トランジット
こんなことを書いたのが数ヶ月前で、
先週昼から銀座でお酒を飲んだ。
前日の夜に連絡がなく、店が決まらない事に苛立っており、キャンセルしようかと思ったくらいだった。
私は予定を決めるのが遅い男と、
タクシーを使うべき時に使えない男が、
大嫌いなのだ。
けれども、駅で待ち合わせして、散歩しながら歩くというのもなかなか良いもので、
二人とも汗をダラダラとかいていたものの、
私たちの共通項を話しながら移動するのは、
刺激的な体験であった。
普段、一杯しか飲まない私と一緒に日本酒を飲むのが楽しかったらしい。
お互い酔っ払っていて、お土産にちらし寿司を作ってもらった挙句、二軒目まで行った。
私がフラフラとタクシーから降りたら、
手をぱっと掴まれて、少しだけ驚いた。
「こんなところ、君の男に見られたら悪いな」
と言われて思わず笑ってしまった。
二軒目は喫茶店で酔い覚まし。
後ろの席で物騒な男性三人組の話が盛り上がっていた。
紅茶を飲みながら、昔話を要求し、
海外留学と車、学生時代の話を聞いた。
なんだかゾッとした。
目の前にいる人間は、私のことを慕っている。
そのことは分かるのだけれど、
あまりにも私と性質が違ったのだ。
人間同じような外形を持っていても、
自己人格生成期の環境や社会、そして運と努力と元来の性格と。何もかもが違うと、理解し難い恐怖心に似た感情を持つのかも。
嫉妬とか羨望ではなく、触れたことのない深海魚みたいな感じ?
その家に生まれる、その暮らしを強いられる、
そうであることが正しいとされる、
それが善であると認識している、
一般的ではない事に疑問は無く、
明確な違いについて考えていないのかもしれない。
にしても、生まれた街の馴染みの店で、
それも仕事場のそばに私を連れて行った事に、
少しだけ驚いた。
お寿司はとびきり美味しかった。
仕事の話をする貴方は、一段と素敵でしたよ。
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