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2022年 心に残った展示

 今年のよかった5つの企画展。たぶん開催順になっている。

1.「拡散距離/コンヴァートの作法/可変太陽」@ MITSUKOSHI CONTEMPORARY GALLERY
平田尚也、藤倉麻子、松田ハルと3人の現実空間と仮想空間を往復する3人の推し作家を紹介していたグループ展で、個人的な好みでしかないが、まさにこの3人といううれしい組み合わせだった。CG仮想空間の作品といえば谷口暁彦さんや山内祥太さんも好みだが、同じように物語性があって、それぞれ違う物語性があって、この3人からは目が離せません。藤倉麻子さんは、東京湾の物流拠点を巡る「手前の崖のバンプール」にも参加した。松田さんはこの展示に出展していた映像作品がとてもよかった。

2.In search of others @KOTARO NUKAGA
作家の平子雄一によるキュレーション展で、参加作家は伊佐治雄悟、王冠蓁、熊野海、高橋直宏、陳雲、寺本明志。展示では、平子さん自身彫刻も絵画も制作するので、絵画と彫刻両方で構成される展示であったが、平子さん自身とは異なるアプローチをする作家を選んでいるように見えて、作品は多様で見応えがあった。「他者」を感じて欲しいという意図があったこともあり、各作家同士の関連や繋がりが希薄であったが、空間全体として、色彩感覚が似ていた。それぞれ、鮮やかな差し色が作品同士をゆるやかに繋げていた。展示の様子がまだ見れる。これもコロナ以降普及した記録法だ。>> VR 

3.「感性の遊び場」@ANB Tokyo 
昨年の「Encounters in Parallel」といい、空間構成も作品の一部といういつもバキバキにこだわった空間が見どころだ。昨年の「Parallel」も「遊び場」というキーワードも、両方個々の独立したものが出会うというイメージで、作家それぞれの世界観は大切にされており、今回は青い道が各作品とフロアを繋げていて、ゲームでいうと道を進み、左右見ると作品(情景)がある感じだった。全体的に、小さい作品が多かったが、小さい作品こそ、手を動かして創作したりすることが生活の中にある感覚を身近に感じさせる。思考や想像力をもっと柔軟にいろいろ挑戦したくなる展示であった。

4.「ライアン・ガンダーわれらの時代のサイン」@東京オペラシティアートギャラリー
いやはや、昨年度は来日叶わず、オペラシティの収蔵作品展をディレクションしたライアンさん、今年無事開催された。断片的にしか知らなかったけれど、多様なアプローチで「見る」ことや「モノと向き合って考える」「モノを介したコミュニケーション」の仕掛けを考えている。特に、モノを介したコミュニケーションという点は面白くて、石のタイプフォントシリーズとかすごく好きだ。https://setinstonetypeface.co.uk/(←ここからダウンロードできる)美術表現がひとつの言語表現のような側面があるけれど、文字や言葉をつくるという行為ってとても創造的だ。石の自動販売機も稼働してたらもっと良かったな。

5.良い形_石@LEESAYA
最後はこの展示。石、最もおもしろい素材、主題だと思っているため、クリスマスシーズンに駆け込み見に行った。石黒健一さんのミクロネシアヤップ島の石を貨幣「石貨」としている地域のドキュメンタリーは見るの2回目だけど、内容は進んでいて、前回は取材という感じで「石貨」とは、みたいな話だったけれど、今回は、石黒さん自身が石貨をつくり、その価値を高めているというところで、長いスパンで作品と共に続くストーリーを追いかけられておもしろい。後藤夏希さんの作品は3331ArtFairで見かけて、かなり好きで欲しいと心が揺れた作品だった。ガラスと針金と石、それぞれの強度や重さが絶妙なバランスによって曖昧になっているのがよい。これからの活躍が楽しみだ。

 その他好きな作家さんの個展はどれもよかった。玉山拓郎さんはたくさんご活躍された印象。今年のトップ画は六本木新美の展示の様子。もう一度行きたいWatariumの加藤泉展。BLUM&POEの岡崎乾二郎さんの個展は行った時、光が最高で本当によい空間だった。永らくドイツ拠点で活動していた蔭山忠臣さんの久々個展も相変わらず居心地悪い作品で良かった。片岡純也+岩竹理恵さんの展示、長田奈緒さん、友沢こたおさん、小林椋さんも来年の活動が楽しみ。

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