百年の13年 その5

 いろんな本屋を訪ねてわかったことは、女性客がほぼいないことだった。多くはおじさんで、同世代の男性すら少なかった。 

その理由は簡単だった。単純に入りづらかった。 昔ながらの、古本屋っていえばこんな感じだよねというブスッとした店主がいて、一見さんお断りみたいな空気があった。(もちろんすてきな店もありましたよ。) だからかどうかわからないが、若い人はブックオフに行った。いくら立ち読みしても雑に扱っても怒られないし、匿名性が保てて楽だった。徐々に多くの人にとって古本屋といえばブックオフとなっていった。

 じゃあ、僕がやりたい店がそういう店だったかというと違った。昔ながらの古本屋でもなかった。 ターゲットは同世代だった。20代、30代がメインだった。そこに向けた店づくりをしなければいけなかった。 

まずはじめに女性がどうやったら古本屋に入ってもらえるかを考えた。

 参考にしたのはカフェだった。(もはや知らない人もいるかもしれないがいまのタピオカ並みの空前のカフェブームっていうのがあったんですよ。だけど、ほとんどなくなってしまった…。ブーム怖い。)いくつか回っているうちに、自分が気持ちいいと思える空間があった。 

内装は知り合いの工務店に頼んだ。 参考資料の写真を見せて色の指定をした。床を板張りにし、壁と天井は白いペンキで吹き付けにした。バカみたいだが、カフェっぽい、と素直に思ったことを覚えている。 棚は丸善のを選んだ。以前働いていた本屋の棚が丸善のだったということもあったが、それ以外知らなかった。棚の色はどこの本屋も使っていない色を探した。結果、薄緑色になった。真ん中に並ぶ三台の棚には特注でキャスターをつけてもらった(このキャスターが高かったなぁ…)。イベント用のスペースを作るために可動式にしたかった。 オープンしてから、なんだか図書館みたいですね、とよく言われる。  

さて、「箱」はできた。いよいよ本だ。 だけど、本がない。自分の蔵書を売るにしても1000冊ほどだった。ぜんぜん埋まらない。古書組合に入るつもりではいたけど、加入の認可に一ヶ月ほどかかると言われていた。(営業実績が必要だった。いまとはルールが違う。)組合に加入すると市場が利用でき、そこでまとまった量の本を買うことができる。そこを当てにしてはいたのだが、当座の本が必要だった。 

 次回へ。

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