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2014年の気になった展示

((旧ブログから移設した記事です))

今年からフルタイムでお仕事を始めました。
自由に展覧会に行けなくなるかなぁ…とも思ったのですが、
「行けない!」ではなく「行く!」ものだと欲望に忠実に過ごしました。

作品を通した世の中の切り取り方、作品を通した人の考え方を
新鮮な気持ちでたくさん吸収して、仕事にも活かしたいと考える日々です。

今年も5展示ほど。順位などはつけず、開催時期順です。

THE EXPOSED #7
1月11日 ー 2月28日 @東雲TOLOT g3/ gallery
これ、2013年の展示だと思ってたら違いました…もう遥か彼方のように感じるけれど、印象深かったです。私は、写真展示はあまり見ないのだが、このように物質的な写真展示は好きだと思いました。
展示のキュレーションをした大山光平さんが影響を受けた写真展としてティルマンズを挙げていて、「うん。わかる。」って思いましたが、ティルマンズは写真展示法に旋風巻き起こしたのは明白ですものね。とにかく、個々の作家の作品の呼応している美しい構成でした。
その中でも好みだった滝沢広さんは、その後7月に末広町のJIKKAで個展をしていて、より写真が物質になっていて、そちらも楽しい展示でした。(写真はチバガクさんの作品)

「アジア・アナーキー・アライアンス」展
3月8日 ー 4月20日 @トーキョーワンダーサイト・渋谷
スタンプラリー形式で同時期のいくつかの展示を”サテライト展示”として連携していた体制がまず素敵でした。パスポートのようなスタンプ帳など、細かい世界観づくりも秀逸。
メインの渋谷トーキョーワンダーサイトの展示自体はあまり印象深いものではなかったけれど、台湾の企画者を中心とした「アジア・アナーキー・アライアンス」という同盟を結ぶコンセプト・構想・ムーヴメントが希望を感じさせる興味深いものだと思いました。
台湾からの助成・ワンダーサイト協力などを得て行われた企画です。確かに、アジアとしてつながるという強い社会的意図があるので、助成事業にするというのも理解できるが、一方で、行政を通すことで小奇麗で行儀良すぎる企画のようにみえて、コンセプトのインパクトがだいぶ薄れていた点がちょっと残念に思いました。もっとゲリラ的にセンセーショナルに行っていたらどうだろうか、と。でも、企画の中心作品であっただろう「東京湾ボート会議」は、東京湾にて、船の上で小沢 剛、チェン・シャオション、キムホンソク、坂口恭平、ウー・ダークンなど数人のアジアの作家が”アライアンス(同盟)締結する会議”(作品はその様子の映像作品)で、それがなんともおもしろかった。通訳はいるけれど、なんかお互いあまり会話が通じず、ずれがあって表面的な会話が交わされ、締結書にみんなサインしている作品です。

「撤収!」展
3月28日 ー 4月6日 @ハンマーヘッドスタジオ「新・港区」
2年間の期間限定のシェアスタジオとして、2012年5月より活動を開始しました。指名・公募審査を経た50組を越す個人・チームが、4,400㎡にも及ぶ巨大な空間を共有しながらそれぞれ創作活動を展開してきました。自治の確立を重んじ、住民のなかから、区長、副区長を選び、住民会議を開き、管理や企画の多くの部分を住民主体で行なってきました。
ということで、たったの2年間だったのが驚きでした。シェアスタジオやアーティスト・イン・レジデンスは、頻繁に一般公開しているものだが、なかなか行けないものであったりします。ただ、終わりともなると、見ておきたい!という気持ちになり、行ってみました。
終わるというお祭り感も漂って独特の感じでした。広大な空間に”住まう”作家がそれぞれつくっている自分たちの空間など、全体の雰囲気に感動しました。個々の作品がというよりも、本当に写真じゃ全然伝わらない巨大な共同制作スペースのエネルギーが強く伝わってきました。
そもそも巨大な空間は、例えばIKEAも、空間の大きさにわくわくしてしまうが、無数の作家のアトリエなんて、わくわくのバロメーターが振り切ってしまいました。
夏から秋にかけてあった横浜ビエンナーレでは、このスペースも展示空間になっていて、あたりまえだけど煩雑なハンマーヘッドスタジオの姿は跡形もなくなっていたとうのを目の当たりにして、さらに「撤収!」展が印象深いものになったりしたというのもあります。

「空想する都市学 – 空間の再分配 フィールドワーク -」展
7月05日 ー 7月21日@3331 Arts Chiyoda
アジア・アナーキー・アライアンス展も台湾キュレーターの企画だったけど、この展示もよく考えたら台湾のキュレーターさんの企画です。台湾若手キュレーター事情が気になってきてしまいます…!!
暮らす空間をキーワードにいくつかの作家の作品をみせるスクラップブックのような展示でした。タイトルがちょっと小難しい感じであるゆえ(というのは私視点であって、単純に無知だからそう感じるのかもしれないが)抽象的な展示コンセプトで展示を通して伝えたい核心のようなものがなかった気もしたが、全体として都市暮らしの負の問題に対して悲観的ではない楽しいアプローチをしている印象でした。

「キャラクラッシュ!」展
10月11日 ー 11月02日 @カオス*ラウンジ アトリエ
取り壊し前の日本家屋で盛大で大胆な展示でした。会場案内・作品リスト紙に、会場の家の裏にある石垣が”関東大震災前からあるもの”だと解説されていることで、この展示が単に”使ってたアトリエが取り壊されるから会場として展示を行った”のではなくその場所で展示をする強い意味が付与されていたように感じました。ぬかりないなぁ、と。更にその石垣の下の駐車場スペースに荒渡巌さんの3.11時の災害漂着物を使用した作品が展示されることが、メインの木造日本家屋とアニメキャラクターモチーフのコントラストと共に展示に説得力ある”時間・歴史軸”を持たせていたところがとても良かったです。
すべてが”整いました!”というような今回展示を超える次回展はすごく高く飛ぶ必要がありそうで、次も楽しみです。(写真はCHAOS*LOUNGE OFFICIAL WEBより)

そんなこんなで、去年から展示に空間的快楽(その空間にいて気持ちが高まる)をより強く求め、作品だけじゃなく、その作品を取り巻く空間全体を含めてみるようになりました。
上記以外で特定の作家においては、
太田遼さんの青梅モデルルーム「再想起」展で展示した空間を変容させる作品、電子音を発する”虫”を街中に設置する音による生活空間に介入するTeun Verkerkの”BUQS”という作品、レリーフという方法にシフトしている彫刻家の石塚隆則 「TOTEM」展、淺井裕介のアラタニウラノでみせたギャラリー空間では異色の展示などが印象深い展示でした。
その場所や空間に挑んでいるのがとても面白いと思っています。

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