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記憶とカレー

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カレーに関する記憶のまとめ。
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2023年8月の記事一覧

病床の決意とカレー

 18歳の時、私大入試の翌日に髪を切りに行ったら頭を濡らされるたびにどうも寒気がする。家に帰る間も変にゾクゾクするから、熱を測ったら38度あった。  それで布団を敷いて寝たのだけれど、何を食っても何を飲んでも即座に腹を下す。これはどうやら尋常でないようだから医者にかかったら、インフルエンザだと云われた。 「今流行ってるのとは違う型のやつだね」とも言われた。「流行に流されない俺」と思って、ちょっと嬉しかった。  それから丸一週間寝て過ごした。食事はずっと重湯で、全然美味くない

カレーと因縁

 大学2年の夏休み前、正門前に新しくできたカレー屋について友人が語り始めた。その店の “たい焼きカレー” というのが絶品なのだそうだ。  初めは餡の代わりにカレーが入ったたい焼きかと思って聞いていたが、どうも違うらしい。 「君、それは逆さ。たい焼きが入ったカレーだよ。白米の上にたい焼きを置いて、その上からルーをかけるんだぜ? 凄いだろう?」  全体それの何が凄いのか甚だ判然としない上に、まるで美味そうな気がしない。しかし友人は、たい焼きの餡が辛口カレーと絶妙に合うのだと目

嘘と涙とカレー

 小4の時、学級農園で作ったじゃがいもを使ってカレーを作る授業があった。自分はそれを随分楽しみにしていたのだけれど、当日うっかり米を持って行くのを忘れた。  忘れましたと云うのが何だか恥ずかしくて、先生には「カレーが好きじゃないから持ってこなかった」と言っておいた。  先生はそれに取り合わず、同じ班のメンバーに「百君にちょっとずつ分けてあげて」と言って、米をちょっとずつ集めてくれた。  自分はその米でカレーを食った後、ルーだけでおかわりした。いくらなんでも嘘丸出しだったと思い