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【創作】フォール=フォンティーヌ=フォール|フォール=ウォール

音楽は、曲を受け取った人を映す鏡のようなものだと思っていて。『ライオン』は、男性には未練たっぷりの曲に聞こえるかもしれないのですが、女性には出発の曲に聞こえるんじゃないかというのが持論です。汽車を待つ君の横で時計を気にする僕、的な。
『零 ~眞紅の蝶~』天野月×柴田誠スペシャル対談! 『蝶』から『くれなゐ』へ



【創作】フォール=フォンティーヌ=フォール|フォール=ウォール


フォンティーヌが助けを求めた際は純粋な喜びを感じた。フォンティーヌ=フォール。フォールの者達は何故美しい彼女の中身に気付かないのだろう「レクナーデ。わたしはまわりのように市場を歩いたりしたいの。父様も彼らも頼れない。レクナーデ」「フォンティーヌ。きみがいう『普通』が手に入る方法がひとつだけあるよ」黒髪の中性的な人間が人差し指をフランス人形じみた少女に触れた。きみを手にする方法もね。
薬品漢方が並ぶレクナーデの表側の店に入る。父様はわたしの専属のレクナーデだけは一緒に外出を許した。「フォンティーヌ。こちらに」私用の扉を開けばひとつの身体がある。身体が? 何故。成人女性のそれはいつだかわたしが話した姿ままだ。「きみのための身体だよ。ぼくの表側は薬師だけれど身体移植も多少の知恵があるしね」レクナーデはフォンティーヌの目線に合わせる。そうだ。フォンティーヌは思う。思えばわたしはレクナーデの性別を知らない。長髪を揺らした少女にも青年にも似た人間がくすくすわらう。「きみの言う『普通』はなにを望む」「わたしは」自然に歩様が伸びる。レクナーデはフォンティーヌに気付かれないように微笑んだ。漸く彼女が手に入る。後ろ手に鳥籠の鍵を閉めた。
本能を植え付けられた『普通』にフォンティーヌは変わる。甘言ままに。

フォール=フォンティーヌ=フォール