかここにいないって場所から降ってくることしばしば。
鄧飛(とうひ)…あまりこらえ性はないので、隠れる役より追いかける役の方があってる。
王英(おうえい)…身長が小っちゃいから隙間に隠れやすい。最近引っかかって出てこれなくない大騒ぎになった。
楊林(ようりん)…地味なたたずまいをして鬼の追撃をかわす匠。

1.
公孫勝が、止まろうとしない。いや、掟を把握していないのだ。致死軍飛竜軍で、だるまさんがころんだ大会をした時である。だるまさんが、ころんだ。そう告げ振り返った赤髪鬼が、掟を伝えようと公孫勝の元へ駆ける。ころんだ。赤髪鬼が、ころんだ。つまずいたのか、ころばされたのかは分からなかった。

2.
楊雄「病関索?」
劉唐「お前のあだ名だ」
楊「顔が黄色い関索って意味ですか?」
劉「そうだ」
石秀「しかし劉唐殿」
劉「なんだ拚命三郎」
石「なぜ関索なのですか?」
劉「なんとなくだ」
石「関平や関興でもなく、関索?」
劉「少なくとも関羽ではないだろう?」
石「それは同意します」
楊「…」

石「関索って知ってるか、楊雄?」
楊「関羽の息子なのか?」
劉「そうだ」
石「俺は餓鬼の頃に講談を聞いたことがあるぞ」
楊「どんな話だった?」
石「冒頭から劉備三兄弟がえげつないことをしていた」
楊「どんな?」
石「読めば分かる」
楊「俺は字が読めんのだが」
劉「あと美しい嫁ができるぞ」

楊「それは」
劉「鮑三娘と言ったような」
楊「嫁か…」
石「お前、あの女はどうした?」
楊「無かったことにしろ、石秀」
劉「楊雄に女?」
楊「関わらない方がいいです」
石「劉唐殿は即死だな」
劉「俺が遅れをとるというのか!」
楊「心毀しにくる女でも?」
石「一撃で粉々ですよ?」
劉「待て」

劉唐…それで二人とも致死軍にあっているのか…
楊雄…潘巧雲という女と出会ってから、酷薄さがダダ上がりしたという。
石秀…楊雄とコンビを組んでいだ時は、潘巧雲の襲撃が大変だったという。

二竜山

二竜山…秦明の怒鳴り声はどうやら山の麓の村々まで聞こえているらしい。

人物
楊志(ようし)…自分のなりきりセットが山の麓で売っててびっくりした。
秦明(しんめい)…麓の村長から夫婦仲をからかわれ、思わず張り倒してしまった。
解珍(かいちん)…秦容の狼牙棒を尻に食らい絶叫した。
郝思文(かくしぶん)…秦明の怒鳴り声のトーンで何があったか察せられるようになった。
石秀(せきしゅう)…曹正のソーセージを石秀のソーセージにしてしまおうとたくらんでいる。
周通(しゅうとう)…済仁美に何事もなかったかのように話しかけられてびっくりした。
曹正(そうせい)…ソーセージ芸を模索中。もういい加減にしろ。
蔣敬(しょうけい)…秦明の怒鳴り声を浴びると頭の靄が晴れる。
李立(りりつ)…秦明の怒鳴り声を浴びたせいで、耳鼻科から注意を受けている。
黄信(こうしん)…愚痴を言っては秦明の怒鳴り声を浴び、またそのことに愚痴を言っては…の繰り返し。
燕順(えんじゅん)…からかい上手の親分。最近逃げ遅れてえらい目に合った。
鄭天寿(ていてんじゅ)…銀細工を作りながら、遠巻きに秦明の怒鳴り声を聞いていた。
郭盛(かくせい)…楊令と一緒に秦明の怒鳴り声を浴びたことがある。
楊春(ようしゅん)…秦明の怒鳴り声よりも、解珍の地味な嫌がらせの方がずっと嫌だ。
鄒潤(すうじゅん)…秦明の怒鳴り声を浴びて瘤が破裂する夢を見た。
龔旺(きょうおう)…雷が鳴ったと思ったら、秦明の怒鳴り声だった。

3.
秦明は激怒した。かのスケベ爺を懲らしめねばならぬ。しかし解珍は両頭蛇の如く巧みに逃げる。無垢な子供たちにスケベな話をする様は、さながら悪事を唆す蛇のよう。スケベなことなど言ってはおらん。貴様の想像力の方がよほどスケベだ。狼牙棒が更にうなる。初心だよな、秦明殿。燕順が呟いた。

