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まぼろしとげんじつ

青い空がどこまでもどこまでも続く
冬の日
冷たいコンクリートの上を
履き慣れたスニーカーで歩く

息がマスクから漏れて顔に触れ
息の温度と空気の冷たさの違いが
心地いい

歩く 

歩く

歩く

携帯の通知だけが何度も私を現実に連れ戻す

私と現実をつなぐのは、それだけ

そう思ってふと、電源をオフに

現実と私のつながりはプツンと切れた

私の体は宙に浮いたようにふわふわして

軽くなる

もう誰も、何も、私を現実に戻さない

まるで飛ぶように、前に進む

私が、私につながった

私はずいぶん、自分に会っていなかった

自分につながると、
こんなに心が軽いのか

いつも通る道で、足が止まる

ここにこんなに大きな木があったのかと、
初めて気がつく

私が今まで見ていたのは現実ではなくて、
幻だったんだ

いま私が感じているこの瞬間こそが
現実なんだ

だって、ここに木があるのだから

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