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◎私の詩すべて◎

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切なくて甘ったるいお伽話 いとしさとさみしさの標本
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2021年8月の記事一覧

しあわせの日に

過ぎたいつかに帰れるのなら 死んでもいいと思えたあの日に 世界で一番しあわせだって 生まれて初めて感じた日 月がきれいだったよね 君と初めてくちづけ叶えた 君と私しか居ない夜の街 こわかったけれど信じた日 手を離すことができなくて 大きな手のひら握りしめてた 下げてたペンダント私の首に 通してくれた別れの日 みじめでずっと恥ずかしかった 弱い私を何度も抱きよせ 額にやさしくくちづけ与えて 静かに受け止めてくれた日に 過ぎたいつかに帰れるのなら 死んでもいいと会いに行っ

届かないお祈り

もう二度と、目覚めませんように。 それは自分自身を救う言葉 おやすみ前のお祈り 嬉しいことたくさんあった 優しい人たちに何度でも守られた 楽しく遊んだ日は宝物 大好きな命にも出会えた それでもこの先を生きるには 元気の足りない私なので 無理して平気と言わないの 疲れちゃったからもう終わり ありがとさよならって唱えるの お別れだけが決まっているよね 絶対に受け入れようのない悲しみ それでもお別れだけが約束だから 死だけが私を待っていてくれるのだから もう二度と、目覚め

夢うつつ歩く靴

前は5cm後ろは12cm 木彫りの厚底は ガラスの中の展示品 うっとり眺める美術品 夢に足を包んで 人の世のうす煙りを割いて歩く 0時を待たず強い魔力にくじける足を 恨むけど癒やしてはまたいつか 地面から12cm浮いて飛びまわるの つくりの甘いアンバランスな人形のよに ふらつきがたつきひねっても これがわたしの足だから 地上と天国を繋げてくれる 魔法のかかった靴だから スケートですべるようには歩けない つまづきひきつり痛くても これは私の夢だから まどろみの中に連れ出し

絵の具の手紙

絵の具の不思議な模様のついた 私の小さい不恰好な手を 独り占めしてくださる存在に いつか会いたいから今日も 言葉にならない形にならない 色と線の手紙を描くの ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ きたなくてきれい 宛名も知らない 投函できない お祈りみたいな手紙を描くの こんな色を使ったんだよ こんな画面をつくったんだよ 生きたのか夢なのか 分からない曖昧な私の手を握り返して 絵の具の染みを楽しんで 笑って一緒の画面の中に 溶けて消えてしまいたい 叶わないやさしい夢 ぜんぶぜんぶ