生かすということ

泉鏡花 ｢外科室｣ 個人的現代語訳１

上 本当は好奇心からだが、私は自分が画家であるのをいいことに、とにかく口実を作って、私と兄弟以上の関係である医師高峰が、某日東京の一病院で執刀する貴船伯爵夫人の手術を、見学するのを約束させたのである。 その日の午前九時過ぎ頃に家を出て人力車を飛ばした。直ぐに外科室に赴くと、向こうの扉からすらすらと出てきた華族の小間使と思われる美しい婦人たち三人と廊下を半分ばかり進んだ所ですれ違った。 見ると婦人らの中に七五三を思い起こさせる羽織を着せられて抱かれている七、八歳ほどの娘子

はじめに

泉鏡花の外科室のあらすじに触れて、なんだかとてもロマンチックだなと思い青空文庫で検索してみたものの…この作品の文体は非常にレトロでうつくしくはあるのですが、今を生きる私には情景がしっかりと入ってきませんでした。 しかし、読み込んでみるとやはりその文に劣ることない美しい話であることが察せられ、より理解を深めたく現代語訳をはじめた次第です。 色々間違いも多いかもしれませんが、御指摘いただけると嬉しいです。 よろしければ一緒に楽しんでくださいませ。 泉鏡花 ｢外科室｣ 現