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◎私の詩すべて◎

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切なくて甘ったるいお伽話 いとしさとさみしさの標本
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#散文詩

いつまでも続くパーティを

何度だって遊ぼう。 たくさんおもちゃを作ろう。 あれもこれも歌って踊ろう。 ぬいぐるみを抱きしめよう。 何度だって旅に出よう。 夕日は明日も明後日もいつまでも見よう。 好きなだけ卵を焼こう。 ピクニックもあちこちでしよう。 何度だって好きな言葉を口にしよう。 一人ぼっちで誰にも聞こえなくても。 君の名前も時々呼ぶよ。 自分には「大丈夫だよ」って言おう。 何度だってパーティしよう。 すべてが消えて無くなっても。 壊れた人形になるとしても。 いつまでも笑っていよう。 嬉し

やすらかにおやすみ

夢の中でだけは 仲良しでいてね 顔を合わせず 手にも触れず 見えない命であろうとも 君は僕が描く 限りなく終わりなく 思うままにあらわす 月の裏の廃墟を歩く 人のいない静けさ 手を繋いでどこまで 終わらないお話 疲れたらひとやすみ 好きな色を食べたなら また少し踊ろう まどろみの来るまで 甘やかしふざけよう 夢の中で夢見る 時は経たず漂う 目を開けばいつでも 優しく笑う君だけ 何もかもを忘れた 遊びだけの舞台で 何度でも繰り返し 不思議な話つくろう 僕が全て描く 君を

会いに行くから生きていて

僕を必要とする君が 僕の名前も知らぬまま 一人でうずくまっている 抱きしめに行かねばならない 立ち止まっている暇は無い 目に見えるところにいる人が 僕に役を求めない 必要ないのだと 潰れそうになる けれどどこかで 僕を必要とする君が 僕の姿も知らぬまま 一人で潰れそうになる 手を繋ぎに行かねばならない 僕が潰れたら守れない 目に見えるところに生きる理由 今日もつくれない 息が苦しくて 眩暈までする けれどどこかで 僕の愛すべき君が 愛されると思わぬまま 一人で狂いそう

空想上の心中

約束は無いままに いつか話したたくさんの 夢物語は宝物 全部全部しまって 持って行くからね 世界を忘れる日まで 一緒にいてね 名前の無い物語 影も形もあいまいで 繋ぐ手も無い寂しさを 一人抱いて抱いて 連れて行くからね 世界から消える時も 一緒にいてね 心中 心中 心中しようね 形の無い二人 幻のあなた 作り物の僕 指切りもしなかった 未来もつくれないんだ 目も合わないままだ 声も聞こえない 一人夢の中 お話をなぞる 何もかも落としても 苦しみで狂っても すべてが

ぼくときみ

おぼろげなぼくのきみ ぼくしかしらないきみだから ぼくがずっとだきしめる からだがなくてもいつまでも ぼくがきえるまでいっしょだよ あいまいなぼくのきみ ついにしらないきみだから ぼくはずっとひとりきり すべてはゆめだったとしても ぼくがきえるまでいっしょだよ

てをはなす

この手を離してあげましょう 掴んでいるから重いのです 静かに落ちていきましょう 私の居ないあなたの世界 快く安く静か あなたは二度と汚れない 音を立てず 波を立てず 手を離す 痛みはありませんから 握りしめた指ひらくだけ 楽になりますよ 体をあずけました 温かい居場所をもらって いつまでも居られるかと思い ひととき宿をありがとう やわらかくて愛おしく いつまでもそこに居たい 願った私は弱かった 多くを望めば痛いのです この手を離してあげましょう 掴んでいるから重い

君の声の届く場所

君の声の届く場所に居たい 僕はいつでも振り向いて 抱きとめてあげる 君の望みの中に 僕は在る 君の声の届く場所に居よう 僕は君を探さずに 声だけ覚えている 君が鳴くとき 僕も鳴く 君の声の届く場所に居ても 僕は時々僕を忘れ 静かに眠るよ 君も世界から 居なくなる 君の声の届く場所に居られず 僕は一人ぼっちでも 怖さに耐えるよ 君が僕のこと 忘れても 君の声と会えて嬉しかったの 僕は何の役も果たせず 一夜の夢として 君をすり抜ける 寂しいね 君の声の届く場所に居たい

