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「ぬ」を持ち歩く

もっとも可愛らしい平仮名はなんだろうか。

僕は「」だと思う。

まず、「ぬ」という音の響きがかわいい。
それから、形状が小動物みたいでかわいい(下図参照)。
あと、「ぬいぐるみ」の「ぬ」だったり、「いぬ」の「ぬ」だったりする。

「ぬ」、兎や猫の仲間なのでは?


まあ、可愛らしさの理由なんて、どうでもいい。
とにかく、僕は「ぬ」が好きなのだ。寿司と同じくらい好きかもしれない。

ああ、なんて可愛らしい「ぬ」。
「ぬ」とずっと一緒にいられたらいいのに……。

……

……

……

というわけで、「」を作ってみた。

家のゴミ箱から回収した厚紙をテキトーに切ったり貼ったりして製作したのだが、きちんと「ぬ」の形になっていると思う。

後ろ側から見るとこんな感じ。立体なので、色々な角度から「ぬ」を眺めることができる。
それにしても、「ぬ」の裏側、ちょっとエッチじゃないですか? 普段は隠れている部分が見えているのって、いいですよね。

なお、大きさはこのくらい↓

成人男性の左手との比較

ちっちゃ〜〜〜〜〜〜い!!!!!!

あまりよく考えずに作ったら、ジャンガリアンハムスターより小さくなってしまった。

でも、かわいい。
これでどこへでも「ぬ」を連れていける。

さて、「ぬ」と一緒にどこへ行こう。

……

……

……

海へやってきた(夏だから)。
白い波、黒い砂、白い「ぬ」。美しき8月の風景。
「ぬ」を持っているだけで、潮風が数段心地よく感じられる。

もっとも、あまり風が強いと「ぬ」が飛ばされてしまうが。

「ぬ」も海を見られて嬉しそうだ。
この太平洋のような広い心を備えた平仮名になっておくれ。

近くで犬を散歩させていた人が、奇妙な表情を浮かべてこちらを見ていた。きっと僕が「ぬ」を持っているのが羨ましいのだろう。

浜に打ち寄せた波が、砕けるその刹那に、「ぬ」と同じ形を成したように見えた。僕の手の中の「ぬ」も、それを見たかもしれない。

「ぬ」と心が通じあった気がした。

………

………

………

「ぬ」が一人(一字?)では寂しがるかもしれないので、海から帰る道すがら、僕の「ぬ」の友達になってくれそうな「ぬ」を探してみた。が、これが案外見つからない。

看板や標識などを片端からチェックしてみても、平仮名の「ぬ」は使われていないようだった。
「ぬ」は結構レアなキャラクターなのかもしれない(通常「キャラ」と略される意味のcharacterと、文字という意味のcharacterをかけています)。

たしかに、しりとりで「ぬ」が回ってきたら少し迷う気がするしな。

ちょっと似ている

結局、小一時間歩き回って発見できたのは、自動車のナンバープレートの中の「ぬ」だけだった。やはり「ぬ」は希少価値が高めらしい。「ぬ」、意外に孤独に慣れているのね……。

それから、余談だが、「ぬ」が見つからなかった一方で、「い」は頻繁に見かけた。「〜ください」や、形容詞の語尾(「美しい」「楽しい」など)に多く使われているようだ。
まあ、「い」がどれだけ幅をきかせようとも、「ぬ」のほうが100倍かわいいんですけどね。

……

……

……

そんなわけで、ポケッタブルな「ぬ」がある生活をはじめました。結構いい感じです。なんとなく、「ぬ」への理解が深まったと思います。
あと、手近なところに可愛がれるものを置いておくと、少しだけ世間に対して優しくなれる気がしますね。

まとめやオチは特にありません。人生ってそうだから。「ぬ」の可愛らしさに免じてご容赦ください。

まあ、皆さんも好きな文字を携帯してみたりすると宜しいんじゃないでしょうか。

それと、うちの「ぬ」のお友達も募集中です。街中で「ぬ」を見かけたら、こっそり教えてください。


(追記)
恋人にしたい平仮名は「さ」です。
何卒よろしくお願いします。