双頭山

双頭山…バンド活動のメッカ。しょっちゅう宋国から全国ライブの打診が来る。やらねえって言ってんだよ。

人物
朱仝(しゅどう)…雷横がお母さんに頭が上がらない所を見てしまった。
雷横(らいおう)…朱仝の髭が伸縮自在なのを知ってしまった。
董平(とうへい)…知府の娘が架空の自分とのツーショット写真をSNSにアップしまくっているのを知ってしまった。
宋清(そうせい)…宋江から父の畑の土が届いて涙ぐんだ。
孟康(もうこう)…鄧飛に無茶を言われ、飛竜軍用の暗器をしこたま仕入れさせられた。
李忠(りちゅう)…史進に棒を教えていた頃の自分は史進共々黒歴史にしている。
孫立(そんりつ)…楽大娘子と結託している女性がどうやら東平府の知府の娘らしい。
鮑旭(ほうきょく)…馬麟と酒を飲んでいた時、昔の仲間が因縁つけてきたらしい。
単廷珪(たんていけい)… 水攻めをするための定期預金を始めた。
楽和(がくわ)…孫新の笛も歌と合わせやすくて好き。

4.
董平の二本槍には、様々な機能があるという。やたら金ピカで、派手な槍だが、まだこれ以上の機能が搭載されているのか。そう言って呆れた孫立の鞭は、くすんだ地味な色をしていた。どんな機能がついているのですか?やはり鮑旭は律儀である。見て驚け!董平は嬉しそうだ。伸びる!畢竟それだけだった。

聚義庁

聚義庁…それっぽいこと言ったら間にウケまくるのんきな首脳陣。

人物
晁蓋(ちょうがい)…調練をするとよく眠れるでしょうだと!
宋江(そうこう)…昼寝をすると夜眠れなくなるのか…
盧俊義(ろしゅんぎ)…小舟で昼寝してたらうっかり落ちそうになった。
呉用(ごよう)…自分の運気を占ってみた。まあ酷い結果だったそうだ。
柴進(さいしん)…当たるも八卦当たらぬも八卦だろう…
阮小五(げんしょうご)…占いなんか信じてたら仕事ができませんよ。
宣賛(せんさん)…大切な何かを毀されると、妻ができるでしょう、と言われたことがあるらしい…

5.
呉用「…」
宋江「なんの書を読んでいるのだ、呉用?」
呉「気晴らしに占いの書を」
宋「ほう」
呉「昔少しだけ齧っていたのですよ」
宋「面白いな」
呉「占ってみますか、宋江殿?」
宋「私を占うのは大変ではないか?」
呉「なぜです?」
宋「梁山泊の行く末がうっかり分かったらどうする?」
呉「」

盧俊義「呉用が占いを?」
呉「盧俊義殿を占いましょう」
盧「当たらぬも八卦だろう?」
呉「当たるも八卦ですよ」
盧「くだらん…」
呉「生年月日と干支は?」
盧「たしか…」
宋「乗り気ではないか、盧俊義」
呉「…この卦は」
盧「なんだ呉用!」
呉「百日の間に災いが起きます」
盧「なんだと!」

李逵「俺たちで百日護衛?」
燕青「すまない…」
盧「災いを回避するのだ」
燕「呉用殿はどんな災いと言っていたのですか?」
盧「女に気をつけろと」
李「女?」
盧「どういうことだと思う?」
顧大嫂「あら盧俊義殿」
盧「!」
顧「饅頭の試作はいかがかね?」
李「このことか、盧俊義?」
顧「?」

盧俊義…当たった。二重の意味で。
宋江…すごいな呉用。
呉用…開業しようかな…
李逵…俺はなんともねえぞ。
燕青…そりゃそうだ。
顧大嫂…私としたことが、こんな初歩的なしくじりを!

