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水滸噺 21年5月【豹子頭変身】

あらすじ
豹子頭変身 張藍感嘆し
九紋竜神箭 班光脱毛し
青面獣変身 フレッシュマン
皐月四日は 智多星の日

すいこばなし 注意書き
北方謙三先生水滸伝何でもありな二次創作です。
・水滸伝の原典ネタは日常茶飯事、スマホにPCなど電子機器も飛び交うし、あの人が梁山泊で元気に生きていたりする、異世界からお届けします。
・原作未読の方でも楽しめるように、ネタバレを極力避けていますが、薄々感づいてしまう個所が垣間見えますので、その点はご注意ください。
楊令伝編で出てくる好漢は、すなわち水滸伝を生き残った者ということですので、未読の方はその点ご留意いただいた上でお読みください。
・作者のtwitterにて連載しています。
・今月号、バックナンバーのご意見ご感想、リクエスト等々、こちらまで
 お寄せいただけると、とても嬉しいです!いつも助かっています!
・原作に興味を持たれるきっかけになったらこれ以上の喜びはありません。

それでは行ってみましょう!

梁山泊

梁山泊…梁山泊も初夏。木漏れ日から漏れる日差しを浴びるのは気持ちがいいぞ。

致死軍&飛竜軍

致死軍&飛竜軍…武器は基本短剣。槍とか戟とか論外。

人物
公孫勝(こうそんしょう)…致死軍は短剣しか使えないルールがだんだん物足りなくなってきた。
劉唐(りゅうとう)…短剣縛りの致死軍ルールを撤廃したら、兵が大喜びした。
楊雄(ようゆう)…律儀に短剣縛りに則っているが、処刑用の刀が一番使いやすい。
孔亮(こうりょう)…短剣が意外に性に合った。戦では欠かせない相棒になりつつある。
樊瑞(はんずい)…短剣だろうと毒だろうと、暗殺対象を殺す手段は選ばない。
鄧飛(とうひ)…鎖鎌がレアすぎて使ってるやつを見たことがない。技も我流。
王英(おうえい)…背が低いだけでなく、腕も短いから近接戦闘は苦手。
楊林(ようりん)…鎖鎌の実験台になった経験が今に生きているのが癪に障る。

1.
鄧飛「鎖鎌を使ってみませんか、公孫勝殿?」
公孫勝「…」
鄧「分銅を振り回してみてください」
公「…」
劉唐(ワクワクしている気を感じる)
鄧「あそこの楊林をがんじがらめにしてみましょう」
楊林「」
劉(磔にされているとは…)
公「!」
鄧「惜しい!」
楊「」
劉(楊林の顔すれすれに分銅が…)

鄧「続いて鎌の使い方ですがね」
公「…」
鄧「鎖で相手を引き寄せて…」
楊「」
鄧「一気に首を、落とす!」
楊「」
劉(とんだ実験台だな楊林)
公「…」
劉(唸ってるな。公孫勝殿の鎖鎌)
公「!」
楊「」
劉(もはや抵抗を諦めている)
公「!!」
鄧「そこまで!」
劉(本当に首を落とすところだった…)

鄧「さすが筋がいいですね、公孫勝殿」
公「…」
鄧「致死軍も鎖鎌を標準装備しませんか?」
公「…考えておく」
劉(マジかよ)
鄧「試したい時にはいつでも楊林を貸し出しますので」
楊「」
劉「勘弁してやれ、鄧飛」
鄧「劉唐はやらねえのかよ?」
劉「いいのか?」
鄧「楊林」
楊「」
劉「よし…」

鄧飛…鎖鎌の調練相手に楊林はもってこいですぜ。
公孫勝…鎖鎌を使って以来、よく色々振り回すようになった。
劉唐…なんだかんだで鎖鎌の試しに夢中になった。
楊林…鄧飛の稽古相手に慣れすぎて、素人相手の鎖鎌なら意外と避けられるとか。

本隊

本隊…個性豊かな武器を使いこなす頭領が揃っている。手入れは湯隆が完璧にやってのけてとてもありがたい。

人物
関勝(かんしょう)…あだ名の大刀の通り、青龍偃月刀の名手。
呼延灼(こえんしゃく)…あだ名の双鞭の通り、二本の鞭の名手。
穆弘(ぼくこう)没遮攔のあだ名は朴刀を手にすれば遮る者はなし。
張清(ちょうせい)没羽箭の礫は綺麗なストレート回転で投げる。
宋万(そうまん)雲裏金剛は体術と槍が得意な巨漢。
杜遷(とせん)摸着天も巨漢。宋万に比べると穏やか。
焦挺(しょうてい)没面目は相撲の横綱。投げ技の宝庫。
童威(どうい)出洞蛟は走りと泳ぎの名手。弟もいい勝負。
李袞(りこん)飛天大聖は飛槍を会得した。アクロバティックに投げることができる。
韓滔(かんとう)百勝将は棗の木の長い棒を巧みに振り回す。
彭玘(ほうき)天目将は三尖両刃刀を使いこなす。
丁得孫(ていとくそん)中箭虎は飛叉の使い手。狙いすましたら必ず当たる。

2.
史進「双鞭は面白い武器だな」
呼延灼「俺に合った武器だ」
史「しかし二本しか持てないのが弱点だと思う」
呼「何を言っている、史進」
史「限界まで鞭を持てないか試してみよう」
呼「よく分からんが」
史「口に咥えて三鞭」
呼「あとどこに持つのだ?」
史「尻だ」
呼「尻?」
史「刺せ!呼延灼」

史「…」
呼「一体何がお前を駆り立てていたのだ?」
史「分からん。一瞬の激情に身をやつしてしまった…」
呼「俺も思わず尻に深々と突き刺してしまって申し訳なかった」
史「大臀筋が引き締まって抜くに抜けない…」
呼「選ばれし者ならば抜けるのではないか?」
史「なるほど」
呼「しかし誰が…」

関勝「全く抜けない」
穆弘「抜こうとも思わんが」
呼「どうする、史進?」
史「尻がしんどくなってきた…」
関「力を合わせて抜くのは?」
呼「やってみよう」
史「…」
関「一つ、二…」
呼「三つ!」
史「!!」
関「息を揃えろ、呼延灼」
呼「すまん」
関「一つ!」
史「!!」
穆「息が合わんな」

史進…結局ネジを回す方向で回したら抜くことができた。
呼延灼…史進の尻に刺した鞭は調練場の隅に埋めた。
関勝…史進の絶叫で大笑いしていた。
穆弘…史進の絶叫が尾を引いていた。

遊撃隊

遊撃隊…相変わらずろくなセクションじゃない。

人物
史進(ししん)…深夜番組をみんなで見てる時に、下半身の突起が気づかれそうで冷や冷やした。
杜興(とこう)…深夜番組で鬼臉児の鼻の下が伸びまくっていた。
陳達(ちんたつ)…あんまり好みの深夜番組じゃなかった。
施恩(しおん)…妓楼でも替天行道をゴリ押しして辟易されている。
穆春(ぼくしゅん)小遮攔は大人の女性にからかわれがち。
鄒淵(すうえん)…史進の下半身の突起に気が付いて笑いを堪えていた。

