【食レポ】マンゴスチンを買ってみた。
スーパーに行ったら、出張販売の八百屋さんがこいつを売っていた。
マンゴスチンを。一個100円で。
へー、こいつがマンゴスチンか。ロッテのガムで昔あったな。フルーツの女王とか言われてるわりには、思ったよりも小せえな。
そんな風に思いながら見ていたら、その気があると見たのか、売り子のおばちゃんがこっちに話しかけてきた。
おばちゃん
「いかがですかー。おいしですよ」
俺
「どうやって食うんすかこれ」
おばちゃん
「あのね、手でグッて押しひらくか、底を包丁で切ってください。そしたら中身出ますから」
俺
「中身が出る?あれすか、ライチみたいなもんなんすか、これ?おばちゃんの説明的にも、あと大きさ的にも」
おばちゃん
「そーそーライチみたいなの。おいしですよ」
俺
「ほーん」
まあ、ぶっちゃけていうとライチが格別好きというわけでもない。
でも、今まで一度も食ったことがないものを食うチャンスがあるなら、折角だし乗っかってみたい。
あと、さっきからかたくなに「おいしいですよ」の「い」を言うことを拒む、おばちゃんのアティテュード(姿勢)が気になってしょうがない。
そういう諸々のなんやかやが絡み合った結果、1個だけ買ってみることにした。
帰ってきて、とりあえず机の上に転がしてみる。
どうやって食うんだっけ。
たしかおばちゃん、手でグッと押しひらけとか言ってたよな。
よーし、そんならオープン・セサミ。
いや、全然開かねえ。
グッといったらパカって開くかと思ってたけど、パカッていくどころかブシャッていくやつだこれ。
そりゃそうだ。考えてみたら、ライチ食うときに手でグッてやったことなんかなかったわ。
おばちゃん、あんた今までどうやってライチ食ってきたんだよ。
しゃーねえ。ここはおとなしく包丁を使おう。こういうときはやっぱ文明の利器だぜ。だって人間だもの。
おー、たしかにライチっぽい。
あと外殻が両端もったらすぐにパカっていけそうだ。
あ、おばちゃんの言ってた手でグッと、ってこのフェーズの話か!!
気がはえーよおばちゃん!順序立てて言ってくれ!!
外殻の両端を手にもって、グッと開いたのがこちら。
あとトレイにのっけた。
あ、なんか甘い。甘い香りがする。
それも清涼感とかさわやかなニュアンスじゃない、重厚感のあるクリーミーな甘さを感じさせる香りだ。
今まで食ったフルーツの中だと、あれだ、アケビに近い。
アケビ?おばちゃんライチっつってたよな?ホントかそれ?
アケビ。
ライチ。
字数しかあってねえ。
うーん、なんべん匂いを嗅いでもやっぱアケビだぞこれ。
何者だ、お前。
ライチか?アケビか?それともまったくの別物か?
そこんとこ、白黒つけてもらおうじゃねえか。
房のひとつを手にとって、いざ、実食。
うーん。
ライチだ。
やっぱライチだ。
でもアケビっぽいライチだ、これ。
いくつかの房に分かれた白い果肉、こいつの食感と味はだいたいライチだ。さわやかでとっつきやすいこの甘酸っぱさは、たしかにライチのそれだ。
でも、それだけで終わっていない。
こいつはアケビの果肉のクリーミーさ、ねっとり加減も兼ね備えている。ライチにはない重厚さがある。
あとこれもアケビっぽいのが、種子まわりをコーティングしている果肉の、グミみたいなグニュグニュさ。
この辺はライチとは違ってやや食べにくい。口内で舌を使って、果肉をはがしながら食べるあたりはいかにもアケビだ。
でも、その味はライチだ。
外を覆う白い果肉にあったクリーミーさは失われているけど、その分清涼感というか、甘味の透明感が増している。
食感のアケビっぽさとは裏腹に、味という点ではむしろこっちのほうがライチにより近い。
うーん、ふしぎだ。
不思議な食いもんだ、こいつは。
だけど、なんとなく、全体的に上品さを感じる。
さわやかな透明感ある甘みのライチがフレッシュなおねーちゃんだとしたら、そこにクリーミーなフレーバーをまとわせたこいつは、物腰の落ち着いたマダムって感じがする。
そう、マダム。貴婦人だ。
つまり、お蝶夫人だ。こいつは。
なるほど、見切ったぜお前の正体。
お前はお蝶夫人だったのか!
なるほど、そりゃあフルーツの女王って呼ばれるわけだわ!!
なんたってお蝶夫人だもんな、お前は!!!
いやー納得した!
いよっ、マダム!!
このお蝶夫人!!!