養生所&薬方所

養生所&薬方所…白勝がいないから、相変わらず業務が回らない。

人物
安道全(あんどうぜん)…白勝、分裂してくれ!
薛永(せつえい)…白勝、白勝を産んでくれ!
白勝(はくしょう)…最近養生したのはいつだったかな…

6.
安道全が、鼠から白勝を生み出すと言い始めた。いつもの無茶振りだろう。相手にするのは決まって薛永だ。実は前々から構想はあったのだ。そう言う薛永の目と指の色が、だいぶ不気味だ。おい、冗談だろう?古の我らの先祖は鼠だったのだぞ、白勝。力説する安道全の背後から丸太の匂いがした時、俺は…

塩の道

塩の道…梁山泊の糧道。塩分だけでなく脂肪も過多である。

人物
盧俊義(ろしゅんぎ)…脂増し増し、野菜抜きで頼む!
燕青(えんせい)…野菜増し、脂少なめ、にんにく無しでお願いします。
蔡福(さいふく)…ニンニク増し増し、味濃いめ、脂塊、麺大盛だ!
蔡慶(さいけい)…全部普通で!

7.
蔡慶「兄貴がゾンビになっちまった」
蔡福「…」
盧俊義「塩でもまけば萎びるんじゃないか」
慶「ナメクジじゃないんですから」
盧「燕青!」
燕青「清め!」
福「効かぬ」
慶「しょせん塩だ」
盧「しょっぱいぞ、燕青」
燕「…」
慶「体術で倒してくれよ」
燕「うつりそうで嫌だ」
福「…助けてくれ」

盧俊義…ゾンビでも仕事ができるならばそれでいい。
燕青…蔡福のゾンビ臭が気になる。
蔡福…仕事のしすぎでゾンビになってしまった。
蔡慶…だれか治してくれよ…

林冲さん家

林冲さん家…張藍は柴進の兵站部門の事務をやっている。女が惚れる女らしい。誰のせいだ?

8.
林冲「そしたらあのウスノロが…」
張藍「まあ」
林「索超が邪魔をしなければ首を捻じ切ってやったものを…」
張「首を捻じ切る?」
林「張藍?」
張「林冲様はよく首を捻じ切ってやるとおっしゃいますが」
林「なんだ突然」
張「首を捻じ切るとはどういう意味ですか?」
林「…考えたこともなかった」

張「私も林冲様の首を捻じ切ってよろしいですか?」
林「待て張藍」
張「言葉からすると、首を抱えるのでしょうね…」
林(いつの間にこんな力を)
張「首を捻じ切るというのだから…」
林(締まっている張藍!)
張「こう!」
林「」
張「…?」
林「」
張「林冲様の首を捻じ切ってしまった…」
林「」

林「死んだ叔父上に叩きのめされて帰ってこれた…」
安道全「お前ともあろうものが、今度は何をやらかしたのだ」
林「分からん」
張「…」
白勝「首か?」
安「捻じ切ったかのように強く捻った後がある」
林「それは…」
張「気のせいです。安先生」
安「いや、医者の見立てでは」
張「気のせいです」

林冲…寝違えたにしては痛みが強すぎる。
張藍…記憶をなくす薬を薛永からくすねていたのが幸いした。
安道全…日に日にたくましくなってないか、張藍殿?
白勝…扈三娘といい勝負するってよ。

東渓村

東渓村…呉用との賭けに負けた晁蓋が、塔を担いで村を一周させられた。

9.
晁蓋「不思議と我らにはあだ名がついているな」
呉用「そうですな」
晁「智多星は誰がつけたあだ名だ?」
呉「言わないでおきましょう」
晁「…智多星の対義語を考えてみよう」
呉「それは?」
晁「力少星か」
阮小五「やはり呉用殿ですね」
呉「長命二郎」
阮「托塔平民」
晁「嫌だな」
阮「嫌です」

晁「及時雨の対義語は?」
阮「救いの雨ならぬ災いの晴れ…」
呉「炎天下宋江殿…」
晁「だがある意味宋江だ」
阮「もっといい意味になる奴はいませんか?」
呉「花栄は大李広になりますな」
晁「小のつく者はいい意味になりそうだ」
阮「大覇王は?」
晁「小覇王の時点で負けだ」
呉「周通ですから」

晁「するとお前も阮大五か」
阮「俺のノウハウを動画配信しましょうか?」
晁「どんな?」
阮「…船の漕ぎ方や塩の隠し方とか」
呉「摘発されるぞ」
阮「そうして使えない道を摘発させて、別の道で荒稼ぎするのはどうでしょう」
晁「ほう」
呉「闇塩の対義語…」
阮「光砂糖」
晁「いつか作れそうだ」

晁蓋…托塔保正くらいにしてくれ。
呉用…智並星も嫌です。
阮小五…寿命二郎か…

代州

代州…北の殺風景な州だが、麦畑は元気!