3.
史進「貴様らたまには健全な話でもしてみたらどうだ」
陳達「お前に言われたくねえな」
鄒淵「梁山泊で一番健全と程遠い部隊じゃねえか」
史「ここまで健全な部隊、そうそうないぞ」
陳「どういう意味だ」
史「健全でなければ脱ぐことなどできん!」
鄒「力説するな!」
史「裸のどこが不健全だ!」

史「見よ!この健全な筋肉!」
陳「こちとら見飽きてんだよ」
史「戦人のスポーツマンシップが宿った健全な精神!」
鄒「破廉恥にもほどがあんだろ」
史「健全きわなりない九紋竜を!」
陳「だから尻にまで入れてんじゃねえよ!」
鄒「このかけ合い何回やった?」
陳「数えきれん」
史「俺は健全だ!」

史「健全な裸を披露しよう」
陳「すでに不健全だ」
史「鄒淵!BGMを頼む!」
鄒「やれやれ…」
陳「やるのかよ」
鄒「!!」
兵「鄒淵殿の咆哮だ!」
兵「史進殿のショーが始まるぞ!」
陳「馬鹿しかいねえな」
杜興「史進!」
陳「爺まで来やがった」
杜「今日はわしの番だぞ!」
陳「引っ込んでろ」

史進…遊撃隊ショータイムの時間だ!
陳達…なんだかんだで楽しんでる同類。
鄒淵…なんだかんだでノリがいい同類。
杜興…なんだかんだで出番を欲しがる同類。

二竜山

二竜山…5月の行事をもれなく楽しむ隊長たちにほっこり。

人物
楊志(ようし)…端午の節句で楊令を祝った。
秦明(しんめい)…子供相手に霹靂火は滅多に落とさない。
解珍(かいちん)…解宝が憎たらしいながら、それなりの男に育って嬉しい。
郝思文(かくしぶん)…郝瑾と郝嬌がそれぞれ独り立ちしてちょっと寂しい。
石秀(せきしゅう)…致死軍の剣を研いでいたら、過去のことを思い出した。
周通(しゅうとう)…覇王項羽の講談を見て感動した。
曹正(そうせい)…ソーセージが売れなくなっているのを認めようとしない。
蔣敬(しょうけい)…曹正のソーセージの在庫がはけなくてうんざりしている。
李立(りりつ)…李立の魚肉ソーセージもいつの間にか売れなくなっていた。
黄信(こうしん)鎮三山だけど意外と近隣に山がたくさんあり、三つじゃ少なくないですかと言われた。
燕順(えんじゅん)…清風山を目隠しで歩いても問題ないくらい精通している。
鄭天寿(ていてんじゅ)…心身ともにイケメンすぎて、麓の村で大人気。
郭盛(かくせい)…方天戟を磨くときに、小旗が邪魔だった。
楊春(ようしゅん)白花蛇と呼ばれている。丁得孫からは大不評。
鄒潤(すうじゅん)…こぶ取り爺さんになる夢を見た。瘤が二つになって大喜び。
龔旺(きょうおう)…飛槍の調練中に大暴投。解珍は九死に一生。

4.
楊志「何を見ているのだ、令?」
楊令「したたかにいけ!フレッシュマンです!」
志「フレッシュマンか…」
令「父上?」
志「私はフレッシュマンに選ばれかけたことがあるんだぞ」
令「本当ですか!」
志「ご先祖の楊業様からフレッシュマンは始まったのだ」
令「すごい!」
志「私はならなかったが」

令「父上もフレッシュマンの衣装を着たのですか?」
志「…あれは着たことがないよ、令」
令「着てください!父上!」
志「いや、ここには…」
済仁美「あります。旦那様」
志「いつ拵えたのだ…」
済「夜なべをして拵えました」
志「手袋じゃあるまいし」
令「父上!」
志「…一度だけだぞ」
済「…」

志「なんというフィット感だ」
令「父上!フレッシュポーズを!」
志「…やるのか?」
令「早く!」
志「…フレッシュ!」
済「ためらいがありますね」
志「フレッシュ!」
令「父上がフレッシュマンに!」
志「…もう脱いでいいか?」
令「ダメです!」
志「そんな」
令「ダメ!」
済「令のためです」

楊志…一日フレッシュマンの衣装を着せられた。凄まじいフィット感。
済仁美…我ながら良いものを作った。
楊令…フレッシュ!父上!

したたかにいけ!フレッシュマン…開封府子ども向け番組。歴代のフレッシュマンが出演し、賊徒や不正役人を討伐する。戦わずして勝つ方針は、とてもしたたか。

5.
楊令「白嵐!曹正殿をやっつけろ!」
白嵐「!」
曹正「待て白嵐!」
石秀「食物連鎖だ、曹正」
曹「ソーセージをやらんぞ!」
白嵐「!」
楊志「おう、曹正が」
令「父上!曹正殿がまたつまらない事を!」
志「何をしたのだ?」
石「また卑猥なソーセージを拵えたのだ」
白「!」
曹「俺は無実だ!」

曹「…」
石「ボロ雑巾のほうがまだ用途があるぞ、曹正」
曹「俺が、やったのではない…」
志「本当か?」
曹「俺が来た時には既に卑猥なソーセージが置いてあったのだ…」
石「貴様以外にそんなマネする豚はいないだろうが!」
志「嫌すぎるぞ。食卓にそんなものが置いてあるなんて」
令「曹正殿!」

志「我が家には私と仁美と令しかいない!」
曹「そうか。済仁美殿が…」
志「貴様言うに事欠いて」
曹「…みなまで言うまい」
石「何を馬鹿な」
令「母上がそんな事をするわけがありません!」
済仁美「旦那様?」
志「曹正を懲らしめているから待て」
済「曹正殿の手に持っているそれは?」
志「!」

楊志…とりあえず聞かなかったことにして、曹正を懲らしめた。
楊令…なんだか変な気持ちです。
石秀…済仁美の気に逆らえず、曹正を懲らしめた。
曹正…ボロ雑巾にもならないほど懲らしめられた。
白嵐…済仁美には決して逆らわない。

済仁美…ソーセージでいったい何をしていたのか…

6.
秦明「!!」
公淑「旦那様?」
秦「小指を、したたかに…」
公「まあ」
秦「足の小指だけは鍛えられんからな…」
公「…誰か来ましたね」
秦「誰だこんな夜更けに」
公「どなたですか?」
解珍「…」
公「解珍殿?」
解「やかましくて目が覚めたのだが?」
秦「そんなにか?」
解「兵も目を覚ました」

秦「それはすまないことをした」
公「でも、容は寝ていますよ?」
解「どこかの親父に似て随分と図太い」
秦「なんだと」
解「せっかくだ。酒でも付き合え」
秦「悪くない」
解「公淑殿もたまにはいかがかな?」
公「よろしいのですか?」
解「公淑殿も飲むならば、良いものを出す」
秦「出せ、解珍」

