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東京恋慕3rdEP『海盤』セルフライナーノーツ


1.砂
2.水辺でさようなら
3.どうしよう東京テレポート
4.誘拐(弾き語りver)
5.砂(弾き語りver)
6.海が遠い場所からの歌
7.水面

はじめに

わたしは物心ついたあたりから海や水辺がとても好きで
いつも胸を躍らせながら水面を覗いていた
よく一人で海まで行っては歩いて橋を渡りながら
向こう側の景色を眺めていた
頭の中身を言い表せないもので一杯にしながら
浜辺に座って砂を選り分けたり
水槽で揺蕩うジャイアントケルプを見上げたり
誰かの面影に纏わりつかれながら
観覧車の中から水平線を凝視したり
すっかり暗くなったあの橋の麓で
虹色の傘をさして歩いたりしている

砂が撒かれたみたいな寂しさと、
蔦が覆ってるみたいな先の見えなさ。
「もう会えない」ことへの悲しみは何回海に捨てても帰ってくる気がして、
砂浜を歩くたびにいつも思い出してしまう。

水辺でさようなら

さようならには水辺がぴったりだし、
水辺にはさようならがぴったりだと思った。
けど水辺からどんどん離れていく電車の中でとても悲しくて、
悲しくて悲しくて仕方がなかったのに、
ただ「会えてよかった」って思った。

どうしよう東京テレポート

わたしはあの対岸で途方に暮れていた。
きらきらと光る街でいつも一人で砂浜を歩いていて、
どうしたらいいかわからないままだった。
水辺のあの街は今も形を変え続けながらわたしの心の中に居座っている。
思い出の場所はもうほとんど更地になって消え果ててしまったにもかかわらず。

誘拐(弾き語りver)

私の好きな水辺から遠く離れたところの信号機の色が優しくてとても好きだった。
ふわっと点くその色を無視して飛び出してしまえば楽になれると信じているけど、
きっとわたしはいつまで経っても立ち尽くしたままなんだと思う。
ずっと考えてる。

砂(弾き語りver)

わたしは自分のギターで歌いながら、
やっぱりラスト1行の歌詞を何度も何度も反芻する。
この悲しみをあえて鮮明に保って抱えながら生きていく。

海が遠い場所からの歌

いつもの帰りの電車に乗っていた時西陽が強く窓から射してわたしの左目を眩ませた。
1番端っこの海辺から手を振っても誰にも見えないのなんて分かっていたつもりだったけど、
海がないところまで来てしまったらいよいよ見えないななんて海に続く川を見ながら考えていた。
気づけばまた悲しい悲しい気持ちになっているけど、
「ああもう会えない」って涙をこぼしたけど、
あの時「会えてよかった」って湧いてきてホッとしたなって思える。

水面

6年前に作った音源は、
当たり前だけど6年前のわたしの声がそのままになっていて、
まるで寿命の長い海の生き物みたいだと思う。
本当は水面を見上げたことなんかないのに、
水族館で上から水面を覗けると何だか嬉しい。
色んな水面を覗きながら
「そちらの世界はどうですか」って訊ねよう。
わたしもそうするから。
どこへ行っても。

おわりに

このEPに込めた曲を書いた遠い過去のわたしと、
この文章を書いた今日のわたしと
明日のわたしと
遠い未来のわたしと
この文章をここまで読んだあなた
この海で一緒に同じ水面を覗いてくれてありがとう
いつでも何度でもここで待っています

東京恋慕のドクガエル

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