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ナイフとフォークと…


もうすっかり"いい歳"になってしまったし、変に"気を遣う大人"になってしまった。
小さい頃は「美味しいケーキをずっと食べていたい」と思えていたのに、大人になるとケーキひとつにも"マナー"というおまけが付いて、気がつけばお腹もいっぱいになっている…っていうことがよくある。

運ばれてきたはレモンパイ。どこか懐かしくて、それでいて見たこともない輝き。美しい。ナイフとフォークでいただく。
このパイと向き合うために身も心も着飾ってしまったのだけれど、必要でない飾りだったかな…あの頃の様に素直に美味しいと思えばよかったぁ…と甘酸っぱくて、くすぐったい大人な香りが口の中に残る。

祖父にはもう会えない。
今まで「ここに来れば分かる気がする!」とかいう考えは無かったのだけれど、珍しくその感情が湧いてこそっとオークラへ。(いや、オークラといえど思い出があるのは福岡の方で東京ではない…けれど素晴らしいもので同じ場所に立っているかのような錯覚…サービスとは美しいね…)
建物の美しいさにも圧倒されるけれど、美しいおもてなしに満たされた時間。空間、流れる時間、全てが極みだった。

祖父は偉大だった。私が祖父の孫でなければ、こんな体験もできなかったしこのレモンパイにも出会えなかった。祖父は永遠であると思っていたし、今でも祖父に会いたいと思う。時間(トキ)は流れるものだし、自然の摂理だから"とても悔しい…"とかいう気持ちはないけれど"今いたら何て言うかな…"と考えたりもする。無常だ。

そもそもオークラは私が通っていた学校の恒例行事としてあった"マナー講習"でも訪問した場所。色んな想いが詰まった"ホテルオークラ"は新しくなって、今はニューオークラとして生まれ変わったらしい…(旧友は何と想うだろうか…興味があれば是非行って欲しい。)

ひとり。だけれど2人の時間…
写真を見ていると私の向かいには祖父が座っていたんだ…と思うことができる。いや、あの時間祖父は向かいに座っていたし、バニラアイスを頼んでいた。そういう事にしておこう。

いつかは私と同じ歳を迎える娘に、私達はどんな景色を魅せられるのでしょう…
何層にも仕立てられたレモンパイを目の前に、人生を重ねて…秋を迎える準備をした日。

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