公「たまにはこういうのも良いですね」
解「やかましい怒鳴り声のおかげだな」
秦「肉はこれだけしかないのか、解珍」
解「肉も文句も程々にしておけ」
公「こんなに美味しいお肉は食べたことがありません」
解「そうだろう、公淑殿」
秦「水でも持ってこよう」
解「頼む」
秦「!!」
解「またか」

秦明…足の両小指にダメージを受けた。
公淑…ほろ酔いでいい気持ち。
解珍…結局秦明の部屋で寝ることになった。

流花寨

流花寨…ある星が瞬く夜の事である。

人物
花栄(かえい)…大丈夫か孔明!
朱武(しゅぶ)…星が落ちてきたぞ!
孔明(こうめい)毛頭星が降ってきた!
欧鵬(おうほう)…すげえものを見た。
呂方(りょほう)…星が降ってくるでしょうと占っていた。
魏定国(ぎていこく)…瓢箪矢で撃ち落とせなかった。
陶宗旺(とうそうおう)…星に石積みをなぎ倒された。

7.
孔明「毛頭星が降ってきたら諸葛亮になってしまった」
欧鵬「すげえものを見た」
花栄「ぜひ軍師になってくれ!」
孔「もちろんです」
朱武「待て花栄」
孔「陶宗旺殿の石積みで石兵八陣を作りましょう」
陶宗旺「面白そうだ!」
朱「そんなの俺だって作れる!」
花「早く作ろう!」
朱「話を聞け!」

花「そういえば朱武も神機軍師だったな」
呂方「すっかり忘れてた」
朱「貴様らを石兵八陣に閉じ込めてやろうか」
孔「まあまあ神機軍師殿」
朱「陣形の知識なら孔明にも負ける気はせん」
花「朱加亮だ!」
朱「その呼び名はやめろ。なんだか不吉な気を感じる」
欧「なんでだ?」

呉用「しまった!」

朱「軍師は一人でいい!」
孔「たしかに二人の意見が対立した時に困りますね」
花「流花寨で陣比べでもするか?」
朱「いいだろう」
孔「受けて立ちます」
朱「ならばまずは俺から…!」
呂「朱武が落とし穴に!」
陶「いつの間に!」
花「これはもしや!」
孔「孔明の罠です」
欧「すげえものを見た」

花栄…弓の腕は黄忠や夏侯淵をも上回る所存。
孔明…毛頭星が隠れたら元に戻った。
朱武…一生の不覚をとった。
欧鵬…石兵八陣で弓の奇襲を辛うじて躱した。
呂方…石兵八陣の落石の罠をギリギリ避けた。
陶宗旺…石兵八陣の石作りで李逵に無茶振りしているところ。

呉用…しまった!

聚義庁

聚義庁…5月病がはやっていたようで…

人物
晁蓋(ちょうがい)…調練しかやる気がせん。
宋江(そうこう)…昼寝しかやる気がせん。
盧俊義(ろしゅんぎ)…仕事しかやる気がせん。
呉用(ごよう)…晁蓋や宋江の取りこぼしを全部フォローしている。
柴進(さいしん)…贅沢しかする気がせん。
阮小五(げんしょうご)…気分転換によく泳ぐ。
宣賛(せんさん)…気分転換に覆面を変えた。

8.
呉用「今日は私の日?」
晁蓋「五月の四日で呉用の日だ」
呉「私の日ということならば」
晁「なんだ」
呉「この溜まりに溜まった書類を片付けていただけますね?」
晁「いや、そうはならんだろう」
呉「私の日ですよ?」
晁「だからといってお前の言うことを聞く日にはならん!」
呉「いや、なります」

晁「…結局やる羽目になった」
呉「これからは溜めないように」
晁「早く調練に行こう」
呉「お気をつけて」
晁「今日はお前も来い、呉用」
呉「私も?」
晁「阮小五と指揮を競ってみろ」
呉「私には仕事が…」
晁「たまにはこういう事で頭を使え、呉用!」
呉「やれやれ…」
晁「軍師は身体も使え!」

呉「穆弘の軍の軍師か」
穆弘「よろしく頼む、呉用殿」
呉「李俊の軍ならば、おそらく…」
穆「分かっているな」

阮小五「呉用殿ならば…」
李俊「吠え面かかせてやろうぜ、阮小五」

穆「勝った!」
李「早すぎるだろう!」
呉「尺の都合だ、李俊」
阮「奇襲は読まれていたか」
呉「まだまだ甘いぞ」

呉用…忙しいとはいえ、まだ心にゆとりを持っていた頃。
晁蓋…軍師と内政の呉用で二人欲しいな。
穆弘…呉用殿の人を見る目は頼りになる。
李俊…水軍で俺と組め、阮小五!
阮小五…満更でもないですな!

9.
呉用「兵站計画は…」
晁蓋「…」
呉「盧俊義殿の五ヶ年計画では…」
阮小五「現場にいた感覚だと…」
晁「呉用、阮小五」
呉「ご意見ですか、晁蓋殿?」
晁「議論が長い」
呉「重要事項ですから、細部まで検討しませんと」
晁「議論を加速させていくぞ」
阮「どうやってですか?」
晁「任せておけ」

晁「次の議題!二竜山の兵の受け入れ計画!」
呉「かける時間は?」
阮「賽の目はニ!」
晁「半刻で決める!」
呉「賽の目で決めるなんて…」
晁「決まればいい!」
阮「楊志殿から三千の兵の補充があります」
晁「兵の質はなんの文句もない」
呉「すると将校の受け入れ体制を整えれば良さそうですな」

呉「もう決まった…」
晁「半刻経ってないだろう?」
阮「さすが晁蓋殿」
晁「この調子で決めていくぞ」
呉「次の議題は…」
晁「…これは後回しだ」
呉「そうはいきません」
阮「晁蓋殿の執務時間短すぎる問題…」
晁「判子を押せばいいだけではないか」
呉「ダミーに判子を押していたからだめです」

晁蓋…そんな書類を作成して混ぜる暇があるなら睡眠時間にあてろ!
呉用…青蓮寺が偽造した書類に押印して採決するようなことがあったらどうするのです!
阮小五…こったダミー書類だな…

10.
宋江「誰でも替天行道を暗唱できるようになるICチップを開発してもらった」
魯達「誰にですか?」
宋「企業秘密だ」
魯「…どうやって使うのです?」
宋「脳に内蔵するのだ」
魯「脳は内臓ではありませんぞ」
宋「施恩で試してみようと思う」
魯「既に替天行道を擬人化したみたいな奴ではないですか」

宋「誰かこのICチップを脳に埋め込みたい奴はいないか?」
魯「正気ですか、宋江殿」
安道全「脳の切開手術には是非挑戦してみたかったのだ」
魯「お前も正気か」
白勝「俺は暗唱できるから必要ない!」
薛永「私も!」
施恩「ならば百六頁を暗誦してください」
白「分かるわけねえ!」
安「白勝だな」

白「俺の脳は腐ってねえぞ!」
魯「観念しろ、白勝」
安「麻酔を切らしているから直接切開を…」
白「やめろ!」
宋「いかん!ICチップが無くなってしまった」
魯「それは一大事」
薛「どんなものですか?」
宋「小さいチップだ」
馬雲「いたずらに老いる生は〜」
薛「馬雲?」
安「飲み込んだのか?」

