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2018年展覧会ベスト5(行けなかったのも…)

((旧ブログから移設した記事です))
今年は、行きたかったぁぁぁ、けど行けなかった展覧会が2つもベスト5に入っているのですが……レビューとか写真見ると、もう確実に楽しそう、だったのです。今年は異動しまして、ちょっと職場の様子見をしていたら、なかなか遠出ができなかったのです。残念無念!!
ということで、1から5は順位とかではなく、順不同です。

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1.「1940’sフジタ・トリビュート」と「没後50年 藤田嗣治」展のセット
東京藝術大学大学美術館 陳列館と都美術館
私が高校生くらいまでは、美術の教科書でも藤田嗣治は「レオナール・フジタ」という名前で紹介されていたし、フランスで悠々自適に画家としての人生を歩んだ細身の女性を描く、猫好きの洒落たおじさんというイメージだった。もちろん、わたしの無知もあるだろうが、そのようなイメージで広く一般に紹介されていたのではないだろうか。それから10年くらいたった今では、藤田嗣治という名前が一般的になって、戦争画の存在も知られるようになって、彼の戦争を描いた作家として注目されるようになって藤田嗣治という人物像のイメージもずいぶんと変わったような気がする。
そんな中で、没後50年節目の都美術館での回顧展は、改めて、そのような多面的な藤田嗣治を一望できる展示になるのかな、と期待していた。戦争を描いた「アッツ島玉砕」や「サイパン島同胞臣節を全うす」などの大作も。戦争前後の彼の特徴である独特な描き方と戦争の記録画は作風が全く異なっているのが見えて、藤田嗣治の画家として軌跡の中での異質さが際立っていた。都美術館での会期中、藝大の陳列館で「1940’sフジタ・トリビュート」展が開催されていたのも今回とてもよかった。小沢剛の映像インスタレーションや平川恒太の絵画作品たちは、藤田嗣治(アーティストまたは美術)と戦争(の体験、記録、表象)という側面を拡げるような視点を提示する作品であった。ラップなどにおける”アンサー・ソング”みたいなふたつの展示の関係性も含めて、印象的であった。

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2.「モネ それからの100年」展
横浜美術館
“アンサー・ソング”繋がりで…という訳ではないが、横浜美術館で開催されたこの展示は、モネの作品と後世代作家の作品の”時代を超えた結びつきを浮き彫りに”(展覧会序文より)する展示であった。これは、時代と国を超えた作品を並べて見せるという企画の形が注目どころだ。モネは愛されている、日本人から圧倒的に愛されている作家だと思う。モネから影響を受けた、または真似たとしか捉えかねない安易なくくりで紹介されてしまう他の作品、という点では問題もあったのではないかと思うが、モネの力によって来場者の客層が幅広かったように見えて、その点が良かった。いろいろあって学べるし楽しめる博物館のような展示だったような気がする。「似ている」とか「影響を受けている」は何かを生み出したり、進展させたり、議論を生むようなキュレーションではないが、見る者としては視覚的満足感の得られる間違いのない形式ではないだろうか。

3. Munster Sculpture Project in Sagamihara -さがみはら野外彫刻展2018-
相模原 鹿沼公園
個人的に、美術の中で彫刻が一番好きで、10年に1度開催されるミュンスター彫刻プロジェクトはその理念も含めて憧れのアートイベントで、ちょうど昨年2017年に開催されていた際は、指を咥えて現地にいった人たちの写真を見ていた。それが、相模原で?公園で?週末のみ開催される??というなんともファーストインパクトがまずすごい展示……でも、これ、行けなかったんですよね…。
結果、やっぱり写真とか見て、いいなーって思ったというオチ。しかし、これもまた、私が大好きな彫刻家の井出賢嗣さんが主催者の1人ということで、週末にささやかな立体作品が相模原の鹿沼公園のそこここに置かれているといった様子で、宝探しのような、素敵な展示だったようで、行けていたら、間違いなく最高だったと思うのです。
※このアーカイブサイトからその断片を楽しむことができます。

4. パープルーム大学附属ミュージアムのヘルスケア
太田市郷土資料館
茨城県常陸太田市の郷土資料館を舞台に行われたパープルームの展示で、行けなかった。しかし、パープルームは昨年のワタリウム美術館での展示や今年11月に行われた相模原の「パープルタウンでパープリスム」の一部を見たりして、作品の展示の仕方や見せ方がとてもうまいと毎度驚かされた。それぞれのメンバーは強い個を持っているように見えるし、展示の際はゲスト作家も多く、それぞれが分裂してしまいそうなのに、展示そのものは、パープルームらしさが揺るぎないものとして提示される。そんなパープルームが郷土資料館で展示するというのでとても気になっていた。
そもそも個人的に今、地方の郷土資料館がとても気になっている。バブル期の箱物行政の遺物なのか、日本中大きな町から山の中の小さな村落まで、私設・公共問わず「郷土資料館」ような施設を持っている地域はかなり多いのではないか。それが、多くの場合、当然その維持資金の捻出は難しく、荒廃している「郷土資料館」も多い。大抵どんなに荒廃した資料館でも縄文時代の土器を持っていたり、その地域の歴史にまつわるモノがよく揃っているが、忘れ去られたようにそこのあるものは”死んでいる”。そのような中で、パープルームの郷土資料館での展示は、ひとつの新しいモデルケースになり得るのではないか。郷土資料館が支持体となって地域住民やその外の人がいろいろな方法で上書きできるような場であったらおもしろいのではないか、と考えさせらた。
※私が言いたいことが簡潔明快に展示の写真と共にこのレビューに書いてあった。

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5.  風間サチコ 「ディスリンピア2680」
原爆の図 丸木美術館
風間サチコ氏の作品はいろいろなところで見ているが、丸木美術館で見た展示は格別であった。恥ずかしながら、丸木夫妻のことはほとんど知らなくて、丸木美術館のことは昨年くらいに、同美術館で現代美術の企画展が行われたことでその存在を知った。丸木夫妻が暮らした家を改築した美術館はアットホームな感じだが、夫妻が共同で描いた「原爆の図」と人間の苦しみを描いた大作たちと静かに向き合う空間でもある。そのような作品と幅6mを超える風間サチコ氏の大きい木版画は大きな社会の流れに飲み込まれていく危機感を抱かせる。

また、5つの中に挙げなかったが、カオスラウンジ界隈の企画は良く、2017年と18年を跨いだ福島県いわき市での市街劇「百五〇年の孤独」や「現代美術ヤミ市」など…知らぬ間にファンになっているのかもしれない。そしてアートフロントギャラリーが今年は印象的で、原田郁、金氏徹平、角文平の展示それぞれ最高で、新年にはshiseido art eggで長蛇の列ができた冨安由真さんの展示続くということで、目が離せない。

さて、来年も、たくさん展示に行けますように。

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今年最後に家に迎えた井出賢嗣さんの作品「board-maze」

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