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成人式の記憶

きょうは成人の日である。

成人の日で思い出すのが「はれのひ」問題だ。簡単に言うと、成人式の日に「はれのひ」という会社が急に営業を停止し(その後破綻)、金を払ったのに着物などのレンタルができなかった新成人たちが涙をのんだという話だ。
最近でも、新型コロナの影響で成人式が中止になったこともあった。これは業者のトラブルというよりは社会・政治的な判断によるものだが、成人式が通常のようにできないという意味では、かつての「はれのひ」問題があった年と同じようなものだ。

私の成人式は振り返ればもう9年前になる。あの時分、私は大阪に住んでいたこともあって、火曜3限にあった「句読点とかの記号の歴史」みたいな授業を受けに、成人式の翌日に東京から「登校」したことをよく覚えている。

思い返してみるとあの成人式というのは、私にとって結構幸せなものだったと感じている。
それは、幼年期のともだちと会う機会などほとんどないからだ。成人式のあの日限りと言えば、あの日限りだったのかもしれない。事実、9年前に会ったきり、二度と会っていない友達はたくさんいる。
一瞬でも、あそこで旧友と会えたのは喜び以外の何物でもなかった。
刻一刻と時間が過ぎていく中で、もしかしたらあの日の出会いが最後の出会いだったのかもしれない、と思うようになった。
ゆえ、「はれのひ」に起こった悲劇というものを思うと、どこか怒りともつかぬ哀しみともつかぬ、複雑な感情が生まれる自分がいる。

最近では少しずつコロナの規制も緩和され、旧友と「久しぶりじゃん」と言葉を交わせる成人式になっているようだ。トラブルもなく、ただ穏やかに友達に会えることほど幸せなことはない。

「ハタチは一生もの」なんて言葉があるように、あの1日だけでもみんなにとっては素敵な思い出になれば――と、いよいよ30になろうという年のわたしは20歳の若人たちにささやかに願うばかりである。

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