見出し画像

SUUMO「街の共助力調査」を監修しました②

前回の記事は、一人ひとりの共助力を強化するためにまず、何をすれば良いのか?について記載しました。今回の投稿では、調査で上位にランキングした街について触れていたいと思います。1都4県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県)の1,076駅を対象とした調査結果を得点化し、そのうち偏差値が70以上の街のランキングが発表されました。
調査結果は以下よりご覧ください。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000350.000028482.html


●人が集まると助け合う力が強くなる!?
 調査で上位にランキングした駅は、団地や大規模マンションなど集合住宅が存在しており、人が集う大きな公園があるなどハード面で「人が集まる仕組み」が構築されている傾向が見られました。そのハードに加えて、ソフト面の町会活動、神社を基軸としたコミュニティ醸成や祭りの開催が日常のつながりを生み、いざという時に「助け合おう」という意識につながっているとうかがえます。
 また、高齢化など地域として街が存続することへの危機感が生まれ、住民同士での対話、乗り越えるための施策を話し合う場が多く設けられている可能性があります。災害時にかならず危機はやってきます。今、危機的状況に瀕していなくても、想像力を掻き立てて、この街で被災したらどうなるのか?ということを地域ぐるみで検討することが大切です。

 現在は、仮説を元に各駅を見ているに留まります。このランキング結果を元に、上位に挙がった地域を調査し、「共助が生まれる」要素はいったいどこに隠されているのか検証をしていきます。検証するにあたり、仮説として以下の要素があるのではないか、と現在は考えています。

① 新しく生み出されたコミュニティの形成メソッド
埋め立てや開発などが行われ、新設された集合住宅のコミュニティ形成に隠されたメソッド、人の動きに着目する。

② 地域の各組織の連携の仕組み
過去に発生した街存続における経済的、環境的危機意識などの有無。それにより、地域内の行政、住民、その他多くの組織との連携体制(団結力)が整っている可能性がある。

③ 人が集う都市計画
昔ながらの集う場所(神社など)、または、わかりやすく目に見える大きな施設(大規模公園)が集合する場所の存在がある。その存在が表出しやすい都市計画になっている。

④ 商店から派生する人のつながり
駅前の街並みが整備されている。駅から住宅までにつながる商店街が街の中で中心的な役割を担い、コミュニティのきっかけになっている。

 これらの要素に着目しながら、共助が生まれるきっかけをわたしたちも検証していきます。

●「防災力があること」が住まい選びの1つのポイントに
 4つの要素を中心に考える上で、街の共助力を検証する際に着目すべきは、その地域に存在する人が属する「組織」です。1963年(昭和38年)には、防災基本計画において、「自主防災組織」という言葉が初めて使われ、1965年頃(昭和40代後半)には、「自分たちの地域は自分たちで守る」という自覚、連帯感に基づき、自主的に防災の活動をするために組織される「自主防災組織」を結成することが推奨されました(内閣府,2017)。
 各地で結成された自主防災組織の活動範囲に含まれている世帯数の割合が2018年(平成28年)には81.7%を占め、自主防災組織の活動が各地を網羅しているように見えます(消防庁,2016)。しかし、自身の住んでいる地域に自主防災組織があるということを認識していることを示す加入自覚率は、東京都で4.6%と非常に低い値となっており、(有馬,2012)今まで存在していた自主防災組織だけでは、地域の防災力は支えられない状況になっています。

 では、現代を生きる地域住民にとって必要な防災力を強化できる組織には何が求められているのでしょうか。何を満たせば、みんなで助け合う共助が生まれ、災害時にみんなで生き延びることができる地域が生まれるのでしょうか。

 これからもわたしたちは、みんなで生き延びる社会を築くために、地域住民の皆様、行政、民間企業、教育機関と連携しながら、その方法を模索し、要素が見つかれば、実践し、地域の防災力強化に向けて、一歩また次の一歩を踏み出していきます。一つとして同じ地域がない中で、同じやり方で進めても共助力は強化されません。それぞれの地域の方々と共に検討しながら、共助を生み出す方法を探していきます。

 住む街選び、家選びの際には、会社から家までの距離や子育てがしやすい環境、バリアフリーが完備された道路環境などに着目することも大事ですが、「共助があるかどうか」の視点も忘れずに持って街選びをしてみるのはいかがでしょうか。施設や環境はもちろん大切ですが、いざという時に真っ先に助けてくれる存在は、「人」のはすです。

「みんなで生き延びる」、共助力の高い街を日本中に、みんなで一緒に増やしていきましょう!

参考文献
1)有馬昌宏(2012)「自主防災組織の抱える問題と機能化へと向けての提言1)
2) 内閣府(2017)「防災白書」『内閣府』
3)消防庁(2016)「消防防災・震災対策現況調査」『消防庁』

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?