10.
韓滔「それにしてもお前はクソ真面目だのう、程順」
程順「軍人ですから」
韓「わしは雄州で関勝に会ったことがあるのだがの」
程「はい」
韓「まあなんというか、間抜けな将軍だったぞ」
程「そんなわけありません!」
韓「お前はこの雄州商店街のゆるキャラを見ても同じことが言えるか?」
程「!」

韓「呼延灼にここまでやれとは言わんが、もう少し民に愛嬌があってもよいと思わないか?」
程「なるほど」
彭玘「なんだ。呼延灼を唆して何かやらせようというのか」
韓「まあそんなところだ」
彭「ならば程順」
程「なんですか?」
韓「呼延灼をプロデュースしろ」
程「…どうやって?」
韓「これを」

程「なんですかこの衣装は…」
韓「お前は開封府にいた頃の呼延灼を知らぬのか?」
程「生憎代州で生きてきた田舎者なもので…」
呼延灼「おう、お前たち」
韓「呼延灼!この衣装を!」
呼「承知!」
程「これは!」
彭「噂のフレッシュマンか…」
程「…キモい」
呼「次は程順の番だ」
程「嫌です!」

韓滔…関勝も呼延灼もどっちもどっちだのう。
彭玘…間抜けなのか変態なのかの違いだな。
呼延灼…次の代州フレッシュマンはお前だからな程順。
程順…絶対に嫌です!

関勝…雄州商店街のゆるキャラになっている。子供たちに大人気。

禁軍

禁軍…金は唸るほど溜まっているが使いどころがないらしく…

人物
童貫(どうかん)…預金通帳を見てみたら、山を買えるほど溜まっていたので…
趙安(ちょうあん)…スケジュール帳を見てみたら、驚くほど仕事がなくなっていたようで…

11.
鄷美「元帥の一人負けですな」
畢勝「よりによって元帥が貧乏神星に飛ばされるなんて…」
童貫「二束三文で牧場と調練場を手放すことになるとは…」
鄷「我らが同率一位というのも珍しいな、畢勝」
畢「勝者の言うことを聞く調練ですが…」
童「情けは無用だ」
鄷「ならば…」
畢「我らを…」
童「…」

鄷「我らで一日禁軍元帥をする事になった!」
畢「副官童貫!」
童「はっ!」
李明「相変わらずノリがいい」
鄷「禁軍元帥になったはいいが…」
畢「何をすればよいのだ?」
鄷「教えてくれ、副官!」
童「調練をすればよろしいかと」
鄷「何も変わらんではないか」
畢「元帥になる調練はないのか?」

鄷「言った瞬間、元帥の目の色が変わった…」
畢「ここはどこの山奥だ?」
鄷「丸腰で放逐されるとは…」
畢「食料になる芋虫は確保したが…」
鄷「いつものイナゴになる調練か?」
畢「…獣の気を感じる」
鄷「虎じゃなかろうな」
畢「まさか素手で獣と戦う調練…」
虎「!!」
鄷「そのまさかだ!」

童貫…私財を注ぎ込んで調練し放題の山を買っている。
鄷美…打虎将鄷美だ!
畢勝…弱そうだぞ、鄷美。
李明…素手で死闘を繰り広げる副官二人をモニター越しに震えながら見ていた。

イナゴになる調練…剣と具足だけ渡されて、一日百里走り倒す調練。食料は現地調達。虫やきのこや草を食うしか無い。

12.
童貫「山を買うぞ、鄷美」
鄷美「それは」
畢勝「あの山は登山の調練最難度の山ではありませぬか」
童「財産などいらぬが、あの山は欲しくなった」
鄷「しかしどうやって山を買うのですか?」
畢「持ち主はいるのか?」
童「山の主ならいるかもしれん」
鄷「山の主?」
童「主に認められれば私の山だ」

童「案の定厳しい登山になった」
鄷「準備不足です元帥!」
畢「禁軍の我らが丸腰の調練など笑止ではありませぬか!」
童「死ねばそこまでの命よ」
?「何奴」
童「この山の主か?」
羅真人「いかにも」
畢「我らを助けてくだされ、お爺さん」
鄷「お婆さんに失礼だぞ、畢勝!」
羅「どっちでもいい」

