地面から反発をもらって走る。という神話

走っているよりも飛んでいるような感覚。

これは武豊氏が2005年に皐月賞のインタビューで答えた内容。

https://www.nikkansports.com/race/horseracing/deepimpact/yutaka/top-yutaka.html


ちなみに、その時のレースがこれだ

https://www.youtube.com/watch?v=gAn_OdCByJQ

2006の宝塚記念でも飛ぶ。という表現を使っている。


すべての馬のインタビューを見たわけではないが、飛ぶという表現を使っているのは見た限りだとディープインパクトのみだ。


追い風などの影響もあると思うが、昨日9.95で100m日本新記録を出した山縣選手も、飛ぶ。フワフワとする。

といった表現を使っている。

山県亮太「いい時は飛ぶんだな」 日本新、高速ピッチ・好条件後押し


ウサインボルトも、自身の走りを見て、まるで翼が生えているような走りだ。

と表現している。


日本では、早く走るためのテンプレート表現が

「反発をもらう走り。」

である。


反発をもらうということは、言い換えれば地面に強い衝撃を与えにいく。

ということであり、上記とは真逆の動作になる。


反発をもらうために足首を固める。膝をロックする。などの関節を固めてできるだけ動かないようにする。という表現をたまに見るが、そんなことをしてもまるで飛ぶような動きはできない。

というのは容易に想像できると思う。


では、なぜ反発をもらうなんて表現が一般的になったのか。

それは、

地面反力×接地時間=疾走速度

になるが、この接地時間がスピードが上がるに伴い短くなるので

地面反力を少しでも上げるために地面に少しでも強い衝撃を与える必要がある。

という間違えた解釈が原因だと思ってる。


久しくでてきたアサファパウエルのミラクルボディだが、

これで見てほしいのは、朝原とパウエルを並べて比較している部分。


注目してほしいのは骨盤の位置。

画像1

アサファパウエルの場合、スタート局面で骨盤が立ち上がらず、その状態でほぼ水平に動いているのが分かると思う。

その速度が地面に伝わって地面反力が大きくなっている。

と予想している。


つまり。骨盤主導で体が動いているわけだ。

おしりの位置も高くて前足を押さえつけるようなポジションが取れるから地面反力も大きいと推測している。


次に、アサファパウエルと朝原氏の接地してから足が離れるまでのおしりの移動距離に赤線を引いてみた。

本当なら1000分の1フレームレベルまでやらないといけないんだが、実験ではないしその辺は勘弁してくれ。

画像2

実験でカメラを動かす。なんてまずありえないから同じ地点からの測定と思って問題ない。

身長等の差はあれど、おしりの移動はパウエルのほうが大きいのが分かる。

静止画だからわかりにくいが、パウエルは画像から消えるまで足がなかなか離れなかったが、朝原はすぐに離れている。


骨盤が立ち上がった状態だと、当然重心の移動距離も短くなる。

骨盤の移動距離が短いならどうやってスピードを出すか、それは地面に強い力をあたえに行くしかない。


反発をもらう。っていうのは見えないだけでそういう背景もあるんじゃないか。

朝原氏はもともと走り幅跳びと100mを兼任してた選手だ。

あくまで主観になるが、走り幅跳びの選手って地面を強く踏みつけて足壊す選手多いんだよな。


走りはジャンプ動作の連続ともいうが、人間をボールに例えて弾む。と表現する人もいる。

ただ、人間はボールじゃないし、地面に衝撃を与えようとすれば上下動が激しくなったり、ロスになる。


地面に強い圧や衝撃を与えたから早いんじゃない。

重心の移動速度が速いから結果論として地面に対する圧や反力が高くなった。


俺はそう思ってる。


山縣選手がフワフワする。飛んでいるよう。

と表現したのはおそらく上下動が少なく水平に近い動きができた。

そういうのもあったんじゃないかな。


もう一度さつき賞を見てもらうが、ディープインパクトがラストの直線を走っているシーンがスローで見れる。

そこを見てもらいたい。

ほかの馬に比べても圧倒的に上下動が少ないのが分かる。

陸上選手はばねがある。とも表現されることもあるが、バネという表現を使っている論文は俺が調べた限りほとんど、上方向への運動で、それ以外がその上向きの力をどうやって前に進めるか。

というものであった。


地面に強い衝撃をあたえに行っても早くは走れない。


それどころか故障が絶えなくなるからこの表現は将来的にはなくなってほしいね。


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