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◎私の詩すべて◎

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切なくて甘ったるいお伽話 いとしさとさみしさの標本
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2020年3月の記事一覧

手芸屋さんに住んだら

手芸屋さんに住みたいわ サラサラの綿の布しいて ふわふわのボアをかけて 枕は何がいいかしら 毎日違う形の夢を見るの 昨日は鞄になって旅に出たわ 今朝はベレー帽でお出かけ 今夜はワンピースでパーティね 手芸屋さんに住みたいわ 生地のページは終わりなく ボタンは世界の扉 きれいなリボンが栞がわり 毎日ぬいぐるみと暮らすの 昨日はウサギとお昼寝したわ 今朝はネコとかくれんぼ 今夜はシャチに会いに行きたい 手芸屋さんに住みたいわ 針と糸でお手紙を縫う

死を受け入れるおまじない

僕はいつ死ぬのかな、 もし長くないとしても いまはね、「まあいいか」って思うよ。 とびきり楽しかった時間も、 たくさんの小さな幸せの瞬間も、 言葉にならない喜びの日も、 この身に知れたんだもの。 そして すべてを信じられなくなるくらいの悲しみと、 すべてを諦めたくなるくらいの心細さと、 何をしても消えない自分の醜さを、 死は終わらせてくれる。 死はすべての救いになり得るの。 お別れだけが僕らを許してくれる。 すべてにさようなら。 こわくないよ。