童「この山をもらう」
羅「…お前はこの山がどんな山か知らぬな?」
童「知らぬ」
羅「二仙山。聞いたことはないか」
童「ない」
鄷「ご存知ないのですか、元帥!」
畢「鄷美?」
鄷「二仙山といえば幻術使いのいる…」
羅「皆まで言うな」
鄷「!」
畢「鄷美!」
童「何をした貴様」
羅「開封に帰れ」

童貫…記憶を消されて開封府に飛ばされた。
鄷美…幻術に憧れていた幼少時代。
畢勝…幻術より武術の方が好み。

羅真人…禁軍来訪に備えて防備を整え始めた。

13.
趙安「フレッシュマンの啓蒙普及活動を執り行うぞ」
公順「我らも衣装を着用せねばならぬのですか」
何信「言うまでもない、公順」
趙「よもや羞恥など感じてはいないだろうな」
公「フレッシュマンですから!」
何「ナイスフレッシュだ、公順」
公「…まさか何信殿もフレッシュマンのつもりですか?」

何「無論だ」
趙「何信」
何「はい」
趙「その齢で、フレッシュマンは、痛いぞ」
何「!?」
趙「皆までは言わぬ」
公(言ってる…)
何「趙安殿も私と大差ないではありませぬか!」
趙「私は大宋国公認のフレッシュマンだから齢は関係ない」
何「ならば親衛隊である私もフレッシュマンで良いでしょう!」

趙「フレッシュマンは情けで引き受けるものではない、何信」
何「!」
公「ところで何を啓蒙普及するのですか?」
趙「フレッシュマンの心技体を啓蒙しようと思う」
公「心技体…」
趙「三人で心技体を分割するぞ」
公「はあ」
趙「私は心」
公「私は技ですか?」
何「では体は私が」
趙「それはない」

趙安…技担当になった。何信の体臭に辟易している。
公順…結局体担当になり、禁軍で身体を鍛えている。
何信…心担当になったが、体臭を厳しく指摘された心の傷が深い。

楊令伝

遊撃隊

遊撃隊…毎度このパートをかくのもしんどくなってきた。

人物
班光(はんこう)…史進の被害者筆頭。なんだかんだで一番便利。
鄭応(ていおう)…史進の被害者次鋒。がさつな男。
葉敬(しょうけい)…史進リスペクト筆頭。九紋竜までパクろうとして厳しく叱られた。

14.
史進「…」
班光「…」
史「なぜ俺は着物を脱いでいたのだろう」
班「一から思い出してください、史進殿」
史「調練に出た時は間違いなく着ていた」
班「私も覚えています」
史「肌着に九紋竜のタンクトップを着ていたことも覚えている」
班「そんなややこしいものを…」
史「今日はこの暑さだからな」

班「しかし着ていたのですよね?」
史「途中で裂けた」
班「その時点で上半身は脱いでいますな」
史「下半身も九紋竜のビキニパンツだった」
班「どういうチョイスなのですか」
史「それももしかしたら途中で裂けたのかもしれない」
班「下着の柄が刺青と同じだったのが仇になりましたね」
史「うむ」

史「問題はなぜ裂けたのかだが…」
班「あれだけ棒を振り回していたら裂けるのでは?」
史「やむなしか」
班「しかしそうはいきません」
史「故意ではないから見逃せ、蘇端」
蘇端「巡邏隊隊長として見逃せません」
史「梁山泊法に書いてあるのか?」
蘇「裸罪です」
史「裸罪!」
班「どんな罰が…」

史進…一体誰がこんな罪を。
班光…笑いを堪えきれず、史進に着物を剥がれた。

蘇端…裴宣殿の新法です。

15.
史進「遊撃隊ラッキースケベ王選手権を行う」
班光「…」
史「各自が理想のラッキースケベシチュエーションを記載しこの箱に入れろ」
鄭応「…」
史「厳正なる審査を通過したシチュエーションを、俺が全責任を持って執り行う」
葉敬「…」
史「小僧どもの破廉恥な妄想が叶う一代機会を見逃さぬように」

史「…」

班「とても機嫌が悪い…」
鄭「誰も入れてねえのか?」
班「誰が入れるんですか」
鄭「葉敬は?」
班「落選したそうです」
鄭「入選したところで念願のお相手が史進殿なんだろ?」
班「無論」
鄭「誰が得するんだ」
班「日頃溜めているフラストレーションを拗らせ寝込むのだけはごめんです」

