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とにかく歩け、いいから歩け


みんなで、夜歩く。
たったそれだけのことなのにね。
どうして、それだけのことが、こんなに特別なんだろうね。
「夜のピクニック」恩田陸

今から2年前の100キロハイク。
当時ピチピチの2年生の私はこの言葉の意味を噛みしめながら前に前に足を出す作業を繰り返していた。

■2019年本庄早稲田100キロハイク


100ハイの朝はとにかく早い。

本庄のホテルで前泊するか、始発で仮装した早大生だらけの新幹線で向かうかの2つに分かれるが、毎年絶起して参加を諦める早大生が後を絶たないと聞き、私は前泊を選択した。

前夜スーパーで先輩に買っとけと言われたウイダーと、お菓子を買い物カゴに入れながら本当に自分は明日から100キロ歩くんだろうかと不安に思う。

そんなこんなで気づいたら朝、バタバタと準備してホテルを出て本庄に向かうと軽いお祭り騒ぎだ。サークルごとに集まって仮装で写真を撮って、炊き出しのお味噌汁を受け取る。きっとあそこらへんにいるのは普段早稲田を賑わす界隈の人たちだろう、なんて考える。開会式で縛りプレーや仮装大賞の存在を知り、昂揚会の気持ちがいい学注を聞き、もちろん紺碧の空を歌う。


ちなみに私の年の縛りプレーはめっちゃ重くて持ちにくい荷物を持たされたり、Twitterで毎分呟かないといけなかったり(無論就寝時間も)JKとしてローファーで歩いてかつリクエストに応えないと行けなかったり結構無謀だった。

↓これは1区で脱落した縛りプレイヤーのnote


https://note.com/kskw/n/n97327b8564ac

さていよいよ始まった100ハイだが、スタートして2分で異変に気づく。

思ったより、ペースが早い。

全然普通に早歩きなのだ。
1限必修出席ありの10号館2階での講義なのに8時54分に早稲田駅に着いた時くらいのペースなのだ。(伝われ)

そうか、ハイクってこういうことか。

これで100キロいけるんだろうか、てか人数多くて邪魔だな、え、これで100キロ歩くのまじかよ・・・

たくさんの不安が脳内をよぎる一方で手足は勝手に前に出る。

ちょっと疲れたけどまだ歩けるな、と思う10キロちょいくらいで第一区は終了。
そこからはびっくりするほどの田舎道、ありがたいコンビニ休憩、昂揚会から「あと2キロです!」って聞いて希望を持って歩いてたら本当は5キロで死にたくなる・・・等々のイベントを経てナイトハイクに突入する。

この頃ようやく100キロ歩く実感が湧いてきた。
「え?まだ歩くの?嘘でしょ?」と体が驚きだす。足も膝も腕も腰も痛くなる。
夜道に突然先輩が差し入れしてくれるサプライズがないと心身ともに限界を迎えている。

会話もそろそろ途切れだし、ザクザクとみんなの足音だけを聞く。

でも、みんなで夜歩く、たったそれだけなのになんかやっぱり特別だった。

一緒に会う友達や先輩とこんなに朝から晩まで一緒にいることは多分100ハイ以外でない。

ずっと肩を並べて同じ景色を見ることもない。

ノンアルで夜を越すこともない。

どうしようもないほど青春だなと思った、気がする。


あんなに遠く感じた雑魚寝する体育館が近づいてきた。私を励ましてくれる先輩も少し疲れているようだ。超限界の状態で体育館でお弁当をもらって食べて、シャワーも浴びれないまま硬い床に寝転がる。ああ、明日も歩くのかと天井を見るか見ないかくらいで泥のように眠りに落ちた。

けたたましい金属音で目が覚めた。
目に入るのはまさに地獄絵図。大量に足を投げ打って寝ている早大生。溢れる湿布と土の匂い。極め付けは、鍋と鍋をぶつけてけたたましい騒音を出す悪魔、昂揚会員だ。

「きしょおおおおおお!!」

彼らの叫びはこれまでのどんなアラームより最悪の響きで、今すぐふかふかの布団に帰れるなら10万払っていいと思った。心の底から。

地獄は起床だけでは終わらない。

前日の足の痛みは回復することなく、寝たことで固まってしまっているため却って悪化している。
みんな普通の人間では不自然な動き方で歩き出す。手がずっと下で振られているため血が溜まってジャンケンでグーが出にくくなる。ロキソニンでドーピングする人もちらほらだ。


