見出し画像

反応時間に関する考察

 テーブルの脚に足の指をつけると痛い。つけたその時は「あっ」と思うばかりで痛くないけれど、やってしまった、来るぞ来るぞ、と思っているうちに、その気持ちを追い駆けるみたいに痛くなる。
 痛みを感じる前にわずかな時間があるものだから、何とかならないだろうか、痛みが来ずに終わるのではないかと期待するけれど、足の指をつけたら痛いのに決まっているから、ただで済むはずがない。わかっていながら期待して、やっぱり裏切られる、あの一秒ぐらいの間が自分の大嫌いな時間である。
 経験上、どうも寒い時の方が時間差が大きくなるらしい。わかったからどうなるわけでもない。

 子供の頃、母が入院した時期があった。
 家は二世帯住宅で一階に父方の祖父母が住んでいたから、母の入院中は祖母が食事を用意してくれた。
 まだ祖父が存命だった頃で、祖父母と自分と妹の四人で食事をした。同じ家に住んでいても、自分と祖父母だけで食事をしたのはあの時期だけだったように思う。
 ある時、妹とテレビのチャンネル争いをしていたら、祖父が怒り出した。祖父は病気の後遺症で言語障害があり、何を言われているのかわからなかったけれど、顔と語調で怒られているのはわかった。それで自分も妹も黙った。
 食事を終えて二階へ戻る際、階段を駆け登ったら最後の段で右脛をしたたか打ちつけた。即座に脛を押さえて、「痛い痛い」と半泣きでのたうち回ったのを覚えている。
 あの時は痛みが来るのに時間差などなかった。きっと今でも、脛なら即座に痛むに違いない。きっとつける部位によって違うのだろう。

よかったらコーヒーを奢ってください。ブレンドでいいです。