宋江…極秘で開発してもらった替天行道チップの開発はお蔵入りに。
魯達…魯智深の頃だったら危なかった。
施恩…ノンストップ替天行道の記録を破られた。
安道全…林冲の脳外科手術を企画中。
薛永…替天行道は正直どうでもいい。
白勝…急死に一生。
馬雲…尻からチップを排泄したらやっと止まった。

三兄弟

三兄弟…川の近辺で寝泊まりする時は大変である。

人物
魯達(ろたつ)…隻腕だと色々不便だ。
武松(ぶしょう)…李逵に堕落させられて久しい。
李逵(りき)…川で洗い物するのが一番怖い。

11.
李逵「兄貴」
武松「…」
李「俺のいつも使ってる鍋を知らねえか?」
武「…知らん」
李「あれがねえと飯が作れねえよ…」
武「…」
李「…なんだあの鉄屑は」
武「!」
李「俺の鍋!」
武「…」
李「一体何があったらこんなにひしゃげちまうんだよ…」
武「…すまん」
李「そりゃこの拳のせいだよな」

李「話によっては大兄貴に言いつけないで済むぜ」
武「…たまには俺も鍋くらい洗おうと思ってな」
李「いくら下手くそに洗ってたとしても、鍋を潰しちまうのは一体どういう事だよ?」
武「…潰す前に握りつぶしてしまってな」
李「…?」
武「強く握りすぎた」
李「指の跡までついてやがるのかよ…」

武「それをなんとかして元通りにしようと思ったら…」
李「元通りどころか、ひしゃげちまったか」
武「…その通りだ」
李「湯隆に作ってもらった最高の鍋だったんだがよ」
武「…」
李「あの鍋じゃないと飯は作れねえ」
武「なに!」
李「どうしたもんか」
武「…俺の拳でよければ」
李「よくねえ!」

武松…拳を干し肉にすれば梁山泊まで持つのではないか?
李逵…そんなこと言ってたら、いつか不味い不味い言いながら食うことになるぜ、兄貴?

12.
李逵「…」
張順「大丈夫だ!李逵!」
李「…兄貴」
武松「行け」
李「だけどよう…」
張「俺が必ずなんとかしてやる!」
李「これだけは堪忍してくれよ…」
武「行け」
李「酷えや、兄貴」
張「早くしねえとダメになっちまうぞ」
李「代わりに取ってくれ!」
宋江「浅瀬に鍋が流された?」
武「はい」

李「宋江様!」
宋「大変なことだな、李逵」
武「この機会に張順に泳ぎを習え、李逵」
張「今なら泳ぐのにちょうどいい季節だぜ?」
李「無理だって言ってんだよ!」
宋「そこまで李逵を怯えさせるな、武松」
武「…はい」
宋「私が取りに行こう」
李「大丈夫ですかい、宋江様?」
宋「李逵のためだ」

李「宋江様!宋江様が!」
宋「…」
李「とうとう、宋江様を死なせてしまったのだな。宋江様のようなお人が、俺のために死んだのだな。宋江様!宋江様!」
武「宋江様…」
張「…腹を押すぞ」
宋「!」
李「生き返った!」
宋「梁山湖に沈むのは私だったかな…」
張「泳げないなら行かないでください」

李逵…穏やかな梁山湖のほとりで大騒ぎしていた。
武松…この日は李逵に晩ご飯を作ってもらえなかった。
張順…潔く湖畔に沈んでいくもんだから、助けるのが遅れちまったよ…
宋江…急死に一生。盧俊義に大笑いされた。

文治省

文治省…文化面の啓蒙普及も担当しているらしい。 

人物
蕭譲(しょうじょう)…書だけでなく絵画もいける。
金大堅(きんだいけん)…判子だけでなく彫刻もいける。
裴宣(はいせん)…文だけでなく武もいける。

13.
蕭譲「梁山泊の地図が味気ないと思わんか?」
金大堅「どういう意味だ?」
蕭「こんな緑豊かな湖畔はどこにもないだろう?」
金「そうだろうな」
蕭「だからもっとこの美しい自然を取り入れた地図の方が良い」
金「なるほどな」
蕭「わしは字の真似だけでなく、絵も中々のものだぞ」
金「ほう」

蕭「どうだ、金大堅」
金「随分と風雅な地図になったな」
蕭「そうだろう」
金「観光土産になりそうな完成度だな」
蕭「機密だから売るわけにはいかん」
金「春夏秋冬があるとなお良いな」
蕭「なるほど」
金「わしも判子ではないものでも彫ろうかな」
蕭「何を掘る?」
金「…昔会った女神様じゃな」

蕭譲…字の真似だけでなく、絵画も達者。筆はよく踊る。
金大堅…判子を掘るだけではなく、彫刻も達者。幼少時代に会った女神様とは?

塩の道

塩の道…仕事の合間の雑談も憎まれ口である。

人物
盧俊義(ろしゅんぎ)…蔡福の罵詈雑言が一番腹立つな。
燕青(えんせい)…蔡慶の憎まれ口もなかなか尖ってますよね。
蔡福(さいふく)…憎まれ口のプロフェッショナル。
蔡慶(さいけい)…彼も彼で中々の皮肉屋。

14.
蔡福「盧俊義様が破裂したらどうする?」
蔡慶「見て見ぬ振りをして帰る」
福「盧俊義様よろしく、これらの仕事も破裂せんかな」
慶「破裂してないぞ、盧俊義様は」
福「あの体型だから素質はあると思うのだがな」
慶「人のこと言える体型かよ」
盧俊義「蔡福」
福「…はい」
盧「仕事の件で話がある」

蔡福…仕事のしくじりの隠蔽工作をやるハメになり、ストレスでみるみる痩せた。
蔡慶…怒りが爆発してたな。
盧俊義…怒ると汗をかいて痩せたと思っている節がある。

林冲さん家

林冲さん家…旦那が突然変異を起こした。

15.
林冲「ちくわになってしまった」
張藍「まあ」
索超「どういうことだ、林冲殿」
林「昨日の夜食でちくわを食べすぎたせいか」
索「そんなばかな…」
張「そんなにちくわばかり食べていたら、林冲様がちくわになりますよって言ったせいかもしれません」
林「聞き捨てならんぞ、張藍!」
索「本当に?」

林「調練に行けぬではないか!」
索「もっと他に心配することが…」
張「元に戻る方法を模索しましょう」
索「前代未聞ですよ」
林「百里!」
百里風「…」
索「どこへ行く林冲殿」
林「考えるのが面倒になった」
百「…」
林「乗せろ百里!」
百「…」
林「俺だ!百里!」
索「ちくわに言われてもな」

兵「林冲殿がちくわになっちまった?」
兵「張藍様の妖術らしい」
林「いいから駆けろ!」
郁保四「…ちくわに言われてもな」
馬麟「…」
扈三娘「どうしたのですか?」
馬「俺の鉄笛もちくわに…」
郁「それは」
馬「…」
扈「本当に?」
馬「…」
郁「吹いてみてください」
馬「〜」
林「戻った!」