青梅街道は全く景色が変わらず端的に病む。

100ハイを何度も経験している先輩の底知れない体力に頼りきりになった。

絶望のまま脳も停止して、だけど普段いきってるくせに、自分より限界な同期の顔を見てそれに励まされたりする。

東京都に入って知ってる地名が増えた。
自然とペースが上がりまた着いていくのに必死になる。

そうしてようやくようやくようやくようやく高田馬場のロータリーが目に入る。
後にも先にもあんなに美しく見えた高田馬場はない。帰ってきたと気持ちが昂る。
串カツ田中の店員が店頭に立って応援してくれていたっけ。
普段飲む居酒屋の前を必死に必死に通り過ぎる。

ああ後少しで早稲田。
閉会式に間に合うぞとまたペースが上がる。
南門通りに入った。大隈重信に会いたい。

そこで突然、今でも忘れられないが踊り侍の先輩が笑顔で現れて
「ダッシュ〜」
と私たちを煽ってくる。

おいおいおい、ふざんけんな、そんなん走るしかないじゃん・・・・!と体も気持ちもなにもついてくる気がしないが、とうに使い切ったはずの最後の力を振り絞って血だらけ気分で最後走る。

着いた。完歩だ。終わった。
目線には先に到着した友達や先輩がいる。
倒れ込んで、無理やり起きて、閉会式。

あんなに熱っぽい学注は100ハイだけだろう。最高だった。

紺碧の空で汗まみれの肩を寄せる。

明日から始まるであろう壮絶な筋肉痛との戦いの予兆を感じながらタクシーで帰宅。文明のありがたさを知る。

もう2度と100ハイなんて出てたまるか、と誓った。


■自己紹介

「100ハイを体験したのが4年生だけなので100ハイの素晴らしさを寄稿してください」

昂揚会に依頼され、一旦擬似100ハイク体験して欲しくて私目線の当時を綴ってみた。先頭集団やけつもち、縛りプレイヤー・・・いろんな目線があると思うが参加者気分になってくれたら嬉しい。

現に私は書いてるだけで足が筋肉痛になった。

しかし百聞は一見に如かずとはまさにこのこと。
本物はこの100億倍辛くて、100億倍楽しい。
とにかく100ハイに出て欲しい。


申し遅れたが、この文章は拙文ながら私、福島陽が寄せさせていただいている。

現政治経済学部国際政治経済学科4年並びに早稲田祭2020運営スタッフや中夜祭、卒業ハイクなどを担わせてもらっており、その流れで今回執筆の機会をもらった。

現段階で2500文字以上になってしまっていて、老害も甚だしいが後少しだけどうぞお付き合いください。

真ん中の赤です。


■改めて100ハイのいいところを整理


もちろん何百個もあるが、私が実際に参加するときに口説かれたポイントを中心に整理しよう。

もしこれを読んでる人がいたら、自身のモチベ向上だけでなく周りの人を誘う時にも使って欲しい。

◯100キロ歩けるようになる

当たり前かもしれないが、これって結構すごい。
Google マップで100キロって出てきたら最悪歩けるなって思える。終電逃してもタクシー使う頻度減った気がする。

◯超えられない思い出になる

2年生の100ハイの話を4年生になってもよくする。それくらい100キロみんなで歩くのって強烈な思い出だし、100ハイ後は暫く3区がどうとか、誰々がキャパってたとかそれしか話さなくなる。友達曰く、出なかったらまじで話題やくだりにおいてかれまくるらしい。

◯気持ち早歩きになる

普段と同じ時間に家出てるのに山手線一本早い電車に乗れたりする。

◯体力と気力がつく

特に痩せはしないが、体力はまじでつく。たかが1回だがされど1回。あとそのあと辛いことがあっても「でも私100キロ歩いてるしな、それよりは楽っしょ」と思える。

◯友達が増える

100ハイは歩くペースが合う人と歩くのが一番楽なので、サークルや団体でバラバラになることも多々ある。その際、違うサークルや学館でよく見るけど喋ったことないような人と一緒に歩く展開は容易にあり、友達がめちゃくちゃ増える。

◯仮装楽しい

100ハイは仮装するのが一般的だが、クオリティがめちゃくちゃ高い人がいたり、シンプルに可愛いコスプレ見れたり結構目も楽しめる。

これは結構前の100ハイの仮装大賞


◯早稲田

説明すると野暮だから割愛するが、歩けばわかる。100ハイはまじで早稲田だ。
早稲田精神昂揚会ありがとう。

■最後に

絶対語りすぎたが、言いたいことはこれだ。

いいから歩け、とにかく歩け。

サンボマスター聞いて、夜のピクニック読んで、
ちゃんと準備体操して寝て臨め。


拙文、お付き合い誠にありがとうございました。
素敵な早大生生活を、100キロハイクをお送りください!

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