執着

消去法で愛したくないんだ どちらかといえば良いなんて そんな形で君を選びたくない 何があっても君をお腹に入れたい 簡単に手放せる軽い愛情じゃない 魂を引き摺りだして生贄に捧げてでも呪う 消去法で死にたくないんだ しかたないからここで終わり そんな流れで殺したくないんだ 何があっても物語を美しく描きたい 完結にまとめられる単純なお話じゃない 魂を引き摺りだして生贄に捧げてでも祈る

説明書の無い呪術

永遠に手を繋いでいるには どんな呪術が必要ですか 君と僕を縫い合わせて 一つの体にしましょうか それともお互いその身をバラバラに刻んで 二人の体を混ぜて二等分 そうして成形しましょうか 君の血と細胞からつくった小さなお人形の君を 僕の脳に埋め込んで いつもお話してもらいましょうか

さみしさについて

結局、さみしい。 どれだけ優しい刺激を胸に入れても。 日向で遊んでも、日陰で休んでも。 君の名前を知らなくても、数えきれないほど呼んでも。 何百キロメートルの彼方に沈黙している時も、 声だけ飛ばしあった後も、皮膚に触れる距離を知っても。 君はずっと僕の中に居るのに。 結局、さみしい。 さみしさは心細さだ。 僕がどれだけ君やこの世界を必要としていても、 君やこの世界に必要とされないなら僕は怖くなる。 居てもいいよと、存在を許されてはいても、 手を繋いでくれなければ、 頭の中は

好きなんて言葉はまやかしだろ

ぼくのことなど大して好きでもないくせにな ぼくもそう 君のことほんとに好きとも言えなくて でも君の中には時々 ぼくの探してるきらきらした石が転がっているだろ それをどうにか拾いたくってしかたがなくて 喉がからからになるまで手を伸ばし続けてしまう 手が届かないと知っても離れないのは ぼくのものにならないのならせめて死ぬまで その存在を慰めに見つめようとするからだ 君もぼくもきっと 好き合ってなんかいない ただなすすべなく落日を見送るように しおれると知

しあわせはしにたみ

君はそこに居ていいのだと 優しく力強く言ってもらえて喜んで 浮かれて飛んで弾んだ心臓 高く跳ねたその脈打つ命の玉が 勢いよく地に叩きつけられることを ぼくは受け入れようとしている 跳ね上がった心臓を ぼくはそのまま空へ放って お別れをしたい しあわせはおわりの合図 それ以上進まなくても済むように ここが終着だとおしえてあげて しあわせはさいごの挨拶 もう二度と目覚めなくても済むように もうおやすみと寝かしつけて しあわせはしにたみを愛してる これ以上何も無い喜びで満た

死にあたって

‪君と指切りして棺に入る‬ ‪君よ僕が跡形無く消えても‬ ‪その命他者に預け給うな‬ ‪少しずつ削りとっては‬ ‪川へ流して地に溶かせよ‬ ‪一粒ずつ僕と交われ‬ ‪君が君を消し終えたなら‬ ‪もう僕は縛らないから‬

死を受け入れるおまじない

僕はいつ死ぬのかな、 もし長くないとしても いまはね、「まあいいか」って思うよ。 とびきり楽しかった時間も、 たくさんの小さな幸せの瞬間も、 言葉にならない喜びの日も、 この身に知れたんだもの。 そして すべてを信じられなくなるくらいの悲しみと、 すべてを諦めたくなるくらいの心細さと、 何をしても消えない自分の醜さを、 死は終わらせてくれる。 死はすべての救いになり得るの。 お別れだけが僕らを許してくれる。 すべてにさようなら。 こわくないよ。