見出し画像

少女から

私の仕事は、少しばかり特殊で、人様の話を聞く事が多い仕事です。
具体的に何をしてるかは、後の講釈にして、本題に・・・
尚、私が書き残す話は、全て許可を得ております。
但し、聞いたお話なので、綺麗にオチが付くモノではありません。

では、始めましょう。

画像3

Aちゃんは、
私の知人の娘さんです。
変わった所が見られる様な事はありませんが、
ある種の独特な雰囲気を持つ中学生です。
そんな彼女が、

初めて、ソレを見たのは、
小学生の頃、家族旅行をした時で、
祖父・祖母・父・母と自分で、越県した町の海が綺麗な場所だったそうです。
観光が終わり、あとはゆっくりしようとホテルにいると、
祖母が大浴場に行った帰り、フロントで近くの漁港で
花火大会あると聞いて来たそうです。
女性陣は、全員行くとなりましたが、
男性陣は、運転で疲れてるとのことで、部屋に残る事になりました。
祖母によると、ホテルの前に広がる海を通って漁港に行けるとのことで、
実際にAちゃん達の泊まる部屋から、海辺を歩く人々が見えたそうです。
Aちゃんのテンションは爆上がりで、
海辺に出て歩いていると、キラキラしている波間から
音楽が聞こえた気がしたそうで、
「本当はしないけれど、人間は楽しければこういう事もあるのか、」
と初めて思ったそうで、
実際に花火大会も綺麗で、滅茶苦茶楽しかったそうです。
その場を充分堪能して、行きと同じホテルまでの海辺の帰路を
祖母と母と並んで歩いたそうです。
花火大会の帰りなので、同じ様に数名が同じ様に帰っていました。
「行きは波が綺麗だったなあ・・・」
と海を見ると
自分達の少し先の方に、輝いてる場所があったそうです。
何だろう、と思うよりも早く、祖母と母の手を解いて駆け寄った時、
その薄く輝いている海の所に、女性がいるのが分かったそうです。
Aちゃんは、不思議に思う事無く、もっと近づこうと
もっと近くで、見てみようと思い、その輝きに近付きました。
ビクッ

画像2

急に金縛りに合ったみたいに、身体が動かなくなりました.
「あ・・・れ・・・」
不思議と身体はピクリとも動きません。
何とか身体を動かそうと、してる内に
祖母と母がAちゃんを呼ぶ声が聞こえました。
「あ・・・呼んでる・・・おばあちゃん、」
そう思って呼び声の方を向きたいのに、向けません。
目だけは、声のする背後を意識しているのは分かり
「あ、目だけは動く・・・」
気付きましたが、身体は動きませんでした。
「何で・・・?」
そう思い、何気に輝きの方を見ると
女性がすぐ近くにいました。
最初は輝きの傍に、そして、映像を早送りしたみたいに、
人間の動きじゃない動きで、
Aちゃんの傍に、いました。
そして、その女性の上半身が、Aちゃんの方に向かって
ゆっくりと動き出しました。
スローモーションと早送りが交互に入る様な動きで、
こちらを完全に向くのが分かった瞬間、
「うわっ」
Aちゃんは、怖さを超えた嫌な感覚を、全身で覚え、
その身体の熱量が増して行くのも感じました。
すると、何もなかった様に、急に身体に自由が戻り、
そのタイミングに身体が付いて行けず、こけたそうです。
全力で前に進もうとしてたものだから、可成り大袈裟に、こけたそうです。
その時は、Aちゃんは自分は何を見たのか不思議でしたが、
それよりも、祖母と母がこけた自分を心配して慌てて来たのが、妙に嬉しくて、
海の女性の事や海が輝いていた事は、黙っていたそうです。
そうすることが良い事だと思ったそうです。