史「!」

班「入っていた?」
鄭「一体誰が…」

史「!」

班「肉眼で捉えきれない着脱」
鄭「いつものことだ」

史「…」

班「入念に両乳首にシャンプーを…」
鄭「隠す所が他にあんだろうが」

史「…」

班「準備完了…」
鄭「それにしても一体誰が…」

楊令「…」
史「!?」

班「!?」
鄭「!?」

史進…いつも着用している具足と同じくらい全身が赤くなったという。
班光…実はこっそり入れていたが史進に引きちぎられていた。
鄭応…実はこっそり入れていたが史進の尻を拭く紙にされていた。

楊令…誰も入れていないのが気の毒だったから、つい…

致死軍

致死軍…人間と思えない身体能力を持った新しい隊長は、思いのほかぬるいらしい。

人物
侯真(こうしん)…戴宗と同じエレベーターに乗った時、うっかり首に手が伸びかけた。
羅辰(らしん)…公孫勝がエスカレーターにタイミングが合わないのを見てしまった。

16.
侯真「燕青殿の天稟は一体なんなのだろうな」
羅辰「端的にずるいと思う」
侯「俺も多少の天稟があるとはいえ、天稟の塊のような人に言われたところでなんの慰めにもならん」
羅「天稟皆無の俺からすれば、天稟があるだけで羨ましいなんてもんじゃないぞ」
侯「こればかりは自分では分からんのだ羅辰」

羅「では努力の塊の人といえば?」
侯「そりゃ鮑旭殿だろう」
羅「しかしあの人が本格的に修行を始めたのは子午山というところに行ってからだろう?」
侯「結構な下積み盗人時代があるそうだ」
羅「ならば鮑旭殿もそれなりの天稟があるんじゃないか?」
侯「たしかに成長曲線の登り方がえぐそうだな」

羅「成長曲線なんて言ったら、お前は武松殿と燕青殿の二人の師匠がいたじゃないか」
侯「お前、その二人に連日体術の稽古つけられたいか?」
羅「…短期集中なら」
侯「成長曲線の急上昇に伴う成長痛ときたらなかったぞ」
羅「そうかもしれんな」
侯「まあ燕青殿なんかは天稟で成長痛も無さそうだよ」

侯真…燕青殿は自分一人でできることはめっぽう優れてるが、人に何かすることが苦手かもしれん。
羅辰…たしかに料理とか家事とか駄目そうだな。

方臘軍

方臘軍…原典でも悪魔のような集団。ろくなもんじゃない。

人物
方臘(ほうろう)…単なる木こりだったらしいが、湖で神に出会い人生が一変したという。
趙仁(ちょうじん)…梁山泊に還る夢を見て涙目になった。
石宝(せきほう)…流星鎚という武器の使い手でもある。その破壊力は岩も砕く。
包道乙(ほうどういつ)…妖術使いのような手口で信徒を増やしまくる詐欺師。

17.
方臘「…趙仁」
趙仁「はい」
方「俺たちは童貫と戦わんとしているがな」
趙「…」
方「何かが違えば、梁山泊と戦うことになったかもしれん」
趙「…それは?」
方「俺の神が、そう言っていた」
趙「梁山泊との戦…」
方「どうなったと思う?」
趙「…私は、考えたくありません」
方「なぜだ、趙仁?」

趙「…替天行道を、読んだので」
方「俺も石宝も読んでいるぞ?」
趙「…あの書を記した者のことを、心から慕っているので」
方「確か梁山泊の宋江だな、記したものは」
趙「…」
方「お前、梁山泊の者ではなかろうな趙仁」
趙「お戯れを…」
方「殺し尽くすだろうな」
趙「…」
方「梁山泊も我らも」

方臘…生き残った者も苛烈な運命になりそうだ。
趙仁…嫌な夢を見た…

無法地帯

無法地帯…何でもありと入ったが、ここまでありでいいとは言った覚えはないぞ。

18.
陳達「ある朝目を覚ましたら史進になっていた」
鄒淵「俺も史進になっていた」
穆春「俺も」
施恩「俺まで」
杜興「なぜ遊撃隊の馬鹿どもと一緒にわしまで史進にならんといかんのだ」
班光「史進殿が五人!?」
鄭応「…六人だ」
葉敬「いや七人!」
朱武「…八人」
楊春「九人だ」
班「どういうことだ」