林冲…何事もなかったかのように調練に励んだ。
張藍…次ははんぺんにしてやろうと画策中。
百里風…ちくわは別に食べない。馬だし。
索超…林冲がちくわになったと言う度に怪訝な目で見られたのが嫌だ。
馬麟…俺の鉄笛はどこへ?
扈三娘…ちくわは好物。
郁保四…練り物は得意じゃない。

16.
林冲「ちくわぶになってしまった」
張藍「まあ」
索超「どう違うのだ林冲殿」
林「これだから西生まれの男は」
索「なんだと」
林「ちょっと噛んでみろ」
索「おう」
林「…」
索「!」
林「かみごたえが違うだろう」
索「驚いた…」
張「林冲様?」
林「なんだ」
張「食べられてませんか?」
林「!」

林冲…戻った時ちょっと縮んだ気がする。
張藍…食べましたね索超殿。
索超…食べました、張藍様。

17.
林冲「縦長になった」
張藍「まあ」
索超「出オチではないか、林冲殿」
林「刺し殺すぞ、索超」
索「プレスでもされたのか?」
張「林冲様があまりにも起きないので、その上をコロコロしていたのですが…」
索「パン生地か何かなのか、林冲殿は」
林「いいから調練に行くぞ」
張「表に出るのですか?」

林「出られん」
索「縦長ですから」
張「匍匐前進で出られるのでは?」
林「それだ!」
索「刺し殺さないように、気をつけて」
公孫勝「縦に長くなったものだな、林冲」
林「その声は!」
索「ここで来た…」
林「俺を馬鹿にしたな!」
公「してないが?」
林「表に出ろ!」
公「…」
林「出られん!」

林冲…表に出ようとしたら、張藍の調度を割って大目玉を食らった。
張藍…節操がなさすぎます!林冲!
索超…出るに出られなくて、一緒に叱られてた。なんでだ?
公孫勝…馬鹿揃いだな、騎馬隊は。

18.
林冲「おのれウスノロ!」
公孫勝「やるのかバカ」
張藍「そんなに白黒つけたかったらオセロでもしたらどうですか?」
林「名案だ張藍」
公「バカなど相手にならん」
林「俺が黒」
公「私も黒だ」
張「…?」
林「先手は俺だ!」
公「どっちでもいい」
林「勝負!」
張「…このオセロ盤はいったい?」

林「野郎!角に打つな!」
公「隙だらけだ」
張「…」
公「黒黒黒…」
林「くそっ」
張「林冲様は黒なのですか?」
林「黒騎兵の隊長だからな」
張「公孫勝殿も黒なのですか?」
公「致死軍は闇の軍だ」
張「二人とも黒で分かるのですか?」
林「分からんわけがない」
公「バカの石など一目で分かる」

張(もう好きにすればいい)
林「お前の手など読み切りだ!」
公「…」
林「姑息な軍を率いているから攻め手も姑息だな」
公「勢いだけのバカなどに負けん」
林「さっさと打て!」
公「貴様の番だ」
林「お前の番だ!」
公「そんなわけがない」
林「自分の番も分からなくなったか!」
公「貴様だ、バカ」

林冲…盤面の石は完璧に記憶している。強いかどうかは別。
公孫勝…林冲の触った石は気で分かる。勝てるかどうかは別。
張藍…結局引き分け?

19.
林冲「親不知が生えた」
張藍「まあ」
林「生えたことがないのか?」
張「ありません」
林「痛むな」
張「安先生は歯医者もできるのですか?」
林「絶対に行かん」
張「肺腑の矢の摘出手術とどっちがいいですか?」
林「後者だ」
張「…どうして?」
林「お前のための傷だからな」
張「…ばかやろう」

林「…」
張「主張が強すぎて、人相が変わりましたね」
林「行かんからな…」
張「そんな顔では安先生と白勝殿に笑われますよ」
林「いつも笑われている」
張「たしかに」
林「上に二本も生えやがった」
張「林冲様ご両親の記憶は?」
林「それがないのだ」
張「不束者ですが」
林「挨拶しなくていい」

安道全「結局来たのか」
白勝「なんて面だ」
林「やはり笑われた」
張「でしょうね」
安「大きいペンチならある」
林「!」
白「湯隆の自信作だ」
張「ファイト!」
林「引っこ抜くのか?」
安「生憎この時代に麻酔は無い」
林「ならばなぜ電子カルテがあるのだ!」
安「薛永の丸太は?」
林「断る!」

林冲…後頭部に打撃を喰らったのだけは覚えてる。
張藍…歯を抜くのはこんなに大変なのね…
安道全…助手を総動員して無理やり引っこ抜いた。
白勝…大きな親不知だ!

20.
林冲「百里!」
百里風「…」
林「いつまで道草を食っているのだ!」
百「嫌!」
林「お前が百里駆けられなけれぼ、百里風とは呼べんぞ!」
百「…」
林「あと一里ではないか、百里!」
百「…」
林「このままでは九十九里風と呼ばれてしまうぞ…」
百「…」

索超「何事ですか?」
張藍「ちょっとね」

林冲…九十九里風と呼んだらもっと拗ねられた。
百里風…張藍を優先されて拗ねている。

張藍…百里風との林冲の取り合いは熾烈を極めるらしい。
索超…相変わらずだな、林冲殿。

掲陽鎮

掲陽鎮…穆弘のお下がりの眼帯が土産物屋で売られている。

21.
李俊「参った…」
狄成「すまねえ、大兄貴」
童威「狄成の天秤棒が片目に直撃したのか?」
狄「そうなんだよ…」
童猛「お前の顔は原型留めてねえぞ?」
童「それで眼帯してるのか」
李「やむなしだ」
狄「今のは童威の兄貴か?」
李「どっちでもいい」
童「同じこと考えてるからな」
童「気にすんな」

李「片目が見えんのは不便だな」
童「いい眼帯じゃねえか」
童「穆弘のお下がりかよ?」
李「そんなわけねえだろう」
狄「俺が作ったんだ」
童「悪くねえぞ」
童「穆弘に自慢してこいよ」
穆弘「李俊!」
狄「噂をすれば」
穆「…!」
李「なんだ穆弘」
穆「…お前も博打で片目を」
李「一緒にするな」

穆「よく見せてみろ」
李「見るな…」
穆「お前のためにあつらえた様な眼帯だ…」
狄「俺が作ったんだぜ!没遮攔!」
穆「…」
童「外すなよ…」
童「いつ見ても慣れねえぜ」
穆「…」
童「穆弘?」
穆「交換しろ、李俊」
李「いらん」
穆「ならば俺は眼帯を賭けて、片目を賭けるぞ!」
李「正気か?」

李俊…危うく勝つところを情けで負けてあげた。
童威…本気でもう片目抉るつもりだったのか?
童猛…やりかねねえ気だったぜ。
狄成…やんちゃ坊主。顔面は大惨事に。

穆弘…マジで目を抉る五秒前まで来てた。

清風山

清風山…やたら規律が厳しいけど、山賊っちゃあ山賊。

22.
鄭天寿「塩顔って言われたんだが、どう言う意味なんだ、兄貴?」
王英「しょっぺえ面してやがるって意味だ」
燕順「しょっぺえバカはてめえの小便でも飲んでやがれ」
王「…しょっぱすぎるぜ、兄貴」
鄭「で、塩顔ってのは?」
燕「あっさりしてる面って意味さ」
鄭「俺はそんなあっさりしてるか?」

