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絵本の裏側 14

満ちていく水の流れにのって、来た道を戻ります。
森に入って、びっくり。

海のなかの森

木々は、膝の高さくらいまですっかり水の中に浸っていました。

とぷとぷ...

森の中に静かに水の音が響いています。
木の幹から生まれた波紋が、あちらこちらで広がっています。
水の中に木が生えているんだ。

ぼくを転ばせようとしていた仕掛けも水の中。
地面にいた、とんがりの貝もきっと水の中。

溺れてしまってないだろか?

お水が来たら

地面を飛び跳ねていたミナミトビハゼは、今度は水面を飛び跳ねて、水から出ている幹や枝の上でひと休み。彼らは水陸両用のおさかなです。
水の中が得意ではない、オカミミガイなどの貝たちはみんなで木登り。濡れない木の幹にひしめき合っています。
水が苦手ではない貝の仲間は、そのまま水の中にいたりします。
いろんな魚が森の中まで入ってきて、男の子を転ばせようとした地面の出っ張りは絶好の隠れ家になります。

私たちにとっては見慣れないふしぎな光景だけど、ここに住んでいる生き物にとっては慣れたもの。
誰が合図するのか、潮が満ちたり引いたりするのに合わせて、活動を続けます。

ゆっくり帰ろう

ふと、お日様が陰ってきたことに気が付きます。

おみずといっしょに ぼくもかえろう。
ゆっくり ゆっくり。
しんちょうに。

はじめ森に入った時は怖くて転びたくなくて、ゆっくり進むしかなかったけれど、今度は少し違います。
生き物がたくさんいることを知っているから、踏まないように、傷つけないように。思いやりの速度で進みます。

ふしぎな森

少し怖いと思っていた、へんな森。
いろんな生き物がいて、海につながっていて、海のなかになる、とにかく不思議な森でした。
ちょっとだけ分かったこの森のこと。
まだまだ気になることがあるけれど、帰ってみんなに教えたいこともたくさんあるよ。

また くるね。
また きてね。

ふしぎな森と約束をして、男の子は陸の世界に帰っていきます。
生き物をじっと見つめている時みたいに、いつまでも心臓がどきどきしているのでした。〈本編 P.21-22〉

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