ギフト

もう終わりだと思っていたのだけれど、また自分の話。
Xジェンダー、内在性解離と、自分を生きづらくしていたものの正体というか名前がわかり、勝手に達成感を覚えていた燈幸です。

しかしここまで来たからには、もうひとつ書き出しておかねばならないものがある。それは僕にとって神様からの贈り物でした。


血液恐怖症

簡単に言えば、血が怖いです。正直「恐怖」「怖い」といった言葉では足りないほどの嫌悪や拒絶感、不快感を感じます。

血を見るだけではなく、イメージしたとき、皮膚から透ける血管を見たとき、口の中に血の味がしたとき、心音を聞いたとき。そんな血液に関わるあらゆる事象に恐怖を抱きます。

恐怖症持ちの人間は、その恐怖する対象を避けようとします。僕の場合は、血を見る事態になることは避けたいのはもちろん、風呂の時などは極力肌の薄いところは見ないようにします。鉄分入り、等と表示された飲み物はほのかに鉄の味がしたりするので避けます。寝るとき、静まり返った部屋にいるときは自分の心音が聞こえるので音楽を聞きます。ここまでしなければ、不快な気持ちになる。最初は不快な程度で済むのですが、感じたもの、見たものから頭が勝手にイメージを繰り広げて重症化します。

僕の場合はさいわい失神したことはなく、子供の頃なんかは泣くだけで済みました。現在も過換気症候群、いわゆる過呼吸を起こす程度です。
過呼吸を起こしてしまえば、血どころではなくなりそちらへ意識が向くので、過呼吸の対処をすればいいだけ……と言いたいところでしたが、過呼吸の苦しみの中でも僕の脳みそは恐怖を増幅させることもあるようです。そのときは友人の助けで収まりました。ありがたや。

このような恐怖症やトラウマと呼ばれるものは、そうなるきっかけがあることもあるらしいのですが、僕の場合はありません。気がついたら既に血がだめでした。
そして面白いことに、僕の場合なぜか「平気なパターン」があります。
それはフィクションです。漫画、アニメ、ドラマ、そういったものでいくら血を見ても平気です。じゃないと少年漫画なんか読んでられないね。


目に見えない鎧

あまりにつらくてこの体やめたい。死にたい。自分の体内に血が巡ることが耐えられない。そんな風にも感じることがあるこの恐怖症。

でも僕から僕の身を守るための、神様がくれたプレゼントの鎧なのだと、今は思っています。これがなければ、今ごろ僕の体は自傷による傷でいっぱいだっただろうと思うのです。それだけの回数、僕は刃物を持っては自分の肌すら傷つけられずにいました。まあ猫によって傷だらけにされることもありましたが、彼女はプロだったので、血が出ない程度に皮膚を裂くという手加減をしてくれました。

この恐怖症、どうやらメンタルの不調の時に特に顕著になりやすいようで、元気なときは本当に忘れていられます。気持ちが落ち込んでいるときに出ると、恐怖や不快感が倍増します。


イメージをコントロールする

恐怖しなくてもいいもの。頭ではわかっているのに、感情が暴走する。火に油を注ぐように、脳みそは勝手にイメージを広げていく。

最近血ではないものでも、似たようなことが起こるので悩まされています。
それは何のきっかけもなく脳内のイメージから始まります。例えば自分の歯や歯茎に刃物が当てられるイメージ。ただ不快なだけの妄想が、自分の意思とは無関係に始まる。そしてなぜかなかなか終わらない。やめられない。

僕は、それを無理矢理終わらせるための空想を始めます。自分の楽しいことを、具体的に考えるのです。それは自分の創作、物語を考える作業であることが多いです。ただまあ血のことになるとそれも難しい。

書き出してみて、「これは本当に恐怖症と呼ばれるものなのだろうか」なんて思いました。でも僕の知識のなかで一番当てはまる名前が恐怖症なので、とりあえず今のところはそう呼ぶことにしています。
けれどもし自分でしっくりくる名前をつけるとするならば、「覚醒しながらに見る悪夢」でしょうか。
夢ならば目覚めれば悪夢は終わります。ということは逆に失神してしまえば手っ取り早く終わらせてしまえるだろうに、そこまででもない。
きっとこれとも一生付き合うんだろうな。

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