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【光る技術!】ウツボカズラのような特性・構造を持ち、付着した汚れが落ちるコーティング剤技術を開発 花王

 花王グループで産業用ケミカル製品の開発を担う花王テクノケミカル研究所はこのほど物がすべり落ちる表面を作り出すことで、付着を抑制する水性のコーティング剤技術を開発した。同技術は昆虫を滑らせて捕食することで知られる植物「ウツボカズラ」の特性や構造に着目し、開発した技術で、窓ガラスに付着した汚れや屋根に付着した鳥の糞などの付着を抑制できる技術として期待される。この研究成果は11月10~11日に開催する「第30回ポリマー材料フォーラム」(オンライン開催)で発表する予定だ。

ウツボカズラ

ウツボカズラ

 日常生活の中で、窓の汚れや鳥の糞といった付着物の問題に頭を痛めている人は少なくない。こうした付着物は景観を損なうだけでなく、屋根の積雪で家屋の一部が壊れたり、太陽光パネルに付着した鳥の糞や汚れで発電効率が低下するといった悪影響を招く恐れもある。ただ、こうした付着物を除去するには多大な労力やコストが必要で、対策に二の足を踏むケースも散見される。

 花王テクノケミカル研究所の研究員らが注目したのはウツボカズラという植物が持つ特性や構造。ウツボカズラの壺内面は潤滑液で覆われており、その内面を模倣した表面は「滑液表面(すべる性質を持つ表面)」と呼ばれている。花王テクノケミカル研究所は塗布するだけで対象面を滑液表面にするコーティング剤の開発に着手した。

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 コーティング剤でウツボカズラのような滑液表面を再現するには、対象の表面が常に潤滑油で濡れている状態を作る必要がある。研究員らは植物などから得られる繊維をナノサイズまで細かくほぐしたもので、液体を保持する性質に優れた「セルロースナノファイバー(CNF)」と潤滑油を組み合わせると、CNFが潤滑油を保持し、長期間に渡って微量の潤滑油が放出され続ける表面を作れるのではないかと考えた。しかし、潤滑油は疎水性(水をはじく性質)のため、反対の性質を持つ親水性のCNFにはなじまない。そこで花王グループがこれまで蓄積してきたCNFの表面を疎水化する技術を応用し、潤滑油となじみやすくしたCNF(疎水化CNF)で潤滑油を強固に保持する技術を開発することに成功した。また、同技術は有機溶媒を使用していない水性のコーティング剤のため、環境や人にも優しい。

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 同技術は和歌山県にあるテーマパーク「アドベンチャーワールド」のインコのケージにコーティング剤を塗った板を入れて、糞の付着抑制効果を検証。その結果、塗布した板からは糞がすべり落ち、付着を抑制することを確認したという。

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アドベンチャーワールドでの鳥糞付着抑制検証

 花王は今後、この知見を応用し、付着物によるトラブルの解消やさまざまな表面におけるメンテナンス低減に有効活用できるよう、用途に応じた提案を行なうとともに、商品も発売するとしている。


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