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◎私の詩すべて◎

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切なくて甘ったるいお伽話 いとしさとさみしさの標本
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2020年10月の記事一覧

愛すって分からないけどまず生きる

君が大好きだ いっぱいいっぱいもらったんだもの 君がどうして僕にくれたのか 気まぐれだったとしても 好きになってしまったことを 君は嫌がったりせず受け入れてくれた きらきら光り輝く星みたいな君に 惹かれるあまり毎日毎晩毎時間 お願い叶えてと祈ってばかりの僕 光が見えない時もあるけど 君は何度だって見つけさせてくれたよ でもね 祈りだけじゃ叶わない 僕の寂しい孤独の肉塊は僕にしか動かせない 君の美しい孤独のきらめきは星よりもずっと小さい 目に見えるほど近い先で消えてしまうの

役割があってお守りのようでもある 役に立つ道具になれたなら 君の物になれるでしょうか いまだこの人生の価値は 許されないらしいから ひとり森の奥で横たわり 君を想って木の間から おぼろげな月と星を見送る 意図し演じなければ許されない世界は 私の生きていい世界と思えないから 私は私であることを恥じてしまう 私に名前は付かないのですか ただ雨のように君に降り注ぎたい 私が雨となり土となれたなら 言葉なく所在なく君を愛そう 君が溶けて形無くなるのを待とう

夜明かしのご褒美とお祈り

10月11日は朝の5時 それは眠れない君と 一日を終わらせられない私の 静かで優しい夜が寝つく時 夜明けの金星に出会えて嬉しく眺める 重たくまだほんのり目蓋を開けた眠だるそうな青の空に 家々の黒い影がくっきりと浮かぶ 目線の少し上に金ピカの強い星が輝く 震えて溜め息の出るそのわずかな光の時間は 後ろめたさと共に夜を明かした私の 弱々しい命にさえ与えられる特別優しいご褒美 子供の頃は丸く小さな点だったのが 近頃は絵に描いたような星型の 放射状に飛び出す光で空にかかって さら

叶わない夢を 愛すことすら難しく 届かない言葉を今夜も 血の中でくすぶらせる 寂しさで蒸された肉が 悲しみで冷やされるまで 暗い部屋で 静かな音の中で 夢にさよならを捧げ続ける

すべてがしあわせ 苦しみも悲しみも痛みも涙も 美しさに屈服させられるのならば ぼくの画面を汚す色さえ無ければいいの ぼくの好きなあなたという色をくれ 美しい画面を、舞台を、 描くためだけにぼくの命は有る

あなたが消えても鳴き続ける

あなたが見えなくなろうとも 僕はあなたを思ってうたうのをやめない この身が裂け崩れるまで踊ろう いずれお別れだ あなたの肉が滅びる日はすぐそこ それより前にあなたは僕の遊び場へ 姿を見せなくなるかもしれない いずれお別れだ 僕たちの体が どのような形に変わっても 僕たちの思考が どのように傷んで弱っても 心臓が赤く美しい血をこの身に巡らせて 僕の淡い魂がこの身に巣食う限り 歌をうたい 絵をえがき 詩をよみ 舞い続ける あなたが僕を忘れても 僕があなたを忘れても 僕の淡い

蝋燭に灯る幽霊

声が聞こえなくなると 途端に君は世界から居なくなる 蝋燭の炎を吹き消すように見えなくなる 火の灯らない夜は 瞼の裏にちらつく炎の幻影が なお眩しくてくらくらする 君は見えない国に棲む 声も姿も手に取れない 生きているのかさえ知らされない 霊界からおとずれる気まぐれな幽霊が 蝋燭に火を灯すのを待つ 君は小さな炎となって目の前に現れる ちらちらきらめく熱い火だ 口にもこの胸にも入れられない ずっと見つめてあたっていたい けれどすぐに見えない国へと去ってしまう 幽霊さん 幽霊