それから、数年して、
また不思議な事があったそうです。

画像3

また不思議な事があったそうです。
ある時、Aちゃんが友達と遊びに行こうと待ち合わせをしていました。
時間は早い時間、街中とはいえ人の姿は少なく、
待ち合わせ場所も人はいない場所でした。
メンバーは、AちゃんとDさん、B君とC君。
待ち合わせ場所に、C君が遅れて来ましたが、
顔が真っ青になるまで全力で、
遅れを取り戻そうと走って来たのが分かったので
「遅れてゴメン」
と謝るC君に、皆嫌な顔をせず遅れを咎める事無く、
目的地へ向かおうとしたそうです。
すると、歩き出した全員の真正面から、
「遅れてゴメン」
と、C君が走って来るではありませんか。
「?」
直ぐに振り返って、今いたC君を見ると、C君はいない。
AちゃんよりもDさん、B君がこの不思議な現象に慌てている様子。
だけど、今来たC君はいつもと変りなく遅れたことを謝る。
「お前何なん、今来てたやろう」
とB君、
「やだ、怖い」
と、Aちゃんに隠れるDさん、
「何だよお前ら、何の冗談だよ」
と、この状況が受け入れられない感じのC君、
不思議な空間に4人。一体何が起こったのかAちゃんは
どうしたら良いのか、早く考えなければと
Aちゃんは焦り始めたそうです。
「何かやばくね、」
B君はそう言うと、目的地の方向へ歩き始めました。
Dさんも、その様子を見てB君に付いて行こうと駆け出します。
C君も
「待ってくれよ・・・」
と言いながらB君、Dさんに付いて行きます。
取り敢えず、Aちゃんも皆に遅れるのは嫌だと、
付いて行こうと駆け寄ろうとしました。
「何か違うくない・・・」
Aちゃんは、そう思うと、
何となく足が止まったそうです。
「誰か自分が行かないのを気付いて止まってくれるかな?」
と考えてもいると、
3人はAちゃんの事はなかったかの様に、
街中に消えてしまいました。
「何これ?」
不思議な、ちょっと腹立たしい事だったそうです。

画像4


翌日は、日曜で悶々として過ごしていると、
急に3人の事が、逆に心配になって来ました。
「思い切ってこちらからLINEしてみよう」
とスマホを取り出すと、
LINEのアプリのアイコンに、これまで見たことの無い
凄い数が届いていました。
「え?こんなに・・・?」
LINEを起動すると、
Dさん、C君からの個別の通知がたくさん来ていました。
「何?」
と思い、DさんのLINEを開けると
漢字で書かれた文字が判別出来ない文章で続いていたそうです。
「外国語?」
LINEの既読音が鳴り続ける中、いつまでも終わらない既読音が
気になった時、
「ええ、既読って音が鳴るんだっけ?」
と不自然に鳴る既読音に恐怖を感じたそうです。
文章も意味不明で、途中で読むのを止め、DさんのLINEを途中で閉じました。
C君からのLINEも、メッセージをプレビューで見る限り、
Dさんと同じ様な内容で、開くのを止めたそうです。
B君からは、何もメッセージは来ていませんでした。
この状況をB君に知らせるべきかと、一瞬思いましたが、
「B君もDさん、C君と一緒に行ったんだ」
と思い直し、
その日は、もう遅いと次の日学校で、あの時の事を話してみようと
いうことになりました。
翌日、いつもと変りなく学校へ行くと
Dさん、C君は、学校を休んでいました。
「なんで?」
凄く嫌な感覚がしたそうです。
B君は、登校していたので、B君に話を聞こうと休み時間に近付こうとするのですが、
何故か邪魔が入って話が出来ず、とうとう放課後になってしまい、
結局、B君とは話せませんでした。
また翌日、Dさん、C君は、学校を休んだまま、理由は体調不良。
残りのB君、彼が頼りだと思っていたのに、まさかの、休みでした。
しばらくの間、3人は休みが続き、嘘の様に3人全員がそのまま
転校になってしまったのです。
「全員転校?」
少しおかしいと思いましたが、
何かあるわけでもなく、取り敢えず黙っていました。
LINEで連絡してみようとしましたが、
3人のLINEアドレスが無くなっていました。
あの謎の漢字の文面も綺麗に消えていました。
しかし、学校は何の変わりもなく、静かな生活は続きました。
しばらくして、
幼稚園の時にお世話になった先生が亡くなったと、連絡が周って来ました。
Aちゃんは参加すべく、母親と葬儀に向かいました。

画像5

「B君!?」
会場でB君を見掛けました。
そもそも、Dさん、B君、C君とは、幼稚園からの仲良しで
もしかして会えるかもと、頭の隅にあっての参列でもありました。
でも、Aちゃんは近付くのを止めました。
あまりにも、B君がB君ではない、全くの別人に見えたからでした。
しかも、偶に青く見える時がある。
ブルーのフィルターが全身に映されている様に見える。
「今までの嫌な感覚は、これか・・・」
Aちゃんは、何かは分からないけど、妙に納得した気分になりました。
何も知らない母親も、小さな頃から知ってるハズのB君に全く気付かず
葬儀を終えると帰路に付きました。
Aちゃんは、もの凄く悲しくなって、
この事は忘れないでおこうと思ったそうです。

書けるのはここまでです。
海の女性が何だったのか?
3人の友達は何が起こってどうなったのか?
何にも答えがありません。
実際の不思議な話は、オチなんていうものがある方が少ないのです。

どっとはらい。

当サイトの内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
また、まとめサイト等への引用は「引用先明記」をお願い致します。

#怖い話 #ほんとにあった怖い話 #不思議な話 #千年堂 #おばけずかん #大人が知らないベストセラー #GHOSTBOOK #ゴーストブック

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?