燕「コッテリはしてないな」
王「佳人薄命ってやつか?」
鄭「俺は死んでも王英兄貴より長生きしてやるから安心しろ」
燕「白面郎君には違いねえ」
鄭「あんま好きじゃねえんだけどな。この面」
燕「俺からすりゃ羨ましいイケメンだけどな」
王「俺の面と交換しろよ」
燕「首を落とすか?」
王「兄貴」

燕順…髭を整えてコーデすれば結構いける。
王英…どう頑張っても下半身が邪魔をしてモテようがない。
鄭天寿…ちょっとうなだれるとすごいイケメンが際立つらしい。

雄州

雄州…子供の日は関勝の誕生日。まあそうだろうね。

23.
関勝「こどもの日が近いな、郝瑾」
郝瑾「私は子どもではありません!」
関「いくつになった?」
郝「十三です」
関「子どもではないか」
郝「どこかの将軍よりは子どもではありません!」
関「どこの将軍のことだ?」
郝「それは…」
関「呼延灼か?」
郝「?」
関「高俅は子どもではないな。屑だ」

郝(自覚がないとは)
関「俺は三十六だから大人だな」
郝「齢を重ねることなど誰にでもできます!」
関「言うではないか、郝瑾」
郝「心の齢をきちんと重ねて、年相応な大人になってください、関勝殿」
関「俺のどこが年相応でないというのか?」
郝「それは…」
関「俺の心の齢を確かめてみろ、郝瑾」

関「郝瑾が俺を幼いとい言うのだ」
郝思文「はあ…」
郝嬌「関勝殿!」
関「おう、郝嬌様」
嬌「遊びに来たの?」
関「違う。俺の心の齢を確かめに来た」
嬌「碁はできる?」
関「遊びに来たのではない!」
嬌「私に勝てるの?」
関「言うまでもない、郝嬌様」
嬌「まあ」
瑾(すっかり嬌のペースだ)

関勝…思わぬ劣勢に碁盤をひっくり返してしまった。
郝思文…戦局眼があるな、嬌は。
郝瑾…堅実な手を打つタイプ。
郝嬌…ひらめきで打つタイプ。

子午山

子午山…思いもよらぬところで因縁があったらしく…

人物
王母(おうぼ)…鮑旭の様子がおかしいことに気が付いていた。
王進(おうしん)…麓の酒屋のお猪口を吟味していて死域。

24.
鮑旭「麓の村にこんな居酒屋があるなんて」
史進「意外だろう」
鮑「さすが史進です!」
史「飯も酒も中々のところだ」
鮑「先生と母上も連れて行きたいですね」
史「…そうだな」
鮑「この煮物も実に味がいい!」
史「まずは野菜からなんだな、鮑旭は」
鮑「ここに来て野菜の旨さに目覚めたもので!」

?「こんな不味い飯食わせようってのか!」
店主「一昨日来やがれ!」

史「…無粋な客だな」
鮑「なんて失礼な」

?「おや!その面は喪門神じゃねえか!」

鮑「…あいつは」
史「知り合いか、鮑旭?」
鮑「黙ってやり過ごしましょう」
?「懐かしいじゃねえか!喪門神!」
鮑「…」
史(賊だな…)

?「俺のこと忘れてねえよな、喪門神よ」
鮑「…」
史「汚ねえ格好で寄ってくるな!」
?「なんだ小僧!」
鮑「…帰ってください」
?「つれねえな」
鮑「…」
史「鮑旭?」
?「やっぱり鮑旭じゃねえか!」
史「!」
鮑「喪門神に戻ってお前を消してやろうか?」
?「!」
鮑「消えろ。さもなくば…」

鮑旭…寄ってきた賊を貫禄で追っ払った、けど…
史進…本気で怒った鮑旭に驚いた。

青蓮寺

青蓮寺…表向きはあくまでもお寺。迂闊にかくれんぼとかすると帰ってこれなくなる。

人物
袁明(えんめい)…最近相国寺の市場で迷子になった。
李富(りふ)…しわがれ声は意外と読経に合っていた。
聞煥章(ぶんかんしょう)…義足を取り外して手に突っ込んで遊んでいる所を呂牛に見られた。
洪清(こうせい)…相国寺で迷子になった袁明が、迷子センターにいると思わなかった。
呂牛(りょぎゅう)…聞煥章からの銀で博打場のサイドビジネスを始めた。

25.
袁明「洪清」
洪清「はい」
袁「李富の報告内容を覚えているか?」
洪「滄洲を通る闇塩の道の報告かと」
袁「それは覚えている」
洪「闇塩に関与している商人を絞り込んでいました」
袁「それも覚えている」
洪「…」
袁「…洪清」
洪「…」
袁「大事な人名が、よく聞こえなかったな」
洪「はい…」

袁「大事なところに限って李富の声が引っかかるのだ」
洪「…」
袁「こちらも李富の声に関しては考えるところはあるが…」
洪「…」
袁「勘所に限って、李富の潰れた声が聞こえにくくなる…」
洪「…」
袁「洪清」
洪「はい」
袁「我らの耳が遠くなったのではないな」
洪「私も聞きとれませんでした」

袁「聞煥章」
聞煥章「はい」
袁「李富のことだ」
聞「李富殿の?」
袁「届かぬのだ」
聞「届かない?」
袁「…」
聞「届かない、のですか…」
袁「…」
聞「…」
袁「…」
聞「失礼いたします…」

聞「一体袁明様に何を届けていないのだ、李富?」
李富「皆目見当もつかん…」
聞「思い出せ、李富」

袁明…李富からお中元が届いた。
洪清…耳が遠くなったかと思ったが、弟子の小声の愚痴はよく聞こえた。
聞煥章…呂牛に相談したら、ヘリウムでも吸わせてみろと言われた。
李富…声を出すとカラスが卒倒した。

禁軍

禁軍…大宋国全土津々浦々調練できないところはない。

人物
童貫(どうかん)…地獄に落ちたとしても、調練するであろう調練の鬼。
趙安(ちょうあん)…フレッシュマンの活動は相変わらず盛んである。

26.
趙安「フレッシュ!」
公順「フレッシュ!」
何信「フレッシュ!」
董万「なんだこの変態共は」
趙「北京フレッシュキャンペーンの撮影だが?」
董「俺の許可無くくだらん撮影はやめてもらおうか」
趙「帝の命とどちらが優先するのかな?」
董「勅命だと!?」
公「勅書です。董万殿」
董「馬鹿な!」

董「貴様らその衣装でよく外出ができるな」
趙「歴代のフレッシュマンを侮辱するな、董万」
董「俺には考えられん」
公「董万殿も着てみませんか?」
董「願い下げだ」
何「こんな輩相手にするな」
董「臭いんだよ!さっきから!」
趙「お前の怒りの沸点が分からんな」
董「俺は貴様らが分からん!」

