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哀れなのは

土曜日の休日

今日はずっと楽しみにしていた日。

初めて着る服に袖を通して、
普段つけない色のアイシャドウを使って、
友人にもらった香水をつけて家を出た。

跳ねる気持ちで映画館へ向かった。

いつもより優しい声でポップコーンを注文したし、もちろんパンフレットも買った。

「哀れなるものたち」を見るために。 

↓ネタバレになりかねないので、 
あらすじ以外は内容に触れていません

(あらすじ)
世界に絶望して自殺した女性を、天才医師が赤ちゃんの脳を移植して蘇生させる。不幸な死から蘇った彼女は、偏見から解放され、自ら世界を吸収し、成長していく。

というイカれたストーリーなので、
公開前からかなりワクワクしていた。

感想として
作品は完璧でとても素晴らしかった。
特にファーストシーンが息を呑むくらいに美しかった。

魚眼レンズ、居心地の悪い音楽、
モノクロとカラーの対比、美術、
全てが独創的で、”観るファンタジー”だった。

映像表現が気持ち悪いのに 気持ちよくて
「あぁ、、ヨルゴス・ランティモスだ」、、
と、恍惚してしまう場面が何度もあった。

ほんとに素晴らしい作品だった。

ただ、好きか嫌いかでいうと、
正直私は”耐え難いほど”苦手だった。

主人公のある部分を切り取って自分と重ねてしまってからは、ずっと苦しかった。もうそれどころではなかった。

観終わった後、というより
“観終わる前”に席を離れた。

エンドロールで制作会社が流れてくるまでなんて、とてもじゃないけど待てなかった。

よく耐えたと思う。
椅子に体を拘束されてない限りは、
もう二度と見ることができない。

うまく咀嚼できていないまま
大きな食べ物を飲み込んでしまったような感覚だった。

とにかく疲労感がすごい。満身創痍だ。

過去の自分に対する虚しさと、
今の自分に対する悔しさと憎しみを通り越して、ただひたすら空っぽになった。

動揺しすぎて、
帰りの電車で3回も乗り間違えた。

正直ここまで食らっている自分が一番哀れだった。

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