なぜ 『Runes』 はBitcoinに必要なイノベーションなのか
4月20日にビットコインは4度目の半減期を迎えた。時を同じくして誕生したのは Runes Protocol だ。
そんなRunesは現在、界隈の至る所で話題になっている。
この記事ではRunesが生まれた背景、その概念や仕組み、エコシステムへの影響など、包括的にわかりやすく解説する。
4回目の半減期
2024年はビットコインにとって重要な年である。1月にはビットコインの現物ETFが承認され、4月20日には74万番目のブロックが生成され、半減期を迎えた。
ブロック報酬は6.25BTCから3.125BTCに減少し、マイニングの収益性は半減した。マイナーが以前と同じ収益を得るには、ビットコインの価格が2倍になる必要がある。
現在のところ、ビットコインの供給量が限界に達するまでは、価格が上昇を続けているビットコインを報酬として受け取ることが、マイナーにとって大きなインセンティブとなっている。
しかし2100万枚BTCの上限に達する日が来れば、マイナーが受け取るブロック報酬はなくなってしまう。それでもトランザクションを承認してブロックチェーンのブロックに保存する作業は必要だ。そうなると、トランザクション手数料のみがマイナーの受け取る利益となる。
100年後、採掘されるビットコインがなくなれば、この手数料が実質的にマイナーの活力源となるのだ。
十分な手数料が発生していないビットコイン
ビットコインは、数ある仮想通貨の中で「価値の保存手段」として確固たる地位を築いている。
一方で、ビットコインはUSDCやUSDTなどのステーブルコインのように日常的な支払い手段としての利用は限定的だ。
そのため、現状ではネットワーク活動を通じて十分な手数料を生成することは困難だ。
以下のチャートは、ステーブルコインの取引頻度がビットコインよりもはるかに高いことを示しており、ビットコインの手数料の発生が極めて少ないことが分かる。
2023年のデータによれば、ビットコインの取引30回につき、USDCが100回以上取引されている。
ここから導き出される結論は、ビットコインのセキュリティを将来的に維持するためには、単純なビットコインの送金以外にも様々な手数料収入を生み出す戦略が必要であるということだ。
ブロックチェーンはいかに取引手数料を増やすのか?
仮想通貨の本質は取引にある。
特にミームコインはこの点で重要な役割を果たす。ミームコインによる取引の増加はブロック生成者に最大抽出可能価値(MEV)を通じた利益をもたらし、レイヤー1のセキュリティ向上にも繋がる。
このような現象の典型例としてソラナが挙げられる。例えば、BONKやWIFから発生する投機的な活動は、ソラナエコシステムの成長とセキュリティの向上に大きく貢献したといえよう。
ビットコインの場合
2023年に至るまで、ビットコイン上でミームコインを手軽に発行し、取引する方法は存在しなかった。しかし、Ordinals(オーディナルズ)プロトコルが公表され、BRC-20という新しいトークン規格が登場した。
これにより、ビットコイン上で代替可能なトークンが生成・管理できるようになった。
BRC-20トークンは急速に人気を集め、$ORDIなどはリリース後わずか数ヶ月で時価総額10億ドルを超えた。ビットコインの取引量も急速に増加し、マイナーに高い収益をもたらした。
しかし、この規格はOrdinalsとInscription(インスクリプション)を基盤としており、複雑な仕組みは効率性に欠ける。
その解決策として、ケイシー・ロダモール(Casey Rodarmor)氏がRunesプロトコルを発案した。
Runesは、ビットコインのUTXO(未使用のトランザクションアウトプット)モデルを使用し、ビットコインの構造や取引処理ルールとスムーズに統合するように設計されている。
この手法はビットコインネットワークの長期的なセキュリティ強化に寄与し、ビットコインにより多くの手数料収益をもたらす可能性がある。
ビットコインの新規格 - Runes Protocol
ロダモール氏はOrdinalsプロトコルの生みの親でもあり、半減期に合わせてRunes Protocolをローンチした。
