ファンの作り方 「グレートフルデッドにマーケティングを学ぶ」を読んで考える

はじめまして。山本修と申します。

簡単に事項紹介すると広告代理店で6年働いたあと、現在はとある美術館のマーケティング・ブランディングを担当しています。自分も日々ファンに愛される施設になるためにはどうすれば良いのかと悩む中で自分なりに見つけた答えや参考になる情報などを、同じように自分のブランドを持つ人やマーケティングに関わる人にお届けできればと思いこのnoteを書いています。

最初の投稿は「グレートフルデッドにマーケティングを学ぶ」という本です。タイトルも惹かれるけど、この本の紹介を糸井重里さんが書いていてこれがまた良い。経済合理性をもとめた生き方ではなく、快楽主義でいきるバンドが見せる姿にファンがついていく。これからの生き方のヒントをもらえるような言葉が最初からバンバンでてきます。書ききれないので、まずはこの本の概要と、私が思うファンの作り方で大事なポイントを3つにまとめてみました。

皆さんにとって少しでも役に立つ情報となれば幸いです。

■この本の概要


グレートフルデッドというアメリカのロックバンドはビートルズやローリング・ストーンズなどの錚々たるバンドと同じ時代に存在した。
しかし、他のバンドにに埋もれることなく独自の熱狂的なファンをつくり
ファッション、食、ヒッピーカルチャーなど彼らの独自の経済圏を生みだし、商業的にも成功しているバンドである。
この本は、なぜ彼らはこの熾烈な音楽業界の中で成功し、多くのファンに愛されているのかをマーケティング視点から解説してくれる一冊である。

①目先の利益に走らない

彼らは当時では珍しかったライブの録音を許可したり、利益損失になるような取り組みを行った。
そのことにより、一定数はレコードを買う人が減ったかもしれない。
しかし長期的にみた結果は、彼らの音楽に触れる人が増え、結果的にファンになりグッズや正規のレコードを買うことになった。

今でこそ無料化は珍しくない手法だが、この時代から取り入れていることに驚く。
無料化は、最初は人に触れてもらうことができる。
現代はより、触れてもらうことの障壁をより低くする必要がある。
とんでもない量の情報やコンテンツが溢れているからだ。
これは知ってもらうことへの費用が相当かかることを意味しているし、
知ってもらった後にどのように長く愛してもらうかが肝になってくる。

グレイトフルデッドはまずは触れてもらうことへの対策をとったのだ。
そして、その後のライブ体験を提供価値の軸にしたことで
長い目で見てライブに来る人数を増やし、ビジネス的にも成功することができたのだ。
まずは知ってもらうことが難しい時代だからこそ、一見最初は利益を逃すかもしれない取り組み(例えば、ライブの無料招待、映像や音源の公開など)が実は長期的にみて元がとれるのだ。


②ユルさが生む無限の可能性

グレイトフルデッドはあえてブランドのルールを厳しく規定せず、
ファンやデザイナーから作られるグッズ等にも許していた。(ディズニーとかは逆)
そうすることでみんなが受け手ではなく主人公になり、バンド自体がファンのもの、みんなのものになっていった。

現代は特に一方的なコミュニケーションが難しい。
受け手側が自由にコンテンツを受け取り、それを自分なりに解釈を加えて広めていくという時代だ。
グレイトフルデッドは元々ヒッピー的な価値観を持ったファンが多かったからか、当時から受け手側の自由を認めていたのだ。
商品やブランドを提供する側は、あくまで素材でしかないんだ、ということを覚えておくべきだ。

③一段上のレイヤーの提供価値を届ける

グレートフルデッドのファンたちはデッドヘッズ呼ばれ
その仲間に会うために、ライブに行き、バイブスを交換していた。
運営側もそれを促進するために、ライブ前に露店を出して商売することも認めていたし、ファン通しでライブ録音を交換することも認めていた。
最終的にファンとしては、単なるライブ鑑賞をしにくる目的ではなくここに集まることが目的になっていた。
それは音楽という領域を超えて、”楽しい生き方”を提供していることになる。
つまり、自分たちが提供しているサービスの価値のレイヤーを一段上げたものを提案してくれているのだ。
もし仮に日本のアートを提供している会社があれば、日本食や、着物、香りなども含めたコンテンツを一緒に提供することで
単なる美術屋さんにはならずに、新たな価値を提供できるかもしれないのだ。


■まとめ


以上がこの本を読んで学んだファンづくりの秘訣である。
自分も実務の中で、目先の利益を取ってしまいたくなったり、
ブランド規定を壊した提案を否定してしまったり、
どうしてもサービス自体が中心とした考えになってしまうことがある。
しかし、グレイトフルデッドがなぜここまで愛されるブランドになったのかは、これらの普通だとやってしまう判断に耐え、あるべき姿を考え抜いて決断した結果である。
ヒッピー的な雰囲気や、カジュアルな演奏のゆるいスタイルとは裏腹に、
強いブランドへの信念を学べる本であった。

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