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◎私の詩すべて◎

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切なくて甘ったるいお伽話 いとしさとさみしさの標本
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#手紙

絵の具の手紙

絵の具の不思議な模様のついた 私の小さい不恰好な手を 独り占めしてくださる存在に いつか会いたいから今日も 言葉にならない形にならない 色と線の手紙を描くの ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ きたなくてきれい 宛名も知らない 投函できない お祈りみたいな手紙を描くの こんな色を使ったんだよ こんな画面をつくったんだよ 生きたのか夢なのか 分からない曖昧な私の手を握り返して 絵の具の染みを楽しんで 笑って一緒の画面の中に 溶けて消えてしまいたい 叶わないやさしい夢 ぜんぶぜんぶ

君におはようおやすみを

今度生まれてくる時は 大好きな君に 毎日おはようおやすみなさい 伝えることを許されたい 君にどれほど触れたくて お話したいと思っても 声の届かない遠い国 やっと僕に許された距離 山のあなたの空遠く 叫んでも聞こえないのに 美しさを見つけてしまった 知った僕が悪いのだろう 山を越える力を持てず朽ちても 二度と君と僕が生まれなくても 好きなものを好きだと 言えたこの命を僕は愛したい 今日の君はどこに居るのだろう 空の向こうで何をしたのだろう おはようおやすみまたね それだ

届かない手紙

静かな森の奥に住むよ そこではぬいぐるみとお人形 鳥やウサギが住んでいて やさしいパーティをするんだよ 沢までおりてピクニック 松葉のベッドで枕投げ 大好きな君にお手紙を書くね 今夜の星模様を伝えるお便り ベーテルギウスとプロキオン シリウスむすんで三角形 今日もきれいだよ 君にも見えるかな 永遠に星たちの中で泳ぐんだ いつか君も泳ぎに来たらいいよ その時はまた手をつないでね 君に届かない森の奥から 送らない手紙を書き続けるね 静かな森の奥に住むよ そこでは小さな焚き火と

愛すって分からないけどまず生きる

君が大好きだ いっぱいいっぱいもらったんだもの 君がどうして僕にくれたのか 気まぐれだったとしても 好きになってしまったことを 君は嫌がったりせず受け入れてくれた きらきら光り輝く星みたいな君に 惹かれるあまり毎日毎晩毎時間 お願い叶えてと祈ってばかりの僕 光が見えない時もあるけど 君は何度だって見つけさせてくれたよ でもね 祈りだけじゃ叶わない 僕の寂しい孤独の肉塊は僕にしか動かせない 君の美しい孤独のきらめきは星よりもずっと小さい 目に見えるほど近い先で消えてしまうの

死にあたって

‪君と指切りして棺に入る‬ ‪君よ僕が跡形無く消えても‬ ‪その命他者に預け給うな‬ ‪少しずつ削りとっては‬ ‪川へ流して地に溶かせよ‬ ‪一粒ずつ僕と交われ‬ ‪君が君を消し終えたなら‬ ‪もう僕は縛らないから‬

きれいなものはこわい

きれいなものに出会うと よろこびと、やすらかさと、うれしさと、 そうしてあとでつらくさみしい気持ちがやってくるよね。 うつくしい世界がある! ああなんてうつくしい! だのに僕はどうしてこんなにも汚くて 何もできない恥ずかしい生き物なの。 せめてだいすきな君に、よろこびを… 僕が君の一番の宝物になるくらいの!びっくりするような うれしさを、つくれたならよかったんだ。 僕は役立たずのゴミなんだ!! それを笑って生きていくつもりだが そうして僕は今日も、みん