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「クリエイティブ・イノベーション」という変な学科

私は現在、武蔵野美術大学(通称、武蔵美)クリエイティブ・イノベーション学科(通称、CI)という東京市ヶ谷にあるキャンパスに通っている。

CIは専攻がない。その代わり、各々の「表現」について色々な視点から考えることが求められる。

3年生になると、テクノロジー、サービス、ビジネスの3つに分野が分けられ、学生は自分の適正を測る期間が前期にある。その次のCI演習では市ヶ谷をモチーフに表現する。そして産学連携では実際に地域や企業と近い距離で、実践に近い演習が行われる。この授業を経て、そのまま地方へ移住を決める学生もいるみたいだ。

最初はCIでどうしたら自分を見つけられるのか分からず、困惑していた。しかし、私は産学を経てこの学科が好きになった。そのきっかけは、最後の打ち上げだった。他のチーム、ゼミ、先輩、街の人がごちゃ混ぜになって飲み食いしているのだ。こんな学科が他にあるだろうか。

この学科は自分と同じことをやっている学生を見つける方が難しい。ゆえに他の学生のプレゼンは刺戟的だし、尊敬する。ここでは、技術やコンセプトが素晴らしいだけが評価基準ではない。他学科との違いは、作品を実際に評価する鑑賞者が街にいるという点だ。教授たちはプレゼンのみで評価をしなくてはいけないし、自分の専門外、領域外のことを毎回コメントすることを求められる。それゆえ、自分の領域内でコメントをしようとすると、批評しようがないときがある。

それでもその作品、プレゼンがうまくいっているかどうかは街の人の反応を見ればすぐにわかる。街の人は作品を批評することはない。しかし、面白い、つまらないは正直に教えてくれる。ここがCIの面白いところだと思う。教授が何と言おうと、街の人が面白いと言ってくれならそれはその街にとって面白いのだ。街の人の「面白い」は、教授の「面白い」より何倍も価値がある。

CIの教授たちは個性的で、それぞれが違うことを考えている。そして、何より教授と学生の距離がかなり近い。教授と近くの町中華へ行くほどだ。また、研究室もオープンで、他のゼミの教授に話を聞いてもらうこともできる。

大学は研究機関という面もあるが、CIは美大の中でもその面は強く出やすいかもしれない。しかし、そのテーマを見つけるのはとても難しい。それは前述の通り、専攻がないからだ。また、研究にすることを望んでいない学生もいる。

CIはエリートを輩出することはないかもしれないが、数年後に集まったらとてつもないパワーを発揮できる人たちなんじゃないかと思っている。

本当に何から何まで既定路線を外れまくっている学科だが、私はCIに入ってよかったと心から思っている。

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