趙「分からんやつは分からんさ」
公「早く行きましょう趙安殿」
何「さっさと失せろ」
董「北京の将軍として風紀の乱れは見逃せん」
子「フレッシュマンだ!」
子「サインして!」
趙「喜んで!」
董「なんということだ」
子「どいてよおじさん」
董「俺は将軍だぞ…」
子「知らな〜い」
董「!」

趙安…北京の地道な啓蒙普及活動が生きて今では人気者。
公順…フレッシュマンの認知度も上がってきましたな。
何信…見た目は良いのに体臭で台無し。

董万…北京の将軍。せこい戦が得意。人気と人望はない。

楊令伝

黒騎兵

黒騎兵…リーダーに料理をさせてはいけない鉄の掟がある。

人物
楊令(ようれい)…料理中にいじくりまわして火の通りが中途半端になりがち。
郝瑾(かくきん)…こめつきバッタの佃煮が意外と美味かった。
張平(ちょうへい)…料理当番筆頭。でも楊令以外には食わせない。
蘇端(そたん)…とりあえずお代わりって言っておけばいいと思っている。
蘇琪(そき)…羊を捌くのが上手。
耶律越里(やりつえつり)…デカいわりに小食。どうやってそんなデカくなったんだ。

27.
楊令「誰もいなかったから、飯を作っておいた」
蘇端「わあ、美味しそうだなー」
蘇琪「死の調練だ、蘇端」
郝瑾「…一体何を作ったのですか?」
楊「見て分からないか?」
郝「これは…」
楊「…」
郝「煮込み、ですね」
楊「ああ」
端(何の?)
琪(黙って食うぞ)
郝(すごく黒い…)
楊「食べようか」

端(…今日はまた一段と)
郝(まず…)
琪「…」
楊「食うのが早いな、蘇琪」
琪「…う、美味かったので」
端(顔が修羅になっている)
楊「ならば、もっと食え」
琪「!!」
郝(生き急いだな)
張平「何ですかこの匂いは」
楊「張平」
端「待っていたぞ!」
郝(黙れ!)
端(つい)
張「また料理したのですか」

楊「蘇琪がよく食うほど美味いぞ」
張「そんな馬鹿な」
楊「…」
端(俺たちが言えないことをズバズバと)
張「何を煮込んだのですか」
楊「肉を」
張「煮込みは大きい鍋を使ってください」
楊「ああ」
張「次は俺も一緒に作りますからね」
楊「頼む…」
張「後はこいつらに食わせましょう」
郝「おい」

楊令…作る飯は悉く不味いことに定評のある頭領。
郝瑾…楊令よりはマシだけど、あまり美味いとはいえない。
蘇端…とりあえず焼いてりゃいいと思ってる。
蘇琪…楊令が作ったものは無条件で食う覚悟。
張平…飯うま将校筆頭。彼の焼くお肉はこだわりの詰まった逸品。

遊撃隊

遊撃隊…なんだかんだでお気に入り。でもしょうもない。

人物
班光(はんこう)…むっつりスケベ筆頭。
鄭応(ていおう)…呆れ役筆頭。
葉敬(しょうけい)…史進インスパイア筆頭。

28.
史進「ここは史進ランド」
班光「夢オチですよね?」
史「黙って聞け小僧」
班「早く目覚めろ…」
史「あらゆる史進がお前を待っている、夢のワンダーランドだ」
班「悪夢です」
史「早く行ってこい!」
班「夢なのに痛い!」
史「これは現実だ、班光」
班「そんな馬鹿な…」
史「とっとと入れ!」

班「なんだあの限りなくアウトなネズミのマスコットは…」
史「シッシンマウスだが?」
班「あだ名はなんですか?」
史「九紋鼠」
班「やっぱり」
史「史進ゴーランドに乗れ」
班「絶対に嫌です」
史「史進コースターは最後の急降下で」
班「脱げるんでしょ!」
史「当然だ」
班「…夢じゃないのか?」

班「まだ目が覚めないのか…」
史「しつこいな」
班「こんな狂気でしかないテーマパークが現実にあるわけがない!」
史「あるではないか」
班「こうなったら青蓮寺に通報して、史進殿を摘発します!」
史「やってみろ班光」
班「腐刑になれ!」
史「くだらん男だ」

班「史進殿?」
史「俺の夢かよ…」

史進…よくよく身体を確かめてみたらすごく嫌な汗かいてた。
班光…うなされてましたよ?致死軍

29.
史進「第二回遊撃隊お尻を出した男一等賞選手権を行う」
班光「…」
鄭応「…」
葉敬「!」
史「やはり葉敬が一等賞か」
葉「お尻を出しました、史進殿」
史「…なぜ貴様らは出さない」
班「恥ずかしいので」
鄭「俺も」
史「…確かに一人だけお尻を出してるのも奇異だな」
葉「!?」
史「早くしまえ」

史進…よく惜しげもなく汚い尻を出せるな。
班光…どの口が言ってるんだ。
鄭応…後で葉敬の愚痴に付き合った。
葉敬…突然の裏切りに愕然とした。

30.
史進「班光」
班光「なんですか」
史「乳首に毛が一本だけ生えているのだな」
班「…見つけないでください」
史「抜かんのか?」
班「そりゃ、抜きますよ」
史「だが、生えてくるんだろう?」
班「…そりゃ、生えますよ」
史「無駄なことをしているな」
班「ほっといてください!」
史「そうはいかん」

史「だから班光の乳毛を根絶やしにする必要があると思うのだ、花飛麟」
花飛麟「…」
史「お前がよく行っている脱毛サロンの場所は抑えてあるぞ」
花「いつの間に!」
史「俺の体毛を身体中に植毛されたくなければ力を貸せ」
花「…やむを得ないか」
史「ならば脱毛器具をしこたま盗んでこい、花飛麟」

班「何をするのですか!史進殿」
史「縛り付けておけよ!葉敬」
花「…」
班「花飛麟殿!?」
花「観念してくれ」
史「右の乳首だ、花飛麟」
班「離せ!」
花「…大きいですね」
史「陥没してるのか?」
班「黙れ!」
花「なんと慎ましやかな」
史「一輪の花のようだ」
班「おのれ!」
花「!」
班「!?」

史進…班光の乳毛を鄭応の夕飯に混入させた。
班光…だいぶ熱かったが、乳毛の悩みから解放された。
花飛麟…脱毛器具の無断レンタルで罰金を取られた。

31.
史進「もうみだりに脱ぐのをやめようと思うのだがどうだろうか」
班光「どうもこうもありません」
史「淫らではないぞ?」
班「淫らです」
史「淫らだと思うお前の心の方が淫らだ!」
班「そもそも史進殿が淫らなことをしなければ、私だって淫らな想像などしません!」
史「それは花飛麟でも同じか?」

班「禁じ手です。史進殿」
史「やはり俺とは関係なく淫らではないか、班光!」
班「花飛麟殿のエロスの前では誰だって淫らになります!」
史「何を破廉恥な」
班「史進殿の淫らと比較しないでいただきたい!」
史「…聞き捨てならんな、班光」
班「史進殿の淫らは、下品です!」
史「俺を怒らせたな」

