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Kバレエ「ジゼル」鑑賞記録

2024/3/23(土)オーチャードホール、ソワレ、Kバレエ「ジゼル」の感想を忘れないうちに書きつけるの巻。

まず1幕から、ジュリアン・アルブレヒトの貴公子っぷりと岩井ジゼルの可憐さとで、完全に少女漫画でした。いやほんとに。

石橋ヒラリオンの“優しい人”止まりの片想いの報われなさがそれに拍車をかけていた。

「ジゼル」はアルブレヒトのクズ男っぷりをいかに解釈するかと、ウィリのコールドが見どころだと思っていて。

今回の「ジゼル」は前者が強かった、ほんっっとにジュリアンが素晴らしかった。
ジゼルのみならず客席の皆をもれなく惚れさせるアルブレヒト。
ジュリアンのビズを聞いた時点で、もう今日は満足、来てよかったわ、と思ったけどそれだけでは終わらない。
あの甘い目線、スマートなエスコート、ヒラリオンが出てきても余裕綽々、ジゼルのことを大切に想っているのも伝わる。

でもジゼルの不調に気づかずに踊りに誘ってしまったり、ジゼルもジゼルで不調を厭わずたくさん踊ってしまったり。
婚約者がいながらジゼルと恋仲になるアルブレヒトは確かにクズ、だけどアルブレヒトもジゼルも恋に浮かれる未熟な若者である側面が見えたことで物語に説得力が増した。

あとクズ男っぷりをカバーするのにルックスの良さは最強の武器。顔が良ければ何でも許せてしまうあれ。あんなに百合を抱えて似合う人います?
そこに演技力が加わったらもう無敵。
多くの「ジゼル」でアルブレヒトにメロメロにされるのは1幕なんだけど、今回2幕でジゼルに触れられない切なさと、最後の幕が降りるまで深い悔恨に身を引き裂かれているのがもう……。
あんな憔悴されたら、もう過去の過ちは水に流そう!ね!許したげるから元気出して!となってしまう。ミルタ姐さんもそう思って見逃してやったに違いない。

あと、あの、見間違いではないと願ってるんだけど、ウィリになったジゼルのうなじ・肩・背中あたりにちょいちょい口づけていませんでした……………?
さらにアルブレヒトのVa.があってアントルシャ地獄のあと、息も絶え絶えな彼の美しさ、色気たるや。

今回、ジュリアンは来日公演→ロンドンに移動して公演→戻ってきて来日公演の続き、という驚異のスケジュールだったようだし、ファンサの鬼の異名がとれるほど日本ファンに対応していたけれど、無事に踊りきってくれて良かった。

で、Kの正式なゲスト・プリンシパルにはいつなるの? と私はわくわくしながら待ってます。

今回のタイトルロールは日髙さんの予定だったのだけど、岩井さん、ほんとに代打?と思うくらい馴染んでました。
2幕はポワントワークが素晴らしく、私は前から4列目の席だったのにほとんど音が聞こえなかった。無垢な魂になったのだな、と感じさせる踊り。
2幕でウィリに囲まれたなかから現れでる登場の仕方もすてきだった。

ミルタは途中で手に持った葉枝が折れたように見えました。
こういう生の舞台でしか見られないアクシデント(?)、わくわくしてしまう。
小林さん、さすがさり気なくカバーしていました。

Kバレエ版はウィリたちは袖あり、ジゼルのみ(半人前なので)袖なしのお衣裳。
この部分は、新国の羽根あり/なしの衣裳のほうが好きだったな。
「ジゼル」はあんまり脚色の余地がないようだし、Kバレエ初期の改訂版なので、近作のようなエンタメ性は薄かったと思う。
でも照明は冒頭も最後も美しかったし、舞台セットも奥行きが感じられるものだったし、いつも通り目が足りなかった。
特にペザント、成田さん&吉田さんの「あなたも花冠つけてみる?」「いやいや何言ってんだよ俺はいいよ」みたいな自然体のやり取りがすごく癒された。
バチルドの戸田さんも姫が似合っていて可愛かった〜。

最後のカーテンコールでは主役二人がしばらく茫然自失の様子で、笑顔を取り戻すのに時間がかかっていた。
それを含め、ああ良い公演を観たなとほくほくで帰途につけました。

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