2017年 愛でた展示
((旧ブログから移設した記事です))
行ってエネルギーをもらった企画展示を5つ。その他、楽しかった個展もたくさんあったのですが、それはまた今度。
1.三沢厚彦 『アニマルハウス謎の館』
渋谷区松濤美術館 10月7日~11月26日
愛らしい木彫彫刻のANIMALSシリーズで有名な三沢さんが家主(?)役で、“客人”として船越桂・小林正人・杉戸洋・浅田政志が参加するというコンセプトの企画展。松濤美術館は特に2階はソファーがあって、邸宅のような感じだが、そこに各作家の作品とそれぞれの共同作品が混ざって置かれている。週末は各作家がやって来て、制作したり、団らんしたり…作品は増えたり、移動したり、期間中展示はどんどん変化していたようだ。
私が行った時も、船越さん、小林さん、杉戸さんが制作していたけれど、とにかくみんな自由で、観客は、作家の共同アトリエを見学しているようでワクワクが止まらなかった。
作家のトークで、企画担当学芸員平泉さんのエピソードがけっこう語られているのだが、たぶん、企画を実現するのに、彼女の働きかけも大きかったのだろう。
作家たちとこの学芸員さんが一緒になって企てた良い意味での“悪だくみ”のような感じがする、彼らが一番楽しんでいたというような感じが伝わってきて(だから見ている方も楽しい)とても良かったのだ。(展覧会カタログ内の写真より)
2.Chim↑Pom 『Sukurappu ando Birudo プロジェクト 道が拓ける』
キタコレビル 7月29日~9月5日
2016年のベスト5に解体前の歌舞伎町振興組合ビルで行われた『また明日も観てくれるかな?〜So see you again tomorrow, too? 〜』の続編という位置づけになっている展示。高円寺キタコレビルのGARTERは数年前からChim↑Pomが運営するアートスペースで、今にも崩れそうな増築された変な空間(元店舗)の集合体といった感じだった。今回、その真ん中に舗装された「道」をつくり(本来、建物ができた当時は道があったらしい)新たに地下を整備して、新しい空間として生まれ変わった過程、「道」開通の記念の展示。歌舞伎町振興組合ビルの解体(オリンピックに向けた歌舞伎町の再開発)も、キタコレビル内につくられた道でも、街の歴史というものの見せ方がとても印象的で、地層的な歴史と語り継がれるような歴史両方を表象しているような作品だ。(写真は株式会社TANK websiteより)
全記録の書籍も要チェック!
都市は人なり 「Sukurappu ando Birudo プロジェクト」全記録
3.『BankART LIFE V (5) – 観光』
BankART 8月3日~11月5日
そもそもBankARTの建物が好きというのもあるのだが…2018年に閉鎖予定!!!というとても悲しい発表もあり、この展示はとても切なかった。花畑と海の間に出現する島(部屋)を巡るような展示となっていた。ヨコハマトリエンナーレと同時期の開催となっており、近くの黄金町や野毛へとつながる伏線のような展示でもあったが、3Fの「花と海と光」という名前の展示空間は、海の先の国々を想うようなとても静かで詩的な空間であった。空間設計はみかんぐみ。同時期に開催されていた高山明/PortBによる大岡川クルーズツアー形式の作品『遠くを近くに、近くを特に、感じるための幾つかのレッスン』のセットで、1人の人間の無力さとか感じながら、広い自分が全く知らない世界について考えながら、横浜湾を巡り、しばし呆然としてしまう体験であった。(写真は高山明/PortBによる大岡川クルーズツアーの船上から見た横浜のベイエリア)
4.中野成樹+フランケンズ 『半七半八(はんしちきどり)』
PARADISE AIRほか 10月6日~10月9日
松戸は、現在の職場からけっこう近くて、独自のまちづくり+アートの取り組みはずっと気になっていたのだが、そんなアートスペースを舞台に使った演劇作品だ。場面転換ごとに街を歩いて、次の場面まで移動する。ちょうど見に行った日は、地元のお祭りもやっていて、道でカラオケ大会みたいのをやっているを見ながら、物語は時間を遡る形で展開していて、“孤独”みたいなのが根底にあるようなお話で、最後のシーンは東京と千葉を隔てる江戸川河川敷で、切なさが溢れた。
5.ラウムラボア・ベルリン『HOUSE PEAK』
東京ドイツ文化センター(GOETHE institute) 1月26日~1月28日
登る山は「ゲーテ山」かなり標高が高い山だ。
2017はじめの、もうはるか彼方昔のことに感じる…これも演劇作品。ラウムボア・ベルリンは建築家集団で、都市に対する多様なアプローチを試みているという。今回は、東京ドイツ文化センターというビルの屋上を山の頂上と見立てて“登山”する、盛大な「見立て」の体験ツアー。働く職員さんが、ベースキャンプの管理人だったり、フロアに雪男(秋田から出張したナマハゲ)が出現して追いかけられたり(捕まりかけた)、ロープをつけて、建物の壁面をクライミングしたり、突風の中(扇風機)尾根(廊下)を歩いたり、すごく楽しかった。途中、おいしいスープも用意されていたりして、本当に登山した気分(だけど疲れていない)だ。しかも、チームツアーで、その時初対面だが、頂上に着いたときにはみんなで記念写真をキャッキャッ撮るノリに。最高の都市内エンターテインメントであった。
あっという間に1年が終わりました。
特に年の後半あまり展示に行けず、行きたかったけれども泣く泣く諦めたりすることが多かったのが非常に残念無念。
たまにTABlogでレビューを書いています。来年もよろしくお願いします。