班「私だって言うべきことは言います!」
史「そのクソ度胸だけは褒めてやる」
班「花飛麟殿のエロスを穢す者は史進殿とて許しません!」
史「面白い。剣を取れ、班光」
班「今日はただでは死にませんよ!」

楊令「今日の稽古は一際厳しいではないか」
鄭応「きっかけがくだらなすぎるんですがね」

史進…今日の班光を叩きのめすのは苦労した。
班光…花飛麟のエロスを穢す者は許さない。

楊令…終いまで班光の稽古を見届けていた。
鄭応…くだらねえ理由でよくあんな稽古ができるぜ…

致死軍

致死軍…前任者と比べてにぎやかになったらしい。

人物
侯真(こうしん)…なんだかんだで燕青や武松には頭が上がらない。
羅辰(らしん)…なんだかんだで公孫勝はめっちゃ怖い。

32.
燕青「刺青?」
侯真「燕青殿が見事な刺青をしていると、武松殿が」
燕「…余計なことを」
侯「されているのですか?」
燕「まあな」
侯「…」
燕「見たいのか?」
侯「いえ、そう言うわけでは…」
燕「若い頃に好んでやったものだから、見せてやろうか?」
侯「…燕青殿?」
燕「どっちだ侯真?」

侯「あの…」
燕「見るのか?見ないのか?」
侯(顔が近い…)
燕「…」
侯(やっぱ美男だな燕青殿…)
燕「!」
侯「!?」
燕「隙だらけだ。侯真」
侯「…」
燕「久しぶりに手応えがあったぞ?」
侯「…息が」
燕「三日後に死ぬかもしれんぞ、侯真」
侯「そんな…」
燕「そんな目で見るな」
侯「燕青殿…」

燕「何を見惚れているのだ」
侯「…綺麗なものは見惚れるもんでしょう」
燕「この顔か?」
侯「ええそうですよ」
燕「母親似だと思う?父親似だと思う?」
侯「…父親ですか?」
燕「どっちにしろ、私は私さ」
侯「俺もこんな顔になりたかったな」
燕「楽じゃないぞ?」
侯「そうですか?」
燕「ああ」

燕青…彼の刺青は秘中の秘。若手如きには見せられない。
侯真…父親似の猿顔っぽいのをちょっと気にしてる。

北の精鋭

北の精鋭…北の大地に集った最強の面々。

人物
蕭珪材…楊業の血を引くという完璧超人。でも意外と…
耶律被機…堅物だけど、軍人として優秀。
耶律大石…彼の調整能力は軍でも国づくりでも重宝する。

33.
蕭珪材「趙安は見事な敵ですな」
耶律被機「うむ」
耶律大石「そろそろ飯にしませんか?」
蕭「私が持ってきます」
大「そんな。俺が持っていきますよ」
蕭「耶律大石殿は年長ですので」
被「頼んだ」
大「…よろしくお願いいたす」
蕭「はい」
大「なんと心の広い…」
被「心は広いがな…」
大「?」

蕭「…」

被「蕭珪材!兵糧の配給はあちらだ!」

蕭「!」

被「道に迷っておった」
大「なんと」

蕭「…失敬」
被「どうした蕭珪材」
蕭「我らの器を忘れておりました」
大「それは」
被「鈍臭いな」
蕭「失礼…」
大「…戦では一分の隙もない蕭珪材殿が?」
被「こういうところは隙だらけなのだ」

蕭「…」

大「また私たちを見失っていますな」
被「蕭珪材!」

蕭「!」

大「盆を持つ手が危なっかしい…」
被「走らなくていい!」

蕭「!!」

被「…」
大「転びましたな…」

蕭「…もう一度行ってきます」
被「いい。我らで行こう」
大「なんというか、蕭珪材殿…」
被「相変わらず鈍臭い!」

蕭珪材…戦では一分の隙もないが、日常は隙だらけ。これでバランスを取っているらしい。
耶律大石…ちょっと涙目になってましたな。
耶律被機…宋国の名門の家柄だから、ぬるいところがあるのだ。

34.
蕭珪材「飯を作りました」
耶律被機「それは珍しい」
耶律大石「何ゆえですか、蕭珪材殿?」
蕭「少し時間が余っていたので、炊事の手伝いをしようと思って」
被「そんな暇ならば軍議の支度でもすればよいものを」
大「まあまあ耶律被機殿」
蕭「召し上がってください」
大「ありがたくいただきます」

大「これは」
被「…美味いではないか、蕭珪材」
蕭「多少味を整えただけです」
被「賄いにならんか?」
蕭「時があったら」
被「冗談だ!」
大「本当に美味いです、蕭珪材殿」
蕭「それでは…」
麻哩泚「殿!」
蕭「飯でも食っていけ、麻哩泚」
麻「ありがたい!ちょうど腹の虫が鳴いておりました」

麻「ありがたく」
被「盛るな、麻哩泚」
麻「頂戴しますぞ!」
大「空ですな」
麻「いただきます」
蕭「…」
麻「美味いです!殿!」
蕭「何か忘れていると思ったものを思い出した」
麻「何を忘れていたので?」
蕭「私の飯だ」
麻「…」
被「…」
大「…」
麻「…もう済ませたのではないのですか?」

蕭珪材…腹ペコで一歩も動けなくなってしまった。
耶律被機…自分の分くらい初めに取り分けんか!
耶律大石…私の干し肉でよければ…
麻哩泚…たらふく食べた腹を抱えながら、大慌てで殿の飯の代わりを散策中。

無法地帯

無法地帯…たまに揃ったら揃ったでくだらない企画をやっているのだ。

35.
晁蓋「梁山泊JKコンテストの決勝だ」

呉用「扈三娘や孫二娘が出場したのですか?」
宋江「誰一人出場していない」
呉「それは?」
宋「逆に誰がこんな企画に参加すると思う?」
呉「ならば何故こんな大会を主催させたのですか」
晁「一人目前へ!」

燕青「…」

宋「ほう」
呉「盧俊義殿の差金か…

呉「燕青が出た途端、聴衆の目の色が変わりましたね」
宋「さすが燕青」
晁「二人目前へ!」

史進「…」

呉「聴衆が帰り始めました」
宋「どこがJKなのだ」

史「調練とかマジだるい」

呉「作者のJKに関する知識の薄さが露呈してますな」
宋「酷いものだ」
晁「史進は懲罰!三人目前へ!」
史「!?」

楊令「…」

呉「また楊令殿が!」
宋「お前たち楊令に出番を求めすぎだぞ」
晁「しかし念の入った化粧だ」

楊「調練後に、待っています」

宋「何が待っているのかな」
晁「個別の武術指南ではないか?」
呉「とんだJKですね」
宋「しかしな、呉用」
呉「なんですか?」
宋「我らもJKになりたいな」

晁蓋…やたら逞しいJKになった。
宋江…巷では我らを女子にした作品があるらしい。
呉用…私もですか!

燕青…楽和とのジャンケンに負けた。
史進…林冲からの罰を受けている。
楊令…張平と蘇琪の本気度が違ったという。

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中学生の頃から大好きだった、北方謙三先生大水滸シリーズのなんでもあり二次創作です!