Ordinalsは各サトシ(ビットコインの最小単位)を一意に識別可能にし、NFT(非代替性トークン)の取引を可能にする。一方、runesはETC-20と同様にさまざまな名前と数量を持つ代替可能トークンのRunesを作成を可能にする。
Runesの仕組み
Runesはビットコイン上で代替可能なトークンを作成するための、数ある試みのうちの1つだ。カウンターパーティー、カラードコイン、BRC-20など、同様の目的で開発されてきたプロジェクトが複数存在する。しかし、Runesにはこれらとは決定的な違いがいくつかある。
オフチェーンデータに依存しない
ブロックスペースの最小化・ジャンクUTXOの作成を回避
追加のネイティブトークンを必要としない
RunesはビットコインのUTXOモデルを導入することで、従来のプロトコルよりもシンプルで効率的な代替手段を提供し、ネットワークのデータベース圧迫を軽減する。
プロトコルの主な機能はトークンの送受信と発行であり、これらの全てのデータ処理はビットコインのOP_RETURNを介して行われる。OP_RETURNは、トランザクションのアウトプットに特定のデータを含めることができる機能だ。
Runesで使用されるデータの種類は以下の通り:
(1)転送データ
ID: Runesに割り当てられた一意のID、ERC-20トークンのスマートコントラクトアドレスと同様の機能を果たす
OUTPUT: トークンが転送される宛先アドレス
AMOUNT: 転送されるRunesの量
(2)発行データ(Push データ)
SYMBOL: トークンのシンボル、人間が読み取れる文字で表され、26進法でエンコードされる。有効な文字はAからZまで
DECIMALS: トークンがサポートする少数点以下の桁数を定義する。例えばDECIMALSが1の場合、最小単位は0.1となる
Runes Protocolでは、重複するシンボルを持つRunesの作成は許可されず、「BITCOIN」、「BTC」、「XBT」といった名前を使用するRunesは無効
新しく顕在化するビットコインの課題
Runesが開発され、ビットコイン上のミームコインやDeFI(分散型金融)に期待が寄せられている。
しかし、既存の金融アプリケーションをRunes Protocolで対応させるにはいくつかの制限がある。ビットコインのブロック生成は約10分ごとに行われるため、Runesを用いた取引には相当な遅延が生じることを意味する。
これは、イーサリアムの約12秒やソラナの400ミリ秒と比較して非常に遅い。ライトニングネットワークとの統合により、取引速度が大幅に向上する可能性はあるが、ライトニングネットワーク自体にはBTCのボリューム制限があり、少なくとも1回のオンチェーン取引が必要という課題が残る。
ビットコインのブロック生成時間の問題を回避し、並行取引処理を可能にするソリューションがますます重要になっている。
これらの課題は、以前はあまり顕在化していなかったが、Ordinalsプロトコルによるビットコイン上でのNFTおよびFT取引の増加に伴い、より明確になっている。
NFTとFT取引には根本的な違いがあり、トークン価格の変動を考慮すると、10分間の取引承認時間は重大なリスクを伴う。さらに、mempoolの動的な変化や将来の過度の手数料の問題が懸念されている。
最後に
ビットコインをネイティブに活用する時代は確実に近づいている。
Runesプロトコルは、ビットコインを根本的に変えることなくトークンを利用する可能性を提供し、重要な利点をもたらす。
さらに、Arch ネットワークやMezoなどのプロジェクトは、ビットコインにネイティブなプログラミング機能を追加することを目指している。
これらの機能がRunesプロトコルと組み合わさると、ビットコインの長期的なセキュリティ予算の問題を解決する上で大きな進歩が見込まれる。
2009年にビットコインが生まれてから15年が経ったが、このエコシステムはなお自律的に発展と拡大を続けている。Runesを含めたイノベーションはビットコインの実用性を高め、より強固なネットワークを築いていくだろう。
これらはビットコインが進化していく上での足掛かりになるのではなかろうか。これからもビットコインの発展をあたたかく見守っていきたい。
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