班「なぜ史進殿が九人に」
陳「これでは俺たちで九紋史進じゃねえか」
鄭「なんでてめえは史進殿じゃねえんだ、班光!」
班「そりゃ私は史進殿じゃありませんよ!」
鄭「そういう意味じゃねえ!」
朱「史進とゆかりのあるものが史進になっているのだな」
杜「どうにかしてくれ神機軍史進」
朱「帰る」

鄒「頼みの軍師に愛想尽かされててんじゃねえ!」
杜「わしとしたことが」
穆「こうなったら史進の評判を落とす嫌がらせをしてやろう」
施「こんなだからいつまでも小遮攔なんだぞ」
穆「着物を脱いで評判をダダ下げして…」
鄒「気付いたか穆春」
施「俺たちでは落としようがないほど落ちているのだ」

班光…史進の怪に巻き込まれずに済んだが、果たして…
陳達…跳躍力の高い史進。
穆春…かませ史進。
施恩…替天行道史進。
杜興…鬼瞼児史進。
鄒淵…猟史進。
鄭応…アホ史進。
葉敬…史進インスパイア史進。
朱武…神機軍史進と言われて怒った。
楊春…地味史進。

19.
陳達「まだ俺たちは史進なのか」
鄒淵「めんどくせえな」
史進「俺が九人もいるだと!」
班光「真打ち登場だ!」
史「本物と言え」
鄭応「俺たちが誰か分かりますか?」
史「当ててみようか」
穆春「やってみろ」
史「この前のめりに煽りにくる俺は小遮攔だな」
穆「しまった!」
史「相変わらずだな」

史「奥で俯いてる俺は楊春だ」
楊春「心から不本意だ」
史「俺への熱視線を浴びせている俺は葉敬」
葉敬「さすが!」
史「そこの俺、俺を呼べ」
杜興「…史進」
史「この嫌味ったらしい呼び方は杜興」
杜「ふん」
鄒「史進!」
史「この威勢の良さは鄒淵」
鄭「史進殿!」
史「馬鹿っぽさは鄭応だな」

史「すかした構えの俺は朱武」
朱武「…そうだ」
史「跳躍しろ残りの俺」
施恩「!」
陳「!!」
史「高い方が跳澗虎、低い方が金眼彪!」
班「完璧ですな」
史「それでなぜお前は俺ではないのだ?」
班「私は史進殿ではありません!」
史「そういう意味ではない」
班「で、どうすれば戻るんですか?」

史進…めんどくせえ…
班光…悪夢のようです。
陳達穆春施恩杜興鄒淵鄭応葉敬朱武楊春…史進になってしまった者たち。だからなんだと言われても困る。

20.
史進が増えた。錚々たる男たちが、史進になった。しかし班光だけは、史進にならなかった。おかしい。不正の匂いがする。そう言った史進は、多分鄭応か葉敬だ。俺たちを元の姿に戻してくれ、班光。多分言ったのは朱武だろう。だが、史進の数だけ副官業務が増えた悲しみをどこに訴えればいいのだろうか。

21.
史進「…なるほど」
班光「何を読まれているのですか?」
史「水滸伝という書物に詳しいと宋江になれる漫画だ」
班「…はあ」
史「俺もその世界を生き抜いた自負がある」
班「賛否両論の世界ですけどね」
史「だから俺も異世界転生したら宋江になれるんじゃないか?」
班「史進殿は史進殿でしょう…」

史「お前は出てこないのか?」
班「…この世界だけのようです」
史「試してみたが、俺はやたら飛べる平行世界があるようだ」
班「どうやって試したのですか」
史「九紋竜に姿を変える!」
班「わ!」
史「見ろ!この扉の数々!」
班「百二十、百、七十?」
史「そこはやめておく」
班「絵巻?横山?」

史「迂闊に他の世界に行くと死にそうな気がしてならん…」
班「史進殿が死ぬわけないですよ」
李忠「よう史進」
陳達「やっと戻ったぜ…」
楊春「…」
薛永「戻る薬は苦かったでしょう?」
石秀「すごいものを見た」
班「これはみなさん…」
史「危ない班光!」
班「!?」
石「何事だ?」
班「矢が…」

史進…なんだか胸騒ぎのする面子だ…
班光…奇跡的に矢を避けれたが…
李忠…一体誰の矢だ?
陳達…何かが起きそうな予感がするぜ…
楊春…そうだな、兄者。
薛永…薬を商わない私もいたような…
石秀…楊雄に妻がいたような…

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中学生の頃から大好きだった、北方謙三先生大水滸シリーズのなんでもあり二次創作です!